Vol.66 No.5(2025年5月号)



Vol.66 No.5(2025年5月号)

匿名希望
匿名希望
[正会員]

 

  GPUとCPUの違いについて教えてください.

  GPU(グラフィックス処理装置)もCPU(中央処理装置)も,コンピュータの中で演算処理(つまり計算)をする部品ですが,その役割は大きく異なります.CPUは複雑な計算を1つずつ順番にこなしていくのに対し,GPUは大量のデータを同時に並行して計算する能力に優れ,特に画像や動画のようなグラフィックス処理が得意です.
  たとえば,3Dグラフィックスを扱うようなゲームでは,画面に大量のポリゴンやピクセルを瞬時に計算して表示する必要があります.このように「手順の同じ計算をたくさん並行して行う」場面で,GPUの並列処理能力が活用されます.
  従来,GPUはグラフィックス関連の並列処理を担っていましたが,最近ではその並列処理能力の高さから,物理シミュレーションや仮想通貨のマイニングなどさまざまな用途で活用されるようになってきています.このようにグラフィックス関連の処理に限らないGPUの活用技術はGPGPU(General Purpose GPU:汎用目的GPU)と呼ばれ,より近年では深層学習における計算に活用の幅を広げており,いまや深層学習によるAI技術の実現に必要不可欠な存在であると言えるでしょう.

久保尋之
久保尋之
[正会員]
千葉大学
   

匿名希望
匿名希望
[正会員]

  メインフレームてまだ使われているんですか? 質問の意図は次のとおりです.最近の若い人はメインフレームということすら知らないかもしれませんが,銀行の勘定系とか基幹系システムでは,いまだにメインフレームが使われていると聞きました.そこで,社会インフラの基幹を支える重要システムについて,そもそもどういう経緯で導入されたのかとか,どういう発展を遂げたのかとか,なぜ,(一見すると古臭い)メインフレームがいまだに使われているのか,将来どうなるのかについて教えてほしいです.ちなみに,工場のラインとかだと,昔のPC-9801がいまだに使われており,故障したときのリプレースのために,昔のPC-9801を買い集めて大量にストックしている企業もあると聞きました.

  メインフレームは複数の会社から提供されてきており,クレジットカード,銀行,保険,小売業などを含む業種で現在でも広く使われています.IBM社の提供するメインフレームは2024年に60周年を迎えましたが,これは日本の新幹線と同じ年齢となります.新幹線も常に新しい技術を取り入れていますが,IBMメインフレームも新しい半導体技術と設計でCPUを含め進化を続け,コンテナ技術やAIフレームワークなどのオープンソース・ソフトウェアの進化も取り入れています.最新のIBMメインフレームでは,生成AIを高速処理するためのハードウェアがCPUチップに搭載され,次期モデルでは,生成AIをさらに高速処理するためのチップセットが導入される予定で,クレジットカードの不正利用検出やメインフレーム上で動くアプリケーションの刷新(モダナイゼーション)などに力を発揮することが期待されています.
  歴史的には1964年の東京オリンピックで,それまで手作業で行われていた大会記録集計をIBMメインフレームで行うことで集計時間が大幅に短縮されたことも注目を浴び,金融業務などへの応用が広がりました.現在クレジットカード処理の87%はIBMメインフレームで行われており,世界中のIBMメインフレームの毎秒処理件数の合計は,世界全体のGoogle Searchの毎秒処理件数より遥かに多いと言われています.メインフレームの処理件数は毎年増加しており,これからも最新のハードウェア,ソフトウェアのイノベーションも取り込みつつ,進化を続けていくと期待されています.

小原盛幹
小原盛幹
IBM Research - Tokyo
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