Vol.66 No.6(2025年6月号)



Vol.66 No.6(2025年6月号)

和田雄大
[正会員]

 

  イノベーションは本当に必要なのでしょうか? 破壊的イノベーションは不可能に近く,持続的イノベーションは,そもそもただの進化であり,イノベーションの概念自体に疑問を感じます.

  イノベーションの定義にもよりますが,「技術革新」という意味で言うのであれば,それは必要かどうかにかかわらず,イノベーションは今までもこれからもさまざまなドメインで起こり続けます.そして,その中には破壊的イノベーションも含まれることでしょう.たとえば,90年代のインターネットの登場は我々のコミュニケーションの仕方や社会の価値観までも変容させ,固定電話や手紙でのやりとりなど多くのものの役割を変えましたし,オンライン・システムから発展したキャッシュレス決済によるオンライン・バンキングやオンライン・ショッピングの拡大は,「現金」や「お金」の概念自体を大きく変えるきっかけを作りました.これらも破壊的イノベーションと言えるのではないでしょうか.そして,今世界に急速に広がっているAI(人工知能)の技術は,我々人間が行う多くの仕事に破壊的かつ建設的な変化を起こしつつあります.人間が考えることをやめない限り,これからも社会が大きく変化するきっかけになるような技術がどんどん出てくると私は考えています.
  私は,イノベーションが必要かどうかではなく,これから出てくる新たな技術や概念が社会に広がっていくときに,それに対してどう自分が対応するか,また,対処できるための力をどうつけるのかが重要だと考えています.そして,その中で最も強いのは,イノベーションを待つのではなく,生み出す側に回るということです.
 

森本典繁
森本典繁
[正会員]
日本IBM
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