Vol.60 No.5(2019年5月号)



Vol.60 No.5(2019年5月号)

鈴木大志
高専生
(Twitterハッシュタグより)

 

  高専を3年でやめて大学に移るか,高専4, 5年を過ごすかすごく悩んでいて,高専から大学に進んだ場合のメリットとデメリットを教えてください.

 私自身は,高専で5年間学んだ後に3年次編入試験を経て大学へ進みました.3年次編入のメリットは,高専4, 5年を使い専門性を高めることができること,大学1, 2年の基礎科目の単位がある程度認定(認定単位数は大学に大きく依存します)されて専門科目を中心に学べるため,専門性を伸ばしやすい環境を作れることだと思います.自主的に色々な分野の勉強をしないと知識が偏ってしまうかもしれませんが,専門に特化して「尖った」人材を目指しやすい環境は,私には合っていたと感じています.
 デメリットは,3年次編入を受け入れている大学が限定されることと,一部の大学では3年次と言いながら卒業まで最低でも3年かかることです.高専時代とまったく異なる学部へ進学することも難しいでしょう.また,どうしても周囲の学生から「編入生」という目で見られてしまいますので,大学に編入生のコミュニティやサポートがない場合,新たな環境に馴染むための努力が必要となります.高専3年から大学1年に進学した場合上述のような問題はなく,晴れて普通(?)の大学生として生活をスタートさせることができます.ただし,センター試験の対策をしている高専は少ないと思いますので,受験勉強は進学校より大変になることが予想されます.

森勢将雅
森勢将雅
[正会員]
山梨大学

田中邦裕田中邦裕
さくらインターネット(株)
代表取締役社長
(1998年舞鶴高専
電子制御工学科卒業)

  質問者さんがどういう人生を送りたいのか,何をしたいのかに尽きると思います.
  何年単位で考えるのか,優先したいことが収入,働きがい,プライベートなど,どういうことなのか,そもそも質問者さんの学力や面接スキルがどのくらいなのかによって選択肢は決まるでしょう.
  そして高専を辞めなくても,編入すれば大学には行けますし,一般的に編入よりもセンター試験を受ける方が手間が多いといえます.
  なので,高専をなぜ辞めないといけないのかを考えてみましょう.
  一般的には,行きたい大学や学部が高専からの編入を受け入れていない場合,次に高専のクラスにまったく馴染めずストレスな場合,そもそも高専の勉強が合わない場合などが,高専に居続けるデメリットだといえます.
  なお,一番大事なのは,人に言われて決めるのではなく,自分がこうだ!と思った行動をすることです.
  質問者さんの人生は自分のものですから,メリットを考えるより,後悔のない選択を考えることをオススメしたいです.
 

 3年で辞めるのはメリットないのでやめましょう.センター試験を受けて普通の受験をするとなると,進学校などの高校生と受験戦争を争うことになりますから,それなりの不利は覚悟しなければなりません.
 周りを見ても大学 1, 2年間を遊んで暮らした普通の大学生よりも,高専から編入してきた学生の方が優秀です.まずはしっかり今の主戦場を存分に戦い抜いてみてください.
 ちなみに僕は高専中に経産省の未踏に応募しスーパークリエータを取り,19 歳で起業し高専機構から表彰されました.毎日の睡眠時間は2時間でしたが彼女もいましたし部活もし,そこそこ楽しくやりました.若いからこその体力と周りの支援のもとにできた無茶ですが,その経験は今のキャリアにも十分に役に立っています.
 今こそなぜ高専に入りたかったかを自問自答し,「やりたかったことは今の環境ではできないものなのか」と考えてみてください.制約から問題解決を行うのがエンジニアリングですから,自由な発想で目的を達成してみてもらえればと思います.

大澤昇平
大澤昇平
東京大学
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