Vol.63 No.8（2022年8月号）

 　なぜ予約サイトはクリックをがんばっても受け付けてくれないんですか？

 　予約サイトは，Webサーバを始めとするさまざまなシステムで構成されています．まず，利用者はインターネットを通じて予約の申込みページを提供するシステムにアクセスします．システムは，基本的にコンピュータの性能などに伴い，データを処理できる上限が存在します．先着順の予約サイトの多くは特定の時間になると申込みが可能になる方式をとっています．そのため申込時間に予約したい人がその予約サイトの予約ページを訪れます．しかし，その対象が人気のイベントだったりすると，一斉に予約サイトに対して多くのアクセスが発生し，予約ページを一度に表示させるために必要な能力が上限を上回り予約ページが表示されなくなったりします．ただし，予約ページを表示させるだけなら，1つ1つの処理は軽いため，多くの人数がアクセスしても予約時間に予約ページの予約申込みの画面までたどり着く人は比較的少なくありません．
 　予約ページが表示されたら次に予約するチケットなどの種類を選び，購入に必要な情報を入力して，申込みにあたっての注意事項などに同意し，送信ボタンを押す必要があります．しかしその段階で反応が返ってこないことがあります．多分質問者はこの段階のことを意図して質問していると推察します．送信ボタンを押すと予約のために入力したデータを処理するためにさまざまな情報システムに送られます．たとえば，利用者の個人情報をデータベースに格納したり，リアルタイムに変化するチケットの残数を問い合わせたりして，購入することができるか確認します．無事，チケットが残っていても，購入を完了するためにはクレジットカードなど決済方法に関して処理が必要になります．これは予約サイトのシステムだけではなく，ほかの決済システムとのデータのやりとりが必要になります．これらの処理は予約サイトを表示させるだけの処理とは比べ物にならないくらい複雑な処理が求められ，それに伴うサーバの処理能力を必要とします．そのため，その時点で受け付けている処理が終わらない限り，次の処理が始まりません．これらの待ちが発生するとクリックしてもチケットの購入まで処理が進まず，処理ができるようになったときには，チケットの残数が残っていないなんてことが起きます．
 　チケットを取るためには，誰よりも早くWebサイトにアクセスして，購入のための情報を打ち込み，送信ボタンを押して予約サイトのシステムの能力が処理能力の上限を迎える前に購入まで処理が終わることを目指すか，粘り強く予約サイトシステムが，申込みの処理を受け付けるまで待って，チケットが残っていることを期待するしかありません．先着順だと，PCやスマートフォンの端末の処理能力や通信速度など環境が整っている人が有利になりがちです．先着順を採用してしまうとどうしてもチケットが取れる人に偏りが出てしまう可能性があるため，チケット販売者によっては期限を設けてすべての申込みを受け付け，その中から抽選でチケットを販売する方法を採用しているところもあります．