独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(関連団体)

IoT時代の安全なシステム

【セッション概要】IoTの進展により、さまざま製品/サービスが多様化しネットワークにつながることになったことを背景に、これまでにない組み合わせでモノ・コトをつなげて、高い価値をもたらすことを目指す取り組みが始まっています。その一方で、その対象となる分野・範囲の広がり等により、製品/サービスの企画・開発を実施する際、これまでのように特定分野にだけ特化した従来のアプローチではシステムの安全性を確保することが難しくなってきています。本セッションではIoT時代の安全・安心なシステムの確保に向けて、IPAが推進している取り組みや新しいアプローチの手法について解説します。

   

つながる世界の安全に向けたIPAの取り組み

【講演概要】IoT時代には、ビジネスチャンスが生まれると同時に、その裏には経営リスクも懸念されます。例えば、つながる相手に迷惑をかける不良品を提供することや、逆に迷惑を受けることもあります。単一分野でのビジネスルールが通用しないなど、ビジネス環境の変化への対応遅れも心配され、大規模・複雑化するシステム開発の考慮漏れによる失敗も起こりやすくなります。これらの課題に対応するためには、開発方法のパラダイムシフトが必要になってきます。その一環としてIPA/SECが推進しているシステムズエンジニアリングやSTAMP/STPAについて、その考え方の背景を概観して紹介します。

中尾昌善

中尾 昌善

(IPA/SEC 独立行政法人情報処理推進機構技術本部ソフトウェア高信頼化センター ソフトウェアグループリーダー)
【略歴】1958年京都府生まれ、1982年京都大学工学部大学院修士修了、同年電々公社入社。主にコンピュータ・システム関連の研究開発に従事。2009年NTT理事主席研究員を経て、退職。同年、NTTソフトウェア株式会社入社。2014年現職。

IoT時代のシステム開発アプローチ~システムズエンジニアリングの薦め~

【講演概要】第4次産業革命の潮流の中で、様々なサービスや製品を組み合せ、新たな価値を生み出すことが求めれられています。そのような環境下で現実の問題に取り組むには、目的達成に向けて広い視野に立ち、既存の枠組みを超えて専門家と連携し、複雑性や不確実性に怯まず機敏に対処する思考様式や価値観が重要になります。これからのシステム開発においては、航空宇宙産業を中心に培われてきたシステムズエンジニアリングのノウハウが、多くの場面で問題解決を支援できます。日本の産業界におけるシステム開発や問題解決の事例も参考に、システムズエンジニアリングの考え方とその有効性を解説します。

端山毅

端山 毅

(IPA/SEC 独立行政法人情報処理推進機構技術本部ソフトウェア高信頼化センター 主任研究員)
【略歴】株式会社NTTデータにおいて全社QMSの構築運用、CMMI適用とプロセス改善施策、PM育成/支援施策、定量データ分析などを推進。同社品質保証部長(2010-2015年)。2017年よりIPA/SECでシステムエンジニアリング推進施策を担当。JISA先進技術部会長、PMI日本支部副会長、JASPIC理事、ISO/TC258国内対応委員、東京工業大学非常勤講師、博士(工学)、PMP。

複雑システムの安全設計へのチャレンジ~システム理論に基づく新しい安全解析法STAMP/STPAの実践~

【講演概要】運転支援の高度化に始まり今や自動運転まで視界に入りつつある自動車を始め、高度なソフトウェアで制御される組込みシステムが日常生活で使われる時代になり、その安全確保のための方法論に産業界の興味が集まっています。既存の設計方法論では、このような複雑で、かつ、人間-機械も含めた多様な相互作用を持ったシステムに対応できておらず、新しい安全設計の方法論が模索されています。米国MITのNancy Leveson教授によるSTAMP/STPAはその方法論の一つとして注目されています。本講演では技術的な要因だけでなく、組織や人を含めた非技術的要因も考慮した包括的な事故防止アプローチとしての有効性を検証した事例を含めて紹介します。

三原幸博

三原 幸博

(IPA/SEC 独立行政法人情報処理推進機構技術本部ソフトウェア高信頼化センター 調査役)
【略歴】2010年よりIPA/SECにて組込みシステム開発・管理手法の整理(ESxRシリーズ)と普及に従事。現在は、システム安全性解析手法の整理(初めてのSTAMP/STPAシリーズ)と普及にも取り組む。

東京駅が何故安全なのか?~FRAMによる分析とシミュレーション~

【講演概要】IoTシステムの安全解析の難しさとは何か。それは、プレイヤーが流動的に流出入するため、システムの安全制御構造というものが不確定(もしくは存在していない)であるという問題です。そこに人工知能や自然知能など、さらなる不確定要素が融合すると、ハザード制御はますます困難となります。本講演では、このようなシステムの例として、東京駅のコンコースを分析し、それがどのように安全化されているのかを示します。分析手法として、機能共鳴分析手法(FRAM: Functional Resonance Analysis Method)を用い、固定のハザード制御構造を持たないシステムがどのように安全化されているのかを分析します。さらに、FRAMモデルから作成されたシミュレータを使い、個々のプレイヤーのどのような行動様式によってもたらされているかを示します。これはかつてクレイグ・レイノルズが発見した鳥や魚の群れの行動に似た、「トップダウンに制御されていないが統一性のある群衆行動」に通じるものです。

野本秀樹

野本 秀樹

(有人宇宙システム株式会社 IV&V研究センター センター長)
【略歴】有人宇宙システム株式会社 IV&V研究センター センター長、日本初のソフトウェアIV&V事業を宇宙ステーション計画において開始し、NASAなどと共同研究。こうのとり1号機のから現在まで飛行管制官として実運用も担当。JAXAにおいて、新型宇宙機アーキテクチャの研究を立ち上げる。STAMP/STPAを中心とするIV&Vのとりまとめ。宇宙、自動車、原子力、鉄道等の分野で活動。