Vol.63 No.5(2022年5月号)



Vol.63 No.5(2022年5月号)

匿名希望
匿名希望

 

 IPv6に一気に変遷する時期は来るのでしょうか?

  1969年10月29日22時30分インターネットの初めての通信が行われました.そして,現在主に使われているInternet Protocol version 4のRFC791は1981年9月に発行されました.最初のパケットから50年以上,IPv4が決められてからも40年以上の歳月が経過しているのです.その間にインターネットはここまで大きくなり社会の基盤となりました.しかし,IPアドレスが32bitのIPv4にやがて限界が来ることも分かっており1992年6月のINET'92という国際会議で新しいInternet Protocolを作ることが宣言されています.そしてRFC1883などのIPv6に関連するRFCが1995年12月に発行されるのです.
  さて質問の「IPv6へ一気に移行する日が来るのか?」ですが,これはゆっくり進行すると考えています.日本で同時期に作られた社会基盤に東名高速道路があります.1969年5月26日の全線開通から50年以上,現在リニューアル工事が行われています.東名高速道路は1965年の着工から約5年で東名高速道路は完成しています.しかし,リニューアル工事はたとえば東京ICから東名川崎ICまでの8km弱の区間で2021年11月から2024年11月まで4年の歳月をかけて実施すると言われています.これはなぜでしょうか?  何もないところに新しい道路を作るのに比べて,交通量の多い道路を使いながら更新工事を行っていくことの方が何倍も手間がかかるのです.IPv4からIPv6への移行も同様です.今や社会基盤となったインターネットを動かしながら新しい仕組みに切り替えて行くことも同様に非常に大きな手間がかかるのです.
  IPv6への移行について考えなければならないのは,端末,ネットワーク,サーバの3つです.端末についてはPCやスマホなど対応が完了しています.ネットワークについては,プロバイダなどが運用するバックボーンはIPv6への対応がほぼ完了しています.しかし,組織内のネットワークや家庭内のネットワークについてはまだまだ機器の更新などが進んでおらず一部対応できていない部分が残っています.これらは少しずつ機材が更新され対応が進んでいくでしょう.最も難しいのはサーバです.GoogleやFacebookなど主要なサーバはIPv6への対応を完了しています.しかし,インターネット上にはさまざまなサービスがあります.これらすべてがIPv6に対応するのには時間がかかります.特に,各組織が独自に持つサーバのソフトウェアがIPv6に対応するには相当な時間がかかると考えています.したがって,IPv4からIPv6への移行は少しずつ,でも着実に進んでいくでしょう.Googleによると現在(2022/03/07)Googleへのトラフィックの40%弱がIPv6になっているそうです.2015年3月には6%程度でしたから少しずつ進み,やがてIPv6が主流になっていくでしょう.

 

砂原秀樹
砂原秀樹
[正会員]
慶應義塾大学