Vol.62 No.1(2021年1月号)



Vol.62 No.1(2021年1月号)

匿名希望
匿名希望
中学生

 

    これからの未来,空や海に行ける車はできるか?

  結論から言うと「『空とぶ車』はできません」が答えです.一方で「個人用の飛行機はきっとできます」にもなります.
  順を追って書きますと,実は「空とぶ車,フライングカー」は1940年代にはすでに完成し,1960年代には販売までされていました.また現在もフライングカーを研究している会社はいくつかあります.でも,それらの多くは事業を採算に乗せられず,大体が撤退しています.死屍累々の世界なのです.
  実は「空とぶ車」には,大きな矛盾があります.手短に書くと「地上を走る車に求められるものと空を飛ぶ飛行機に求められるものがあまりに違う」「操縦方法も安全対策も違う」「法律もまったく違う」ので,実際には車と飛行機を兼用できないのです.チーターと鷹の体がまったく違うのをイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません.
  と,ここまで読んで,がっかりしているかもしれないですが,空を飛ぶ「車」はできないにしても「安全に離着陸できる一人乗りレジャー飛行機」……これはパーソナル・エアリアル・ビークル(PAV)というカテゴリなのですが,それであれば可能性はかなり高いし,簡単に空を飛ぶこともできるようになりつつあります.これを支えるのは軽くて丈夫な素材,自動操縦を可能にするコンピュータとさまざまなセンサ,高効率のモータとバッテリです.
  君が作りたいものが「自由に空を飛ぶための乗り物」だったら,物理や数学も含め,そのための勉強をするのは悪くない選択だと思います.ただ,そのときに「車と兼用しよう!」という思いつきは,筋が悪いので,まずは捨てたほうがよいと思います.

八谷和彦

八谷和彦
メディアアーティスト/自作機のテストパイロット/東京藝術大学

山田 渉
山田 渉
[正会員]
(株)NTTドコモ

  SF映画ではよく空飛ぶ車や,海を潜る車が登場しますが,もしも現実でもそうなったら……夢のある素敵な話ですよね.実は空を飛ぶ車はエア・モビリティとも呼ばれ,世界中で研究開発が進んでいます.たとえば,アメリカのボーイング社やスロバキアのAeroMobil社をはじめとしたさまざまな企業がすでに空を飛ぶ車の飛行試験に成功しており,日本でも2020年8月に有志団体CARTIVATORとSkyDrive社が飛行試験に成功しています.また海の車については,2008年にスイスのリンスピード社がsQubaという海を潜って移動可能な車を発表しています.このように空や海を行ける車を作ること自体は,現代の技術でも可能です.ただ,市販化するためには,まだまだ飛行性能や安全性,法整備,さらには値段などさまざまな課題があるため,誰もが買えるようなものにはなっていません.でもいつかは皆がこういった車を買えるようになり,気軽に山の頂上に飛んでいったり,気分転換に海中散歩を……なんてことが当たり前になる時代が訪れるかもしれません.ぜひこれからも空や海に行ける車のニュースに注目してみてください.

  これからの未来,まず「車」という乗り物の姿形が変わっていき,「移動」する物を総称してモビリティと呼ぶ時代がやってきます.
  道路だけではなく園内や構内,屋内まであらゆる環境に対応したモビリティが登場します.
  その中にもちろん,空や海を移動できるモビリティもあるはずです.
  今日の時点でも,空を飛ぶ乗り物として飛行機やドローンがありますし,海を渡る乗り物として船やボートがあります.
  これらのモビリティは今後どんどん共通化が進みます.製造方法は違えど,情報技術に関する原理原則は共通化できるものが多いからです.
  では,これらをすべて合体させたモビリティが登場するかというと,それにはまだ研究が必要です.大きなドローンにタイヤをつければ,見た目はたしかに空を飛ぶ車ですが,大きな車体を空に飛ばすには相応のプロペラ設計が必要になり,その風圧は一般道路で許容されるものではないでしょう(部屋でドローンを飛ばすと紙が舞い散るイメージです).
  しかし私はいずれ用途を限定した形でそういった多目的モビリティというのは登場すると思います.そしてそこにはAIが搭載された自動操縦機能も備わっていることでしょう.

加藤真平
加藤真平
[正会員]
東京大学
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