2018年10月01日版:荒木 拓也(技術応用担当理事)

  • 2018年10月01日版

    「産業界の会員の皆さん、学会を有効活用していますか?」

    荒木 拓也(技術応用担当理事)


     学生のころ会員になって、しばらくは研究会にも出ていたけれど、その後は足が遠のき、最近は会誌が送られてくるだけ、なんて方も産業界にはいらっしゃるかもしれません。

     しかし、産業界の会員の皆様が情報処理学会を有効活用する方法は、アカデミックな活動以外にもたくさんあります。今回はその中からいくつかアイディアを紹介します。

    1. リクルーティングに活用する
     最近は優秀な学生の方をリクルートすることが難しくなってきています。研究会や全国大会、シンポジウム等で発表を聞くことで、優秀な方を見つけることができれば、リクルーティングに活用することができるのではないでしょうか(もちろん、学生の方へのアプローチは就職活動のルールに則って行う必要がありますし、節度を持って活動する必要はあります)。発表を聞くだけでなく、自社の研究を発表することも、学生の方に対する大きなアピールになります。
     また、最近は企業スポンサーを募集しているイベントも多くありますので、スポンサーとしてブースを出すことで、学生の方にアピールすることもできるかと思います。

    2. 自社事業のアピールに活用する
     企業によっては、自社技術や事例を紹介する技報を発行しているところもあるかと思います。別刷をお客様に配布するなどで、自社技術のアピールに活用されているかと思いますが、同じ目的に「ディジタルプラクティス」を活用することを考えられてはいかがでしょうか。
     ディジタルプラクティスは実務家向けの論文誌として、学術的な新規性よりも、経験に基づく有用性を重視しています。そのため、先進事例を紹介する場としてぴったりですし、情報処理学会の査読済みとして、第三者のお墨付きが得られた論文であれば、お客様に対するアピール度も大きくなるのではないかと思います。
     論文を書きなれていない方は、論文投稿を不安に思われるかもしれませんが、経験豊かな編集委員が共同で論文を読みやすく書き直す「共同推敲」という制度もありますので、ぜひチャレンジしていただければと思います。

    3. スキルアップに活用する
     実務に時間が取られていて、なかなか最新の技術についていけない、ということもあるかと思います。「連続セミナー」は、最新の技術に追いつくために最適なイベントです。最近注目のトピックを、情報処理学会の人脈を活かした第一線の講師陣が解説します。本会場は東京ですが、遠隔会場として大阪会場と、東北会場があります(東北会場は今年から追加になりました)。今年は本稿が掲載されるころには第3回まで終了してしまいましたが、第4回はエッジコンピューティング、第5回、第6回は人気の人工知能関係のテーマです。リピーターも多い人気のイベントですので、ぜひ参加してみてください。

    4. 資格取得に活用する
     スキルアップしたら、資格取得につなげましょう。情報処理学会には「認定情報技術者(CITP:Certified IT Professional)」という資格制度があります。本制度は企業が社内で実施されている資格制度を認定しており、認定された社内資格をお持ちの方はCITP資格の認定も受けることができます。そのような社内資格制度がない場合でも、個人で審査を受け、資格取得を行うことができます。CITPはIFIP(International Federation for Information Processing)という国際機関が制定しているIP3(International Professional Practice Partnership)という国際的な相互資格認証の認定を受けており、グローバルに通用する資格として活用できます。ぜひ取得を検討してください。

     以上、産業界の会員の皆様が情報処理学会を有効活用するアイディアをいくつか紹介しました。情報処理学会の会員でない同僚の方にも、このような活用方法を紹介し、会員になってもらうようお勧めいただければ幸いです。