Vol.62 No.4(2021年4月号)



Vol.62 No.4(2021年4月号)

匿名希望
匿名希望
[学生会員]
大学生

 

  作り手によってAIの優秀さはどれくらい変わるのでしょうか?
  やはり,数学や,統計的なデータ分析を得意とする人が作ると精度は高くなるのでしょうか?
  はたまた,偏差値の低い人間が作ると精度は低くなるものなのでしょうか.
  ここでいう作り手は,自動的に完結するものではなく,自分で色々設定をするとしておきます.

  現在のAIは,作り手によってその優秀さが大きく変わります.そのため,世界中のさまざまな企業がAI技術者の獲得競争を繰り広げています.また,開発したAIプログラムの性能を競い合う国際コンペも頻繁に開催されています.
  優秀なAIを開発するためには,数学や統計的なデータ分析などの一般的な能力に加えて,AIを活用する分野特有の知見が非常に重要です.また,深層学習に代表される最近のAIには多数のパラメータが含まれていますので,その調整も非常に重要です.高性能な計算機を使って徹底的にパラメータ調整を行うことによって,AIの性能が飛躍的に向上することもあります.
  これからAIを勉強する人は,データ解析の基礎となる統計学などの数学の理解と,AI実装のために必要なプログラミングの能力に加えて,画像,音声,ロボット,医学,化学,物理,金融など,AIを活用する分野に関する知識を身につけることが重要です.そして,未来のAIを開発する研究者を目指す人は,新しい数学の原理や,脳科学や認知科学などヒトの学習に関する知見,さらには,倫理や法制度などAIが実装される人間社会の理解など,多様な観点から今の常識にとらわれない自由な発想力を持つことが望まれます.

杉山将

杉山 将
[正会員]
理化学研究所/
東京大学

大岩秀和
大岩秀和
Google

  AIの「優秀さ」とは何でしょうか.クイズであれば,なんでも記憶していること? いち早く質問に答えられること? あるいは,早押しが上手なことでしょうか? 「優秀さ」の定義方法はさまざまで,あらゆる面で優秀なAIは自分が知る限り存在しません.良い AIを作るためには,解決したい問題に合わせた「優秀さ」を上手く定義することが重要です.
  数学や統計学は,「優秀さ」をより正確に測り,AIの中身をより深く理解するための重要な道具です.一方で,AIの研究開発・運用には,「優秀さ」の定義・AIを開発するための環境の整備・実際の運用など多様なプロセスで構成されており,コンピュータ科学などの他の知識も重要になります.複数人で AI を開発することも多く,全員が同じ分野に長けていることが重要とも限りません.
  AIの良い作り手になるためには,数学や統計学に限らず,自分の持つ知識や経験を AI開発に活かす方法を考え実行できることが重要だと考えています.

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