イベント企画
特別講演:計算機視覚の研究 −その仕組みと今後−

9月8日(水)13:00-14:30[メイン会場(恵道館2F KD-201)]

 
  金出 武雄(カーネギーメロン大)
1974年 京都大学電子工学科 博士課程修了(工学博士).1976年 同助教授. 1980年 カーネギーメロン大学 計算機科学科・ロボット研究所高等研究員.1985年 同大学教授. 1992-2001年 カーネギーメロン大学ロボット研究所 所長. 1993年− カーネギーメロン大学U. A. and Helen Whitaker 記念教授. 2001年− 独立法人産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究ラボ,ラボ長(兼任).
 

[講演概要]
計算機に「目」−画像を通じて外界を認識する機能― を持たせようという計算機視覚の研究は,1960年代に始まった人工知能研究において最も初期の時代から試みられた問題であり,夢であった.しかし,初期の時代から試みられた簡単な記号的知識と探索による方法で解けるほどやさしい問題ではなかった.以来,計算機視覚の研究は,ヒューリスティックな方法から数理物理的な方法,静的な観察から動的なセンシングによる方法,モデルにもとづく方法からサンプルにもとづく統計的方法などさまざまなアプローチによって,大きな変遷をとげ,とくにこの数年の飛躍的進歩によって新しい応用が開けてきた.
この講演では,これらの研究の面白さと有効性を自身の経験と考えの変遷をもとに振り返るとともに,今後は計算機視覚を巨大な探索問題としてみることで一層の進歩を得られるのではないかという視点を述べたい.

 

パネル討論:『素人発想,玄人実行』金出教授と若手研究者の本音とーく

9月8日(水)15:00-17:00[メイン会場(恵道館2F KD-201)]

 
 

[討論概要]
FIT業績賞の受賞者,金出武雄教授が日本の研究者のために書き下ろした『素人のように考え,玄人として実行する:問題解決のメタ知識』(PHP研究所)は,研究アイデアの発想法,講演・論文発表術からプロポーザルの書き方,英会話上達法までが語られている話題の書です.この本を題材に,新進気鋭の若手研究者たちが金出教授と本音で語り合うパネルを企画いたしました.フロアからの参加も大歓迎です.本を読んで感じた疑問をぶつけてみるもよし,本には書けなかった裏話を引き出してみるもよし,本は読まずにエッセンスだけ知りたいという「虫のいい考え」もありです.金出教授の実体験に基づく楽しいエピソードとウィットに富んだ警句の行間に触れる絶好の機会です.

   

特別ゲスト:金出 武雄(カーネギーメロン大)
写真および略歴は「特別講演:計算機視覚の研究 −その仕組みと今後−」のページを参照.

 

司   会:田村 秀行(立命館大)
1970年京大・工・電気卒.電子技術総合研究所を経て,86年キヤノン入社.情報メディア研究所長等を歴任.97年1月より01年3月までMRシステム研究所取締役(のち専務取締役)を兼務し,「複合現実感研究プロジェクト」を率いた.画像情報処理,マルチメディア,複合現実感等の研究推進と実用化に従事.03年4月立命館大学理工学部教授.04年4月同情報理工学部に移籍.工学博士.電子情報通信学会フェロー.

 

パネリスト:加賀美 聡 (産総研)
1997年3月,東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了.博士(工学).同年より,JSPS 未来開拓学術研究推進事業「マイクロ・ソフトメカトロニクス統合体としての高度生体機能機械の研究」により東京大学リサーチアソシエート.2001年4月,(独)産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究ラボが金出CMU教授をラボ長として発足するのに伴い入所.主任研究員. 2003年4月,改組によりデジタルヒューマン研究センター・ヒューマノイドインタラクションチームの研究チーム長.日本ロボット学会研究奨励賞(1997年),日本ロボット学会論文賞(1998年),IEEE ICHR Best Paper Award(2000年)など.

 

パネリスト:芦ヶ原隆之(ソニー)
1988早大・理工・応物卒.1990同大大学院修士課程了.同年ソニー(株)入社.1994-1996カーネギーメロン大学ロボット工学研究所客員研究員.現在,ソニー(株)情報技術研究所シニアリサーチャー.ロボットビジョン,3次元画像計測,ヒューマン・マシン・インタラクション等の研究に従事.

 

パネリスト:佐藤いまり(東大)
1994 慶応義塾大学・総合政策学部卒,2002 東京大学大学院・学際情報学府修士課程修了.同大学院博士課程に在学中.日本学術振興会特別研究員.1992.8-1993.8 Carnegie Mellon University (CMU),Center for Machine Translation, Research Assistant,1994-1996 CMU,The Robotics Institute,Visiting Scholar.1997より東京大学生産技術研究所にてコンピュータビジョン,コンピュータグラフィックスに関する研究に従事.

 

パネリスト:日浦 慎作(阪大)
1972年生.1993年大阪大学基礎工学部制御工学科飛び級中退,1997年同大大学院博士 課程短期修了.同年京都大学リサーチアソシエイト,1999年大阪大学大学院基礎工学 研究科助手,2003年同助教授.三次元動画像計測・処理とそのVR・コミュニケーシ ョン応用の研究に従事.1993年電気関係学会関西支部連合大会奨励賞,2000年画像セ ンシングシンポジウム優秀論文賞受賞.電子情報通信学会,情報処理学会,日本バー チャルリアリティ学会各会員.博士(工学).

 

JABEE:情報および情報関連分野における最低水準とは?

9月7日(火)9:30-12:00[メイン会場(恵道館2F KD-201)]

 
 

[全体概要]
JABEE(日本技術者教育認定機構)による教育プログラムの認定審査では,社会の要求する水準に関する議論を教育機関と審査チームが協力して行うことが期待されている.情報処理学会アクレディテーション委員会は,そのための第一歩として同学会 コンピュータサイエンス教育小委員会に依頼して,JABEE情報および情報関連分野における分野別要件で修得すべき知識・能力として挙げている項目をより具体化したキーワードを検討して頂いた.また,これに対するSEおよびIS領域での議論,電子情報通信学会 認定企画実施委員会,情報処理学会アクレディテーション委員会での議論を紹介するとともに,シンポジウム参加者との討論を通じて,情報および情報関連分野における最低水準に関する共通認識を深めることをシンポジウムの目的とする.

 
●講演1:趣旨説明[9:30- 9:35]
 

牛島 和夫(九州産業大)
1961年東京大学工学部卒.1977年九州大学工学部教授.2001年九州大学名誉教授.
同年,財団法人九州システム情報技術研究所長.2002年4月九州産業大学情報科学部教授・学部長.
情報処理学会理事,監事,九州支部長を歴任.2003年情報処理学会名誉会員.
現在情報処理学会アクレディテーション委員会委員長.

 
●講演2:キーワード案の説明[9:35- 10:00]
 

疋田 輝雄(明大)
明治大学理工学部情報科学科教授.
2003年より情報処理学会コンピュータサイエンス教育委員会委員長.大学評価・学位授与機構専門委員.
専門分野はプログラミング言語,ネットワークプログラミング.
朝倉書店「情報科学こんせぷつ」シリーズ編集.

 
●講演3:IS領域からの意見[10:00- 10:15]
 

神沼 靖子(埼玉大)
東京理科大学理学部卒業(1961).
日本鋼管,横浜国大,埼玉大,帝京技科大を経て,前橋工科大学教授を2003年3月定年退職.現在は埼玉大学大学院文化科学研究科博士課程ほかの非常勤講師.
現在,情報処理学会のアクレディテーション委員会IS分科会委員長,情報処理教育委員会委員,生涯教育委員会委員など.専門分野:情報システム学.学術博士.情報処理学会フェロー.

 
●講演4:SE領域からの意見[10:15- 10:30]
 

富樫  敦(宮城大)
1984年東北大学大学院工学研究科博士課程修了.東北大学電気通信研究所助手,助教授,静岡大学情報学部助教授,教授を経て,現在宮城大学事業構想学部教授.工学博士.プログラム理論や分散システム基礎論などの計算機科学分野について興味を持つ.情報処理学会情報処理教育委員,アクレディテーション委員,資格制度委員,分野別審査会委員などの委員を務める.静岡大学情報学部計算機科学コース認定試行(2001年度),受審(2002年度)プログラム責任者.情報処理学会,電子情報通信学会,日本ソフトウェア科学会,人工知能学会,ACM, IEEE各会員.

 
●講演5:電子情報通信学会からの意見[10:30- 10:45]
 

牧野 光則(中大)
1987早稲田大・理工・電子通信卒.1992早稲田大院修了,博士(工学).1991〜1992早稲田大・助手,1992〜現在中央大勤務.現在中央大学理工学部情報工学科教授.2003〜2004イリノイ大学シカゴ校訪問研究員.コンピュータグラフィックス,非線形システム解析に関する研究に従事.電子情報通信学会回路とシステム研究専門委員会幹事,基礎・境界ソサイエティ会計幹事・庶務幹事などを歴任.現在,電子情報通信学会認定企画委員会幹事,日本技術者教育認定機構(JABEE)基準委員.

 
●講演6:アクレディテーション委員会からの意見[10:45- 11:00]
 

掛下 哲郎(佐賀大)
昭和59年 九州大学情報工学科卒業.平成元年 同博士後期課程修了.工学博士.現在,佐賀大学知能情報システム学科助教授.平成13年度より学科のJABEE WG座長として教育システムの構築を進め,同学科の教育プログラムは平成15年度にJABEEによる認定を受けた.平成16年度より情報処理学会アクレディテーション委員会 幹事.JABEE基準委員.データベースおよびソフトウエア工学を専門とする.情報処理学会,電子情報通信学会等会員.

 
●総合討論:JABEE:情報および情報関連分野における最低水準とは?[11:00- 12:00]
   

司   会:牛島 和夫(九州産業大)
写真および略歴は「講演1:趣旨説明」のページを参照.

   

パネリスト:疋田 輝雄(明大)
写真および略歴は「講演2:キーワード案の説明」のページを参照.

   

パネリスト:神沼 靖子(埼玉大)
写真および略歴は「講演3:IS領域からの意見」のページを参照.

   

パネリスト:富樫  敦(宮城大)
写真および略歴は「講演4:SE領域からの意見」のページを参照.

   

パネリスト:牧野 光則(中大)
写真および略歴は「講演5:電子情報通信学会からの意見」のページを参照.

   

パネリスト:掛下 哲郎(佐賀大)
写真および略歴は「講演6:アクレディテーション委員会からの意見」のページを参照.

 

プレミアワークショップ:ユビキタス・モバイルネットワークとセキュリティ

9月7日(火)12:30-17:45[メイン会場(恵道館2F KD-201)]

 
 

[全体概要]
近年,携帯電話,カーナビといった機器が「コンピュータ」となり,オフィス機器,家電,車がコンピュータで制御されるようになり,日常生活において意識されずにコンピュータが利用される時代となってきた.さらに,店舗や道路等多くの場所に様々な目的のセンサが遍在しており,これらが取得したマルチメディア情報を分散環境上でネットワーク技術を用いて有機的に結合し,協調した動作を考えることは,今後の情報技術の発展を考える上で非常に重要であると考えられる.一方,コンピュータやネットワークの安全性に関する情報が新聞などを賑わさない日はないといっても過言ではない.本ワークショップでは,今後のネットワーク技術の発展を考えるに当たり,これらユビキタス・モバイルネットワークにおける情報通信技術とセキュリティ技術に関連する,電子情報通信学会と情報処理学会の中の7研究会の代表発表とパネルを中心に,ユビキタス・モバイルネットワークとセキュリティについて議論する.
司会進行:東野輝夫(阪大) ,高橋 修(はこだて未来大)
主催:電子情報通信学会 オフィスインフォメーションシステム研究会(OIS),情報処理学会 マルチメディア通信と分散処理研究会(DPS),グループウェアとネットワークサービス研究会(GN),モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会(MBL),コンピュータセキュリティ研究会(CSEC),高度交通システム研究会(ITS),ユビキタスコンピューティングシステム研究会(UBI)

 
●講演1:Security Protocols for Wireless Communication[12:30- 13:20]
   

海外研究者講演予定

 
●講演2:時・空間依存オブジェクト同期とアプリケーション[13:30- 13:55]
 

齋藤 正史(阪大)
1983年東京工業大学情報工学科卒業.同年三菱電機(株)入社.
1992年コーネル大学コンピュータサイエンス学科修士課程修了.
2003年大阪大学情報科学研究科博士課程入学.
オペレーティングシステム,インターネット,分散システム,ITSの研究開発に従事.

 
●講演3: ユビキタス・モバイル技術と協調学習環境[13:55- 14:20]
 

緒方 広明 (徳島大)
1992年徳島大学工学部知能情報工学科卒.1994年同大学院博士前期課程修了.同年,同博士後期課程進学.
1995年同課程退学.同年同大学助手.現在同助教授.博士(工学).2001〜2003年米国コロラド大学ボルダー校L3D研究所客員研究員.CSCW,CSCL,特に社会ネットワーキングの支援やKnowledge Awarenessの研究に従事.教育システム情報学会論文賞,WebNet99 Top Paper Award受賞.ACM,IEEEなど8学会会員.

 

[講演概要]
本発表では,ユビキタスコンピューティング環境において,学習者一人一人にあった形で日常的な学びを支援するユビキタス学習環境を提案する.特に,学習者中心の学習環境として,いつでもどこでも利用できる学習環境ATAPL (Any Time and Any Place Learning) を提供するだけでなく,適切な場所で適切な時に適切な情報を提供する学習支援環境RTRPL (Right Time and Right Place Learning) を目指す.また,ユビキタス学習環境の学習ドメインの一つとして語学学習をとりあげる.言語学習は,教室内での授業や辞書を用いた学習だけでなく,日常生活を送る中で獲得される部分も大きいとされている.そこで本稿では,そのプロトタイプシステムとして,PDAを用いたユビキタス語学学習支援環境,CLUEについて述べる.

 
●講演4: リモートオフィス環境構築とセキュリティ
 −個人認証,VPN,脆弱性検査,そして被害予測−
[14:20- 14:45]
 

森井 昌克(徳島大)
1958年大阪生.1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了,工学博士.同年,京都工芸繊維大学工芸学部助手.愛媛大学工学部講師,助教授を経て,1996年徳島大学工学部教授.電子情報通信学会オフィスインフォメーションシステム研究専門委員会委員長,同情報セキュリティ専門委員会副委員長,情報理論とその応用学会評議員.インターネット,ネットワークセキュリティ,符号理論,情報理論等の研究,教育に従事.
平成6年および9年電気通信普及財団賞,平成15年暗号と情報セキュリティシンポジウム20周年記念論文賞受賞.

 

[講演概要]
「サテライトオフィス」という言葉が「ホームオフィス」から「ユビキタス」という環境に取って代わり,いつでもどこでも誰とでもオフィスワークが可能な環境を与えようとしている.距離を克服するリモートオフィスにおいて,通信環境が比較的満たされようとしている現在,最大の課題がセキュリティの問題である.我々はリモートオフィスでのセキュリティを確保するために,「認証技術」,「通信路暗号化技術」および「不正アクセス対策技術」のそれぞれについて研究・開発を行い,いくつかの方式を提案し,評価している.また,それらを利用することによって,リモートオフィスでの総合的セキュリティシステムの構築を行ってきた.本講演では,クライアント側のVPNクライアントモジュールをサーバ側から遠隔制御し,サーバ側のファイアウォールと連携することで,アクセス制御の集中管理が容易にできる新しいVPN方式を中心に,VPNと認証方式との連携,さらにサーバおよびクライアント脆弱性検査,不正アクセスに対する被害予測システムについて述べる.

 
●講演5:データマイニングと個人情報保護[14:55- 15:20]
 

菊池 浩明(東海大)
1988 明治大学工学部電子通信工学科卒.1990 同大学博士前期課程修了.1990 富士通研究所勤務.1994 東海大学工学部電気工学科助手.1995 同専任講師.1999 同助教授.1997 カーネギーメロン大学計算機科学科訪問研究員.2000 電子情報学部情報メディア学科助教授.博士(工学).
WIDEプロジェクト,暗号メールシステムFJPEMの開発, 認証実用化実験協議会 (ICAT),広域認証技術タスクフォース, IPA独創情報技術育成事業「インターネットにおける プライバシ技術構築と適用に関する研究開発」などに従事. ファジィ論理,多値論理,機械学習,ソフトコンピューティング などに興味を持つ.1990 日本ファジィ学会奨励賞,1993 情報処理学会奨励賞,1996 SCIS論文賞.情報処理学会,電子情報通信学会,日本ファジィ学会,IEEE各会員.

 
●講演6:交通情報のデフォルメ地図へのマッピング方式とモバイル交通情報提供システムの適用[15:20- 15:45]
 

丸山貴志子(日立)
昭和63年お茶の水女子大学大学院・理学研究科・物理学専攻修士課程修了,平成4年総合研究大学院大学・数物科学研究科・統計科学専攻博士課程修了.博士(学術).同年(株)日立製作所入所.以来,中央研究所にて,空間情報システムの研究に従事.現在,同研究所・主任研究員.

 
●講演7: cogma:ユビキタス情報環境を構築する基盤ソフトウェア[15:45- 16:10]
 

河口 信夫(名大)
1990年名古屋大学工学部電気系学科卒,1995年同大学工学研究科博士課程情報工学専攻了.同大学助手,講師を経て,2002年より名古屋大学情報連携基盤センター助教授(情報科学研究科併任).モバイルコミュニケーション,マルチモーダルインタフェースの研究に従事.最近では,ユビキタス環境を構築する基盤ソフトウェアの研究開発を進める.2004年に研究成果活用兼業にてベンチャー企業を設立し,研究成果の社会還元を目指している.電子情報通信学会,情報処理学会,日本ソフトウェア科学会,人工知能学会,日本音響学会,IEEE,ACM 各会員.

 
●講演8: ユビキタス技術を用いた新たなサービス
〜Advanced-インストアマーケティングの可能性〜
[16:10- 16:35]
 

小磯 貴史(東芝)
1972年生.1995年阪大・基工・制御工卒.1997年阪大院・基工・システム科学分野修士了.2000年阪大院・基工・システム人間系専攻博士了.同年東芝入社,研究開発センターシステム技術ラボラトリに配属,現在に至る.
主にHDDキャッシュアルゴリズムの分析評価,群集ナビゲーションの研究に従事.最近は,特に顧客属性や,場のレイアウトによる顧客行動の変化をシミュレートする技術に興味を持つ.工博(阪大).趣味はスポーツ観戦等.

 
●パネル討論:ユビキタス・モバイルネットワークとプライバシー保護[16:45- 17:45]
 

[討論概要]
電子タグをはじめとする新たな技術は,ユビキタス社会の整備発展には欠くことができないものであるがゆえにその開発から実装に向けた取組が急ピッチで進められている.反面,個体識別技術の発達が個人のプライバシー保護との関係で大きな問題を生じさせる可能性も懸念されている.プライバシー保護の問題は,ユビキタス社会の発展のために解決しなければならない重要な問題であると認識されつつある一方で,「プライバシー」という概念が,各個人の主観性に大きく影響される抽象的な概念であるがゆえに,それに対する配慮から最後の一歩が踏み出せないことも多い.
情報化社会とは限りなくプライバシーが「保護されない」社会であるが,「まったく保護されない」社会にならないために,本報告では,来年4月1日に施行される個人情報保護法も踏まえて,「プライバシー」と「個人情報」の保護の問題を整理し,新たな技術開発と個人の権利利益保護の調和点を探る.

 

司   会:佐々木良一(電機大)
昭和46年3月東京大学卒業.同年4月日立製作所入所.システム開発研究所にてシステム高信頼化技術,セキュリティ技術,ネットワーク管理システム等の研究開発に従事.同研究所第4部長,セキュリティシステム研究センタ長,主管研究長等を経て平成13年4月より東京電機大学工学部教授.工学博士(東京大学).昭和58年電気学会論文賞受賞.平成10年電気学会著作賞受賞.平成14年情報処理学会論文賞受賞.著書に,「インターネットセキュリティ」オーム社1996年,「インターネットセキュリティ入門」岩波新書1999年,「情報セキュリティ事典」(代表編)共立出版2003年,等.IEEE,情報処理学会,電子情報通信学会等の会員.情報処理学会理事,フェロー.情報処理学会コンピュータセキュリティ研究会顧問.日本セキュリティ・マネージメント学会常務理事,IFIP,TC11日本代表.

   

パネリスト:河口 信夫(名大)
写真および略歴は「講演7: cogma: ユビキタス情報環境を構築する基盤ソフトウェア」のページを参照.

 

パネリスト:新保 史生(筑波大)
筑波大学 図書館情報メディア研究科 助教授.博士(法学).
専門:憲法,情報法.所属学会:情報ネットワーク法学会,法とコンピュータ学会,情報通信学会,情報メディア学会.主要著書:『電子ネットワークと個人情報保護』(経済産業調査会 2002:共著),『プライバシーの権利の生成と展開』(成文堂 2000:単著).(財)日本情報処理開発協会情報セキュリティ対策室研究員を経て,2002年より現職.

   

パネリスト:菊池 浩明(東海大)
写真および略歴は「講演5:データマイニングと個人情報保護」のページを参照.

 

SPAM 対策技術の最前線−インターネット技術スペシャルセッション−

9月7日(火)9:00-12:00[第1サブメイン会場(恵道館3F KD-301)]

 
 

[全体概要]
今や,電子メールは,研究やビジネスだけでなく,一般の社会生活におけるコミュニケーションツールとして広く浸透し,必要不可欠な存在となっている.しかし一方で,スパムと呼ばれる迷惑メール(UCE/UBE)も大量に行き交う状況にあり,ウィルスやワームにより送信元の電子メールアドレスが詐称されるケースも多くなってきた.これは,日本国内だけに限った問題ではなく,世界的にも認識されている問題である.そこで,本企画では,IAjapan/INTAP と連携して,電子メール配送に関わる問題への対策技術に関して IETF や IRTF での検討状況を中心とした最新動向を紹介すると共に,今後の技術展望について議論するパネルディスカッションを実施する.

 
●講演:SPAM対策の技術と標準化動向[9:00- 10:00]
 

中村 素典(京大)
1994年京都大学大学院工学研究科博士後期課程単位取得退学.立命館大学理工学部助手,京都大学経済学部助教授,京都大学総合情報メディアセンター助教授を経て,2002年より京都大学学術情報メディアセンター助教授,現在に至る.博士(工学).情報処理学会,日本ソフトウェア科学会各会員.コンピュータネットワーク,遠隔講義などの研究に従事.

 

[講演概要]
インターネットが商用利用に開放されて以来,電子メールはビジネスに必要不可欠なものとなり,一般社会においても日常のコミュニケーションのために広く利用されるようになってきた.しかし,電子メールユーザの裾野の広がりとともに,電子メールを媒介としたウィルスやワームが出現・急増し,スパムと呼ばれる受信希望をした覚えがない宣伝メールも急激に増加の一途をたどっている.このままでは,電子メールの利便性が損なわれていくという危惧から,世界的にも様々な形で対策が検討されている.
本講演では,IETF や IRTF における検討を中心とした各種対策技術に関する最新動向に関して紹介する.

 
●パネル討論:SPAM対策技術の現状と今後[10:00- 12:00]
 

司   会:安東 孝二(東大)
1991年,東京大学工学部原子力工学科卒業.
1996年,東京大学大学院工学系研究科システム量子工学満期退学.
同年より東京大学教育用計算機センター助手を経て1999年より東京大学情報基盤センター助手を務める.

 

パネリスト:伊藤 孝史 (NTTドコモ)
平5豊橋技科大・情報卒.平7同大学修士課程修了.
同年NTT移動通信網株式会社(現NTTドコモ)入社.
無線局の保守業務を経て,平12年よりimodeセンタのサービスの開発の従事.

 

パネリスト:加藤 佳美(松下電器)
1988年 東京大学電子工学科卒業 松下通信工業株式会社入社
1990年 パソコン通信(SiLK-NET)立ち上げに従事
1997年 ISP(hi-ho)立ち上げに従事
以降,hi-hoのサーバシステム全般を統括するとともに電子メールの健全な普及に尽力中.

 

パネリスト:近藤  学(IIJ)
1990 年 徳島大学工学部精密機械工学科卒業,旭化成情報システム株式会社入社.プラントにおけるエキスパートシステムの開発等に従事.1998 年 株式会社インターネットイニシアティブ入社.以来,主にメールサービスの企画・開発を担当.MAAWG(Messaging AntiAbuse Working Group)メンバー.

 

パネリスト:瀧田佐登子(Mozilla Japan)
日電東芝情報システム,富士ゼロックス情報システム,東芝等を経て,1996年 Netscape Communications入社.I18N,L10Nのエンジニアとして製品の開発及びプロモーション担当.2001年 US AOL/Netscapeプロダクトマネージャとして日本の金融関連サポート及びNetscape 7.0のプロモーション業務担当.2003年 オレンジソフトとコンサルタント契約.携帯電話用POP/SMTPメーラー(BREWアプリ)の開発プロジェクトマネージャ.
2004年 Mozillaの技術,関連技術の普及啓蒙を目的としてMozilla Japan設立.理事.

 

パネリスト:中島 昭浩 (KDDI)
1988年2月に旧DDI入社,2003年10月,ソリューション商品開発部商品開発3部長に就任.
2004年4月,モバイルソリューション商品開発本部商品開発部長に就任.
1996年DION,97年EZwebのネットワーク構築,サービスブラットホーム開発の技術PMに従事,2000年BREWプラットホーム開発のPM従事,現在に至る.

   

パネリスト:中村 素典(京大)
写真および略歴は「講演1:SPAM対策の技術と標準化動向」のページを参照.

 

ソフトウェアと,日本の社会〜特徴を強みに変えていくには〜

9月7日(火)13:00-16:30[第1サブメイン会場(恵道館3F KD-301)]

 
●あいさつ[13:00- 13:05]
   

SWIM研究会

 
●講演1:ソフトウェアと日本の社会〜特徴を強みに変えてゆくには〜[13:05- 13:25]
 

松本 正雄(九州産業大)
九州産業大学情報科学部教授.近年の研究テーマはIT革新と経営改革の共進化についてである.具体的には企業連携や行政組織などを結んだ『組織横断価値連鎖Interpriseのモデル化』や『ソフトウェア技術の国際競争力の向上』である.従前,IEEE-CS,情報処理学会,日本科学技術連盟,国際連合ニューヨーク本部においてソフトウェア工学や品質管理の研究を遂行した.関連論文150件以上発表.'95年デ賞品質管理文献賞,'03年e-Society国際学会優秀論文賞をそれぞれ受賞.NEC,ドルトムント大学,筑波大学大学院社会工学系教授を経て現職.工学博士.

 

[講演概要]
本問題を経営論または技術論のいずれかの視点だけから論ずるのでは,問題の本質を抉り出し核心に迫ってゆくことにならない.本問題は両者の関係上に存在しているものなので,技術経営論の視点から捉えてはじめて意義ある議論になる.今まで行われた研究の多くは,技術論か経営論のいずれかに偏っている.本問題の本質は投資効果でみた国際競争力の低さであり,その問題の因って来る根源は次の3点である:(1)人月ベースのビジネスモデルに準拠した産業特質を払拭できない状況が続いている.(2)加えるにソフトウェアに関連した科学や工学はそれを駆使することの経済的価値を実務家の納得する程度に説明できないほど脆弱なままである.(3)あまつさえ実業界が渇望する例えば情報システム学といった基盤技術を学会はいまだに満足に提供できていない.本問題の解決策は(1)目標指向のチームワークビジネスモデル,(2)周到な配慮力にものをいわせた製品開発やプロジェクト管理,(3)日本人社会が持つ優れたイノベーション能力の発揮,を機軸としたソフトウェアの国際展開ビジネスに徹することである.

 
●講演2:実証的ソフトウェア工学への取り組み[13:25- 13:45]
 

松本 健一(奈良先端大)
昭和60年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.平成元年同大学大学院博士課程中退.
同年同大学基礎工学部情報工学科助手.平成5年奈良先端科学技術大学院大学助教授.
平成13年同大学教授.工学博士.エンピリカルソフトウェア工学,特に,プロジェクトデータ収集/利用支援の研究に従事.電子情報通信学会,情報処理学会,IEEE,ACM各会員.

 

[講演概要]
システム構築の遅延や予算オーバーの問題に悩まされていないSI会社やソフト会社は皆無だと言っても過言ではない.顧客の要求が明確でない,カットオーバーまでの期日が短い,人材育成が追いつかない,等の問題がボディブローのようにシステム構築に大きな影響を与えている.エンドユーザにとっても,システム構築の失敗が経営を直撃する点では同じである.ソフトウェアの信頼性や生産性の研究は,ソフトウェア工学と呼ばれる分野において行われてきたが,その多くは,方法論やツールを個別に提示してきたに過ぎない.こうした状況を打破すべく,ソフトウェア開発に関するプロセスやプロダクトのデータを収集,分析し,信頼性や生産性の改善に役立てようという実証的ソフトウェア工学の研究や実践が盛んになってきている.本パネルでは,実証的ソフトウェア工学の意味や動向を紹介すると共に,日本のソフトウェア産業を強くする一助となりうるか議論したい.

 
●講演3:ソフトウェアと日本の社会〜特徴を強みに変えてゆくには〜[13:45- 14:05]
 

淺田 隆治(ウッドランド)
昭和14年3月28日生まれ.昭和39年3月京都大学文学部卒業.昭和39年4月神戸市立中学校教員.昭和50年公認会計士試験合格.昭和51年2月当社監査役.平成元年3月当社専務取締役.平成9年6月当社代表取締役社長.
平成15年4月当社代表取締役会長(現任).平成16年6月社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会会長(現任).

 

[講演概要]
■日本のソフトウェアビジネスの弱さ→マーケティングに原因
 組み込み型,ゲームを除いて,国際競争力がない.
 特に,言葉や習慣の制約を受けない抽象的なレベルのソフトに問題あり.
 しかし,技術的敗北ではなく,マーケティングの敗北である.
■ソフトビジネスの難しさ
 技術情報の濃密な共有の必要性と対象の巨大性への対応の両立.
 「ソフト企業は1人でもできるが,生き残るソフトは世界で唯一つ」.
 激しい競争の存在――マーケティングの重要性.
■高度なマーケティング活動を持続する組織
 日本的小集団主義から従属関係を排除すること.
 シリコンバレーのクラスターモデル・・・1つの解.
 新しい胎動・・・ベンチャーキャピタル,NPO,業界団体等々,仲介組織の登場.
 成功の鍵・・・人材の育成と持続的な需要の存在.

 
●講演4:ソフトウェアと日本の社会〜特徴を強みに変えてゆくには〜[14:05- 14:25]
 

築地 達郎(京都経済新聞/報道ネットワーク)
1960年生まれ.83年京大工学部卒,日本経済新聞社入社.95年独立.97年(株)報道ネットワークと京都経済新聞社を設立し,代表取締役就任.公職は国際大学GLOCOMフェロー(95年〜),龍谷大学助教授(2005年より予定)など.著書に「ビル・ゲイツが大統領になる日」「CALSからECへ--産業を変える電子商取引」(以上単著)「日本のジャーナリズムとは何か」(共著)など.『知恵蔵』ロボット項を執筆担当.

 

[講演概要]
ソフトウエア市場は,ビジネスや生活においてコンピューターがどのように活用されるかによって規定される.これまでは米国での活用方法が常に先導的であったため,世界のソフト産業は米国市場を志向してきた.
それに対して,日本では家電組み込みコンピューターの分野で圧倒的な優位を保ち,TRONをはじめとするソフト分野を創出してきた.また,ブロードバンドの事実上全戸普及をいち早く達成した韓国では,個人間通信などでソフトウエア需要を生み出している.
次なる問題は,向こう3年ないし5年程度の将来にわたって,ビジネスや生活がどのように変化し,コンピューターの用途開発がどのように展開するかである.
本講演では,テロが横行する社会情勢や東アジア諸国における急激な少子高齢化などがもたらす社会的インパクトと,それに伴うビジネス展開を展望し,それに基づいてコンピューター用途の展開を考える.

 
●講演5:ソフトウェアと日本の社会〜特徴を強みに変えてゆくには〜[14:25- 14:45]
 

末松 千尋(京大)
京都大学大学院経済学研究科助教授(専門:事業創成,ITビジネス,IT戦略).79年東京工業大学卒業.84年スタンフォード大学大学院経営工学科修了.85年より,マッキンゼー・アンド・カンパニー.88年より独立,国内外の大手企業からベンチャーまで,ITをキーワードにした全社組織変革・戦略構築コンサルティング活動に従事.95-2000年慶應義塾大学ビジネススクール講師を兼任.2001年より現職.

 

[講演概要]
日本のソフトウェア産業を考える上で,市場規模の大きいと考えられる「業務系ソフト」と「組込みソフト」の二つの領域について議論したい.企業業務で使用される業務系ソフトについては,ほとんど壊滅的状況にあるのは明らかであるが,それはオブジェクト化やアウトソーシングなど外部化の進展により,改善の可能性はないといって過言ではない.特に,日本型経営とITが排他的であることが,ソフトウェアを含む,あらゆるIT産業の衰退の元凶となっている.一方,組込みソフトの領域は,日本企業が以前,競争力を有している産業を網羅している.家電,ディジタル家電,ゲーム,携帯,ロボット,機器制御,自動車(ナビゲーション,通信,アメニティ,駆動制御),時計などである.従来,これらは縦割りの非効率な開発がなされてきたが,特にLINUXの台頭により,抜本的な生産性向上が期待され,それが製品力向上につなげる可能性を模索したい.

 
●パネル討論:ソフトウェアと日本の社会〜特徴を強みに変えてゆくには〜[14:45- 16:30]
 

[討論概要]
日本のソフトウェアおよびその関連産業(以下「ソフトウェア産業」)は現在,IT化/ブロードバンド化/ユビキタス化の広がりに伴い,その先行きが注目されている.しかし一方,米国/アジア各国におけるソフトウェア産業の著しい伸長は,日本の現状および先行きに対する再評価を促している.そこで,日本の社会/風土等を踏まえ,日本ならではのソフトウェア産業の特徴を明らかにしながら,プレゼンテーション/パネルディスカッションを通じて,以下想定される論点を中心に議論を深めたい;
 ・日本のソフトウェア産業に関する現状認識(特徴/強み/弱み)
 ・日本のソフトウェア産業に関する今後の展望,ならびに強みを発揮できる分野(業務用ソフト/組込ソフトetc.)
 ・今後の展望におけるキーポイント(ハードウェア/通信サービスの動向,政官界の動向,技術的に解決すべきハードルetc.)
 ・学界がソフトウェア産業に対して,サポートすべきこと

 

司   会:岩田 祐一(NICT)
1971年生まれ.東京大学経済学部卒業,筑波大学経営・政策科学研究科修了.1995年日本電信電話(株)入社,山梨支店,国際本部,NTTコミュニケーションズ(株)財務部を経て現在,(株)情報通信総合研究所経営研究グループリサーチャー.情報・通信ビジネス全般の経営・財務戦略調査分析を中心とした活動を行う.「米国ITビジネス企業の収益性サーベイ」(松本正雄と共著)で,第18回テレコム社会科学学生賞を受賞.

   

パネリスト:淺田 隆治(ウッドランド)
写真および略歴は「講演3:ソフトウェアと日本の社会〜特徴を強みに変えてゆくには〜」のページを参照.

   

パネリスト:末松 千尋(京大)
写真および略歴は「講演5:ソフトウェアと日本の社会〜特徴を強みに変えてゆくには〜」のページを参照.

   

パネリスト:築地 達郎(京都経済新聞/報道ネットワーク)
写真および略歴は「講演4:ソフトウェアと日本の社会〜特徴を強みに変えてゆくには〜」のページを参照.

   

パネリスト:松本 健一(奈良先端大)
写真および略歴は「講演2:実証的ソフトウェア工学への取り組み」のページを参照.

   

パネリスト:松本 正雄(九州産業大)
写真および略歴は「講演1:ソフトウェアと日本の社会〜特徴を強みに変えてゆくには〜」のページを参照.

 

ここに注意しよう日本人の英語の発音

9月8日(水)10:30-12:00[第1サブメイン会場(恵道館3F KD-301)]

 
  金谷 健一(岡山大)
1972年東京大学工学部計数工学科(数理工学)卒業.1979年同大学院博士課程修了.工学博士.群馬大学工学部情報工学科教授を経て,現在岡山大学工学部情報工学科教授.この間米国Maryland大学,デンマークCopenhagen大学,英国Oxford大学,フランスINRIA研究所客員研究員.昭和61 年度情報処理学会論文賞,平成11年電気通信普及財団賞.平成14年1月IEEEフェロー.コンピュータビジョンの統計的信頼性および最適化の数理解析に従事.
 

[講演概要]
先端技術は世界に発信して初めて意味があるが,日本人の国際会議における英語による口頭発表がまずいために国際的に評価されないことがしばしば起こる.そこでこの講演では日本人が間違えやすい発音やアクセントを実例を通して指摘し,なぜ日本人英語になるのか,どうすればネイティブ風に発音できるのかの要領を示す.

 

パネル討論:『淘汰の時代』の産業界が求める大学の教育・研究レベル
〜IT(情報・通信)分野の大学評価結果発表〜

9月8日(水)15:00-17:30[第1サブメイン会場(恵道館3F KD-301)]

 
 

[討論概要]
21世紀COEプログラムや大学評価機構による評価など,大学の研究や教育はかつてない厳しい評価にさらされている.大学の活動は,新産業の創出や人材の育成を通した産業界の活性化に不可欠であると同時に,学問研究そのものが産業界に役立つ成果を出すことも求められる.一方で,現状の大学の教育内容が,産業界の求めるものと必ずしも一致しないことも指摘されている.
経済産業省は,2003年度情報通信(IT)分野に絞り,情報通信系の産業界で求められる人材像毎に大学の取組みや成果を評価する指標を作成した.その指標を基に,情報処理学会・電子情報通信学会を軸とした研究者が所属する全国約1400の情報通信系の学科・専攻長にアンケートを送り,大学の人材養成機能を中心に,各大学の研究・教育活動を評価するための本格的調査を実施した.
本パネルは,この評価の方法論やアンケートによる評価結果に基づき,大学と産業界の距離感の現状を提示し,産業界が大学に求める人材養成教育とは何か,大学はそれにどのように応えていくべきかを討議することにより,大学と産業界のよりよい関係を築く方向性を探ることを狙いとする.
本パネルでは,今回の「大学評価の目的とその評価結果」を提示した後,「産官学の各立場から問題」を提起し,全体討議を行う.

 

司   会:阪田 史郎(千葉大)
1974年早稲田大学理工学部電子通信修士卒.同年日本電気(株)入社,以来,同社中央研究所にて,コンピュータネットワーク,インターネット,マルチメディア通信,モバイルコンピューティング,ユビキタスシステム等コンピュータと通信の統合領域に関する研究に従事.同社,パーソナルC&C研究所所長,インターネットシステム研究所所長を経て2004年4月より千葉大学大学院教授.工学博士.1997−1999年奈良先端科学技術大学院大学客員教授.2002年情報処理学会フェロー.1997−99年同会理事,2004年−同会監事,2003年−電子情報通信学会理事.著書「マルチメディアとネットワークによるグループウェア実現技術」(SRC),共著「マルチメディアシステム」(昭晃堂),「インターネットとQoS制御」(裳華房),「モバイルコンピューティング」(アスキー出版),「無線LAN」(オーム社),「ユビキタス・ワイヤレス通信」(秀和システム)ほか多数.

   

パネリスト:大学連携推進課長(経済産業省)


 

パネリスト:松嶋  登(都立大)
2000年3月 神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了(修士(経営学))
2002年3月 神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了(博士(経営学))
2002年4月 東京都立大学経済学部講師
2002年10月 組織学会大会委員会幹事
2003年4月 東京都立大学経営大学院(ビジネス・スクール)兼担(現在に至る)
専門分野 :経営組織論,技術管理論,経営情報論.

 

パネリスト:山本 真司(河合塾)
静岡県生れ.1990年学校法人河合塾入塾.高校教員向け雑誌「ガイドライン」編集長に加え,今冬,評価と啓蒙を兼ねた,400人の学者が登場する『わかる!学問 環境・バイオの最前線-大学・研究者ランキング』,1250の学科によるランキング『わかる!学問 理科系の最先端』<共に角川書店刊>を手掛けた.他には,別冊宝島『学問の鉄人-大学教授ランキング<文科系編>』『14才と17才のBOOKガイド』<メディアファクトリー>等.

 

パネリスト:佐藤雄二朗(アルゴ21)
1933年生まれ.東京都出身.
1955年 立教大学経済学部卒業,吉澤会計機株式会社入社
1958年 日本レミントンユニバック株式会社(現日本ユニシス)入社
1984年 株式会社アルゴ21設立,代表取締役社長就任
2001年 社団法人情報サービス産業協会会長就任
2004年 株式会社アルゴ21代表取締役会長兼社長就任

 

パネリスト:本位田真一(国立情報学研)
1978年早稲田大学大学院理工学研究科電気工学専攻修士課程修了.(株)東芝を経て2000年文部科学省国立情報学研究所教授,現在に至る.2001年から東京大学大学院情報理工学系研究科教授を併任,現在に至る.2002年5月〜2003年1月,英国University College of LondonならびにImperial College客員研究員.エージェント技術,オブジェクト指向技術,ソフトウェア工学の研究に従事.IEEE,ACM,日本ソフトウェア科学会,情報処理学会など各会員.工学博士.

  「ソフトウェア研究・教育のあり方と産学融合先端ソフトウェア技術者養成拠点」
以前から企業におけるソフトウェア開発現場と大学におけるソフトウェア教育の乖離が指摘されているが,明確な解決策が得られているわけではない.大学におけるソフトウェア科学の成果を開発現場の有する実問題にいかに適用するかのノウハウの獲得と共有化こそがその解決への道だと確信している.そこで,平成16年度からスタートした文科省科学技術振興調整費における我々の取り組み内容を紹介する.
 

パネリスト:伊東 幸宏(静岡大)
昭和32年生.昭和55年早稲田大学理工学部電子通信学科卒業.昭和62年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.同年,同大学理工学部電子通信学科助手.平成2年静岡大学工学部情報知識工学科助教授.平成8年同大学情報学部情報科学科助教授.現在、静岡大学情報学部副学部長・教授,静岡大学教育研究評議会評議員.工学博士.自然言語処理,対話システム,知的教育システム当に興味をもつ.平成15年度情報処理学会優秀教材賞受賞.

 

リコンフィギャラブル技術は役に立つのか?

9月9日(木)9:00-12:30[第1サブメイン会場(恵道館3F KD-301)]

 
●講演1:最近のリコンフィギャラブル技術の概観[9:00- 9:45]
 

末吉 敏則(熊本大)
1976年九州大学卒業,1978年九州大学大学院修士課程修了,同年九州大学助手.九州大学大学院助教授,九州工業大学助教授を経て,1997年より熊本大学教授.現在,熊本大学工学部数理情報システム工学科コンピュータシステム講座教授.工学博士.現在,電子情報通信学会リコンフィギャラブルシステム研究会委員長,同コンピュータシステム研究会副委員長,FPGAコンソーシアム代表を務める.

 

[講演概要]
再構成可能なデバイスを用いた新しいコンピュータシステムであるリコンフィギャラブルシステムが近年急速に発達し,実用化とともに注目を集めている.リコンフィギャラブルシステムは,対象とするアプリケーションに対して適応的に自らのハードウェア構成を変更することによって自然な形で処理を行い,高い性能と柔軟性を実現するシステムとして期待される.再構成可能な代表的デバイスの一つにFPGAがある.最近のFPGAデバイスは,CPU混載大規模版から民生向け量産品にも使える廉価版まで品揃えが充実してきている.本講演では伸張著しいFPGAデバイスの動向を総括し,新たな潮流を紹介する.また,ARM 組込みプロセッサを搭載したFPGA を利用し,組込みシステム向けのリアルタイムOS を実装・拡張して再構成処理をも含むタスクを適宜切替えることができる動的リコンフィギャラブルシステムの事例を紹介する.

 
●講演2:動的リコンフィギャラブル技術の概観[9:45- 10:15]
 

天野 英晴(慶大)
1986年慶應義塾大学理工学研究科博士課程修了工学博士.
現在,同大学情報工学科教授.
並列計算機アーキテクチャ,相互結合網,リコンフィギャラブルシステムなどの研究に従事.

 

[講演概要]
動的リコンフィギャラブルデバイスは,FPGA/PLDなどの従来のリコンフィギャラブルデバイスの単純な発展形ではなく,SoC(System-on-a-Chip)のハードウェア部あるいはDSP部の代替製品として,より広い分野での応用を狙っている.これらのデバイスの多くは,(1)演算器レベルの粗粒度構成 (2)高速かつ動的な再構成機能(3)Cレベルの設計環境に特徴を持つ.動作中に高速に再構成することにより,必要なタスクを高い面積効率で実行することができ,高い柔軟性と低い開発コストの割りに高い性能を実現することができる.最近登場した代表的なデバイスを紹介し,他のデバイスに対しての特徴,性能,応用事例,問題点について概観する.

 
●講演3:DAP/DNAとその設計環境[10:15- 10:45]
 

佐藤 友美(IPFlex)
1958年生まれ.アイピーフレックス(株)取締役副社長,CTO.1983年茨城大学工学部卒業後日立電線エンジニアリング(株)入社.以後数社を経て2000年アイピーフレックス(株)を設立,現在に至る.
実績:パケット交換型/回線交換型光LANの開発,インテル互換CPUの機能検証方式確立,386/486インテル完全互換マイクロプロセッサ開発,MPEG1ビデオ・デコーダLSI開発,MPEG2ビデオ・エンコーダLSI開発,アプリケーション特化型DSP・VUPU発明・開発.現在DAPDNAを発明・開発・商品化.

 

[講演概要]
FPGAを中心とするリコンフィギャブル技術が,激変する市場要求や即座に固定化し難い標準化作業等と並行する形でのハードウェア実装手段として大きな技術的貢献をしてきたという点は万人の認める所である.特に高級言語記述からLUTへの展開を自動化する論理合成技術やフィッティング技術の進歩は,開発時間やTATの大幅短縮等で開発コスト低減に貢献している.しかしユーザの開発ターゲットやシステムの大規模化につれ開発生産性にも限界が見え始めており,結果的に大規模システムを如何にLSI化して行くかという点で依然課題が多い.半導体の微細化とプロセス技術の進歩は専用LSIやASIC開発に対しより大きなNREを必要としており,リコンフィギャブル技術の優位性を保つ要因となっているが,より効率的な開発手法やデバイスが望まれてもいる.
我が社のDAPDNA技術がどのような開発ソリューションを提供可能でどうアプリケーション開発をサポート可能なのかという視点で,具体的な提案と説明を行ないたい.

 
●講演4:DRPとその設計環境[10:45- 11:15]
 

梶原 信樹(NEC)
昭56山口大・工卒.昭58阪大大学院基礎工修士課程了.昭61同大学院博士課程了.同年日本電気(株)入社.C&Cシステム研究所にて,専用並列マシンの研究開発,再構成可能LSIとそれを用いた汎用アクセラレータの研究開発に従事.現在は同社システムデバイス研究所にて動的再構成プロセッサを搭載したSOCのシステムアーキテクチャの研究を推進.電子情報通信学会,情報処理学会会員.

 

[講演概要]
動的再構成プロセッサDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)のアーキテクチャとその設計環境について紹介する.DRPは複数のデータパス回路を1クロックで切替えることにより,大規模なハードウェアもコンパクトに実装することができる.また,C言語ベースの開発環境によりDRPではソフトウェアライクな応用開発が可能である.このような特徴を備えたDRPを搭載したSOCでは,LSI製造後も機能の追加変更が容易で1つのLSIで多品種への展開が可能になり,またSOCの開発TATの大幅な削減が可能になる等大きなな利点を備えている.DRPとCPUを搭載したSOCではCPUに負荷をかける処理の一部を切り出し,それをDRPで処理することにより全体の処理効率を上げることも可能である.CPUの負荷をDRPで軽減するためのサポートツールに関しても紹介する.

 
●パネル討論:リコンフィギャラブル技術は役に立つのか[11:30- 12:30]
   

司   会:天野 英晴(慶大)
写真および略歴は「講演2:動的リコンフィギャラブル技術の概観」のページを参照.

   

パネリスト:末吉 敏則(熊本大)
写真および略歴は「講演1:最近のリコンフィギャラブル技術の概観」のページを参照.

   

パネリスト:佐藤 友美(IPFlex)
写真および略歴は「講演3:DAP/DNAとその設計環境」のページを参照.

   

パネリスト:梶原 信樹(NEC)
写真および略歴は「講演4:DRPとその設計環境」のページを参照.

 

パネリスト:宮森  高(東芝)
1985年 慶應義塾大学理工学部電気工学科卒業.1987年同大学理工学部電気工学専攻修士課程修了.同年株式会社東芝入社.半導体技術研究所,マイクロエレクトロニクス研究所にて,マクロプロセッサの研究開発に従事.1996-98年米国スタンフォード大学に客員研究員として滞在中,プロセッサに密結合するリコンフィギュラブルアレイプロセッサを研究する.帰国後,マルチメディアSoCに組み込まれるコンフィギュラブルプロセッサの研究開発に従事.現在,株式会社東芝SoC研究開発センター主査.

 

「リコンフィギュラブル技術は役に立つのか?」
LSIの設計時にプロセッサの構成を変更したり,特殊な命令やハードウエア回路を追加することができるコンフィギュラブルプロセッサMeP(Mediaembedded Processor)と,これを内蔵したメディア処理用のSoCを開発している.この経験からプロセッサコアと密結合されたリコンフィギュラブルアレイで構成されるアーキテクチャについて議論する.例えば,MPEG-2 CODECに内蔵されているビデオCODEC用プロセッサでは,マクロブロックより上位の処理をプロセッサコアのソフトウエアで,下位の処理をコアに機能拡張したハードウエアで行なうことで,柔軟性と高性能を両立している.今後,画像符号化のフォーマットが増えることが予想されるが,ハードウエア拡張部をリコンフィギュラブルアレイなどで実現すれば,新しいフォーマットが登場しても,ソフトウエアを変更するかのようにハードウエア拡張部を変えることができることが期待できる.

 

パネリスト:荒川 文男(日立)
1961年7月25日栃木県生まれ.1984年東京大学工学部物理工学科卒業.1986年同大学工学系研究科物理工学修士課程修了.同年(株)日立製作所入社.中央研究所にてマイクロプロセッサの研究開発に従事.2001年スーパーエイチジャパン(株)創立時に1年間在籍後,中央研究所に復帰.IEEEおよび電子情報通信学会メンバー.

 

現在,デジタル家電等に用いられているシステムLSIは,プロセッサコアと専用ハードによって製品が実現すべき処理能力をチップ上に実現している.プロセッサコアは最大で数GHzに達する高い動作周波数によって高い処理能力を提供しているが,主に電力の問題によって高周波数化が頭打ちとなりつつある.一方,専用ハードは目的の処理に対しては高性能であるが,他の処理には無力である.そして,多機能な製品を専用ハードで実現する場合には,専用ハードを多数搭載する必要がある.リコンフィギャラブル技術を用いると,特に演算処理において,プロセッサコアの汎用性と専用ハードの高性能の双方を高いレベルで実現できると期待されている.しかしながら,現状は面積が専用ハードの数倍から10倍程度あり,面積増に見合う魅力を提供できていない.本講演では,プロセッサアーキテクトの立場から,リコンフィギャラブル技術に対する期待や提言を述べる.

 

量子コンピュータの科学

9月9日(木)13:00-16:00[第1サブメイン会場(恵道館3F KD-301)]

 
●講演1:量子情報処理−次世代モデルの新展開[13:00- 14:00]
 

今井  浩(東大)
1958年生.1981年東京大学工学部計数工学科卒業,1983, 1986年東京大学大学院工学系研究科情報工学専門課程修士,博士課程修了,工学博士取得.1986〜1990年,九州大学工学部情報工学科助教授,1990年東京大学理学部情報科学科助教授.現在,東京大学情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻教授,JST ERATO今井量子計算機構総括責任者.1987年冬カナダMcGill大学訪問副教授,1988年秋IBM T. J. Watson研究所訪問研究員.量子情報科学,アルゴリズム論,計算幾何学,最適化の研究に従事.電子情報通信学会,情報処理学会,日本OR学会,ACM, IEEE他各会員.

 
●講演2:計算機科学者から見た量子計算の原理と仕組み[14:00- 15:00]
 

岩間 一雄(京大)
73年京大卒(電気).78年博士了.
京都産大講師,助教授,カリフォルニア大学バークレー客員準教授,九大助教授を経て,92年より九大教授.97年京大教授.

 

[講演概要]
量子計算は,バックグラウンドの異なる様々な研究者が,様々な異なった立場から研究している希有なテーマであると言って良い.本講演では,計算機科学者,特にアルゴリズム研究を専門にしている者の立場からその原理と仕組みを易しく解説したい.
物理現象は全て「モデル」に押し込めてしまうので,量子力学に代表される物理の知識は全く必要としない.

 
●講演3:量子メカニズムと暗号通信[15:00- 16:00]
   

小柴 健史(ERATOプロジェクト京都オフィス)

 

情報科学技術分野のファンディング戦略
〜JSTのPriority Settingにむけて〜

9月7日(火)14:00-17:30[第2サブメイン会場(恵道館3F KD-302)]

 
 

[全体概要]
独立行政法人科学技術振興機構(JST)は,戦略的創造研究推進事業などを通して新技術の創製に資する基礎的研究を推進している.現在JSTでは有効なファンディングを行うため,各分野の研究者の衆知を集めてファンディング戦略を検討しているところであるが,その一環として本年1月に,電子情報通信系の今後重要となる研究テーマを時間軸を含めて明確にするためのワークショップを開催した.今回のFIT2004研究会では,情報科学技術分野についてその議論をベースに別の角度からも検討してより広い視野で眺めたPriority Settingに資するためのパネル討論を行いたい.なおその結果は,今後のJSTのファンディングに活かしていくとともに,文科省の戦略目標の設定,総合科学技術会議への発信などの形で活用していく予定である.

 
●オープニング[14:00- 14:05]
 

田中 英彦(情報セキュリティ大学院大)
昭和40年東京大学工学部電子工学科卒業.昭和45年同大学院博士課程終了.工学博士.昭和62年東京大学工学部教授,平成13年東京大学情報理工学系研究科教授,平成16年情報セキュリティ大学院大学教授.計算機アーキテクチャ,分散処理,デペンダブル情報システム等に興味を持っている.著書に「非ノイマンコンピュータ」「計算機アーキテクチャ」「VLSIコンピュータI,II」,「Parallel Inference Engine』などがある.

 
●講演1:JSTの情報分野に対するファンディングの現状[14:05- 14:30]
 

石田 秋生(JST)
昭和25年8月27日生まれ.昭和52年早稲田大学理工学研究科物理及び応用物理専攻修了.昭和52年新技術開発事業団入団,あっせん部あっせん課.昭和56年プロジェクト部第一課.昭和60年管理部管理課.昭和62年通商産業省工業技術院.平成2年新技術事業団総務部企画調査室.平成6年総務部企画調査室調査役.平成8年基礎研究推進室調査役.科学技術振興事業団に改組.平成13年戦略的創造事業本部研究調整室調査役.平成14年戦略的創造事業本部特別プロジェクト推進室長.平成15年戦略的創造事業本部研究推進部長.

 

[講演概要]
科学技術振興機構(JST)の予算は平成16年度総額で約1100億円であり,そのうち半分強の約570億円が主に基礎研究に対する支援に割り当てられている.570億円の中核をなすものは戦略的創造研究推進事業である.戦略的創造研究推進事業は社会的・経済的ニーズを踏まえ,国が定めた戦略目標の達成に向けた基礎研究を推進するもので,これまでに20の戦略目標が国から示されている.JSTはこれらの戦略目標のもとに研究領域を設定し,公募などにより研究テーマを採択して研究を推進している.
JSTは23年前から基礎研究を進めているが,情報科学技術を正面から取り上げるようになったのは比較的最近である.しかし近年は,科学技術基本計画に情報通信分野が4つの重点分野の1つとして位置づけられていることもあり,毎年新規テーマを取り上げて研究を推進している.講演では,これまでのJSTの情報科学技術への取り組みと最近の動きについて述べる.

 
●講演2:情報科学技術分野における今後の重要な研究分野とファンディング[14:30- 14:55]
 

林   弘(富士通研)
1967年東京大学工学部電気工学科卒業,富士通研究所入社.ミリ波通信の研究に従事.その後コンピュータアーキテクチャ,人工知能,第五世代コンピュータ,RWCの研究に従事.2000年株式会社富士通研究所常務取締役,現在に至る.情報処理学会副会長(2001年-2003年),東京大学生産技術研究所顧問研究員.

 

[講演概要]
日本の産業界が漸く不況を乗り越え,情報家電を中心に新しい成長の時代を迎えようとしている.復活のベースとなっているのは情報技術を活用した「ものづくりの技術」である.高密度半導体デバイスが情報家電にとって必須となっているが,ここにおいてもVLSI CADによる設計技術の大幅な改善とプロセスシミュレーションを駆使した新しい半導体のプロセスの改良等情報処理技術が大きな力となっている.自動車業界においても過去数年かかっていた新車設計がスーパーコンピュータを活用することにより1年半で可能となってきた.さらにグローバル企業の生産活動を,国内だけでなく世界規模で管理運営することで効率化が進んでいる,またインターネットを活用した企業内,企業間,あるいはコミュニティ内,社会全体での情報共有,ノレッジマネジメントの活用が始まった.このような背景の中,今後の重要な研究分野とファンディングについて述べる.

 
●講演3:情報科学技術分野における今後の重要な研究分野とファンディング[14:55- 15:20]
   

村岡 洋一(早大)

 
●[15:30- 17:30]パネル討論:情報科学技術分野のファンディング戦略
〜JSTのPriority Settingにむけて〜
 

[講演概要]
今後10−20年後を考えたとき,我々の社会やビジネス,生活は大きく変わっているであろう.それには情報科学技術が大きな影響を与えているに相違ないと思われる.そのような時代において,わが国の科学技術が世界をリードしてゆく状況を作るためには今何をせねばならないであろうか.情報の分野は目まぐるしく動き変化が激しい.そのような分野の10年後を細かく予想するのは困難であるが,逆に目先に捕らわれず長期展望をして方向性を議論し,それに向けて基礎固めや基盤準備の研究をするのが重要であろう.国のファンディング戦略は特に,そのような基礎・基盤の研究をするのが任務である.このパネルでは,情報科学技術分野において,今後国が予算化する(たとえば科学技術振興機構などで)ことが重要と思われる基礎・基盤科学技術分野は何か,また,そのファンドのつけ方はどうあるべきかなどについて,パネリストとフロアを含めて議論する.

   

司   会:田中 英彦(情報セキュリティ大学院大)
写真および略歴は「オープニング」のページを参照.

   

パネリスト:林   弘(富士通研)
写真および略歴は「講演2:情報科学技術分野における今後の重要な研究分野とファンディング」のページを参照.

   

パネリスト:村岡 洋一(早大)

 

パネリスト:白鳥 則郎(東北大)
1977年東北大学大学院博士課程修了,1984年東北大学助教授(電気通信研究所),1990年東北大学教授(工学部情報工学科),1993年東北大学教授(電気通信研究所).やわらかいネットワーク,人間―コンピュータ共生論の研究に従事.学振・未来開拓研究事業「動的ネットワーキング」プロジェクトリーダー(1999-2004),IEEEフェロー,情報処理学会フェロー,電子情報通信学会フェロー,情報処理学会副会長.

 

「共生コンピューティングを目指して」
実空間とサイバースペースを融合し,個々の人間とそれを取り巻く環境が共生するしくみを提供する新しい情報処理様式として,共生コンピューティングを提案し議論する.「共生コンピューティング」は,ユビキタスコンピューティングの限界を超えて,
人間の持つ知識や社会知を効果的に用いて,柔軟性の高い,安心・安全な社会を築くための技術である.具体的には,(a)感覚的現実感創生技術,(b)社会的現実感創生技術,(c)フレキシブルネットワーク技術,(d)能動コンテンツ技術,(e)共生エージェントプラットフォーム技術,を新たに開発することにより,次の4つの共生,すなわち,1)人工物と人間 2)都市環境とコミュニティ 3)自然環境とコミュニティ 4)コミュニティ集団と人間,を達成することを目的としている.

 

パネリスト:喜連川 優(東大)
昭53東大・工・電子卒.昭58 同大大学院工学系研究科情報工学博士課程了.工博.同年同大生産技術研究所講師.現在,同教授.戦略情報融合国際研究センター長.データベース工学,並列処理,Webマイニングに関する研究に従事.H9,10年電子情報通信学会データ工学研究専門委員会委員長.情報処理学会フェロー.SNIA-Japan顧問.H11-14ACM SIGMOD Japan Chapter Chair,VLDB Trustee(97-02),IEEE TCDE Asian Coordinator.

 

「情報科学技術分野のファンディング戦略〜JSTのPriority Settingにむけて〜」
プライオリティをつけるという以前に,デバイス・自然科学分野に比べると情報分野は研究のシナリオのわかりにくさが常に問題として指摘される.更に,目先のキャッチーな動きとは独立に,訴えることが容易ではないものの,じっくりと暖めるべき長期視野に基づく情報基礎研究も不可欠である.JSTにはこのような情報分野における基礎研究の支援が強く期待される.しかしながらこの悩みは日本に限ったことでもないようである.研究のプライオリティをつけることは,極めて困難な作業であり,つまるところ,必要性を十分に理解すると共に,妥当な夢を設定し,大らかに見守ってくださる伯楽が不可欠であるということになろうか.

   

パネリスト:湯浅 太一(京大)

 

高度医療を支える安全ME技術

9月8日(水)9:00-12:00[第2サブメイン会場(恵道館3F KD-302)]

 
●講演1:精密誘導手術と医療トレーサビリティー[9:00- 9:40]
 

伊関  洋(東京女子医大)
1974年東京大学医学部医学科卒業.同年東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科医局入局.2001年4月から東京女子医科大学大学院先端生命医科学研究所先端工学外科学分野助教授/脳神経センター脳神経外科助教授(兼担).現在に至る.日本脳神経外科学会,日本定位・機能神経外科学会,日本コンピュータ外科学会,日本神経超音波学会,日本バーチャルリアリティ学会各会員.博士(医学).

 

[講演概要]
画像診断,特に術中診断技術の発達により,診断から治療までの時間差はほぼ0となり,診断即治療のリアルタイム性を追求する診断と治療が融合した時代となった.低侵襲外科手術の究極は,多分切らない外科手術である.しかし,その過程に行くまでには精密誘導技術を活用したマニピュレーション手術がその過渡期の外科を支えることになる.精密手術では,全て術前の計画どおりに正確に手術行程をこなす必要がある.そのためには,「外科医の新しい目・手・脳」が必要であり,医療情報の可視化を基にした診断・治療方針決定支援システムである戦略デスクが重要な柱となる.精密誘導手術は,先行予測型の次世代の医療システムである.また医療分野においても,医療従事者は受益者である患者・家族に治療・看護過程の履歴を開示し,安全性と品質を保証する医療のトレーサビリティー(治療・看護過程履歴の追跡管理)システムの整備が,求められている.

 
●講演2:集中医療における安全性向上のための医療機器情報の統合と警報支援システム[9:40- 10:20]
 

芥川 正武(徳島大)
1997年徳島大学大学院工学研究科博士後期課程単位取得退学.1997年徳島大学医療技術短期大学部助手.1998年博士(工学)(徳島大学).2001年徳島大学医学部保健学科助手.2004年徳島大学工学部電気電子工学科講師.ニューラルネットワークの応用,生体信号解析,医療情報システムの開発に関する 研究に従事.

 

[講演概要]
近年,医療事故の多発が社会問題なっており,より安全な医療の実現がこれまで以上に緊急の課題として取り上げられるようになってきた.何らかの事故(アクシデント)或いは事故に繋がる可能性のある事例(インシデント)が発生した場合,その報告と分析が同様のインシデントの再発防止のためには非常に重要である.この際,より正確な情報を得るためには人の記憶だけでなく,数多く現場に導入されている医療機器からの情報を利用するのが有用である.多くの医 療機器にはRS-232Cのようなインターフェースが付属し,機器の様々な状態を外部へ出力可能であることから,機器の操作や警報等の様々な情報を収集し記録するシステムの作成は可能である.今回,様々な医療機器からの情報をRS-232C経由で収集し,LANアダプタを介してサーバに蓄積するシステムを開発したので報告する.

 
●講演3:医療電磁環境の安全管理に必要な技術開発について[10:20- 11:00]
 

加納  隆(三井記念病院)
昭和48年上智大学理工学部電気電子工学科卒業.昭和49年4月より三井記念病院MEサービス部に勤務,現在に至る.主に,病院内の各種ME機器管理,心臓カテーテル室業務,循環器ならびにクリニカルエンジニアリング(臨床工学)の研究に従事.最近は病院内の電波管理を含むEMC(電磁環境),病院電気設備,ならびに医療機器のリスクマネージメントに関する研究発表・講演が多い.現在,東京都臨床工学技士会(会長),日本エム・イー学会専門別研究会:医療電磁環境研究会(会長),同じくCE安全研究会(幹事).

 

[講演概要]
病院内の医療機器・設備の安全管理を徹底させることが患者の安全確保にとって非常に重要であることは論を待たないが,ではそれが徹底されているかとうことになるとはなはだ疑問である.最近でこそ医療事故の多発を背景に医療におけるリスクマネジメントが叫ばれているが,その多くがヒューマンエラーを防ぐための操作手順等の取り決めであったり,教育であったりするわけである.確かにこのようなソフト面も重要ではあるが,もう一歩進んでヒューマンエラーを防ぐための人間工学的設計や危険な状況の発生を想定した防護策などのハード面での技術開発も重要である.また,医療環境に一般電気製品や各種情報通信機器が持ち込まれ,医療機器と一緒に使用されることが多くなってきているが,これら一般電気製品や各種情報通信機器が医療機器へ及ぼす電磁的な影響が大きな問題となっており,これに対する評価ならびに防護策についての技術開発も重要である.

 
●講演4:医療機器の安全性の試験[11:00- 11:40]
 

後藤 和夫(テュフ・ラインランド・ジャパン)
1971年古野電気(船舶用電子機器メーカ)入社.技術サポートとして海外駐在・海外研修生教育・技術図書の作成等に従事.1993年フリーのテクニカルライターとして航空機搭載電子機器の技術図書等作成に従事.1996年テュフ・ラインランド・ジャパン(ドイツの第三者認証機関)入社.EMCエンジニアとして各種電気電子機器の電磁両立性テスト・適合性証明発行・コンサルティング等に従事し現在に至る.

 
●総合討論[11:40- 12:00]
 

誰にでも参加できる学会を目指した情報保障のあり方について

9月8日(水)14:30-18:00[第2サブメイン会場(恵道館3F KD-302)]

 
新しい情報保障機器によるデモ展示と講演[14:30-16:00]
・聴覚障害関係
●デモ講演1:音声同時字幕システム
 

服部 裕之(ビー・ユー・ジー)
昭和32年生まれ.札幌出身.
昭和56年,北海道大学大学院工学研究科生体工学専攻修了.
北大院生時代に,システム開発の株式会社ビー・ユー・ジーを仲間4人と設立.
株式会社ビー・ユー・ジー代表取締役.

 

[講演概要]
本システムは,話し手の言葉をコンピュータを使って音声認識して文字化し,利用者の手元のパソコンや携帯電話,スクリーンなどに表示するシステムである.
国際会議での同時通訳の情報保障,教育現場での聴覚障害を持つ学生への情報保障など,様々な場面で利用することができる.2002年に札幌で開かれたDPI世界大会で,国際会議の同時通訳イヤホンで聞くことができない聴覚障害者のために開発されたが,健聴者にも好評であったことからさらに研究が進んだ.最大の特徴は,話した言葉とほぼ同じ量だけ文字化できる音声認識というコンピュータの優位性と人間の能力とを組み合わせたところである.またネットワークを使って遠隔地から支援することに注力しており,クリアで簡便で安価な音声伝送の仕組みを作り上げることが今後の課題でもある.ネットワーク化により,復唱や修正作業を在宅でできるようにすることで,障害を持つ人の働く場所の提供することも将来的な展望にある.

 
●デモ講演2:遠隔地情報支援システムの現状と課題
 

内藤 一郎(筑波技術短大)
1991年,立教大学大学院理学研究科原子物理学専攻博士課程修了.同年,筑波技術短期大学電子情報学科電子工学専攻助手に着任,現在,同大学助教授.大学院では飛翔体(ロケット,人工衛星)による高層大気微量成分の観測に従事していたが,現在の大学へ着任後,聴覚障害者のコミュニケーションとテクノロジーの関わりに興味を抱き,関連する研究テーマ(移動体通信,遠隔地手話通訳,遠隔共同作業など)に取り組んでいる.博士(理学).

 

[講演概要]
高速ネットワーク網の整備や様々な技術(画像圧縮技術,音声認識技術など)の進歩に伴って,テレビ電話による手話通訳や遠隔地からの要約筆記,音声認識による字幕提示などが可能になってきており,実際に一部サービスも開始され始めている.これら遠隔地からの情報支援システムが整備された社会においては,聴覚障害者が“いつでも,どこでも,どんなときにでも”コミュニケーションのサポートを受けられるようになることが期待される.しかし,現状においては,まだまだ多くの課題が残されているのも事実である.
筑波技術短期大学では,これらの技術を用いた遠隔地からの情報支援システムの開発を進めており,実際に,大学などの講義場面での試行的な運用・実験を実施している.本講演では,システムの概要と現在の開発の状況(試行的な支援実験の結果を含む)などを述べるともに,こうしたシステムが抱える課題や今後の取組みの計画などについても報告する.

 
・盲ろう関係
●デモ講演3:虹の架け橋「ユビツキィ」
 

横田 和博(指つき言語普及協会)
平成8年 日本エコロジー有限会社 取締役社長就任
平成14年 千葉大学2002オープンリサーチ学長賞を受賞
平成16年 指つき言語普及協会会員

 

[講演概要]
このプロジェクトは指点字を機械化した指点機ゆびつき(以下ユビツキィという)を媒体にして,盲聾者の情報保障を指点字で実現させようとするものです.ユビツキィは指点字同士の複数人の会話から,指点字と音声や文字との会話を実現しました.更には,ネットワークなどの電子化された文字コードをユビツキィに橋渡しして,手のひらの中で情報の入手と発信をおこなうことが可能となりました.即ち,情報都市に,指点字と文字に変換する架け橋を建設し,その橋をユビツキィで渡ろうとするものです.盲聾者はインターネットなどの情報網にアクセスすることで,TVのスイッチを入れたように世界は広がります.しかし,盲聾者の情報保障の機器類は市場が狭い上に,普及が困難であることから,誰も手を出せませんでした.このプロジェクトは,この世で最も情報に困っている人の,最も事業化が困難な人の市場に挑むユビツキィ物語です.

 
●デモ講演4:音声自動認識ソフトを利用した盲聾者のための自動情報保障システムの可能性
 

朝尾 伴啓(アスク研)
京都大学工学部機械工学科精密工学部卒.1975年〜1983年:ヤンマーディーゼル(株)研究所勤務.
1983年,同社退社.(株)ディーアンドエーシステムズ設立.
1999年,財団法人MMCAの「先導的コンテンツ拡充事業」のコンペ採択により,視覚障害者がインターネットを点字で読むことの出来るシステム開発.
2004年,(株)アスクにて回転円盤による連続点字表示方式の「ASKKてんてん」を開発,販売開始.

 

[講演概要]
口述内容をパソコン等で扱うことが出来るテキスト文書とし,その文書を自動的に点字化して出力することで,口述内容を介護者無しで盲聾者に伝えるシステムの可能性に関して検証を行う.
具体的には講演者の講演内容をBUGの音声認識ソフトでのテキスト化し,その結果をウェブサーバーに上げインターネットを介してパソコンにダウンロードすると同時に点訳ソフトIBUKI-TENで点訳し,点訳結果を「ASKKてんてん」に出力する.これら一連の動作をオペレータや介護者無しで盲聾者に伝達できる手法と結果の精度を向上させることで情報デバイドの解消の実現を図る.

 
・ロービジョン関係
●デモ講演5:プレゼンテーション環境の工夫による手頃な情報保障方式の検討
 

秡川 友宏(静岡大)
電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ「学会・研究会における情報保障ワーキンググループ」委員.1995年 筑波大学大学院工学研究科入学.同年よりコード最適化を研究する傍ら,趣味で福祉機器のハード,ソフトを複数手がける.2000年 同大学院終了.同年より静岡大学情報学部に助手として赴任.現在,情報家電とそのユニバーサルアクセスの研究に従事.

 

[講演概要]
研究発表会等における情報保障としては点訳のほか,手話通訳や要約筆記(以下,広義に通訳とよぶ)によるものが代表的であるが,これらは通訳者等の手配と費用負担の困難から一部の研究会でごく限定的に実施できているにすぎず,あらゆる研究会に広げていくことにも困難が伴う.筆者らは,通訳者等による情報保障が及ばない領域でも最低限の情報保障を実現するための,“手頃な”プレゼンテーションの保障方式について検討した.今回紹介する“手頃な”プレゼンテーション保障システムでは,弱視者への保障として画面の無線配信機能,色覚障碍者への保障として配信画面の色補正機能,難聴者・失聴者への保障としてプレゼンテーションノート投影機能を有する.いずれの保障も発表者用PCにインストールしたプログラムの助けを借りて行われ,人手を介さずに実施可能である.また,特殊なプログラムのインストールなしに実施可能な,さらに敷居の低い簡便法についても紹介する.

 
●デモ講演6:当日使用するその他情報保障機器の紹介
 
●講演:海外の学会・大学における情報保障[16:10-16:30]
 

渡辺 哲也(国立特殊教育総研)
1993年北海道大学大学院工学研究科修了.同年水産庁水産工学研究所研究員,1994年障害者職業総合センター研究員,2001年国立特殊教育総合研究所研究員,2004年3月〜米国ウィスコンシン大学客員研究員.音声・触覚情報を用いた視覚障害補償技術の研究開発に従事.電子情報通信学会,日本音響学会,ヒューマンインタフェース学会,日本特殊教育学会,視覚障害リハビリテーション協会等各会員.博士(工学).

 

[講演概要]
海外の学術会議における情報保障について,会議への参加,会議主催者へのインタビュー,会議のWebページ閲覧の各手法を通じて情報を収集した.その結果,障害者支援を扱う会議では,アクセシビリティサービスとして手話通訳,補聴システム,点字/拡大印刷などの情報保障サービスの提供が一般的であることがわかった.あわせて,海外の大学における情報保障(障害者支援サービス)についても簡単に報告する.

 
●パネル討論:誰にでも参加できる学会を目指した情報保障のあり方について
 −保障を受ける立場からの要望−[16:30- 18:00]
 
 

[討論概要]
もうろう者大会(残念ながら公的資金援助の都合で最近は中断されていると聞く)に何度か参加させていただいたことがある.
参加されているもうろう者は,その程度や障害となった時期で必要な情報保障の形は様々で,「指点字」,「触手話」,「点字」,「要約筆記」などなど,まさに情報保障のデパートといったところであった.
学会では,口頭の報告に対する情報保障だけでなく,プロジェクタによる画像などを用いた発表の情報保障や,言語に障害のある方の発表や討論をどう保障するか,など様々な課題が予測される.さらには,会場でのその場での保障だけでなく,事前の対応策についても,検討が必要になるかもしれない.今回の特別企画第1部での情報保障の経験をベースに,これらの課題に対し,学会としてどのように対応してゆけば良いか,当事者の皆さんを中心に議論を進めたい.また,逆に情報保障を必要としない参加者への影響も議論する必要があろう.その立場からの発言もフロアから期待したい.

 

司   会:市川  熹(千葉大)
千葉大学大学院自然科学研究科教授.工博.電子情報通信学会フェロー.同学会理事,音声研究会委員長,福祉情報工学研究会委員長,手話情報学研究会副委員長,人工知能学会理事,経済産業省障害者等対応情報機器開発普及推進委員会委員等を歴任.
現在,日本音響学会評議員,人工知能学会評議員,日本手話学会監事,電子情報技術産業協会アクセシビリティ委員会委員,同標準化対応専門委員会委員長,など.

 

パネリスト:井上 正之(NTT)
「みんなのための学会を目指して〜聴覚障害者の立場から〜」

昭和34年宮城県生まれ.生後1年で失聴.昭和62年 早大学大学院博士課程後期電気工学専攻 修了(工学博士)同年 日本電信電話株式会社 入社,以来 通信網設計法に関する研究開発に従事.現在,NTTサービスインテグレーション基盤研究所主任研究員.昭和62年 電子情報通信学会篠原記念学術奨励賞受賞.

 

パネリスト:長谷川 洋(筑波技術短大)
名古屋大学大学院修士課程修了.工学博士(東京大学).1965年より東大生産技術研究所でセラミックスの研究に従事.助手,講師を経て,1991年より筑波技術短期大学電子情報学科助教授.24歳のとき突発性難聴により失聴.日本聴覚障害者コンピュータ協会顧問.ろう・難聴教育研究会副会長.

  「誰にでも参加できる学会を目指した情報保障のあり方について−手話通訳・文字通訳を必要とする立場から−」
学会で発表する場合は,学会が開かれる地域の手話通訳と文字通訳のサポートを受けてきた.私の場合は,発表は自分の声で行うが,質問を聞き取ることができないのでサポートを受ける.この場合,事前の打ち合わせが必須であった.こうした準備をしても,適した通訳とそうでない通訳があり,ときにはしばしば通訳不能になってしまうこともあった.講演を聴く立場でも,同じく手話通訳と文字通訳の両方のサポートを受けたことがある.どちらがよいかについては,話のテーマ・内容,話し方,その他の状況などで変わるので,一概には言えない.どちらかというと,文字通訳の方が適している場合が多いと思われる.学会の場合,しばしば貴重な情報というのは,講演を聞く,質問をするというだけではなく,休憩時間や懇親会などでの個人的な話し合いの中から得られる場合も多い.こうした個人的な交流でも手話通訳などのサポートを得ることができる形が望まれる.
 

パネリスト:福井 哲也(日本ライトハウス)
1958年生まれ.早稲田大学法学部卒業.1985年より東京都に福祉職として勤務.2001年より社会福祉法人日本(にっぽん)ライトハウスに勤務,点字出版業務にたずさわる.早稲田大学非常勤講師(障害者福祉論).日本点字委員会点字科学記号専門委員会委員.著書に「初歩から学ぶ英語点訳」(日本点字図書館)など.デジタル録音図書の規格「DAISY(デイジー)」の普及にも強い関心をもっている.

 

パネリスト:三宅 洋信(「見やすさ」とデザインを考える会)
弱視者の情報活用環境について−当事者のWeb利用からの考察−

愛媛県出身.先天性白内障による弱視.小学部から高等部まで盲学校在籍.東洋大学卒業.
平成12年より「見やすさ」とデザインを考える会の活動を通じて,ロービジョンとユニバーサルデザインやコンピュータ利用について研究中.
著書「見えにくい人の初めてのEメール」((株)大活字)執筆.

 

パネリスト:門川紳一郎(視聴覚二重障害者福祉センターすまいる)
1965年,大阪に生まれる.生後発熱を繰り返し,目が見えにくいことをまわりが気づく.その後も発熱を繰り返し,4歳のときにかかった猩紅熱のために,聴覚に障害が生じ,聞こえなくなる.1984年,大阪市立盲学校高等部を卒業.1985年,桃山学院大学社会学部入学.1989年,大学卒業後,「障害者リーダー海外派遣事業(現在のダスキンの事業)研修生」として,ニューヨークにあるヘレン・ケラーナショナルセンターへ研修留学.1990年,ギャローデット大学に留学し,アメリカ手話(ASL)を学ぶ.1993年,ニューヨーク大学大学院「聴覚障害リハビリテーション」で,MA(文学修士)を取得.1995年から4年間,大阪盲ろう者友の会代表.現在,NPO法人視聴覚二重障害者福祉センターすまいる理事長,国立身体障害者リハビリテーションセンター学院非常勤講師,全国盲ろう者協会評議員.
一言:盲ろう者の人権を守り,盲ろう者が社会の一員として平等に当たり前な生活ができるように,盲ろう者の良き仲間を増やしていきたい.多くの仲間と共に,明るくて楽しい生きかたを見つけていきたい.

 

Web知的処理の基礎

9月9日(木)9:00-12:00[第2サブメイン会場(恵道館3F KD-302)]

 
●講演1:テキスト処理に基づくWeb情報アクセス支援 −検索から分類・追跡へ−[ 9:00-10:00]
 

江口 浩二(国立情報学研)
国立情報学研究所助手.1993年同志社大学工学部電子工学科卒.
1999年関西大学工学研究科電気工学専攻博士課程修了.博士(工学).
学術情報センター助手を経て2000年より現職.総合研究大学院大学情報学専攻助手を併任.情報検索,Web情報アクセスに関する研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,人工知能学会,ACM各会員.

 

[講演概要]
World-Wide Webにおいて,人間の知的活動の様々な領域に関する情報が豊富に提供されるに伴って,Web情報アクセスシステムの代表例であるWebサーチエンジンはWeb上の情報にアクセスするための手段としてなくてはならいものとなっている.Web上の情報の単位となるのがWeb文書である.本講演では,Web文書にアクセスする上で問題となり得る諸々の問題について述べ,Web文書にアクセスするための基本的な手段であるWeb検索技術について説明する.また,Web情報アクセスをより高度に実現するためのテキスト処理として,Web文書分類技術,トピック追跡技術を取り上げる.さらに,Web情報アクセス技術の評価の試みとして,TREC,NTCIR,TDTの動向を紹介する.

 
●講演2:Webページの知的探索・統合・加工[10:00-11:00]
 

廣川佐千男(九大)
昭和54年九州大学大学院理学研究科修士課程了.静岡大学工学部情報工学科助手,九州大学教養部助教授,九州大学理学部助教授,九州大学大学院システム情報科学研究科教授を経て,現在,九州大学情報基盤センター教授.リンク情報によるWWW空間の解析,半構造化データからのデータマイニング,および型理論の研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,人工知能学会,ソフトウェア科学会,数学会,ASL,EATCS各会員.博士(理学).

 

[講演概要]
インターネット上のホームページ群は世界際大の知識の書物と呼べる.増え続けるWeb空間から効率良く知識を獲得する手法の開発は,現在の情報社会における最も重要な研究テーマといえる.本講演では,Web上の高品質文書群を効率良く発見,統合,加工し活用するための研究を紹介する.すべてのホームページを網羅的に収集するのではなく,同系統の文書群に着目する研究について紹介する.すなわち,多量な同系統文書群は高品質であるというヒューリスティックに基づくWEBページの知的探索・統合・加工についての研究動向を紹介する.具体的には,HTMLファイルに繰り返し現われる特徴的なタグ・パターンの抽出法に関する研究,複数のページ群から類似構造を持つ文書群を網羅的に検出するための研究,リンク構造と構造類似性で特徴付けられる「シリーズ型文書群」の概念と,それらを対象としたWebマイニングの研究などについて紹介する.

 
●講演3:セマンティックWeb技術に基づく知識循環プラットホーム[11:00-12:00]
 

和泉 憲明(産総研)
1992年大阪府立大学工学部卒業,1996年11月大阪府立大学大学院博士後期過程中途退学し,1996年12月静岡大学情報学部助手,2002年4月より,産業技術総合研究所研究員,博士(工学)(慶応義塾大学).人工知能学会,ソフトウェア科学会,電子情報通信学会,情報処理学会各会員.人工知能学会KBS研究会幹事,ソフトウェア科学会チュートリアル「意味理解のための次世代 Web 」講師,環太平洋知識獲得ワークショッププログラム委員,オントロジーとエージェントシステムワークショップ,AAMASプログラム委員など.知識獲得の観点から知識管理とアプリケーション開発の研究に従事.主に,企業情報システムと企業アプリケーション統合,ワークフロー管理などに応用している.
最近は,ビジネスプロセスモデリングの観点から,セマンティックWebとWebサービスの融合を試みている.

 

[講演概要]
本講演では,産業技術総合研究所情報技術研究部門にて推進している知識循環のプラットフォーム研究について述べる.本研究は,知識工学技術と自然言語処理技術を駆使することによりセマンティックWebとWebサービスの研究を展開させるものである.
ここでは,Webなどのデジタル世界のユーザと,情報家電利用などの実世界のユーザとの間で,さまざまコンテンツを共有させるというフレームワークについて,コンテンツドリブンなアプローチから研究を行っている.
そして,Webブラウザなどへプラグインするユーザインタフェース技術や,Webコンテンツからの知識抽出,知的コンテンツのオーサリング技術ややセマンティックWebコンテンツの開発支援技術などを統合化することにより,Web上のサービスをユーザがアクセスしているコンテンツに応じて連携させるという,知的情報基盤の確立に関するプロジェクトについて紹介する予定である.

 

パターン認識・メディア理解アルゴリズムコンテスト

9月9日(木)13:00-15:50[第2サブメイン会場(恵道館3F KD-302)]

 
 

[企画概要]
パターン認識・メディア理解(PRMU)研究専門委員会では,当該研究分野における若手研究者の育成と研究会活動の活性化を目的として平成9年度より,秋の大会併催事業としてパターン認識・メディア理解アルゴリズムコンテストを実施している.
本事業は,若手研究者およびこれから研究者を目指す学生(主に,高専,学部・大学院生)を主たる対象に,具体的な課題を解決することの楽しさを通して研究の面白さを体験してもらうことを目指している.プログラムの応募に加えて,入賞者の一部には,次年度の実行委員会協力メンバーとして学会活動に参加してもらうことにより,次世代の学会活動を支える人材の育成も視野に入れている.本事業は,その継続性に意義があり,第8回コンテストを情報情報科学技術フォーラム(FIT2004)における企画として予定している.具体的なテーマを設定し,Web上でサンプル画像データを公開し,複数の難易度に分けて,平成16年5月からアルゴリズムを募集する.審査委員会で,アルゴリズムの新規性,性能(認識性能,計算時間)等をもとに応募アルゴリズムを評価する.FIT2004においては,コンテスト応募プログラムの講評,入賞者の発表・表彰,入賞プログラムに関する口頭発表,特別講演等からなるセッションを構成する.

 
●開会挨拶[13:00-13:05]
 

萩田 紀博(ATR)
1978年慶応義塾大学大学院工学研究科修士課程修了後,日本電信電話公社武蔵野電気通信研究所に入所.NTT基礎研究所,NTTコミュニケーション科学基礎研究所の研究部長などを経て,2001年10月より,ATRメディア情報科学研究所長,2002年10月よりATR知能ロボティクス研究所長.工学博士.

 
●課題概要説明,審査結果発表[13:05-13:15]
 
●表彰[13:15-13:20]
 
●各受賞者の発表[13:20-14:50]
 
●講演:画像位置合せ,画像モザイキング,そしてビデオモザイキング[14:50-15:50]
 

横矢 直和(奈良先端大)
1979年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了(工学博士).1979年4月 通商産業省工業技術院電子技術総合研究所研究員.1983年10月 同研究所主任研究官.1986年10月 マッギル大学(カナダ)知能機械研究センター客員教授(1987年9月まで).1992年5月 奈良先端科学技術大学院大学情報科学センター教授(併任).
1993年4月 奈良先端科学技術大学院大学情報科学センター教授.1994年9月 同大学情報科学研究科 教授.
(現在,副研究科長と情報科学センター長を兼務)

 

[講演概要]
複数の重なりのある画像の位置合せを行い張り合わすことによって広視野の画像を生成するモザイキング技術の研究は,衛星画像・航空写真を用いたリモートセンシングや医用画像処理の分野において1960年代後半,デジタル画像処理の黎明期から取り上げられていた.非常に限られた専門分野での技術であったモザイキングが一般に馴染みのあるものとなり研究が活発に行われるようになったのは,デジタルカメラ・ビデオの登場以降である.特に,1990年代中頃のQuickTime VRの発表を契機に,手軽にパノラマ画像や全方位画像を作成するためのツールとして注目されてきた.本講演では,今回のPRMUアルゴリズムコンテストの課題である画像のモザイキング技術について,その歴史と基本手法を概観するとともに,手持ちのビデオカメラを用いてリアルタイムにモザイク画像を生成する最新の研究をビデオと実機を用いたデモを交えて紹介する.

 

FIT賢人会議:情報学のセントラルドグマ

9月8日(水)9:00-12:00[第3サブメイン会場(知真館1F TC1-132)]

 
●講演1:人工知能と情報処理[9:00-9:30]
 

中島 秀之(はこだて未来大)
1983年,東京大学大学院情報工学専門課程修了(工学博士).人工知能を状況依存性の観点から研究.マルチエージェントならびに複雑系の情報処理とその応用に興味を持っている.現在,公立はこだて未来大学学長.産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センター研究顧問.認知科学会会長,ソフトウェア科学会元理事,人工知能学会元理事,情報処理学会元理事.マルチエージェントシステム国際財団理事.主要編著書:AI事典第2版(共立出版),知的エージェントのための集合と論理(共立出版),思考(岩波講座認知科学8),記号の世界(岩波書店),Prolog(産業図書).

 

[講演概要]
初期の情報処理のセントラルドグマは「記号処理」であった.しかし最近ではスケールフリーネットワークやマルチエージェント,ユビキタスコンピューティングなどが話題の中心である.つまり,個々の記号ではなくその関係性の方に注目が集まっている.この関係性は要素の性質には還元できず,上位層で創発するものである.
このような新しい対象を前にして情報の学問体系が問われている.要素への還元を主目的とする自然科学的分析的手法に代わる,これとは逆方向の,大規模な関係性構築のための構成的手法が必要とされている.これを構成的情報学と名付け,そのセントラルドグマを探る.そこには従来の世界観とは異なる新しい世界観が必要であることを述べ,それに基づく研究手法を提案する.

 
●講演2:コンピュータ科学における芥川賞と直木賞[9:30-10:00]
 

萩谷 昌巳(東大)
昭和57年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.京都大学数理解析研究所を経て,現在,東京大学大学院情報理工学系研究科教授(コンピュータ科学専攻).検証などプログラミングやソフトウェアの基礎に関する研究を行うかたわら,新しい計算パラダイム,特に分子コンピューティングの研究を行っている.

 

[講演概要]
実際の学問の現場においては,分析的学問と構成的学問が明確に区別されているわけではなく,両者は重層して現れる.ここでは,前者を小説を通して人間性の本質を究めようとする芥川賞的純文学と対応させ,後者を物語性を重視する直木賞的大衆文学と対応させながら,コンピュータ科学における分析的学問と構成的学問について議論する.コンピュータ科学における両者の特徴は,分析的学問が構成的学問の基盤として先行することは稀であり,構成的学問の成果に対する分析的態度として現れることの方がはるかに多い点にある.この点において,構成的学問の方がコンピュータ科学の王道と言うことができる.しかし,研究者は得てして芥川賞を目指す.芥川賞の方が評価が明確であり後世に残り易いからである.もちろん,構成的学問の基盤となる重要な研究は評価されてしかるべきであるが,直木賞的研究を的確に評価し支援する仕組みを整えることがより重要であると考えられる.

 
●講演3:情報学のセントラルドグマ ― 会話情報学[10:00-10:30]
 

西田 豊明(京大)
1977年3月京都大学工学部情報工学科卒業.その後,大学院,京都大学工学部情報工学科助手,助教授,奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科教授,東京大学大学院工学系研究科教授,東京大学大学院情報理工学系研究科教授を経て,2004年4月から京都大学大学院情報学研究科教授(東京大学兼任).京都大学工学博士.学術創成研究や社会技術のプロジェクトのリーダー.社会知のデザインに関する国際ワークショップを創設,主催.

 

[講演概要]
「会話情報学」は,人間の会話行動,なかでも知識創造と活用に関わる会話行動の理解の深化と支援技術の確立を目的とする学問領域である.会話情報学では,人間にとって最も自然なコミュニケーション様式である会話という現象を原点に置き,会話現象解析や会話支援技術の確立を中心的な課題として設定して,従来細分化していた学問領域の融合・高度化・サービス化のための構成的な学問領域となることをねらっている.会話計測分析学,会話環境デザイン学,会話的人工物学,会話コンテンツ学,会話応用創成学の5つの部門を相互に連携させつつ,会話情報学としての統合を試みる.
本講演では,会話情報学という視点からのさまざまな試みを紹介し,それを一般化することにより,現象の理解,アイデアのプロダクト化,プロダクトの社会への実装,社会での評価を機軸とする構成的な情報学を実現するための具体的な方略について検討する.

 
●講演4:創ることと認知科学[10:30-11:00]
 

諏訪 正樹(中京大)
1989年,東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(工学博士).日立製作所基礎研究所にて,推論学習の研究に従事.
1994年より,スタンフォード大学CSLI研究所にて客員研究員.
1997年退社.同年シドニー大学建築デザイン学科主任研究員.
2000年より中京大学情報科学部メディア科学科助教授,2004年より,認知科学科教授.

 

[講演概要]
我々人間は,身体を介して外的環境から知覚し,考え,行動することにより環境を変える.知覚―思考―行動が,互いが他に影響を与えながら動的に更新されることで,身体と外的環境の関係を創り続ける.環境の中で身体の新しい振る舞い方を発見したり,デザイナーや芸術家が創造したり,ある領域で新しい技やこつを習得するという現象は,ほぼ,上記の特徴を有している.これからの認知科学は,身体と外的環境の関係を創り続けるための方法論を,様々な社会的文化的領域を例題にして探求すべきであると考える.そのためには,身体と環境の関係構築の証例を客観的に外部観察者の視点から分析することに留まるべきではない.身体の内側視点から主観的に身体と環境の関係を「語る」こと(例えばメタ認知),そして構成的に現象を創りだすことが,認知科学の重要な研究手法となる.

 
●講演5:社会情報学[11:00-11:30]
 

石田  亨(京大)
1976年京都大学工学部情報工学科卒業,1978年同大学院修士課程修了.同年日本電信電話公社電気通信研究所入所.ミュンヘン工科大学,パリ第六大学,メリーランド大学客員教授などを経験.工学博士.IEEE Fellow.現在,京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻教授,上海交通大学客員教授,NTTリサーチプロフェッサ.人工知能,コミュニケーション,社会情報システムに興味を持つ.現在,デジタルシティプロジェクト,異文化コラボレーション実験に取り組んでいる.

 

[講演概要]
社会情報学の対象は人間社会で広く用いられる情報システム全般である.経営情報システム,医療情報システムなどを含む.ACMの計算機科学のカリキュラムで言えば,社会情報学はコア科目の外側の,人工知能やヒューマンインタフェースのさらに外側に位置する.セントラルドグマどころかペリフェラルのさらに外側に位置するが,情報学という器の中では,実は本質に最も近いのではないかと密かに思っている.
経済学が社会を財の流れと捉える学問であるとすれば,社会情報学は社会を情報の流れと捉える.調査を中心とする分析的アプローチと,設計を中心とする構成的アプローチがあるが,激しく変化する情報環境の中にあっては,後者に力点を置かざるを得ない.そのためには,リアルスケールの実験が必要であり,実験から実システムへとシームレスに移行するための参加型技術が鍵となる.
本講演では,京都大学社会情報学専攻における6年余の取り組みを紹介しつつ,interdisciplinaryな活動から新しいdisciplineが生まれることへの期待を述べる.

 
●総合討論[11:30-12:00]
 

分子イメージング

9月8日(水)15:00-17:30[第3サブメイン会場(知真館1F TC1-132)]

 
 

[全体概要]
分子イメージングは細胞・分子レベルにおいて生体の生物的特徴の機能計測や解明を可能にして大変興味深いアプローチである.ここでは,光,MRI,PETのイメージングに関連する3名の研究者をお招きして最先端の分子イメージングの現況と展望をして頂き,最後に講演者と参加者でこれらの課題について研究討論をし,同分野について理解を深める.

 
●挨拶:仁木  登(徳島大)[15:00-15:05]
 
●講演1:人生細胞内複数タンパク分子の多波長多光子励起分光イメージング[15:05-15:45]
 

伊東 一良(阪大)
1971年大阪大学工学部応用物理学科卒.1971年日本鋼管(株)技術研究所勤務.1973年大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻修士課程入学.1975年松下電器産業(株)第1開発(事)光学開発室勤務.1978年北海道大学工学部助手.1986年大阪大学工学部助手.1989年大阪大学工学部助教授.1995年大阪大学大学院工学研究科教授.1998年より米国光学会(OSA)フェロー.2000年より国際光工学会(SPIE)フェロー.2002-3年,Jpn.J.Appl.Phys.編集委員長,応物学会理事.

 

[講演概要]
生きた細胞内で複数の蛋白質を長時間観察できる機器が開発されれば,医学や創薬の研究に大いに貢献できる.本講演では,応用生物学の専門家と共同で進めている,2光子多波長同時励起とその多波長蛍光観察が可能なレーザー走査顕微鏡システムについて紹介する.最終的には,生体分子1個または数個の集団を測定対象とし,可視域を8分光スペクトルバンド程度に分割した3次元空間情報を1細胞周期(25時間程度)にわたって,数100ナノメートル立方の空間分解能で,100回以上計測が可能であり且つ,ひとつのサンプル点に於いては,サブミリ秒の時間分解能を有する可視化技術と,生細胞内部のタンパク質分子や細胞小器官のフェムト秒レーザーパルスによる制御技術の開発を目指している.システム開発の現状と,固定細胞,生細胞の可視化,細胞内小器官(ミトコンドリアなど)のフェムト秒レーザーパルスによる破壊や移動の実験結果について報告する.

 
●講演2:小動物用PET装置を中心とした小動物用核医学イメージング装置とその利用[15:45-16:25]
 

間賀田泰寛(浜松医大)
1982年3月京都大学薬学部卒業.1988年3月同大学大学院薬学研究科博士課程を修了し,薬学博士授与.同年4月より,京都大学医学部附属病院核医学科助手となる.1997年7月より翌年8月まで米国国立衛生研究所(NIH)病院PET部門にて客員研究員として留学後,1999年6月京都大学大学院薬学研究科助教授となる.2002年1月浜松医科大学光量子医学研究センターゲノムバイオフォトニクス研究分野教授に着任し,現在に至る.

 

[講演概要]
放射性同位元素で標識された放射性医薬品を体内に投与すると,ある時間経過後,その化合物が有する生物学的性質に従って生体内で特徴的な分布を示す.核医学技術とはこうして分布した化合物から放出された放射線を体外より計測して画像を作成する技術である.その性格上,形態を観察することは苦手であるが,観察したい機能に合致した放射性医薬品を準備することで特徴的な機能画像を得ることが出来る.なかでも放射性同位元素としてポジトロン放出核種を用いるものをPETと呼び,臨床現場を中心に用いられている.近年,小動物専用のPET装置が開発され,その空間分解能は1.3mmと,装置としての限界に近づきつつある.分子イメージングという言葉の定義は難しいが,生体内で遺伝子情報が発現した最終形としての酵素やレセプターをはじめとするタンパク質等のインビボでの機能画像として演者は捉えている.これまでPET薬剤の開発を通して,小動物用PET装置によるインビボイメージングに関わってきたので,その一端をご紹介する.

 
●講演3:MRI拡散強調画像による全身スキャン(DWIBS)[16:25-17:05]
 

今井  裕(東海大)
1978年に慶應義塾大学医学部を卒業,慶應義塾大学医学部放射線科に入局.1981〜82年に慶應義塾大学医学部中検病理部に勤務.1988年〜89年には米国ペンシルバニア大学医学部放射線科訪問講師としてMRIセンターに勤務.1995年〜99年は国家公務員共済組合立川病院放射線科部長,2000年に慶應義塾大学医学部放射線科学専任講師.2001年には東海大学医学部基盤診療学系画像診断学教授に就任(現職).専門は画像診断学,とくに消化器および泌尿器科領域の診断.

 

[講演概要]
拡散強調画像は,これまで主に脳神経領域において超急性期脳梗塞の診断に応用されてきた.MRIが捉えている拡散現象は,組織内における水分子の不規則な運動であるブラウン運動を可視化したものと言える.しかし組織内の灌流の影響を少なくするためには,撮影時に印加する一対の傾斜磁場(motion probing gradient : MPG)の強さを示すb 値を大きくする必要がある.そこで躯幹部においても高いb値を用い,自由呼吸下で,ある程度の撮像時間をかけて撮像することにより組織内の微視的な拡散現象の違いを表示することが可能となり,この撮像方法をDWIBS (Diffusion weighted whole body imaging with background body signal suppression) と呼んでいる.この撮像ではスキャンした範囲の躯幹部に存在する腫瘍,リンパ節および他臓器転移巣,そのほか炎症などの腫瘍以外の疾患も検出が可能性となる.

 
●総合討論[17:05-17:30]
 

けいはんな学研セッション(第1日)

9月7日(火)13:00-17:40[第4サブメイン会場(知真館1F TC1-116)]

 
●オープニング[13:00-13:10]
 

石原 好之(同志社大)
1941年6月生まれ.1964年同志社大学工学部電気学科卒業.同年4月岡山大学工学部助手.岡山大学講師,助教授を経て,1981年同志社大学工学部助教授.1985年工学部教授,2003年4月より工学部長.工学博士(九州大学).主として,有限要素法による電気機器の磁界解析,電力用磁性材料の磁気特性測定法及び特性評価法,太陽光発電システム,電気・電子機器からの電磁ノイズ放射に関する研究に従事.

 
●講演1:関西文化学術研究都市の概要[13:10-13:30]
 

小池 幸男(国土交通省)
昭和55年3月北海道大学工学部土木工学科卒業.平成3年4月建設省道路局高速国道課課長補佐.平成6年10月栃木県土木部道路建設課長.平成 9年4月建設省道路局企画課道路防災対策室専門官,阪神淡路復興対策本部事務局上席局員.平成11年4月建設省甲府工事事務所長.平成13年4月愛知県豊田市助役.平成16年4月現職.

 
●講演2:関西文化学術研究都市における研究プロジェクト[13:30-13:50]
 

輔信 捷三(関西文化学術研究都市推進機構)
昭和42年大阪工業大学工学部土木工学科卒業.昭和46年日本住宅公団(現 都市再生機構)入所いらい都市開発部門でニュータウン開発に関わる上下水道等の供給施設計画に従事.その間,難視対策からCATV計画にも多く従事して導入区域を拡大すると同時にインターネットの導入計画にも関わってきた.平成12年財団法人関西文化学術研究都市推進機構常務理事就任.ITS社会実験導入,知的クラスター採択,知的特区指定などに取り組んだ.

 

[講演概要]
本都市建設などにかかわる企画立案などを担当している関西文化学術研究都市推進機構の立場から,関西文化学術研究都市(愛称けいはんな学研都市)について下記項目の報告をする.1)関西文化学術研究都市推進機構の役割.2)研究実態調査からみた学研都市.3)知的クラスター創成事業など.4)情報発信のとりくみ.5)産業連携のとりくみ.6)けいはんな学研都市が目指すもの.

 
●講演3:同志社大学学術フロンティア「知能情報科学とその応用」研究プロジェクト[13:50-14:10]
 

三木 光範(同志社大)
1950年生.1978年大阪市立大学大学院工学研究科博士課程修了,工学博士.大阪市立工業研究所研究員,金沢工業大学助教授を経て1987年大阪府立大学工学部航空宇宙工学科助教授,1994年同志社大学工学部知識工学科教授.専門分野は最適設計,並列処理,システム工学,知的システムの設計.現在の研究テーマは,並列分散処理に基づくシステムの最適化,遺伝的アルゴリズムやシミュレーテッドアニーリングなどの進化的最適化手法の分散並列化,PCクラスター・コンピューティングなど.主な著書は「進化する人工物」(オーム社),「工学問題を解決する適応化・知能化・最適化法」(技法堂出版)など.IEEE,情報処理学会,人工知能学会,システム制御情報学会,日本機械学会,計算工学会,超並列計算研究会代表,経済産業省産業技術審議会委員など,各方面で幅広く活躍している.2000年度から文部科学省補助事業である学術フロンティア「知能情報科学とその応用」研究プロジェクトのプロジェクトリーダー.昨年構築したPCクラスタはAMDのOpteronプロセッサを512台,ギガビットイーサネットという高速ネットワークで結合したもので,ベンチマークテストLinpackで1.169テラフロップスを達成,世界スーパーコンピュータのランキングで93位を獲得した.日本のPCクラスタでは1位の性能を出した(2003年11月現在).

 
●講演4:奈良先端科学技術大学院大学における研究プロジェクト[14:10-14:30]
 

石井  信(奈良先端大)
1986年東京大学工学部卒業,1988年同大学院工学系研究科修士課程修了.(株)リコー中央研究所研究員,ATR人間情報通信研究所研究員,奈良先端科学技術大学院大学助教授を経て,2001年より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科教授.博士(工学).機械学習,脳型情報処理,システム神経生物学,バイオインフォマティクスなどの研究を行っている.

 
●講演5:ATRメディア情報科学研究所知能ロボティクス研究所における研究プロジェクト[14:30-14:50]
 

片桐 恭弘(ATR)
1981年,東京大学工学系研究科情報工学専攻修了.工学博士.
NTT基礎研究所を経て現在ATRメディア情報科学研究所所長.
自然言語処理,社会的インタフェース,マルチモーダル対話の認知科学の研究を行う.

 

[講演概要]
ATRメディア情報科学研究所・知能ロボティクス研究所では,今までに見逃してきた人々の体験や出来事,感動を観測し,他の人々と共に体験を共有可能にする,新しいインタラクション・メディアの基盤技術を確立することを目的として,研究を進めている.
本稿においては,それらの研究の中から,代表的ないくつかの研究を紹介する.

 
●講演6:NTTコミュニケーション科学基礎研究所のビジョン[14:50-15:10]
 

管村  昇(NTT)
1950年神戸生まれ.1975年大阪大学大学院工学研究科修了.工学博士(1985年:大阪大学).1975年日本電信電話公社(現NTT)武蔵野電気通信研究所勤務.1995年(株)NTTデータ勤務,情報科学研究所長,人材開発部長を経て2000年7月NTTコミュニケーション科学基礎研究所副所長.2003年4月NTTコミュニケーション科学基礎研究所所長.2004年1月IEEE Fellow.主な研究分野:音声情報処理・ヒューマンインタフェース技術.

 

[講演概要]
20世紀後半は,インターネットや携帯電話などの情報通信技術により社会や市民の生活が大きく変化した.コミュニケーションは,質・量とも拡大の一途をたどり,ビジネスや日常生活への影響だけでなく,人間のコミュニケーション行動そのものにも大きな変革をもたらしている.人間と人間との音声によるコミュニケーションは,さらに人間とモノ,またモノとモノのコミュニケーションへと多様化してきている.1991年7月4日,やがて迎える21世紀にはコミュニケーションの研究が最重要課題になるとの認識のもと,コミュニケーション科学研究所がけいはんな学研都市内に設立された.その後,組織の再編により1999年コミュニケーション科学基礎研究所が誕生した.コミュニケーション科学基礎研究所は,コミュニケーションの本質を探求することにより,情報通信の未来に向かって新しい原理や概念の創出をめざしている.

 
●講演7:NICTけいはんな情報通信融合研究センター(KICR)の紹介[15:20-15:40]
 

中山 治人(NICT)
1951年生まれ.京都府出身.1975年名古屋大学理学部卒業.1983年大阪大学大学院基礎工学研究科生物工学専攻修了,工学博士.1983年関西学院大学理学部助手.1986年新技術事業団(現科学技術振興機構)技術参事.1991年郵政省通信総合研究所(現独立行政法人情報通信研究機構)関西先端研究センター生体物性研究室長.2000年同研究所けいはんな情報通信融合研究センター長.現在ヒューマンインタフェース/コンテンツ処理技術の研究所経営に従事.

 

[講演概要]
けいはんな情報通信融合研究センターは,(当時)総務省通信総合研究所の情報通信技術のうちユーザに近い領域,例えばヒューマンインタフェースやコンテンツ処理などの技術分野の研究をけいはんなに集約し,研究を発展させるために2000年7月に設置された.けいはんなに立地したこと自体が示すように,この技術分野の研究の関西での高いポテンシャルを期待し,産や学など外部との本格的連携を研究センターの基本的な性格として出発した.センター自身の組織としては当初より5研究グループ体制をとり,要素的な研究として,(1)分散協調コミュニケーションの研究(分散協調メディアグループ)(2)バリアフリー・コミュニケーションの研究(ユニバーサル端末グループ)(3)身体的コミュニケーションメカニズムの研究(社会的インタラクショングループ)(4)コンテンツ融合環境構築技術の研究(メディアインタラクショングループ)(5)自然言語の研究(自然言語グループ)の研究を進めている.2002年,総務省の施策(補正予算)によりKICRに産学官連携の基盤となる研究施設(オープンラボ)を整備することとなり,これを基盤に産学官連携の中味を作ることを目指した.外部でもこれに呼応してオープンラボ施設を活用して連携の活力を生み出すことを目指した動きがすすみ,関経連を中心とした活動により,施設の完成(2003年春)に先立ってけいはんな情報通信オープンラボ協議会が設立された.協議会は設立当初より精力的にKICRと一体となった研究プロジェクトの構築をすすめた.以下,オープンラボ活動を軸としたKICRの展開を簡略にしめす.

 
●講演8:松下電器産業株式会社先端技術研究所知能情報技術研究所の概要[15:40-16:00]
 

丸野  進(松下電器)
1978年3月静岡大学卒業.1978年4月松下電器産業株式会社入社.中央研究所にて画像処理,画像記録関係の研究開発に従事.1987年5月〜1989年10月米国ユタ大学ヘルスサイエンス研究センター客員科学研究員.神経信号制御,神経生理の研究に従事.1989年11月松下電器産業株式会社中央研究所.1997年1月同社本社経営企画室技術企画担当副参事.2000年5月同社R&D企画室.2000年7月同社本社技術部門ソフトウェア技術戦略室室長.ソフトウェア開発本部ソフトウェアエンジニアリングGマネージャーを経て2001年8月同社先端技術研究所.2001年10月同社先端技術研究所ヒューマンウェア研究所所長.2003年9月同社先端技術研究所知能情報技術研究所所長.現在に至る.

 
●講演9:「協創」〜オムロンイノベーションセンタを中心として〜[16:00-16:20]
 

庄中  永(オムロン)
昭和54年大阪大・工卒,同年立石電機株式会社(現オムロン(株))入社.
平成14年現職の技術本部企画室長に就任.
平成15年オムロン京阪奈イノベーションセンタ事業所長に就任.

 
●講演10:知的クラスターネオカデンプロジェクト[16:20-16:40]
 

渡辺 好章(同志社大)
1974年同志社大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了,1981年同志社大学助手.講師・助教授を経て1992年教授.超音波エレクトロニクス,非線形音響の工学的応用,生物ソナー等の研究に従事.電子情報通信学会,日本音響学会,日本超音波医学会,海洋音響学会等会員.工学博士.現在,文部科学省知的クラスター創成事業ヒューマンエルキューブ研究統括,日本音響学会副会長.

 

[講演概要]
けいはんなには産官学のさまざまな研究機関が点在しており,これら研究機関の連携を核としてさまざまなプロジェクトが推進されている.その代表的なプロジェクトとして,2002年度を初年度として5年間の実施が予定されている文部科学省知的クラスター創成事業「ヒューマンエルキューブ産業創成のための研究プロジェクト」が挙げられる.知的クラスター事業の狙いは,それぞれの地域においてその特色を活かしたプロジェクトを推進することによって,大学を核とした日本版シリコンバレーを創出することにあり,この事業の実施によって,大学内に蓄積されている技術シーズを核として,新しい製品さらには事業を展開することが期待されている.従って,この事業における研究者に対する評価も,いかにすぐれた学術的な論文を書くこともさることながら,製品化あるいは事業化を指向した技術の開発ならびにその知的所有権化がより大きな評価対象となるという特色を持つ.
「ヒューマンエルキューブ」とは,Life,Living,Learningの3つのLを表しており,このプロジェクトにおいては,これらのLで構成される豊かな人間生活を実現するためのさまざまな技術群を開発すると同時に,そのバランスの良いフォーメーションの実現が課題としてあげられている.ヒューマンエルキューブにおいては,現在8つの中核プロジェクトが推進されており,表題にある「ネオカデン」はその中で特に,Living とLearning に関連する4つのプロジェクトを束ねるキーワードである.ネオカデンプロジェクトにおいては,本学会と関連の深いIT技術やソフトウエアアルゴリズムを基盤としたプロジェクト展開が多い.そこでここでは,ネオカデンの基本コンセプトついて概説する.

 
●パネル討論:関西は燃えているか?[16:40-17:40]
   

司   会:三木 光範(同志社大)
写真および略歴は「講演3:同志社大学学術フロンティア「知能情報科学とその応用」研究プロジェクト」のページを参照.

   

パネリスト:石原 好之(同志社大)
写真および略歴は「オープニング」のページを参照.

   

パネリスト:小池 幸男(国土交通省)
写真および略歴は「講演1:関西文化学術研究都市の概要」のページを参照.

   

パネリスト:輔信 捷三(関西文化学術研究都市推進機構)
写真および略歴は「講演2:関西文化学術研究都市における研究プロジェクト」のページを参照.

   

パネリスト:石井  信(奈良先端大)
写真および略歴は「講演4:奈良先端科学技術大学院大学における研究プロジェクト」のページを参照.

   

パネリスト:片桐 恭弘(ATR)
写真および略歴は「講演5:ATRメディア情報科学研究所知能ロボティクス研究所における研究プロジェクト」のページを参照.

   

パネリスト:管村  昇(NTT)
写真および略歴は「講演6:NTTコミュニケーション科学基礎研究所のビジョン」のページを参照.

   

パネリスト:中山 治人(NICT)
写真および略歴は「講演7:NICTけいはんな情報通信融合研究センター(KICR)の紹介」のページを参照.

   

パネリスト:丸野  進(松下電器)
写真および略歴は「講演8:松下電器産業株式会社先端技術研究所知能情報技術研究所の概要」のページを参照.

   

パネリスト:庄中  永(オムロン)
写真および略歴は「講演9:「協創」〜オムロンイノベーションセンタを中心として〜」のページを参照.

   

パネリスト:渡辺 好章(同志社大)
写真および略歴は「講演10:知的クラスターネオカデンプロジェクト」のページを参照.

 

けいはんな学研セッション(第2日)

9月8日(水)9:00-12:00[第4サブメイン会場(知真館1F TC1-116)]

 
●オープニング[9:00-9:10]
   

三木 光範(同志社大)
写真および略歴はけいはんな学研セッション(第1日)「講演3:同志社大学学術フロンティア「知能情報科学とその応用」研究プロジェクト」のページを参照.

 
●講演1:同志社大学学術フロンティア「知能情報科学とその応用」研究プロジェクトにおける代表的研究[9:10-10:00]
 

力丸  裕(同志社大)
福岡県生まれ.京都大学工学部卒.米国Northwestern大学(Chicago)にてCommunication Science and Disordersの分野でPhD取得(1987年).Washington大学(St. Louis)にてコウモリ生物ソナーの神経機構解明の研究に従事.1991年から理化学研究所フロンティア研究システム(現理化学研究所脳科学総合研究センター)にてサルの聴覚中枢研究を開始.1994年に科学技術庁「さきがけ21」研究員に採用.1995年より,同志社大学工学部知識工学科教授.

 
 

柳田 益造(同志社大
1969阪大・工卒,71同・修士了,同年NHK入局,72-75阪大・産研・研究生,78同・博士了,同年同大・産研・助手,同・助教授を経て,87郵政省電波研(現:情報通信研究機構)・音声研究室長.89通信総研関西支所を経て,94同志社大・工・教授.現在に至る.この間,EXPO'70西独館ミキサー,78-79オランダ国立グローニンゲン大・音声研・客員研究員.2004音響学会佐藤論文賞受賞.工博.日本音響学会理事,音楽知覚認知学会理事,電子情報通信学会,情報処理学会,IEEE,ASAなど,各会員.

 
   

三木 光範(同志社大)
写真および略歴はけいはんな学研セッション(第1日)「講演3:同志社大学学術フロンティア「知能情報科学とその応用」研究プロジェクト」のページを参照.

 

[講演概要]
従来の脳機能研究は,刺激となる信号に対して,脳神経系がどのように応答するかを測定する際に,静的な信号に対する静的な応答として取り組んできた.しかし,殆どの刺激は時間的に変化する動的なものであり,脳神経系の応答も時間的に変化する動的なものである.我々の脳神経系は,リアルタイムで多くのことを手際よく処理している.しかし,その処理速度(演算速度)は極めて遅く,たかだか1 kHzのクロックに相当する程度であるので,現在のパソコンの演算速度の300万分の1程度である.聴覚や視覚などの感覚系では,リアルタイム処理に加えて,不良設定問題を効率良く解く必要がある.演算速度に依存した現在一般に行われている「認識」技術では,不良設定問題を解くことは困難である.本論文では,極端に遅いプロセッサでリアルタイム,時分割処理を実施している脳神経系に着目し,通常存在する情報が欠落しても安定した知覚を創りだすための脳神経機構の好例であるヒトの音声知覚機構のロバストネスに関して論ずる.ここで論ずる研究の方向性は,ME分野のヒューマンインターフェイスの改良や効率の良い障害者用診断・訓練機器の開発の実現化につながる.

 
●講演2:奈良先端科学技術大学院大学の代表的研究[10:00-10:30]
 

藤川 和利(奈良先端大)
昭和63年3月大阪大学基礎工学部情報工学科卒業,平成3年9月同大大学院基礎工学研究科研究科博士後期課程中退後,大阪大学助手,奈良先端科学技術大学院大学助手,大阪市立大学講師,奈良先端科学技術大学院大学情報科学センター助教授,現在に至る.この間,マルチメディア通信技術,マルチメディアネットワークアプリケーション技術に関する研究に従事.現在,ユビキタスコンピューティング,P2P技術に興味を持つ.

 
●講演3:ATRメディア情報科学研究所知能ロボティクス研究所の代表的研究[10:30-11:00]
   

片桐 恭弘(ATR)
写真および略歴はけいはんな学研セッション(第1日)「講演5:ATRメディア情報科学研究所知能ロボティクス研究所における研究プロジェクト」のページを参照.

 
●講演4:NTTコミュニケーション科学基礎研究所の代表的研究[11:00-11:30]
 

森   啓(NTT)
1986年東北大学工学部電子工学科卒.1988年東北大学大学院工学研究科電子工学専攻修士課程修了.1988年NTT 情報通信処理研究所勤務.1994年NTT コミュニケーション科学研究所へ異動.1998年西日本電信電話株式会社関西システム開発センタへ異動.1999年西日本電信電話株式会社法人営業本部勤務.2003年西日本電信電話株式会社ブロードバンド推進本部BBアプリケーションアービス部勤務.2004年NTT コミュニケーション科学基礎研究所へ移動,現職に至る.

 

[講演概要]
近年,インターネット,ブロードバンド環境が急速に,かつ全国的に普及にするに至り,情報の発信とアクセス手段が一部の専門家,研究機関から一般利用者,家庭へと渡り,しかも時間と場所の制約を超えて何時でも何処でも情報を身近に感じる生活へと変わった.一方,誰でもが情報を発信して,アクセスできるということは,相互理解の促進の可能性を拡張する反面,それを正しく理解し使う能力が求められる.つまり,情報を伝え受ける最低限のハードウェア的ネットワークから,それを人間が想いを伝え理解し,受け止め合えるコミュニケーションへとより高いレベルの研究が求められていることを意味している.NTT コミュニケーション科学基礎研究所は,その状況下でコミュニケーションの理想像を描き,人間の相互理解を深める研究を推進している.本文では,コミュニケーションを科学する研究を5つのカテゴリ〔感覚の拡張,対話能力の拡張,伝達能力の拡張,情報収集能力の拡張,計算能力の拡張〕に分類して代表的な例を交えながら,その研究活動を紹介する.

 
●講演5:NICT自然言語グループの紹介[11:30-12:00]
 

井佐原 均(NICT)
1954年生まれ.大阪府出身.1978年京都大学工学部卒業.1980年京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了,博士(工学).1980年通商産業省工業技術院電子技術総合研究所入所.1995年郵政省通信総合研究所入所.知的機能研究室長.現在独立行政法人情報通信研究機構けいはんな情報通信融合研究センター自然言語グループリーダー兼タイ自然言語ラボラトリー長.自然言語処理,機械翻訳の研究に従事.

 

[講演概要]
情報通信研究機構(NICT)の自然言語グループでは,自然言語処理技術の研究開発を行っており,その基盤として,言語に関する研究と,研究用言語資源の開発を行っている.また,アジア圏における研究協力の拠点として,バンコク北部にタイ自然言語ラボラトリーを設置し,アジア言語の研究開発を行っている.さらに,けいはんな情報通信融合研究センター内にオープンラボを設置し,企業との連携の下で,自然言語処理システムに関する研究開発を行っている.以下,これらの各項目について概説する.

 

船井ベストペーパー賞選考会

9月7日(火)9:00-16:00[第3サブメイン会場(知真館1F TC1-132)]

 
●午前の部[ 9:00-12:00]
遺伝子の機能分類を利用した遺伝子制御ネットワーク推定手法
[ 9:00- 9:30]
    ◎瀧 浩平(阪大)・寺本礼仁(住友製薬)・竹中要一・松田秀雄(阪大)
 
スポッティバイト誤り制御符号
[ 9:30-10:00]
    ◎樫山俊彦・鈴木一克・藤原英二(東工大)
 
印象に基づく楽曲検索のための個人適応手法の設計と評価
[10:00- 10:30]
    ○熊本忠彦(NICT)
 
単一の長大なデータ系列上の系列パターンの出現尺度とその逆単調性
[10:30- 11:00]
    高野 洋(日本システムデベロップメント)・○岩沼宏治・鍋島英知(山梨大)
 
事後確率構造の可視化
[11:00-11:30]
    ◎岩田具治・斉藤和巳・上田修功(NTT)
 
実世界の音楽音響信号に対するドラムスの音源同定手法を利用したドラムイコライズシステムINTER:Dの開発
[11:30- 12:00]
    ◎吉井和佳(京大)・後藤真孝(産総研)・奥乃 博(京大)
 
●午後の部[13:00-16:00]
動的イベントの分節化・学習・認識のための Hybrid Dynamical System
[13:00-13:30]
    ◎川嶋宏彰・堤 公孝・松山隆司(京大)
 
H.264/MPEG-4 AVC の重み付き動き補償における高速重み係数推定の一検討
[13:30- 14:00]
    ◎加藤晴久・中島康之(KDDI研)
 
話者の注目喚起行動による机上作業映像の自動編集 -ユーザインタフェースの側面からの評価-
[13:00-13:30]
    ◎尾関基行(筑波大)・中村裕一(京大)・大田友一(筑波大)
 
Behind Touch 2:視覚障害者のための触覚・音声による携帯電話インタフェース
[13:30- 14:00]
    ○平岡茂夫(福岡工大)・宮本一伸(アイム)・富松 潔(九大)・高橋 広(柳川リハビリテーション病院)
 
発信者詐称spamメールに起因するエラーメール集中への対策手法
[13:00-13:30]
    ○山井成良(岡山大)・繁田展史(三菱)・岡山聖彦・宮下卓也(岡山大)・丸山 伸・中村素典(京大)
 
Javaプログラミング演習向け課題レポート提出・管理機能を付加した授業支援システム
[13:30- 14:00]
    ◎熱田智士・松浦佐江子(芝浦工大)