オリンピック競技になるのは時間の問題です．ただしオリンピックは種目を減らす傾向にあるので正式種目に採用されるのはまだ先になるでしょう．ここではいままでの道のりについて学術的な視点から説明します．
すでにアジア地域のオリンピック・ムーブメントを率いるアジア・オリンピック評議会（OCA）ではeスポーツをオリンピズム（オリンピックの理念）の観点から公認しており，OCAが主催するアジア競技大会ではチェスのようなボードゲームと並んでeスポーツが競技種目になりました．中国の杭州で開催される第19回夏季アジア大会2022でもeスポーツ専用アリーナが建設され，国際中継も予定されていましたが，残念ながら新型コロナウイルスの蔓延により延期されています．
これまで別々に発展してきたオリンピックとeスポーツとの相互理解のためには，学術的な研究も重要な役割を果たしています．IOCは2018年にブラジルでユースオリンピックを開催した際に，同時開催イベントとしてeスポーツとの相互交流の場を持ちました．この司会運営をしたのがマサチューセッツ工科大学のゲームラボで教鞭をとるインターネット・仮想世界の研究者のテイラー教授です．テイラー教授は国際的なeスポーツシーンやゲーム実況についての研究書も出版しており，
eスポーツとの橋渡し役として活躍しています．これからeスポーツがさらに普及していく上で，指導者や教育者の不足が重要な課題となっていますが，テイラー教授はフェアプレイや多様性を支援する団体も設立しており，eスポーツを通じたよりよい社会の実現においてもリーダーシップを発揮しています．
また，「人間対コンピュータ」「人間とコンピュータのチームプレイ」といったオリンピック種目には含まれない領域でもeスポーツは大きな役割を果たすことが期待されています．
