総合司会:北村 操代
(情報処理学会 技術応用担当理事/三菱電機株式会社 情報技術総合研究所 部長)齋藤 正史
(金沢工業大学 情報フロンティア学部 経営情報学科)西尾 章治郎
(情報処理学会 会長/大阪大学 総長)【講演概要】日本を筆頭に、中国やASEAN、西欧諸国においては、時間差こそあるものの、高齢化と人手不足が急速に進行しており、労働人口等の人的資源不足を、社会の生産性向上で対応せざるを得ない環境が現実のものとなりつつある。そのためのICT領域において、AI、IoTなど新たな技術領域が急速に成長しており、ソフトウェアは、その基盤として中核的な役割を果たすことが期待されている。機械による単純な労働代替だけでなく、労働・職業、社会制度、商慣習も、新たな環境変化への対応を求められている。本講演においては、ソフトウェア産業に解決が求められているテーマ群と、セキュリティに続く新たな課題(シンギュラリティ、巨大なプラットフォーム、ITと社会倫理等)を整理して、ソフトウェア産業の果たすべき役割を展望する。
桑津 浩太郎
(株式会社野村総合研究所 未来創発センター 研究理事)【講演概要】我が国の農業は、農業者の長年にわたる経験や勘などにより、優れた農産物を生み出してきたが、高齢化の中で失われつつあるこれらの経験や勘を学ぶことは難しく、農業生産に関する多様なデータの集積や活用も進んでいないことからエビデンスベースのデータ活用型の農業が求められてきた。この状況を踏まえ、「農業データ連携基盤(データプラットフォーム、通称:WAGRI)」の取り組みが進められている。この基盤は、パブリッククラウド上に構築し、ベンダやメーカの壁を超えて異なるシステム間のデータ連携を可能にするほか、公的機関などが有するさまざまな農業関連情報や研究成果に関するデータ等をプラットフォーム上に集約し、オープンデータ、あるいは有償データとして提供可能とするものである。すでに、国内外のICTベンダ、農業機械メーカ、研究機関、農業者団体等の多様な主体が参画し、2018年度には先駆的な取り組みが進められる見込みである。データ連携基盤が切り拓く、これからの農業の方向性を展望する。
※「農業データ連携基盤」は、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」において開発を進めています。
神成 淳司
(慶應義塾大学 環境情報学部 准教授/内閣官房 副政府CIO(情報通信技術(IT)総合戦略室長代理))【講演概要】人間の操作を一切必要としない完全自動運転の実用化は規定路線である。特に市街地での完全自動運転は大きな新規市場を切り開き、社会的価値も大きい。本講演では、市街地での完全自動運転用途に開発されたオープンソースソフトウェア「Autoware」の最新動向を紹介し、今後の実用化に向けて最も重要な課題である組込みプラットフォーム技術について述べる。また、完全自動運転の実現に資するAIサービスプラットフォーム「Automan」の最新動向を紹介し、その重要性について述べる。
加藤 真平
(東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授/名古屋大学未来社会想像機構 客員准教授/株式会社ティアフォー 取締役兼CTO)【講演概要】現在、人工知能とともにロボット技術が再び注目されており、さまざまなサービス分野でのロボット技術の需要が高まっている。しかるに、これまでサービスロボットの研究開発が盛んに進められてきたにもかかわらず、その社会における普及は必ずしも進んでいない。たとえば、福島原発の事故対応・廃炉措置において、これまでにさまざまなロボット技術が活用されているが、事故直後、迅速かつスムーズにロボット技術を導入することはきわめて困難であった。災害時には、人間が立ち入ることが困難、危険、不可能な環境が多く、ロボットの投入が期待されているものの、その社会実装は容易ではない。本講演では、サービスロボット技術(リハビリ・介護、災害対応、廃炉をはじめとするサービス分野などで活用されているロボット技術)の研究開発の動向について述べるとともに、その社会実装を進める上での課題やそれを解決するために行われている取り組みについて紹介する。
淺間 一
(東京大学 大学院工学系研究科 教授)【講演概要】人工知能は急速な進展を遂げつつあり、さらにAIが汎用性と自律性を備えれば、人類に対してより大きな影響を与え得る。こうした背景から、AIと社会の関係を再構築するための議論が盛んになっている。私達NPO法人WBAIは「人類と調和した人工知能のある世界」をビジョンとして掲げ、全脳アーキテクチャ・アプローチよるオープンな共創を促進している。このアプローチでは「脳全体のアーキテクチャに学び人のような汎用人工知能を創る」ことをミッションとしている。私達がAGI(Artificial General Intelligence)開発において脳に学ぶ主な理由は、人間と同じように振る舞い思考するAGIをつくりやすいこと、さらに脳のアーキテクチャ上の共同作業でAGIを多くの人々の共有物に誘導し得ることにある。またAGIを最初に完成した誰かがすべての利益を独占することを避けられるよう、多様な組織がオープンにAGI開発を進めてすぐに追いつく準備が必要である。私達WBAIは、脳から学ぶという特徴を活かしつつ、その活動を広げることでそのような組織の一つに成長し、さらに影響力を高めたいと考えている。
山川 宏
(株式会社ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所 所長/NPO法人全脳アーキテクチャ イニシアティブ 代表)【講演概要】本パネルセッションでは、ITが社会・生活・仕事を変革していく中で、人や組織の役割はどのように変わり、どのような価値を創出していくべきかについて、専門家の先生方に議論いただきます。また、人口動態などの社会構造の変化、IoTにより収集・蓄積されたデータをビッグデータとして活用するだけでなく、気づいていなかった新たな知見を表出するAIを用いた社会の将来像についても、議論いただきます。
司会:齋藤 正史
(金沢工業大学 情報フロンティア学部 経営情報学科)パネリスト:桑津 浩太郎
(株式会社野村総合研究所 未来創発センター 研究理事)パネリスト:神成 淳司
(慶應義塾大学 環境情報学部 准教授/内閣官房 副政府CIO(情報通信技術(IT)総合戦略室長代理))パネリスト:加藤 真平
(東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授/名古屋大学未来社会想像機構 客員准教授/株式会社ティアフォー 取締役兼CTO)パネリスト:淺間 一
(東京大学 大学院工学系研究科 教授)パネリスト:山川 宏
(株式会社ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所 所長/NPO法人全脳アーキテクチャ イニシアティブ 代表)山本 一成
(愛知学院大学 特任准教授)古橋 貞之
(トレジャーデータ株式会社)ユニバーサルセンサネットワークと清掃車を活用した藤沢市のスマート化
情報処理学会デジタルプラクティス Vol.8 No.3(通巻31号)
中澤 仁(慶應義塾大学)(正会員),陳 寅(慶應義塾大学大学院)(非会員),米澤拓郎(慶應義塾大学大学院)(正会員),大越 匡(慶應義塾大学大学院)(正会員),徳田英幸(慶應義塾大学)(正会員)荒木 拓也
(情報処理学会 技術応用担当理事/日本電気株式会社 システムプラットフォーム研究所 主任研究員)