2019年度(令和元年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は39研究会の主査から推薦された計57編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,理事会(2019年8月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の下記受賞者には,3月6日に金沢工業大学で開催される第82回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI IS AVM GN DC MBL CSEC ITS UBI IOT SPT CDS DCC ASD

<メディア知能情報領域>
NL ICS CVIM CG CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE AAC

コンピュータサイエンス領域

●Compressed Vector Set: A Fast and Space-Efficient Data Mining Framework
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum 2018)(2018/9/13)](データベースシステム研究会)
oyamada

小山田 昌史 君 (正会員)

2011年3月 筑波大学情報学群情報科学類 卒業.
2013年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科 博士前期課程 修了.
2013年4月 日本電気株式会社 入社.現在に至る.
2018年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科 博士後期課程 修了.博士(工学).
機械学習・データベース技術に関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,データセットの疎密によらず高速かつ容量効率のよいフレームワークであるCompressed Vector Setを提案している.提案手法では,RLE/Packbitsによるベクトル圧縮を採用することによって圧縮状態でのノルムおよび内積の計算を可能にし,これによって高速化を実現している.また,次元並び替えや離散化によってさらに容量効率を高めている.
提案手法は,ノルムや内積を計算に用いる幅広いアルゴリズムの高速化が可能である.また,疎なデータセットを対象とする既存の手法は密なデータセットでは容量効率が悪化する場合があるのに対し,提案手法は密なデータセットにおいても容量効率が悪化しない.このように提案手法は有用性が高く,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●Apache DrillとFPGAアクセラレータを統合するシステムアーキテクチャの提案
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019)(2019/3/5)](データベースシステム研究会)
watanabe

渡辺 聡 君 (正会員)

1997年 早稲田大学理工学部数学科 卒業.
1999年 早稲田大学理工学研究科 博士前期課程 修了.
1999年 日立製作所研究開発本部 入所.現在に至る.
2019年 9月 早稲田大学 基幹理工学研究科 博士後期課程 入学.
データベース,サーバ,ストレージ,AIシステムの研究に従事.
情報処理学会,電気通信学会,各会員.

[推薦理由] 本論文では,既存のDB(database)に対する,FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いたアクセラレータシステムのアーキテクチャを提案している.提案システムにおいて,システム開発・導入に要するコストと処理の高性能化のバランスをどのように決めたか,DBアクセラレータシステムの実用化に向けた課題にどのように対応しているかについて,既存のFPGAとDBそれぞれのアーキテクチャを踏まえて具体的かつ明快に説明されている.また,既存のDBアクセラレータとの違いも具体的に述べられ,提案手法の位置づけも明確である.提案されたアーキテクチャは汎用的であり,今後のDBアクセラレータ開発における基礎となると考えられる.よって,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●企業のソフトウェア開発に対する自動プログラム修正技術適用の試み
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES2018)(2018/9/6)](ソフトウェア工学研究会)
naito

内藤 圭吾 君 (正会員)

2017年 大阪大学基礎工学部情報科学科 中退.
2019年 大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス先行 博士前期課程 修了.
同年 株式会社NTTデータ 入社.現在に至る.

[推薦理由] 近年,自動プログラム修正技術の研究が盛んであるが,その修正の可否を評価する対象は,オープンソースソフトウェアや評価用ベンチマークである.このため,自動プログラム修正技術が実際の開発で利用可能であるのか,さらにはどの程度の利用価値があるかどうかという点は未だ不明のままである.本論文は,企業内で実際に開発および利用されているシステムのプログラムに対して,既存の3つの自動プログラム修正ツールによりバグの修正が可能であるかどうかを調査した結果を示している.一部のバグについては自動修正が可能であることを示し,その上でツール利用に関する障壁を考察している.企業におけるソフトウェアを対象として自動プログラム修正技術の適用可能性を明らかにした点,自動プログラム修正の今後の研究に対する有益な展望を与えた点から,山下記念研究賞にふさわしい論文である.
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●ITシステム開発における類似プロジェクト検索技術の開発
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES2018)(2018/9/7)](ソフトウェア工学研究会)
yamamoto

山本 智基 君 (正会員)

2012年 豊田工業高等専門学校情報工学科 卒業.
2014年 筑波大学理工学群社会工学類 卒業.
2016年 筑波大学大学院システム情報工学研究科リスク工学専攻 博士前期課程 修了.
同年 株式会社NTTデータ 入社.現在に至る.
「データサイエンス×ITシステム開発データ」というテーマでのR&D,および,開発現場支援に従事.

[推薦理由] 実際のITシステムの開発プロジェクトでは,類似するプロジェクトの情報を参照する機会が多いにもかかわらず,プロジェクトの類似性を判断する基準は曖昧なままである.本論文では,実務者を対象としてアンケート調査を実施し,その結果に基づき類似プロジェクトの選定と参照を支援する仕組みを提案している.開発の各シーンにおいて着目されるプロジェクト属性をベクトルで表現し,それをベクトル空間上の点に移す写像を考案することで,プロジェクトの類似度を定量的に測定する手法を確立している.これにより,類似プロジェクトが機械的に検索できるようになっている.Web上で利用可能な検索システムを実装している点,適用実験を行っている点も含めて,提案手法の実用性はきわめて高く,山下記念研究賞にふさわしい論文である.
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●ルーティングアルゴリズムによる通信帯域の測定と理解
[2018-ARC-232(2018/7/31)](システム・アーキテクチャ研究会)
kawano

河野 隆太 君 (正会員)

2013年3月 慶應義塾大学理工学部 卒業.
2015年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科 前期博士課程(修士課程)卒業.
2018年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科 後期博士課程(博士課程)卒業.
2018年4月~2019年3月 慶應義塾大学 天野研究室 ポスドク研究員.
2019年4月~現在 慶應義塾大学 天野研究室 助教(有期).
高性能計算向け相互結合網に関する研究に従事.
情報処理学会, 電子情報通信学会, IEEE, 各会員.

[推薦理由] データセンターの大規模化にともない,高い要求レベル並列性を活用するための大規模ネットワークの実現が喫緊の課題となっている.この問題の解決に向け,近年ではランダム正則グラフに基づくスイッチ間ネットワークに注目が集まっているが,既存の等価コスト複数経路ルーティングやk-最短経路ルーティングではランダムネットワークの経路の多様性を活かせず通信帯域が悪化するといった問題がある.これに対し本研究では,ワーストケース帯域を最大化可能な k-最適経路ルーティングを提案しており,既存手法に対し大幅な通信帯域の改善を実現している.今後,更なるビッグデータ処理の普及・拡大を鑑みた場合,大規模ネットワーク設計はデータセンター・アーキテクチャを決定する上で極めて重要であり,本論文はこの課題に対する極めて有望な解の一つを提示した価値あるものである.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●1Tbps 実現に向けたルータのメモリ階層の最適化
[2018-ARC-233(2018/12/7)](システム・アーキテクチャ研究会)
tanaka

田中 京介 君 (学生会員)

2019年3月 電気通信大学情報理工学部情報・通信工学科 卒業.
2019年4月 電気通信大学大学院情報理工学研究科 博士前期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 高度情報化社会の発展にともないインターネットトラフィックは増大の一途をたどっている.この状況に対応すべく,今後は1テラビット/秒といった大容量回線が登場するであろう.しかしながら,既存技術におけるパケット処理性能は100ギガビット/秒程度であり,一桁以上のさらなる性能改善が必要である.この課題を解決する一つの有効なアプローチとして,パケット処理に必要となるテーブル検索の高速化を目的としたキャッシュ(パケット処理キャッシュ)の導入が挙げられるが,その最適な階層や容量に関する詳細な分析は行われていなかった.これに対し本研究では,実ネットワークトレースを用いた詳細な性能解析を行っており,その結果として最適な構成により1テラビット/秒を達成可能であることを示した.また,状況によっては初期参照ミスが問題となることを指摘しており,これは今後のルータ設計における重要な指針となり,価値ある内容である.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●追記型インターフェイスによるSSDのテイルレイテンシ改善
[コンピュータシステム・シンポジウム(ComSys2018)(2018/11/30)](システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
tadokoro

田所 秀和 君 (正会員)

2007年9月 東京工業大学理学部情報科学科 卒業.
2009年9月 東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻 修士課程 修了.
2012年9月 東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻 博士課程 修了,博士(理学).
2012年10月 九州工業大学 博士研究員.
2013年4月 株式会社東芝 研究開発センター.
2018年4月 東芝メモリ株式会社 メモリ技術研究所.
2019年10月 キオクシア株式会社 メモリ技術研究所.

[推薦理由] SSD は NAND 型フラッシュメモリの持つ特性に由来するガーベジコレクション(GC)の影響により,I/O 処理のレイテンシが大きく伸びることがある.本研究では,ログ構造ファイルシステムの実現に目的を絞り,GC処理を排除することでレイテンシの増大を防ぐSSDの設計を提案している.提案手法はsegment-based I/O と buffer pinning の2つで主に構成されており,これらにより既存のログ構造ファイルシステムを容易に移植可能である.本手法は,高性能と省電力を同時に達成可能な SSD の適用可能範囲をさらに拡大するものであり,山下記念研究賞の受賞に相応しい斬新かつ有用な研究成果であると認められる.
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●FDSOIプロセスにおけるスタック構造のソフトエラー耐性を高める対策手法の提案およびデバイスシミュレーションを用いた評価
[DAシンポジウム2018(2018/8/31)](システムとLSIの設計技術研究会)
yamada

山田 晃大 君 (正会員)

2017年 京都工芸繊維大学工芸科学部電子システム工学課程 卒業.
2019年 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科電子システム工学専攻 博士前期課程 修了.
同年 トヨタ自動車株式会社 入社,現在に至る.

[推薦理由] 集積回路素子の微細化に伴いソフトエラーによる集積回路の信頼性低下が問題となっている.本論文では,FDSOI (fully-depleted silicon on insulator) プロセスにおいて既存の非多重化対策であるスタック構造の脆弱性を重イオン照射測定により明らかにし,スタック構造の耐性を高める回路構造を提案している.重イオン照射シミュレーションによりソフトエラー耐性を評価することで,提案構造が宇宙空間での使用にも耐え得る高い信頼性をもつことを明らかにした.本論文は,耐ソフトエラー性を向上して集積回路の信頼性技術に大きな指針を与える価値の高い論文であることから,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●最大充足化問題を用いた抵抗性オープン故障に対するテスト生成法
[2019-SLDM-187(2019/3/18)](システムとLSIの設計技術研究会)
yamazaki

山崎 紘史 君 (正会員)

2010年 日本大学生産工学部数理情報工学科 卒業.
2015年 同大学大学院数理情報工学専攻 博士後期課程 修了.
同年 日本大学生産工学部 助手.
2019年 日本大学生産工学部 助教.
現在に至る.
VLSIのテスト容易化設計,テストパターン生成に関する研究に従事.

[推薦理由] VLSIのテストでは縮退故障モデルや遷移故障モデルが用いられてきたが,これらの故障モデルでは検出困難な欠陥が増加しており,その一つは抵抗性オープン故障でモデル化できる.抵抗性オープン故障は,隣接信号線の遷移によって遅延サイズが変化するため,テスト生成時に隣接信号線の考慮が重要となる.本論文では,MAX-SATを用いて隣接信号線の逆相遷移を考慮した抵抗性オープン故障のテスト生成法を提案し,テストパターン特性を評価した.その結果,従来の遷移故障ATPGと比較して逆相遷移数が平均約15%向上した.本論文は,抵抗性オープン故障のテスト生成技術に大きな指針を与える価値の高い論文であることから,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●Volta世代のGPUにおける重力ツリーコードの性能評価
[2018-HPC-166(2018/9/27)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
miki

三木 洋平 君 (正会員)

2009年3月 筑波大学第一学群自然学類 卒業.
2011年3月 筑波大学大学院数理物質科学研究科物理学専攻(博士前期課程)修了.
2013年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻(博士前期課程)修了.
2014年3月 筑波大学大学院数理物質科学研究科物理学専攻(博士後期課程)修了.博士(理学).
2014年4月 筑波大学計算科学研究センター 研究員.
2017年10月 東京大学情報基盤センター 助教,現在に至る.
銀河進化,高性能計算に関する研究に従事.
日本天文学会,情報処理学会各会員.

[推薦理由] 本研究では,従来のGPU向けの最適化がなされていた重力ツリーコードを最新のGPUであるTesla V100に移植し,その性能を評価している.その過程において,Tesla V100の性能を活用するための詳細な実装手法の分析を行っているが,分析から得られた様々な知見は重力ツリーコードのみに留まらず,様々な応用で有用であると評価できる.また,性能評価においても,単なる計算速度の比較に留まらず,HPC研究の模範とも言うべき,詳細な分析がなされている.以上の内容から,本研究は山下記念研究賞に相応しい研究であると評価できる.
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●小疎行列積計算のGPU最適化
[2019-HPC-168(2019/3/7)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
nagasaka

長坂 侑亮 君 (正会員)

02014年3月 東京工業大学理学部情報科学科卒業.
2016年3月 東京工業大学大学院 情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 修士課程 修了.
2019年3月 東京工業大学大学院 情報理工学院 数理・計算科学系 博士後期課程 修了.博士(理学).
2019年4月 株式会社富士通研究所入社.
現在に至る.

[推薦理由] バイオインフォマティクス等における深層学習的手法の適用として注目されているGraph Convolutional Networks (GCNs)では,小行列の疎行列積計算が多数行われる.本研究では,深層学習の応用においてよく用いられるGPUを対象に,小行列に対して効果的な疎行列積計算カーネルを提案すると共に,複数の疎行列積計算を一つのカーネルで実行するバッチ方式の処理を提案した.その結果,従来法と比べて,最大で9倍以上の性能向上を達成した.提案方式は,GCNsの高速化について,有用性を示しており,本研究は山下記念研究賞に相応しい研究であると評価できる.
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●Dual-context Modal Logic as Left Adjoint of Fitch-style Modal Logic
[(2018/6/7)](プログラミング研究会)
kakutani

角谷 良彦 君 (正会員)

1999年 京都大学理学部 卒業.
2003年 京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻 修了.
2003年 日本学術振興会 特別研究員PD.
2004年 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 助手.
2016年 同 特任講師.
2018年 株式会社マインド・アーキテクト 入社.
博士(理学).

[推薦理由] 本論文では,直観主義様相論理IKの2種の導出システム(Fitch-style calculusおよびdual-context calculus)に注目し,圏論的モデルを介して見たときに,2レベルのdual-context calculus上の□様相が2レベルのFitch-style calculus上の□様相の左随伴となっていることを示している.また,dual-context calculusをmulti-context calculusに拡張し,multi-context calculusとFitch-style calculusとの間にも同様の関係があることを示している.Fitch-style calculusとdual(multi)-contextシステムの証明能力は等価である(すなわち,証明できる論理式の全体が一致する)ため,証明可能性という点だけから見ると,multi-context calculusとFitch-style calculusの□様相の振舞いに差はない.従って,これら2つの間に前述のような差が現れることは,驚くべき結果である.また,様相論理の専門家以外にも成果の新規性などがわかりやくまとめられていた点も高く評価できる.以上より,この研究を山下記念研究賞にふさわしいものとして推薦する.

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●On the Multi-Service Center Problem
[2018-AL-169(2018/9/3)](アルゴリズム研究会)
ito

伊藤 健洋 君 (正会員)

2006年3月 東北大学大学院情報科学研究科 博士課程後期3年の課程 修了.博士(情報科学).
2006年4月 東北大学大学院情報科学研究科 助手.2007年度より助教.
2012年1月 東北大学大学院情報科学研究科 准教授.現在に至る.

[推薦理由] 施設配置問題は,古くから多種多様な問題設定において研究されてきた.本研究では,複数種類の施設を配置するような問題設定に対して,当該問題の計算複雑さが,どのようなグラフ構造に起因するのかを解析している.具体的には,入力グラフが木である場合には多項式時間アルゴリズムを開発する一方で,入力グラフが閉路である場合には強NP困難であることを証明している.すなわち,閉路の有無によって,当該問題の計算困難性と容易性がわかれることを明らかにした.既存研究では,このようなグラフ構造に関する綿密な解析はほとんどなく,本研究は高く評価できる.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしいものとして本研究を推薦する.
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●厳しい評価回数制限下における多変数問題に対するアプローチの提案
[2018-MPS-120(2018/9/26)](数理モデル化と問題解決研究会)
kaihatsu

開発 拓也 君 (正会員)

2017年3月 室蘭工業大学情報電子工学系学科 卒業.
2019年3月 室蘭工業大学大学院情報電子工学系専攻 博士課程(前期課程) 修了.
2019年4月 株式会社ソフトクリエイトホールディングス 入社.
現在に至る.
第113回MPS研究会 ベストプレゼンテーション賞,情報処理学会北海道支部大会 優秀ポスター賞,進化計算コンペティション2017 最優秀賞(単目的最適化部門),第120回MPS研究会 ベストプレゼンテーション賞,情報処理学会コンピュータサイエンス領域奨励賞,電子情報通信学会北海道支部 学生奨励賞 受賞.

[推薦理由] 実世界における最適化問題には計算負荷が高く,評価回数が厳しく制限される場合が少なくない.特に,多変数や多峰性のある問題の場合,少ない評価回数で良質な解を導出することは非常に困難である一方,このような状況を想定したアルゴリズム開発はその数が非常に限られている.本研究では,計算資源の限られた状況下における多変数問題に対する新たなアプローチとして ESRS (Estimating Search area based on Random Sampling) を提案している.従来の分布推定アルゴリズムに比べ明示的に探索範囲をコントロールする機能に特化しており,膨大な探索範囲をより計画的に探索するアプローチとなっている.また,ESRS のもう 1 つの大きな特徴として,非常に機能が簡素化されており,単純な操作により明示的に探索空間を管理した探索を実現し,有用性の確認を行っているため.
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●A motion planning method for mobile robot considering rotational motion in area coverage task
[Asia Pacific Conference on Robot IoT System Development and Platform(APRIS2018)(2018/10/31)](組込みシステム研究会)
yano

矢野 泰生 君 (学生会員)

2018年3月 京都大学工学部情報学科 卒業.
2018年4月 京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文はエリアカバレッジタスクにおける移動ロボットの動作計画手法を提案している.提案手法ではロボットが経路上で行う回転動作の回数に着目し,その最小化を行うことによって走行時間が最短の経路を導出する.作業空間を表すグラフ構造の違いと回転動作の回数との間の関係性に基づいて,複数のグラフを1つにまとめたグラフ圧縮表現を導入することで探索時間を大幅に削減し,多項式時間での探索を実現している.山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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情報環境領域

●SmartFinder:集約型自己組織化スマートデバイス位置推定方式のノード間メトリックを用いた拡張とその実装
[2018-DPS-175(2018/5/24)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
kitanouma

北之馬 貴正 君 (正会員)

2014年 関西大学環境都市工学部都市システム工学科卒業.
2016年 関西大学大学院理工学研究科博士課程前期課程修了.
2019年 関西大学大学院理工学研究科博士課程後期課程修了,博士(工学).
2019年~現在 関西大学先端科学技術推進機構客員研究員,株式会社Phindex Technologies代表取締役.
無線ネットワークにおける自己組織化等の研究と屋内測位技術の事業化に従事.
情報処理学会会員.

[推薦理由] 本発表では,屋内施設での人の活動状況を把握するための,スマートデバイスの位置を推定する手法の拡張を提案している.隣接ノード間の距離をホップ数のみで判定していたものを,RSSIを用いた距離を導入することにより,マルチトポロジを構成する必要があるといった課題を解決し,応用先を広げている.さらに,提案手法を実装し,移動ノードの追随速度について実証を行なっている点も評価できる.よって,本論文を山下記念賞に推薦する.
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●分散エッジ環境における機械学習実現最適化の検討~エッジ上で動作するアルゴリズム・オントロジーの決定と転移学習適用による最適化検討~
[2019-DPS-177(2019/1/31)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
mori

森 郁海 君 (正会員)

2007年3月 公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系科学科 卒業.
2009年3月 公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科 博士前期課程 修了.
2009年4月 三菱電機株式会社 入社.情報技術総合研究所 配属.
2019年4月 公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科 博士後期課程 入学.
現在に至る.
クラウドソリューションに関する研究に従事.

[推薦理由] エッジコンピューティングにおいて,プライバシーなどの観点から機械学習の訓練処理をエッジで実施するユースケースが存在する,本発表では,リソースが限られたエッジ上での処理のための最適な機械学習アルゴリズムとオントロジーの決定手法,ならびに,訓練データ不足を解決するための転移学習における学習モデルの決定手法を提案・実機評価を行なっている,今後の発展が期待できる応用性の高い研究であるため,本論文を山下記念賞に推薦する.
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●抵抗膜方式の多重座標計測による布製タッチセンサの提案
[2019-HCI-181(2019/1/22)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
aoki

青木 靖太 君 (正会員)

2019年 関西大学総合情報学部総合情報学科 卒業.
2019年 関西大学学術情報事務局情報推進グループ 職員.
在学中はインタラクションデザインに関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究では,抵抗膜方式を応用した布製タッチセンサにおける座標認識の精度向上を図る手法として,複数点からの多重座標計測を用いた手法を提案している.提案手法ではセンサの複数の点で座標計測の基準点を切り替えながら計測を繰り返すことで,認識座標のずれが少なく,押下圧力に影響されにくいポインティングを可能にしている.また,押下圧力が計測基準点の電圧値に影響を及ぼす性質を利用し,押下圧力の計測も同時に実現している.先行研究を再現して検証を行うことで問題点を明確にし,独創的なアイデアでその問題点を解決しており,研究内容のみならず論文構成の点においても高く評価できる.よって,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●BBeep:歩行者との衝突予測に基づく警告音を用いた視覚障害者のための衝突回避支援システム
[インタラクション2019(2019/3/6)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
kayukawa

粥川 青汰 君 (学生会員)

2018年 早稲田大学先進理工学部 卒業.
2018年 早稲田大学先進理工学研究科 入学.

[推薦理由] 本論文では,混雑した環境において視覚障害者と歩行者の衝突を回避するためのスーツケース型システムBBeepを提案した.BBeepは周囲の歩行者の検出および将来位置の予測結果から歩行者がユーザと衝突する危険性を予測し,衝突する危険性をもった歩行者に対して警告音を鳴らす.本論文では,視覚障害者によるシステムの評価実験を国際空港内で行い,BBeepにより歩行者との衝突する危険性を大幅に低下可能であることを確認した.本研究は視覚障害者自立移動支援研究の新たなパラダイムを提案しただけでなく,実用化も見据えシステムの有用性を空港という実環境内において検証した点は本論文の特筆すべき点である.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●広域観光支援システムへのデザイン思考アプローチ適用の試み
[2018-IS-145(2018/9/8)](情報システムと社会環境研究会)
ueda

上田 翔磨  君 (正会員)

2017年 岩手県立大学ソフトウェア情報学部 卒業.
2019年 岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 博士前期課程 修了.
在学中は観光情報システム,デザイン思考の研究に従事.

[推薦理由] 本発表は,これまでの観光支援システム開発における課題や達成成果を整理し,その結果判明した問題分析および解決策検討の不足点を改善するために,システムデザインの初期段階にデザイン思考を取り入れ,プロトタイプの開発結果を報告するものである.ユーザ要求の調査では,定量的調査では分からなかった点を明確にするために定性的な調査と分析を行い,ペルソナ・カスタマージャーニーマップの作成やユーザ要求事項の分析を行った.また,この分析を確認するための二次調査も行っている.現段階では,デザイン思考が取り入れられているのは,システムデザインの初期段階だけだが,本発表の考察では,その時点でのデザイン思考を取り入れたメリットと不足点等を整理して,今後の研究への道筋をつけている.これらの点から,本発表は山下記念賞にふさわしいと判断し,推薦する.
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●Real-time free viewpoint rendering via view-dependent polygon plane arrangement
[2019-AVM-104(2019/3/1)](オーディオビジュアル複合情報処理研究会)
nonaka

野中 敬介 君 (正会員)

2008年 東京工業大学工学部情報工学科 卒業
2010年 同大学大学院理工学研究科集積システム専攻 修士課程了.
2014年 同大学大学院総合理工学研究科物理情報システム専攻 博士後期課程了.博士(工学).同年 KDDI(株) 入社.
2015年 (株)KDDI総合研究所 出向.
2019年 南カリフォルニア大学 客員研究員.現在に至る.
自由視点映像生成,コンピュータビジョンの研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,実写映像を基に仮想視点映像を合成する自由視点映像技術において,高速な合成手法を提案し,その有効性を示している.提案手法では平面に基づく被写体形状生成という新たなデータ構造を採用することにより,従来の自由視点技術では困難であったリアルタイムでの映像合成という課題を解決している.実験では,従来と同等の品質を保ちながら,大幅な高速化を達成していることを客観評価指標により示している.VR,AR,自由視点映像などの超臨場感体験の国際的な普及が期待される背景のもと,本論文は飛躍的な同分野の進歩を導くことが期待できることから,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●複数対話型エージェントの役割分担によるユーモア生成システムの基礎検討
[グループウェアとネットワークサービスワークショップ2018(2018/11/16)](グループウェアとネットワークサービス研究会)
nakahara

中原 涼太 君 (正会員)

1996年生.
2019年3月 日本大学文理学部 卒業.
2019年4月 富士ソフト株式会社 入社, 現在に至る.
情報処理学会会員.

[推薦理由] 本研究は,ユーモア発話を行うエージェントに加えて,ユーモア発話を指摘し会話推進を行うエージェントを導入して役割分担させることを提案したものであり,新規性の面から特筆すべきものである.対話型エージェントの実用性向上にも寄与する研究であり,推薦する.
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●講演者および聴講者の双方を支援するためのVR講演システムの開発
[2019-GN-106(2019/1/25)](グループウェアとネットワークサービス研究会)
morimoto

森本 麻代 君 (学生会員)

2012年3月 同志社大学理工学部インテリジェント情報工学科 卒業.
2014年3月 同志社大学大学院理工学研究科情報工学専攻 博士前期課程 修了.
2014年4月 日本電気株式会社 入社.
2015年4月 同志社大学大学院理工学研究科情報工学専攻 博士後期課程 進学.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,聴講者には必要な情報を与えて十分に講演内容を理解させ,また講演者へ参考情報の提示をチャットボットでサポートすることが出来るVR 講演システムを提案したものであり,新規性の面から特筆すべきものである.講演や会議を支援するシステムの実用性向上にも寄与する研究であり,推薦する.
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●読み手意識(Audience Awareness)尺度に基づく「わかりやすい説明文章」の背景要因の検討
[2018-DC-109(2018/7/3)](ドキュメントコミュニケーション研究会)
tsuji

辻 義人 君 (正会員)

2001年 東京学芸大学教育学部学校教育科 卒業.
2003年 東京学芸大学大学院教育学研究科 修了.
2005年 小樽商科大学教育開発センター 助手(2007年~ 助教).
2006年 東北大学大学院情報科学研究科 博士後期課程 修了.
2017年 公立はこだて未来大学システム情報科学部メタ学習センター 准教授.
博士(情報科学:東北大学)
説明活動に関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,評価基準があいまいな「わかりやすい文章」に対し,改訂版AA尺度(読み手意識(Audience Awareness)尺度)を提案し,信頼性と妥当性の検証および実際の説明文章のわかりやすさの比較を行っている.その結果,信頼性と妥当性は確認され,また,改訂版AA尺度の高低間において,説明文章のわかりやすさに有意な傾向がみられることが認められている.加えて,文章の表現技法として投薬指示文章を例に,リスク強調による理解や読み飛ばしの可能性について,示唆に富んだ考察を行っている.読み手を意識して文章を書くことは極めて重要であり,本研究はその内容について論理的に追求をしており,文章を題材としたコミュニケーション研究全般の発展に寄与する内容であるといえる.以上の理由から,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●SOXFire: XMPPに基づく都市センサ情報流通基盤
[2018-MBL-88(2018/8/31)](モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会)
yonezawa

米澤 拓郎 君 (正会員)

2005年 慶應義塾大学環境情報学部 卒業.
2007年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 修士課程 修了.
2008年 日本学術振興会 特別研究員.
2010年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 後期博士過程 修了.博士(政策・メディア)
2011年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任助教.
2012年 米国・カーネギーメロン大学 客員研究員.
2014年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任講師.
2018年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授.
2019年 名古屋大学大学院工学研究科 准教授.

[推薦理由] 本論文では,膨大な都市センサ情報流通基盤としてXMPPを拡張したSensor-Over-XMPPに基づくSOXFireを提案している.同基盤を用いて藤沢市を中心とした都市情報収集・流通実験を2年以上という長期間にわたって継続的に実施しており,社会的価値のある応用が示されている.SOXFireでは,膨大な都市センサ情報収集において重要となるプライバシーのためのアクセスコントロールやスケーラビリティが考慮されている.さらに,藤沢市の行政業務中に得られる情報を職員に負担をかけない形で効率良く収集し,流通させる取り組みは社会課題解決という点でも高く評価できる.以上のように,本論文はスマートシティの実現にとって重要な基盤技術であり,山下記念研究賞にふさわしい特に優秀な論文として推薦する.
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●スマートフォンによる歩行者と車両の交通状況理解システムの設計と評価
[2019-MBL-90(2019/3/5)](モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会)
akikawa

秋川 亮太 君 (学生会員)

2018年 大阪大学基礎工学部情報科学科 卒業.
同年,大阪大学大学院情報科学研究科 博士前期課程 入学,現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,ヒヤリハットやそれにつながる潜在的な危険交通状況の検知と分析を実現するため,普及率の高いスマートフォンを用いた交通状況理解システムを提案している.危険交通状況の分析には車両だけでなく,関連する周辺歩行者などの交通参加者のコンテキストも併用してその要因を分析することが重要である.このため,提案手法ではスマートフォンで検知した異常をトリガとして周辺交通参加者の慣性センサデータを集約し,個人のプロファイルや地図情報と組み合わせることで,危険交通状況のコンテキストを推定する.以上のように,本論文は安心安全な交通環境の実現を大きく推進させる独創性の高いシステムを考案しており,山下記念研究賞にふさわしい特に優秀な論文として推薦する.
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●超音波の分離放射による音声認識機器への攻撃:ユーザスタディ評価と対策技術の提案
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2018)(2018/10/22)](コンピュータセキュリティ研究会)
iijima

飯島 涼 君 (学生会員)

2018年3月 早稲田大学基幹理工学部情報通信学科 卒業.
2018年4月 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工・情報通信専攻 修士課程 入学.
2019年3月 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工・情報通信専攻 修士課程 修了(早期).
2019年4月 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工・情報通信専攻 博士課程 入学.
CSS2018 最優秀論文賞, SEC道後2018 最優秀学生研究賞, SCIS2018 論文賞.

[推薦理由] 本論文では,音声入力インタフェースに対する一定の実現可能性のある影響の大きい新しい攻撃モデルを示している.攻撃手法だけでなく,それに対する対策手法まで提案している点で高い新規性と有効性が認められる.音声アシスタント機能については,プライバシーの問題や攻撃耐性の弱さなどが懸念されるため,このような研究は意義が高い.また,研究倫理面で深い考察がなされており,今後の研究に対する模範的姿勢を示している点も評価できる.よって,山下記念研究賞の受賞にふさわしいものとして推薦する.
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●実世界でも攻撃可能なAudio Adversarial Example
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2018)(2018/10/23)](コンピュータセキュリティ研究会)
yakura

矢倉 大夢 君 (学生会員)

2019年3月 筑波大学情報学群情報科学類 卒業.
2019年4月 筑波大学システム情報工学研究科知能機能システム専攻 博士前期課程 入学.
また,2015年より株式会社チームボックスにおいてCTOを務める.

[推薦理由] 本論文では,音声に対してadversarial exampleを適用し実際に攻撃に成功したことで,それが現実の脅威となりうることを実証している.音声認識モデルの構造を理論的に明らかにした上で,信号処理を駆使してadversarial exampleを生成しており,提案手法は信頼性が高い.また,ユーザ実験による攻撃の認識率を調査しており,攻撃の効果を定量的に示している.よって,山下記念研究賞の受賞にふさわしいものとして推薦する.
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●車両からの電波の長期計測による路側機の高精度測位方式の提案
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2018)(2018/7/4)](高度交通システムとスマートコミュニティ研究会)
toda

戸田 和宏 君 (正会員)

2017年 電気通信大学情報・通信工学科 卒業.
2019年 同大大学院 博士前期課程 修了.
同年 野村総合研究所入社,現在に至る.

[推薦理由] 戸田和宏君は,歩行者事故削減のため,GPS衛星からの電波に加えて,車両と路側機を測位基準点としてそれらが発する電波から距離・到来角度を算出して測位計算に組み込むことにより,都市部でも高精度な歩行者測位を可能とする手法を新たに考案した.特に,基準点となる路側機の位置を取得するために簡易な無線機を路側機に取付け,周辺車両の位置情報とそれを運ぶ無線信号の直接波のみの信号強度を用いて車両と路側機との距離を算出し,それを長期間繰り返すことにより路側機の高精度な測位を行う方式は,DICOMO2018において最優秀論文賞を受賞するなど高く評価された.
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●飲料のアルコール濃度計測を行うスマートアイスキューブの試作と評価
[2018-UBI-58(2018/5/18)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
matsui

松井 秀憲 君 (学生会員)

2014年3月 静岡県立沼津東高等学校 卒業.
2018年3月 東京大学工学部電子情報工学科 卒業.
2018年4月 東京大学大学院学際情報学府 修士課程 進学,現在に至る.

[推薦理由] 本論文は近赤外・可視光LED と光検出器を搭載し,水とアルコールの光吸収特性を利用して飲料のアルコール濃度計測を行うスマートアイスキューブを提案したものである.日常生活で利用できる飲料のアルコール濃度計測技術は今までに調査されてこなかった.本論文は,近赤外光のアルコール光吸収特性の検証,スマートアイスキューブのプロトタイプ,さらに市販のアルコール飲料を用いたプロトタイプによる測定結果を報告しており,日常生活において利用可能な飲料アルコール濃度計測技術の実現性を定量的に示したものであり,ユビキタスコンピューティング分野における貢献が大きい.以上により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●Wi-Fiチャネル状態情報を用いた教師無し学習によるドアの開閉検知手法
[2018-UBI-60(2018/12/4)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
ohara

尾原 和也 君 (正会員)

2015年3月 大阪大学工学部電子情報工学科 卒業.
2016年9月 大阪大学大学院情報科学研究科 博士前期課程 修了.
2019年3月 大阪大学大学院情報科学研究科 博士後期課程 修了.
2019年4月 日本電信電話株式会社 入社.現在に至る.
ユビキタスコンピューティングに関する研究に従事.
情報処理学会,IEEE各会員.

[推薦理由] 本研究は,部屋の中に1台ずつ設置されたWi-Fi送受信機を用いてドアの開閉を検知する手法を提案している.ドアの開閉検知はホームオートメーションや独居高齢者の見守り等への応用が期待される.本研究では,Wi-Fi電波の位相情報を含んだチャネル状態情報から物体の移動速度と方向を推定する.そして,ドア開閉操作の特徴に基づいて,教師無し機械学習技術によってラベルが付与されていないチャネル状態情報からドア開閉時の時系列パターンを抽出する.本研究によってWi-Fi電波を利用できる部屋において,事前の導入コストを必要としないドアの開閉を検知を実現でき,ユビキタスコンピューティング分野の研究を社会実装する上で大いに貢献できる.以上により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●DNSシンクホールとハニーポットを用いた不正FQDNに対する通信観測システムの開発
[2018-IOT-41(2018/5/18)](インターネットと運用技術研究会)
saho

佐保 航輝 君 (学生会員)

2016年3月 大分工業高等専門学校制御情報工学科 卒業
2018年3月 大分大学工学部知能情報システム工学科 卒業
2018年4月 大分大学大学院工学研究科博士前期課程工学専攻知能情報システム工学コース 入学,現在に至る.

[推薦理由] 不正なFQDNについてのクライアントからの問い合わせに対し,本来とは異なる回答をしてこれら悪意あるサーバへの接続を防ぐ仕組みをDNSシンクホールという.本研究では,DNSシンクホールとハニーポットを用いて不正なFQDNに対する通信を観測するシステムを構築し,不正FQDNへの接続を試みるクライアントを検知,それらの挙動を分析している.ハニーポットで収集したHTTPリクエストを分析することで,接続後の挙動や攻撃手法などを分析できる.攻撃者の挙動を安全に観測するという着眼点が非常に興味深く,その挙動から組織のセキュリティを向上させる知見が多々得られるなど有用性も高いことから推薦するものである.
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●九州大学における要機密情報の保護方法に関する一考察
[2019-IOT-44(2019/3/7)](インターネットと運用技術研究会)
shimayoshi

嶋吉 隆夫 君 (正会員)

1999年3月 京都大学大学院工学研究科情報工学専攻 修士課程 修了.
1999年4月 三菱電機株式会社 入社.
2003年4月 財団法人京都高度技術研究所 研究員.
2008年3月 京都大学大学院情報学研究科 博士課程 修了. 京都大学博士(情報学).
2013年4月 京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻 助教.
2015年11月 九州大学情報基盤研究開発センター 准教授.

[推薦理由] 本稿は,九州大学において機密性を要する情報を電子的に保存・授受する際にそれらを保護する方法について検討した内容と,制定された規則について述べられている.検討の際は,実現可能かつ実務的に運用可能であるだけでなく,機密性を保持しつつ業務効率を最大化すること,技術的手段だけでなくルールとして漏洩を予防する(ある程度のリスクを受容する)ことなどが考慮されていることがわかる.大学などの組織における要機密情報を保護するための手順などについて具体的に述べられており,多くの組織の情報システム管理者や情報セキュリティ担当者にとって極めて有用な内容となっているため,推薦する.
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●覗き見耐性を持つマウス操作と数字盤を組み合わせた個人認証方式の提案と評価
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2018)(2018/10/23)](セキュリティ心理学とトラスト研究会)
sakamoto

坂本 憲理 君 (正会員)

2019年3月 神奈川工科大学情報学部情報ネットワーク・コミュニケーション学科 卒業.
2019年4月 NTTテクノクロス株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 公共用のPCなど複数のユーザーが共用するPC上において認証を実現することの難しさに対して,特別な機器を必要とせずにかつ覗き見などの情報漏えい対策が施された認証方法を実現した論文である.新規性のみならず,その有用性を複数の視点から分析するなど実用性が高く評価できる方法になっている.提案の視点や多岐にわたる評価方法など当該分野における波及は大きく,とくに優秀な論文として推薦したい.
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●公共施設における動的案内サインを用いた人流誘導システムの評価
[2019-CDS-24(2019/1/25)](コンシューマ・デバイス&システム研究会)
ichikawa

市川 裕介 君 (正会員)

1994年 慶應義塾大学理工学部計測工学科 卒業.
1996年 同大学理工学研究科 修士課程 計測工学専攻 修了.
同年 NTT入社,マルチメディアネットワーク研究所に配属.
現在,NTTサービスエボリューション研究所主任研究員.
情報推薦システム等,通信履歴活用サービスの研究開発に従事.
情報処理学会シニア会員.

[推薦理由] 空港での人の滞留問題を実環境で評価している論文である.人流分析は実環境での評価が困難なためシミュレーションによる評価が一般的であるが,実環境との差異が問題となる.本論は羽田空港における大規模な実証実験を通して理論の有効性を証明しており,その結果は他の研究にとっても大変有効である.また研究テーマについても,今後の外国人観光客の増加を想定すると社会的にも大変意義があるテーマであり,当研究会会員の評価も高かったので当該論文を推薦する.
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●両面透過型多層空中像表示技術の提案と実装
[2019-DCC-21(2019/1/25)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
makiguchi

巻口 誉宗 君 (正会員)

2010年3月 北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科 卒業.
2012年3月 北海道大学大学院情報科学研究科 修士課程 修了.
同年4月 日本電信電話株式会社 入社.
現在,NTTサービスエボリューション研究所 研究員.
3D映像の表示デバイス・インタラクションに関する研究に従事.

[推薦理由] この論文は可搬型の空中映像表示技術を提案したものである.提案手法では4枚のハーフミラーと4枚のディスプレイを組み合わせることで,両面でそれぞれ異なる透過映像を2層で提示するという,従来手法では困難であった表示法を実現している.そして,プロトタイプを制作して,大規模イベントで実際に使用している.シンプルな構成に独自の工夫を加えることで,非常に有用な映像提示手法を実現しており,優れた研究であると言える.
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●認知症フレンドリーな社会デザインのためのマルチステークホルダープラットフォームプロセス
[2018-ASD-12(2018/6/29)](高齢社会デザイン研究会)
okada

岡田 誠 君 (正会員)

1984年 早稲田大学先進理工学部応用物理学科 卒業.
1986年 同大学大学院物理学及応用物理学専攻 博士前期課程修了.理学修士.
1986年-(現在) 富士通株式会社.富士通研究所研究部,広報IR室,研究所R&D戦略本部等.
2011年-(現在) 認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ.
一般社団認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ共同代表理事,富士通株式会社フィールド・イノベーション本部フィールド・イノベーション特命プロジェクト員,国際大学GLOCOM客員研究員.慶應義塾大学との協働プロジェクト「旅のことば 認知症ともによりよく生きるヒント」共同編著者.

[推薦理由] 認知症は,対象領域が広範で,しかも,多方面の人々が関わる社会性の強い課題である.そうした課題に対する社会デザインは, 組織や業種の枠組みを越えて進める必要がある. 本研究は従来の製品・サービスの開発とは異なる新たなマルチステークホルダーによるプロセス [ADR(Action-Development-Relation)の連鎖]モデルを提案している.ADRモデルは製品・サービスの設計フレームワークであるイノベーション・アーキテクチャーと,マーケティング領域のキャズムの考え方を組み合わせたモデルである.また,提案されたモデルに対して,複数の具体的なケースを分析し,実効性を示している.社会課題領域で有効性のあるプロセスモデルの提案を行うとともに,ケース分析の優れた研究と評価できることから,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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メディア知能情報

●A proposal for a unified corpus of the Ainu language
[2018-NL-237(2018/9/25)](自然言語処理研究会)
nowakowski

Nowakowski Karol Piotr 君 (学生会員)

2010年10月~2011年9月 九州大学留学生センター「日本語・日本文化研修コース」在学(国費留学生).
2012年11月 ポーランド国立アダム・ミツキェヴィチ大学東洋研究所日本学専攻科 卒業(修士論文のテーマ:トカラ列島の文化).
2013年1月~2017年8月 民間企業に勤務(職務内容:日本語翻訳者・品質マネジメントシステム責任者・システムエンジニア).
2017年10月 北見工業大学大学院工学研究科生産基盤工学専攻 博士後期課程 入学(国費留学生).現在に至る.
主にアイヌ語の自然言語処理に関する研究に従事.

[推薦理由] 日本という国において,その現地語の一つであり危機言語となっているアイヌ語の言語資源の構築は,決定的に重要な仕事だと考えられます.また,文法理論を精査し,統一的な枠組みを考案されていること,広い分野のテキストデータを勢力的に集められていること,将来の幅広い言語研究や危機言語の再生をその目的としていることなど多くの有意な点が認められます.このような研究を言語学の研究者ではなく,自然言語処理の研究者が行っていることも特筆すべきことであり,計算機科学からの分野を超えたアプローチが言語学の発展に寄与できることが期待できます.
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●競輪予想記事の自動配信に向けた的中車券予測
[2018-ICS-192(2018/7/7)](知能システム研究会)
yoshida

吉田 拓海 君 (学生会員)

2018年3月 北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科 卒業.
2018年4月 北海道大学大学院情報科学研究科 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,公営競技総合サービスサイトで提供される競輪に関するデータを用い,出場選手の着順の予測とそれを用いた説明記事の生成を行う手法を提案した論文である.提案手法自体は,着順予測では2人の選手ペアのどちらが先着するかをニューラルネットワークを用いて予測を行い,記事生成では予測した着順と選手情報を用意したテンプレートに当てはめて出力するという手法であり,それぞれが高い新規性を持つものではない.しかし,「出場選手の人間関によって生ずるレース展開も含めた着順予測と記事生成」という競輪特有の問題設定に新規性がある点,速報性の高い情報発信のための省力化へ実用性が高い点を評価し,山下賞に推薦するものである.
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●Linking videos and languages: Representations and Their Applications
[2018-CVIM-212(2018/5/11)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
otani

大谷 まゆ 君 (正会員)

2018年 奈良先端科学技術大学院大学 博士後期課程 修了.
同年 株式会社サイバーエージェント リサーチサイエンティスト.

[推薦理由] 本論文では,映像の種々の応用における自然言語テキストに着目したアプローチを提案しており,映像要約や映像からテキスト,テキストから映像の検索,さらに長時間の映像からテキストに対応する部分を見つけ出す手法について,ニューラルネットワークなどを利用した自然言語テキストと映像を共通の高次元空間に写像する問題とその応用としてまとめている.自然言語テキストを介在した映像の意味内容理解の可能性と有効性を示しており,コンピュータビジョン分野のみならず,自然言語処理分野の発展に大きく貢献するものである.以上より,本論文は2019年度山下記念研究賞にふさわしいものであると考え,ここに推薦する.
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●色と動き情報の学習による静止画像からのシネマグラフ生成
[2018-CVIM-214(2018/11/7)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
endo

遠藤 結城 君 (正会員)

2012年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科 博士前期課程 修了.
2012年4月~2016年7月 日本電信電話株式会社 勤務.
2016年8月 筑波大学システム情報系 助教.
2017年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科 博士後期課程 修了,博士(工学).
2018年8月 豊橋技術科学大学情報・知能工学系 助教.
2019年9月 筑波大学システム情報系 助教,現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,深層学習によって1 枚の静止画像からループアニメーション(シネマグラフ)を生成する手法を提案した研究である.この研究の独創的な点は,タイムラプス動画を動きと色変化の要素として,2 種類のニューラルネットワークに別々に学習させ,各々の予測結果を統合するところにある.各モデルにおいては,流れ場や色変換マップの中間表現を介する画像変換,および潜在変数を利用した未来の不確定性の考慮を取り入れることで,安定した学習と高画質かつ長尺の動画生成を可能にしている.動画を効率的にモデリングする技術的な方法だけでなく,動画生成の実用的な枠組みを示したことは,コンピュータビジョン分野の進展に大きく貢献するものである.以上より,本論文は2019 年度山下記念研究賞にふさわしい論文として,ここに推薦する.
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●人物の単視点全身画像の再照明
[Visual Computing(VC2018)(2018/6/23)](コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会)
kanamori

金森 由博 君 (正会員)

2009年3月 東京大学情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士課程修了.博士(情報理工学).
同年4月より筑波大学に勤務し,現職は筑波大学システム情報系・准教授.
2014年~2016年 日本学術振興会・海外特別研究員としてスイス連邦工科大学チューリッヒ校に派遣.
2019年 エディンバラ大学に客員研究員として滞在.
コンピュータグラフィクス,特にレンダリングや画像処理,深層学習の応用などに興味を持つ.

[推薦理由] 本研究発表は,「単一視点で撮影された人物の全身画像に対する再照明」という新しい問題に対し,再照明に必要な情報を,深層学習を利用して推定する手法を提案している.特に,光の隠蔽情報を球面調和関数の係数として畳み込みニューラルネットワークに直接推定させる試みは新しく,その効果が実験結果から見て取れる.深層学習が流行っている昨今,単に力技でデータ収集・学習・チューニングをするだけでドメインの知識がなくても精度が出てしまう研究も散見される中,本手法はリアルタイムレンダリング向け技術のPRT (precomputed radiance transfer) から着想を得た定式化になっており,グラフィクスの知見を持っている研究者ならではの手法となっている.
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●仮想ネットワーク構築ライブラリ VITOCHA とネットワーク技術者教育
[2018-CE-145(2018/6/9)](コンピュータと教育研究会)
suzuki

鈴木 常彦 君 (正会員)

1985年 電気通信大学 卒業.
1985年 中部電力株式会社 入社.
1996年 東海インターネット株式会社 出向.
2000年 中部電力株式会社 退職.
同年 株式会社リフレクションを仲間と設立 (現 取締役CTO).
2001年 日本福祉大学 知多半島総合研究所 特別契約職員.
2002年 中京大学情報科学部講師 (現 工学部教授).
もっぱら DNS セキュリティ等インターネット崩壊状況の調査研究に従事.
情報処理学会,人工知能学会,社会情報学会会員.

[推薦理由] 仮想ネットワークをプログラミングできるライブラリVITOCHAを提案している.VITOCHAはRuby言語から利用でき,実際に工学実験の授業において,遅延やパケットロスを変化させてTCPのスループットを測定する学習を行った実績がある.GUIによる直感的な操作で学習できるツールが増えつつある中で,CUIの学習ツールを用いてわかりやすく学習できる環境を実用的な完成度で実現している.ネットワークの専門家を育成するための非常に優れた教材と教育実践の提案であることから推薦する.
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●初等・中等教育における体系的なプログラミング教育のための評価規準に関する試案
[2018-CE-145(2018/6/9)](コンピュータと教育研究会)
omori

大森 康正 君 (正会員)

1991年 東京電機大学大学院 博士課程 単位取得退学.
1991年 東京電機大学理工学部経営工学科 助手.
1996年 上越教育大学学校教育学部 講師.
2006年 上越教育大学大学院学校教育研究科 准教授.
2017年 上越教育大学大学院学校教育研究科 教授,現在に至る.
博士(工学).初等・中等教育におけるプログラミング教育に関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,日本産業技術教育学会各会員.

[推薦理由] 2020年度以降に実施される学習指導要領により,小学校から高等学校までにおいてプログラミング教育が実施される.本研究では専門科目を置かずに既存の教科等で実施される小学校におけるプログラミング教育に着目し,中学校との連携を含めた評価規準の試案を検討・報告している.プログラミング学習の情報科学視点からのルーブリック評価の事例は多いが,小学校の学習と対応づけながら体系的に整理しようとする試みは少なく,今後の本研究会での教育活動および研究に向けて価値のある研究発表と判断し推薦する.
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●加点情報の再構成
[2018-CH-117(2018/5/12)](人文科学とコンピュータ研究会)
takada

高田 智和 君 (正会員)

1999年 北海道大学文学部 卒業.
2001年 北海道大学大学院文学研究科 修士課程 修了.
2004年 北海道大学大学院文学研究科 博士後期課程 修了.博士(文学).
2005年 独立行政法人国立国語研究所 研究員.
2009年 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 准教授.

[推薦理由] 本研究は,訓点資料の定量的分析を目的としたデータ構造化およびデジタル化手法について取り組んでいる.訓点資料研究では網羅的かつ大規模な訓点の定量的分析は行われておらず,訓点資料研究の新たな展開を示すパイオニア的研究として位置づけられる.本研究は継続的な一連の研究を含めて,一つの問題に長い時間をかけて取り組みながら情報の真の姿を定性的・定量的に捕えようとする,人文学に対する情報処理のあり方としても高く評価できる.
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●End-to-End Pre-Modern Japanese Character (Kuzushiji) Spotting with Deep Learning
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2018)(2018/12/1)](人文科学とコンピュータ研究会)
clanuwat

Clanuwat Tarin 君 (正会員)

2012年 早稲田大学大学院文学研究科 修士課程 修了.
2017年~2018年 東京大学大学院総合文化研究は広域科学専攻広域システム科学系 特別研究学生.
2018年 早稲田大学大学院文学研究科 博士課程 修了(文学).
2018年 ROIS-DS人文学オーブンデータ共同利用センター,国立情報学研究所 特任研究員.
2019年 ROIS-DS人文学オーブンデータ共同利用センター,国立情報学研究所 特任助教.
機械学習による人文学資料の分析,特にくずし字認識に従事.

[推薦理由] 本研究は,Deep Learningの1つであるU-Netを利用したくずし字スポッティングシステムについて取り組んでいる.字母の異なる文字への対応,文脈を用いた精度向上などにより,これまでの様々なくずし字の機械認識手法に比べて一定以上の精度に達していると考えられ,研究の発展によって人文学分野に多大な貢献をするであろうことが予想される.
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●GPRに基づくメロディセグメンテーションによるフレーズの分散表現の獲得
[2018-MUS-119(2018/6/17)](音楽情報科学研究会)
hirai

平井 辰典 君 (正会員)

2011年3月 早稲田大学先進理工学部 卒業.
2012年9月 早稲田大学先進理工学研究科 修士課程 修了.
2015年12月 早稲田大学先進理工学研究科 博士後期課程 修了.博士(工学).
2016年1月~2016年3月 日本学術振興会 特別研究員(PD).
2016年4月 駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部 助教.
2019年4月 駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部 講師.現在に至る.
2012年度未踏スーパークリエータ認定.情報処理学会,ACM各会員.

[推薦理由] 本論文は,音楽の主要な要素であるメロディを計算機で扱うための分散表現を提案している.自然言語処理に着想を得て,一万曲以上の大規模なメロディデータから,メロディの構成要素であるフレーズのベクトル表現を獲得しようとする独創的な試みであり,主観評価実験により有効性を示している.既存楽曲中のメロディ置換や類似フレーズ検索などの応用例も示しており,今後の音楽鑑賞・創作支援への応用が期待できる.音楽情報処理分野において,メロディ解析は最重要トピックの一つであり,提案するメロディの分散表現手法は,言語モデルに基づくメロディの構文解析から意味解析へ発展させるうえで,重要かつ先駆的な試みであり,山下記念研究賞に値する.
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●階乗隠れセミマルコフモデルに基づく音楽音響信号に対するカバー譜生成
[2018-MUS-121(2018/11/21)](音楽情報科学研究会)
shibata

柴田 健太郎 君 (学生会員)

2018年3月 京都大学工学部情報学科 卒業.
2018年4月 京都大学大学院情報学研究科 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,ポピュラー音楽の音響信号から,主要な三種類のギターパート(リード・ベース・リズムギター)を一挙に採譜する手法を提案している.通常,音響特徴に基づく自動採譜では,音楽的に不自然な採譜結果が多発する問題がある.提案法では,各ギターパートの音域,同時発音数,音高あるいは和音の遷移の違いに着目し,これらの各特徴を大量の既存楽曲から統計的に学習しておくことで,ギター譜に対する言語モデルを構築する点が独創的であり,言語モデルと音響モデルの統合により,採譜精度の改善を実現している.これまで,ポピュラー音楽を対象したメロディやドラムの採譜の研究は数多くあったが,伴奏音の採譜は初の試みであり,山下記念研究賞に値する.
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●von Mises分布DNNに基づく振幅スペクトログラムからの位相復元
[2018-SLP-122(2018/6/17)](音声言語情報処理研究会)
takamichi

高道 慎之介 君 (正会員)

2011年 長岡技術科学大学 卒業.
2013年 奈良先端科学技術大学院大学 博士前期 修了.
2016年 奈良先端科学技術大学院大学 後期課程 修了.
2018年 東京大学 助教(現職).博士(工学).
音声合成変換,音声信号処理の研究に従事.

[推薦理由] 本論文では,振幅スペクトログラムからディープニューラルネットワーク(DNN)により位相復元する方法を提案している.音響信号処理では振幅スペクトルの推定のみを対象とするものが多く,位相は別途推定する必要がある.従来よく用いられるGriffin-Lim法による位相推定は不自然なアーティファクトが発生するという問題があった.本論文では周期的な確率変数の密度関数であるvon-Mises分布を用いたDNNによって位相を推定する手法を提案し,従来法を超える音質の音声を合成できることを示した.高性能な位相推定は多くの音響信号処理分野において求められる重要な技術であり,提案手法の有用性は極めて高いと考えられる.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●非線形ひずみ除去のための敵対的denoising autoencoder
[2018-SLP-123(2018/7/26)](音声言語情報処理研究会)
tawara

俵 直弘 君 (学生会員)

2010年3月 早稲田大学理工学部コンピュータ・ネットワーク工学科 卒業.
2012年3月 早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工学専攻 博士前期課程 修了.
2016年3月 早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工学専攻 博士後期課程 満期退学.
2017年3月 早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工学専攻 博士(工学).
早稲田大学基幹理工学部情報通信学科 助手,助教,講師を経て, 
2019年4月 日本電信電話株式会社入社.現在に至る.
情報処理学会,日本音響学会,IEEE各会員.

[推薦理由] 本論文では,非線形ひずみを補正するための敵対的 denoising autoencoder (DAE) を用いたポストフィルタリングを提案している.時間 ・ 周波数マスキングは目的音源と妨害音源を高精度に分離できるが,非線形信号処理特有の耳障りなひずみが生じることが知られている.そこで,シングルチャネル音声を対象とした音声強調において高い性能を達成している敵対的 DAE を用いて,非線形ひずみを含む音声からひずみを含まないクリーンな音声へのマッピングを学習することで,非線形ひずみを低減するフィルタを構築している.マルチチャネル音源分離実験により,時間 ・ 周波数マスキングの出力信号の非線形ひずみが低減され,音質が改善されることが示されている.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●情報社会における倫理審査と倫理審査委員会3000個問題
[2018-EIP-82(2018/11/2)](電子化知的財産・社会基盤研究会)
yoshimi

吉見 憲二 君 (正会員)

2007年 早稲田大学政治経済学部経済学科 卒業.
2009年 早稲田大学大学院国際情報通信研究科 修士課程 修了.
2012年 早稲田大学大学院国際情報通信研究科 博士後期課程 修了.博士(国際情報通信学).
2013年 早稲田大学大学院国際情報通信研究科 助教.
2015年 佛教大学社会学部現代社会学科 講師.
2018年 佛教大学社会学部現代社会学科 准教授,現在に至る.

[推薦理由] 近年,多くの大学で「人を対象とする研究」に関する倫理規定が策定され,医学系のみならず人文社会科学・工学などの各分野でも倫理審査の実施が求められているところ,倫理審査には超対称への倫理的配慮が行き届きやすくなる一方でと実施プロセスの煩雑性などの課題も伴っている.本研究では,情報社会における倫理審査の重要性について再評価するとともに,倫理審査委員会 3000 個問題とも言われる新たに生じた倫理審査における課題について検討されており,審査基準の質のばらつきの問題に警鐘を促している点で情報社会における研究実施に関する根本的問題に着目している点でその社会的重要性は大きい.よって吉見憲二氏を山下記念研究賞に推薦するものである.
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●協力ゲームHanabiにおける相手の思考時間を戦略の指標に加えたエージェントの開発と評価
[ゲームプログラミングワークショップ2018(2018/11/16)](ゲーム情報学研究会)
sato

佐藤 栄介 君 (学生会員)

2015年3月 本郷高等学校 卒業.
2019年3月 筑波大学理工学群工学システム学類 卒業.
2019年4月 筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻 博士前期課程 進学.
現在に至る.
ヒューマンエージェントインタラクションに関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,協力ゲームHanabiにおいて,相手の思考時間に合わせて相手の自分に対する推論のレベルを推定するエージェントを開発し,その評価を行っている.Hanabiは各プレイヤーが,自分自身のカードが見えない状況で相手と協力して同じ色のカードをつなげる形の協力ゲームであり,プレイヤー間の情報交換が限られた中で相手と協調するゲームである.相手の思考時間という限られたシグナルから,人間の推論レベルを推定し,協力する手掛かりとする手法は,ゲーム研究における新しい課題であり,他の協力ゲーム課題にも広く適用可能な手法となりえる.論文では各パラメータの推定を丁寧に行っている.以上の理由から,山下記念受賞候補者として推薦する.
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●誇張した咀嚼運動の映像提示による食感知覚操作に関する基礎検討
[2018-EC-48(2018/6/15)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
suzuki

鈴木 佑司  君 (学生会員)

2018年3月 東京大学工学部機械情報工学科 卒業.
2018年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,視覚情報提示による食感知覚操作の可能性を探るために,咀嚼時の顔輪郭をリアルタイムに変化させて提示することで,噛みごたえなどの知覚される食感がどのように変化するのかを評価した研究である.これまでの咀嚼動作に着目した食感知覚操作は,咀嚼音などの変調に基づく聴覚情報提示手法が主であったが,本研究では視覚情報によっても食感知覚操作の実現が可能であることを報告している.本研究の取り組みは,食事のエンタテインメント性を向上させるだけでなく,食行動制限があるユーザの食事のQOL向上などへの応用も期待できるため,社会への有用性の高さから山下記念研究賞受賞に相応しいと判断する.
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●偶然の遊びにおける主観的確率とエンタテインメント性との関係の調査
[エンタテインメントコンピューティング2018(2018/9/14)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
minakuchi

水口 充 君 (正会員)

1990年 京都大学大学院工学研究科工業化学専攻 博士前期課程 修了,シャープ株式会社入社.
2004年 京都工芸繊維大学大学院工芸化学研究科情報・生産化学専攻 博士後期課程 修了,博士(工学),独立行政法人情報通信研究機構専攻研究員.
2008年 京都産業大学コンピュータ理工学部(現・情報理工学部)教授,現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,これまでに定量的な評価がほとんど行われてこなかった,遊びを構成する要素の一つである偶然性がエンタテインメント性にどのように影響するのかを評価した挑戦的な研究である.本研究において,結果の見せ方と予兆演出の効果を実験的に調査した結果,偶然の要素が関わる遊びにおいては,遊戯者が主観的に認識する確率がエンタテインメント性に寄与することを報告している.本研究の取り組みは,偶然性のどの要素がエンタテインメント性向上に影響するのかを明らかにしており,偶然性を有した数多くの遊びへの応用が期待される.以上の研究成果の有用性と身近な遊びなども含めた応用範囲の広さから,山下記念研究賞受賞に相応しいと判断する.
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●libRCGA: 動力学モデルの高速なパラメータ推定のための遺伝的アルゴリズムライブラリ
[2018-BIO-55(2018/9/18)](バイオ情報学研究会)
maeda

前田 和勲 君 (正会員)

2010年 日本学術振興会 特別研究員(DC2).
2011年 九州工業大学大学院情報工学府 博士後期課程 修了.博士(情報工学)取得.
2011年 日本学術振興会 特別研究員(PD) (資格変更).
2012年 九州工業大学大学院情報工学研究院 博士研究員.
2015年 九州工業大学若手研究者フロンティア研究アカデミー 特任助教.
現在に至る.

[推薦理由] 動力学モデルは生化学システムの動的な振る舞いを知るのに非常に重要である.しかし,高い予測能力を持つモデルを構築するには未知のパラメータを推定する必要があり,この部分がモデリング研究のボトルネックになっている.候補者は,この問題を解決するために,遺伝的アルゴリズム (GA) のC言語ライブラリ libRCGA を開発し,それが既存のライブラリよりも優れていることを示した.候補者は,この研究について第55回バイオ情報学研究会で発表し,SIGBIO優秀プレゼンテーション賞を受賞した.また,この研究に関する論文をIPSJ Transactions on Bioinformatics誌にて発表した.さらに,開発したライブラリを用いて,大腸菌のアンモニア輸送-同化システムの精密な動力学モデルを構築し,実際のモデリング研究での当該ライブラリの有効性を示した(Maeda et al., Nature Partner Journal Systems Biology and  Applications, 2019).このように,候補者は,本研究会において優秀な発表を行うのみならず,その研究成果をさらに発展させている.このような理由から,候補者は山下記念研究賞の受賞にふさわしいと考える.
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●Notebookによる講義・演習環境の開発
[2019-CLE-27(2019/3/22)](教育学習支援情報システム研究会)
nagaku

長久 勝 君 (正会員)

1994年3月 龍谷大学理工学部数理情報学科 卒業.
1994年3月 株式会社エス・エヌ・ケイ 入社.
以降,コンピュータゲーム開発や動画配信などに従事.
奈良女子大学,早稲田大学にて非常勤講師.
国立情報学研究所にてトップエスイーやクラウド関連の業務に従事.
2019年4月よりライフマティックス株式会社に在籍.
情報処理学会,日本デジタルゲーム学会会員.

[推薦理由] 本論文は,著者らが開発したJupyterHub を拡張した講義 ・ 演習環境 「CoursewareHub」の概要および特徴を,試用結果と評価と合わせて報告したものである.プログラミング教育に対する社会からの期待や学生の興味は高まっており,これをより効率的かつ効果的に実施することは重要である.著者らの開発したCoursewareHub はプログラミング教育を担当する講師の負担を削減できるだけでなく,LMS 連携のための標準規格 LTIや近年普及する Docker などを活用して今後発展することも期待される.著者らの提案システムは,独自に開発した Notebook用のプラグインを適用しつつ,一つの JupyterHub環境の中に講師用と受講生用と言った役割の異なるコンテナを配備できるようにするなどの工夫を施して,より使いやすい演習環境の提供を目指しており,コンテナ技術を効果的に用いたプログラミング演習環境の構築事例として高く評価できる.よって本論文を,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●視覚障害者の移動特性を考慮した位置推定手法
[2018-AAC-7(2018/8/25)](アクセシビリティ研究会)
yamamoto

山本 晃平 君 (学生会員)

2018年3月 立命館大学情報理工学部情報システム学科 卒業.
2018/19年 1年間半のギャップイヤーを取得. IBM Researchにて学生研究員, MicrosoftおよびMercariにてインターンとして勤務.
2019年8月 MSc in Applied Geographic Information Systems, Geography, National University of Singapore 入学. 現在に至る.
ヒューマンコンピュータインタラクションおよび位置情報科学に関する研究に従事. 現在はGISや時空間モデリングに興味を持つ.

[推薦理由] 視覚障害者の移動支援を目的に,Bluetooth Low Energy (BLE)測位と歩行者自律航法を組み合わせた大規模屋内測位システムを開発した.しかし,視覚障害者には特徴的な歩行動作があるため,測位精度が低くなる場面があった.本稿では,数センチメートル単位の高精度で相対的な移動量が推定可能なVisual Inertial Odometry (VIO)を用いて,ロバストな位置推定手法を提案し,測位精度が高くなったことを示した.ショッピングモールなどでの実用化につながる研究であり,候補者の研究の発展が期待されるため山下記念研究賞に推薦する.
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