Vol.61 No.4(2020年4月号)



Vol.61 No.4(2020年4月号)

匿名希望
匿名希望
(公開質問)

 

   情報は地球を何秒で周りますか?

   情報は地球を何秒で周りますか?ってすごく面白い質問ですね.まずは「地球を周る=情報にアクセスできる人口のX%」と定義してみます.情報の広がりは病気の感染と似た数理モデルで予測できるようです.いくつかのモデルがありますが,取り得る状態を「情報を知っている状態」と「情報を知らない状態」の2つのみに定義してみると次の式のようにモデル化できます(SIモデル).
   y'=a(w-y)y
 式中ではy,a,wはそれぞれ情報を知っている人数,情報の伝わりやすさ,全人口を意味しています.情報を知っている人が少ない初期期間はゆっくりと情報が伝播し,ある程度の人が知ってくると伝播速度が急上昇します.噂の広がりに関する過去の研究1)では全人口の90%以上が知っているときを「蔓延状態」と定義していたので,y=0.9wとなるまでの時間が「情報が地球を周る時間」と言えそうです.また,フェイクニュースに関する過去の研究2)では「嫌悪,驚き,恐怖」といった負の感情の方が伝播やすいと報告されているので,式中のaはニュースの感情特徴量で表現できそうですね.

参考文献
1) 蜷川 繁 他:うわさの伝播モデル,情報処理学会論文誌,Vol.41, No.2 (Feb. 2000).
2) Vosoughi, S. et al.  : The Spread of True and False News Online, Science, Vol.359, Issue 6380 (2018).

田脇裕太
田脇裕太
慶應義塾大学

鬼塚 真
鬼塚 真
[正会員]
大阪大学

  情報は電気信号(あるいは光の信号)として,インターネットや携帯電話のなどの通信ネットワークを経由して,世界に送ることができます.信号を送るスピードは光のスピード(地球を一周するのに 0.13秒,アメリカと日本の間だと0.036秒)と同じなので,きわめて高速に送れるような気がしますが,実際には情報を送る側と受け取る側で情報を送る前に準備が必要で,さらに送る側と受け取る側の間の中継地点でも情報の仕分けが必要です.インターネットの平均的な応答時間は0.2秒程度だそうです.それでも速いですね. 一方で,情報が伝わることによる影響の大きさを考えると,最も分かりやすい例の1つに株価変動があります.日本の株は全世界の人たちが購買しています.この場合は情報が世界を周るというよりも,世界の人々が東京の証券取引所にアクセスするということになります.これまで株の売り買いは人がコンピュータを使って行っていましたが,最近ではコンピュータが自動判断して株の取引きを行う時代になりつつあります.現在の技術では,1秒間におおよそ100万人分の取引処理を行うことができるので,まさに「時は金なり」の時代と言えますね.

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