ネットワーク生態学(NE)研究グループ新設のお知らせ

ネットワーク生態学(NE)研究グループ新設のお知らせ

目的

情報化社会における価値の源泉がコンピュータ〔処理〕セントリックパラダイムから、ネットワーク〔関係性〕セントリックパラダイム に移行してきている。一方、社会科学などの分野では、基本的な分析パラダイムが属性分析から構造〔ネットワーク分析〕へ移行してきており、価値の源泉の推 移と連動して、すべての対象世界をネットワークとして意味づけその価値に連動した活動分布を生態系として可視化するともに、関係性が持つ潜在力に着目した 新しい原理の発見や価値の創造が可能になってきた。
その具体的な対象領域として、インターネットやWWWなどのネットワーク情報空間、物流や電力網などの社会技術インフラ、遺伝子やエネルギー代謝系の生物 システム、知人や企業間の社会ネットワークなどは、それぞれ全く異なる要素や機能単位で構成されているにもかかわらず、それらの結合構造には驚くほど共通 の性質が存在することが統計物理学者やWebサイエンスの研究者らによって近年次々と発見され、新たな研究分野として世界的に注目されている。特に、情報 や富の流通を促す経済的課題をはじめ、癌などの新薬開発、分散ロボットやアドホック通信、大停電やコンピュータウィルスの蔓延防止、サイバーテロへの対策 などの社会的意義の高い技術課題に挑戦する新しい原理として、NatureやScienceなどの科学雑誌はもちろん、NewYork Times、USA Today、Business Week、BBC、CNNなどの主要メディアでも話題となり、欧米での関心は極めて高い。もちろん、NSF等による援助も盛んに行われている。
一方、我が国においては、この研究分野が、経済分析、情報通信技術、Web解析、分散ロボット、グラフアルゴリズム、物理学、分子生物学、薬学、など学際 的に横断することもあって、組織的な研究活動のサポートは皆無なのが現状である。そもそも、ネットワークを流れる媒体や構成要素の違いに囚われず、そのト ポロジカルな性質と通信効率や頑健性などとの関係を議論することや、さらに社会システムとしての望ましい未来を探ることは、まさに情報論的に捉えた「ネッ トワーク」の研究として適したものと考えられる。
発起人らは、一昨年から既に、こうした「ネットワーク生態系」に関するシンポジウムを自主的に主催し、幸いにも会場が埋まる程に盛況な会合を継続的に実施 している。今回、このシンポジウムの発展形として、この分野の研究コミュニティのさらなる醸成を促すために情報処理学会の研究グループとしての設立を申請 したい。

ネットワーク生態学研究グループWebページ: http://www.jaist.ac.jp/ ̄yhayashi/NetEcoG_top.html
 

主な研究分野

  • ネットワーク成長原理スモールワールド・スケールフリーモデル、ウィルス拡散や連鎖的被害(停電、渋滞、倒産など)の防御策
  • 社会ネットワーク分析Webポータルやコミュニティの抽出、企業等のソーシャルキャピタルの調査・活用blog解析、地域情報空間の可視化、ネットワーク経済指標、人的ネットワーク中心性、口コミや情報流通
  • 自己組織化ネットワーク生物的・社会的メカニズムに誘発されたネットワーク設計、動的適応通信、局所情報に基づく自律分散システム、自己組織化経営

提案者(五十音順)

茨木俊秀 (関西学院大)、上田修功 (NTT)、上林憲行 (東京工科大)、大平 徹(ソニー)、大橋 弘忠(東大)、岡本 洋 (富士ゼロックス)、 片井 修(京大)、金光 淳 (政治経済研究所)、木村昌弘 (NTT)、小島一浩 (産総研)、澤井秀文 (情報通信研究機構)、下原勝憲 (ATR)、相馬 亘 (ATR)、林 幸雄 (北陸先端大)、藤原義久 (ATR)、安田 雪 (社会ネットワーク研)、山下雅史 (九大)、湯田聴夫 (ATR)