2018年度詳細

2018年度(平成30年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に 贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は40研究会の主査から推薦された計57編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,理事会(2018年8月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の下記受賞者には,3月15日に福岡大学で開催される第81回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI IS IFAT AVM GN DC MBL CSEC ITS UBI IOT SPT CDS DCC ASD

<メディア知能情報領域>
NL ICS CVIM CG CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE AAC

コンピュータサイエンス領域

●分散グラフ処理におけるグラフ分割
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum 2017)(2017/9/18)](データベースシステム研究会)
shiokawa

塩川 浩昭 君 (正会員)

2009年3月 筑波大学第三学群情報学類 卒業.
2011年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科 博士前期課程 修了.
2011年4月~2015年10月 日本電信電話株式会社 勤務.
2015年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科 博士後期課程 修了.博士(工学).
2016年11月 筑波大学計算科学研究センター 助教.現在に至る.
情報処理学会,日本データベース学会,ACM,AAAI各会員.

[推薦理由] 本研究は,ソーシャルグラフやWebグラフのような大規模グラフを分散処理するためのグラフ分割手法を提案している.提案手法は,グラフクラスタリングでよく用いられるModularityの考えを利用し,グラフをできる限り等粒度で,かつ計算機間の通信が少なくなるような分割を発見する.提案手法により,計算機間の通信コストの削減や計算コストの均等化が可能となり,処理の高速化が可能となる.近年,ビッグデータ処理,とりわけ大規模グラフ処理に対する社会的ニーズは強く,分散処理環境における高速化を実現した本研究は,研究としての価値だけでなく実用面としての価値も極めて高いといえる.よって,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●RDMAの適用によるRAMPトランザクション処理の高速化
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum 2017)(2017/9/20)](データベースシステム研究会)
kawashima

川島 英之 君 (正会員)

1999年 慶應義塾大学理工学部電気工学科 卒業.
2005年 同大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻後期博士課程 修了.
同年 慶應義塾大学理工学部 助手.
2007年 筑波大学大学院システム情報工学研究科 講師,並びに計算科学研究センター 講師.
2016年 筑波大学計算科学研究センター 准教授.
2018年 慶應義塾大学環境情報学部 准教授.
博士(工学).データ基盤に興味を持つ.情報処理学会,電子情報通信学会,ACM,IEEE,各会員.

[推薦理由] 本論文では,分散データベース管理システムのトランザクション処理を,InfiniBandで結合された並列サーバ上で高効率に実現する手法について述べている.特に,適用する問題を分散 Key-Value Store に限定した点,および,InfiniBandでは Remote Direct Memory Access が利用可能である点,の2点に着目したところに特色がある.大規模並列データベースサーバの現実的な利用方法を想定した妥当な限定によって,提案手法はベンチマーク上で高い効果を示している.また,関連研究分野のサーベイと著者らの提案の位置づけがどちらも明快に示されていて,論文の構成が優れている.よって,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●深層学習による不具合混入コミットの予測と評価
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES2017)(2017/8/31)](ソフトウェア工学研究会)
kondo

近藤 将成 君 (学生会員)

2015年 宇部工業高等専門学校制御情報工学科 卒業.
2017年 京都工芸繊維大学情報科学部情報工学課程 卒業.
2017年 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科情報工学専攻 入学.
ソフトウェアリポジトリマイニングに関する研究に従事.各会員.

[推薦理由] 従来のソフトウェア不具合予測では,ソースコードや変更のメトリクス値を利用した深層学習が行われてきた.これに対して,本論文では,ソースコードコミット時の変更差分コード断片のみを用いた深層学習により,不具合が混入しているコミットを予測する手法を提案している.提案手法そのものは従来研究の延長線上にあるものの,従来手法に対して十分洗練されている.また,丁寧な評価実験を行うことで,変更コード断片のみで精度の高い予測が可能であることを立証している.さらに,学習対象をコード断片に限定することで,従来の深層学習に比べて,変更によるコミット数への依存度を減らせることも示している.提案手法の実用性はきわめて高く,山下記念研究賞にふさわしい論文である.
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●GUI自動テストにおけるテストスクリプト中のロケータ修正支援手法
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES2017)(2017/8/31)](ソフトウェア工学研究会)
kirinuki

切貫 弘之 君 (正会員)

2015年 大阪大学基礎工学部情報科学研究科 卒業.
2015年 日本電信電話株式会社 入社.  現在に至る.
ソフトウェアテストに関する研究に従事.    
2015年度コンピュータサイエンス領域奨励賞受賞.

[推薦理由] ソフトウェアテストでは,テスト対象のソフトウェアに修正が適用されると,それにあわせてテストスクリプトにも修正を適用する必要がある.特に,UIの変更を伴うソフトウェア修正では,テストにおいて操作される画面要素(UI部品)の特定が鍵となる.従来手法では,修正前後の画面要素の位置情報の差分を用いることで,同一と見なせる画面要素を特定していた.これに対して,提案手法では,画面要素の位置情報だけでなく,その属性,テキスト,画像も手がかりとして用いることで,特定の正確さを向上させることに成功している.また,被験者実験を通して,テストスクリプトの修正にかかる時間が短縮できることを立証している.実際の開発現場への適用の可能性はきわめて高く,山下記念研究賞にふさわしい論文である.
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●パケット処理キャッシュにおける送信元IPアドレスに着目した ミス削減手法に関する初期検討
[2017-ARC-226(2017/5/24)](システム・アーキテクチャ研究会)
yamaki

八巻 隼人 君 (正会員)

2011年 慶應義塾大学理工学部 卒業.
2013年 慶應義塾大学大学院理工学研究科 修士課程 修了.
2014年~2015年 慶應義塾大学大学院理工学研究科 助教(有期・研究奨励).
2016年 慶應義塾大学大学院理工学研究科 博士課程 修了.博士(工学).
2016年~現在 電気通信大学大学院情報理工学研究科 助教.
ルータやNIDS(ネットワーク型侵入検知システム)のハードウェアアーキテクチャに関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究発表は,大容量なトラフィックを扱うコアルータに焦点を当て,その高スループット化と省電力化を同時に達成するキャッシュ技術の最適なエントリ制御手法を検討している.本研究では,キャッシュ参照可能性の低いマイスフローを送信元IPアドレスから特定し,キャッシュしないことで,キャッシュミスを削減できることが示されており,深刻化するエネルギー消費問題の解決に貢献する研究として高く評価できる.また,多くの実ネットワークトレースに対する分析を定量的かつ多角的に行っており,その分析結果は他のインターネット関連研究にも有益な知見を与える情報であると評価できる.以上より,本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●低電力モードを備えるプロセッサとモード切り替えアルゴリズムによる電力効率の向上
[2017-ARC-226(2017/5/24)](システム・アーキテクチャ研究会)
shioya

塩谷  亮太 君 (正会員)

2011年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 博士(情報理工学)学位取得.
2011年4月 名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻 助教.
2016年12月名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻 准教授.
2018年6月 東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻 准教授.
現在にいたる.コンピュータ・アーキテクチャに関する研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,Dual-Mode Frontend Execution Architecture (DM-FXA)と呼ぶ,high-performance/low-power の2つの実行モードを持つアーキテクチャと,Multi-Scale Algorithm と呼ぶ,実行モードの切り替えアルゴリズムを提案する.これらの組み合わせにより,従来と比較して,96.8%の性能を維持しつつ,平均 38.8%もの消費エネルギー削減を達成している.本手法は,近年ますます重要となるプロセッサのエネルギー効率の向上のために極めて有用な手法であり,山下賞の受賞にふさわしい.
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●システム障害発生時における障害情報収集と再起動の同時実行による高信頼化
[2018-OS-142(2018/2/28)](システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
yamamoto

山本 遼介 君 (正会員)

2016年 立命館大学情報理工学部情報システム学科 卒業.
2018年 立命館大学大学院情報理工学研究科情報理工学専攻 博士前期課程 修了.
同年 三菱電機株式会社 入社,現在に至る.
 

[推薦理由] 本研究は,汎用OSに搭載されている障害情報収集機構が有する,障害情報の収集とOS再起動を逐次的に行うためOSが利用可能になるまでにかかる時間が長いという問題に対し,汎用OSと障害情報収集用OSを並列に動作させることでOSが利用可能になるまでにかかる時間を短縮する手法を提案した.組み込み機器を想定し,ARMプロセッサの拡張機能を用いた実機上での試作を用いてダウンタイムを計測することで,提案手法は,逐次的情報収集よりも高速に障害情報を収集,再起動が可能である可能性を示した.リソース制約が厳しい組み込み機器において,OSの障害解析を高速に行える手法を提案,実装,評価した本研究は重要性が高いと考え,山下記念研究賞に相応しいと判断し,ここに推薦する.
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●エラー予告ベース適応的電圧制御のMTTF考慮設計手法
[DAシンポジウム2017(2017/8/31)](システムとLSIの設計技術研究会)
masuda

増田 豊 君 (学生会員)

2010年3月 大阪教育大学附属高等学校池田校舎 卒業.
2014年3月 大阪大学工学部電子情報工学科 卒業.
2016年3月 大阪大学大学院 修士課程 修了.
2016年4月 大阪大学大学院 博士課程 進学.
現在に至る.
VLSIの高信頼設計,低電力設計,製造後テスト手法に関する研究に従事.

[推薦理由] 製造ばらつきや経年劣化等の動的な性能変動を克服する手法として,適応的電圧制御が有望視されている.本論文では,エラー予告ベースの適応的電圧制御に着目し,その設計手法を提案している.提案手法では,電圧制御機構と電圧制御対象回路の一体最適設計を目指しており,(1)制御対象回路と電圧制御機構の一体最適設計と,(2)実用時に必要な十分長いMTTFを考慮したVdd削減効果の定量的な評価を可能としている.提案設計回路の性能を定量的に評価したところ,目標の平均寿命を満足しつつ,平均動作電圧を最大20.8%削減した.本論文は,適応的電圧制御技術に大きな指針を与える価値の高い論文であることから,山下記念研究賞受賞論文として強く推薦する.
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●最小エネルギー動作点追跡アルゴリズムの実チップ評価
[DAシンポジウム2017(2017/8/31)](システムとLSIの設計技術研究会)
hokimoto

保木本 修 君 (正会員)

2016年3月 京都大学工学部電気電子工学科 卒業.
2018年3月 京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻 博士前期課程 修了.
2018年4月 マツダ株式会社 入社,現在に至る .

[推薦理由] 与えられた要求動作速度に対して,電源電圧と基板電圧を動的に調節することでプロセッサの消費エネルギーを最小化することが可能である.本論文では,この最適な電圧の組を最小エネルギー動作点と定義し,過去に提案したランタイムアルゴリズムが幅広い動作環境で正確に最小エネルギー動作点を追跡できることを実チップ測定に基づき示している.65nmプロセスを用いて試作したRISCプロセッサに提案アルゴリズムを適用した結果,実際に最小エネルギー動作点で動作したときと比べて1%以内のエネルギー損失でプロセッサが動作することを示した.本論文は,プロセッサの消費エネルギー最小化技術に大きな指針を与える価値の高い論文であることから,山下記念研究賞受賞論文として強く推薦する.
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●タイルレベルの並列処理を可能とする時空間タイリング手法を用いた3次元FDTDカーネルの実装と性能評価
[2017-HPC-160(2017/7/28)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
fukaya

深谷 猛 君 (正会員)

2007年3月 名古屋大学工学部物理工学科 卒業.
2009年3月 名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻 博士課程(前期課程) 修了.
2010年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2).
2012年3月 名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻 博士課程(後期課程) 修了.
博士(工学).
2012年4月 神戸大学大学院システム情報学研究科 特命助教.
2013年10月 理化学研究所計算科学研究機構 大規模並列数値計算技術研究チーム 特別研究員.
2015年4月 北海道大学 情報基盤センター 助教.
現在に至る.
高性能計算および数値計算に関する研究に従事.

[推薦理由] 高周波電磁場解析のための3次元FDTD法のカーネル部分は反復型ステンシル計算であり,その計算性能はメモリバンド幅で抑えられる.メモリアクセスコストを削減し性能向上を図る手法として,時空間タイリング手法が提案されているが,スレッド並列化の観点ではより高い性能が期待できる.本研究は,3次元FDTD法に対し,スレッド並列処理の手順をよりきめ細かく解析し実装することにより,従来の並列化手法よりも高い性能を得ることが出来る新しい時空間タイリング手法を提案したものであり,ハイパフォーマンスコンピューティング分野の重要な成果である.このため,山下記念研究賞にふさわしい研究発表として推薦する.
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●Less is More: Accelerating Deep Neural Networks with Micro-Batching
[2017-HPC-162(2017/12/19)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
ohyama

大山 洋介 君 (学生会員)

2016年3月 東京工業大学理学部情報科学科 卒業.
2017年7月 チューリッヒ工科大学 Student Summer Research Fellowship.
2018年3月 東京工業大学情報理工学院数理・計算科学系 修士課程 修了.
2018年4月 東京工業大学情報理工学院数理・計算科学系 博士課程 進学.
2018年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC1).
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,深層学習で用いられるGPU用の低レベル・ライブラリの一つであるcuDNNに対し,ニューラルネットワークの各層の計算をより細かいバッチ処理に分割するラッパー μ-cuDNNを提案し,同じメモリ容量制約において,従来の方法よりも高速な解法を可能にしたものである.Caffeフレームワーク上で本手法を評価した結果,2つの問題AlexNet,及びResNet-18に対し,それぞれ1.63倍,1.21倍の性能向上が得られた.本研究は,深層学習におけるニューラルネットワークに対する高速な手法を提案したものであり,ハイパフォーマンスコンピューティング分野と人工知能分野が交わる部分での重要な成果である.このため,山下記念研究賞にふさわしい研究発表として推薦する.
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●Safe Low-level Code Generation in Coq Using Monomorphization and Monadification
[(2017/6/9)](プログラミング研究会)
tanaka

田中 哲 君 (正会員)

2000年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士後期課程 修了. 博士(情報科学).
同年 工業技術院電子技術総合研究所 入所.
2001年 産業技術総合研究所に再編.
プログラミング言語に関する研究に従事.
フリーソフトウェア活動も行う. Rubyコミッタ. FSIJ監事.

[推薦理由] この研究では,C言語のプログラムの動作を形式的に検証する手法として,プログラムを定理証明支援系Coqの記述言語Gallinaで記述し,それをC言語に変換するというアプローチを提案している.低レベルコードの信頼性の保証は言うまでもなく重要なテーマであり,提案手法はそれに対して新規性が高くかつ有用な貢献を与えている.また,GallinaからCへの変換そのものについても,データ型の違いの問題の解決手法など注目すべき点が見られる.さらに,研究発表会でこの内容を非専門家にもわかりやすく説明されていた点も評価できる.以上より,この研究を山下記念研究賞にふさわしいものとして推薦する.

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●Space-Efficient Algorithms for Longest Increasing Subsequence
[2017-AL-164(2017/9/19)](アルゴリズム研究会)
ohtachi

大舘 陽太 君 (正会員)

2010年 群馬大学大学院工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).
2010年 東北大学大学院情報科学研究科 博士研究員(JSPS PD).
2011年 東北大学大学院情報科学研究科 助教.
2012年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 助教.
2017年~現在 熊本大学大学院先端科学研究部 准教授 .

[推薦理由] 最長増加部分列とは,数列の要素をとばしとばしに読んで得られる部分列のうち,単調増加であるという条件のもとで最長のものである.最長増加部分列を求める問題は重要な応用を持ち,盛んに研究されている.高速アルゴリズムは60年代初頭から知られていたが,劣線形空間の多項式時間アルゴリズムは知られていなかった.本研究では,空間計算量が最小O(√n)ワードのメモリ適合型多項式時間アルゴリズムを設計することによりこの問題を解決した.この結果は応用上重要であるだけでなく,非自明な劣線形空間アルゴリズムの設計例として,計算量理論分野への貢献も大きい.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしいものとして本研究を推薦する.
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●2段階転移学習を用いた深層畳み込みニューラルネットによるびまん性肺疾患の識別と特徴表現の解析
[2018-MPS-117(2018/3/1)](数理モデル化と問題解決研究会)
suzuki

鈴木 藍雅 君 (学生会員)

2015年 小山工業高等専門学校電子制御工学科 卒業.
2017年 電気通信大学情報理工学部 卒業.
2018年 現在,筑波大学システム情報工学研究科 博士前期課程に在学中.
産業技術総合研究所 人工知能研究センター リサーチアシスタント.
ニューラルネットワーク、コンピュータビジョン、テクスチャモデリングに関する研究に従事.
2017年 IEEE CISJ Young Researcher Award 他受賞.
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE 学生会員.

[推薦理由] 本論文は,データ数が少ない医用画像処理の課題において,転移学習手法を深層学習に適用することで,識別問題の精度向上のみならず,頑健性などをしめすことに成功した研究である.また,深層学習内部の表現に関して,信号のフィードバック手法を用いることで,転移学習がどのような影響を与えているのかといったことを可視化することで,手法の有効性を確かめていることが興味深い結果となっている.このような手法の提案は,数理モデル化と問題解決研究会に参加している研究者たちに刺激をあたえるのみならず,他の研究フィールドの研究者たちにも刺激を与えるものと考えられる.以上の成果より,山下記念研究賞に推薦するものとする.
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●ROS2における通信特性に応じたDDS実装の動的選択機構の実現
[2018-EMB-47(2018/3/7)](組込みシステム研究会)
morita

森田 錬 君 (学生会員)

2018年3月 公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科 卒業.
2018年4月 公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科 博士前期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] ロボット制御用ソフトウェアとして広く利用されているROS(Robot Operating System)では,適用範囲の拡大に対応するための次世代版として,通信基盤にDDS(Data Distribution Service)仕様を採用したROS2の開発が進められている.本研究は,ROS2におけるモジュール間通信の性能向上を目的として,DDS実装の動的選択機構を提案している.本提案機構は,システム内の通信毎にデータサイズや通信範囲などの通信特性を推定し,性能や機能などの特徴が異なる複数のDDS実装のなかから最適なものを動的に選択する.本論文では,提案機構の実現手法だけでなく,プロトタイプ実装を用いて現ROS2実装との比較評価実験を行っており,通信性能とオーバヘッドの観点から本提案の有効性を客観的に示している.近年,ドローンや自動運転車などへのROSの適用事例も増えており,本研究の成果は,実用性の観点からも今後の発展が大いに期待される.以上のことから,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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情報環境領域

●下水管路検査用浮流型無線ネットワークカメラシステムの実現技術
[2017-DPS-172(2017/11/29)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
ishihara

石原  進 君 (正会員)

1999年 名古屋大学大学院博士後期課程修了.博士(工学).
1999年 静岡大学情報学部 助手.
2001年 静岡大学工学部 助教授.
2014-2015年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 客員研究員.
2018年~ 静岡大学学術院工学領域 教授.
アドホックネットワーク,センサネットワークの研究に従事.
情報処理学会シニア会員,電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.

[推薦理由] 本発表では,下水管路のスクリーニング検査を安全,安価,短時間で実現するための手法として,無線通信可能な浮流型のカメラ・センサノードを複数個下水管に流し,マンホールに備え付けたアクセスポイントで映像を回収するシステムを提案し,無線通信特性測定,複数カメラ・センサノードによる協調型のデータ収集方式の開発,撮影系の設計に関して報告した.今後の発展が期待できる実用性の高い研究であるため,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●パスワード別送添付メールの問題点と受信側での対策について
[2017-DPS-172(2017/11/30)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
nomura

乃村 能成 君 (正会員)

1993年 九州大学工学部電子工学科 卒業.
1995年 九州大学大学院工学研究科情報工学専攻 修士課程 修了.
同年 九州大学工学部助手を経て,
現在,岡山大学工学部情報系学科 准教授.博士(情報科学).

[推薦理由] 本発表では,電子メールで個人情報などの秘匿すべき情報を送信する際に,暗号化された添付ファイルを送信し,共通鍵のパスワードを平文で別送することについて,施策がセキュリティ向上につながっていないという課題,ならびに標的型メールが流布しやすい土壌になる,さらにはマルウェアがユーザクライアント上で実行される危険性を指摘し,それらを受信側で解決する手法を提案した.提案手法は,受信側のメールサーバ上で,暗号化されたメールに対応するパスワードメールとその中に含まれるパスワード文字列を効率よく発見し,暗号化ファイルの復号を自動化することで,受信側のユーザクライアントのセキュリティを向上した.さらに,本手法を電子メールシステムに組み込み,実際に運用した結果について評価した.今後の発展が期待できる実用性の高い研究であるため,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●小型ロボットを用いた自己客体視システムによる思考変容の誘発
[2018-HCI-176(2018/1/23)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
takahashi

高橋 英之 君 (正会員)

2003年3月 北海道大学農学部 卒業.
2005年3月 北海道大学大学院工学研究科システム情報工学専攻 博士前期課程 修了.
2008年4月 北海道大学大学院情報科学研究科複合情報学専攻 博士後期課程 修了.博士(情報科学).
2009年4月 玉川大学脳科学研究所 研究員.
2013年4月 大阪大学大学院工学研究科 特任助教.
2016年4月 大阪大学大学院基礎工学研究科 特任講師,現在に至る.
特にヒューマンエージェントインタラクション,ヒューマンロボットインタラクションの認知科学,神経科学的研究に従事.
2009年度日本認知科学会論文賞,2014年度日本認知科学会第2回野島久雄賞,HAI2010 Outstanding Research Award 最優秀賞など受賞.

[推薦理由] 自分の考えを客観視して捉えることは,発想を膨らませたり,視野を広くする上で有用であると知られている(自己客観視).本研究発表では,ロボットを用いてこの自己客観視を容易にするシステムを構築し,このシステムを使用することにより人間の思考がどのように変化するのかが検討している点に意義がある.また,その結果,一定数の人間はこのシステムを通じて考えを変化させることが示唆され,これをもとに人間の思考法のパターンについてのモデル化まで行合われている点も評価された.
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●不便に対して人が受ける印象の比較評価~人と業務システムの違い~
[2018-HCI-177(2018/3/16)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
kusano

草野 孔希 君 (正会員)

2010年 電気通信大学電気通信学研究科情報工学専攻 修士 修了.
同年から現在に至るまで,日本電信電話株式会社 研究員.
2016年 慶応義塾大学SDM研究科 博士課程修了 博士(SDM).
2017年より 慶応義塾大学SDM研究科 非常勤講師.

[推薦理由] オフィスワーカーが業務で利用するシステム(業務システム)が,使いにくい不便なものでも利用者が我慢して使い続けることがある.これは,業務システムから不便を受けたことに対して利用者が抱く印象に一因があると考える.本研究では,不便を業務システムから受ける場合と人から受ける場合とで印象の違いを考察する.さらに,システムから受ける不便をシステムズ・ハラスメントと捉えることを考察することで,システムから受ける不便を利用者がより意識的に対話できる方法の構築に寄与する.ユーザがシステムの不便さを問題視できるように意識を変える,という啓蒙的な主張によって,社会全体に対して意義のある研究です.システムズハラスメントというネーミングによって意味合いが理解しやすくなっており,またなぜこのようなハラスメントが生じてしまうのかを大規模調査によって明らかにする取り組みが評価された.
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●緊急搬送を要する妊婦の情報共有における効果的・効率的なシステムの構築および検証について
[2017-IS-142(2017/12/2)](情報システムと社会環境研究会)
yamashita

山下 範之  君 (正会員)

2000年03月 岡山県立大学情報工学部情報システム工学科 卒業.
2002年03月 岡山県立大学大学院情報系工学研究科(機械情報システム工学専攻)博士前期課程 修了.
2002年04月 民間企業(数社)システムエンジニア・デザイナー.
2015年11月 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 技術職員.
2018年11月 岡山大学病院新医療研究開発センター 技術職員.

[推薦理由] 本発表は,岡山県の妊産婦緊急搬送に伴う医療機関の情報共有について,その効率を高めるシステムの開発と効果確認に関する報告である.岡山県では,従来FAXでこうした情報共有が行われていた.本発表では,こうした問題を解決するため,情報の送受信サーバとスマートフォンやタブレットなどの情報通信端末を用いた情報共有システムを開発した.医療機関での実地訓練においてシステムの導入効果が確認されており,情報共有までにかかる時間の短縮・マンパワーの集中などのプラスの効果が報告されている.本発表は,社会的に大きな問題である妊産婦の救急搬送について,医療機関での情報共有をスムーズにし,医療関係者が緊急搬送に集中できる環境を実現したところに,大きな価値がある.よって,本発表を,2018年度山下記念賞候補として推薦する.
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●半教師あり非負値行列因子分解を用いた二項分類向け転移学習の評価
[2017-IFAT-127(2017/7/22)](情報基礎とアクセス技術研究会)
yonekawa

米川 慧 君 (正会員)

2012年 東京大学工学部電子情報工学科 卒業.
2014年 東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻 修士課程 修了.
2014年 KDDI入社.KDDI総合研究所に出向.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,ドメインが異なる2つのデータセットについて,両者に共通する属性を取り出しNMFの適用によって得られた基底部分を他方の学習データに移すことで,クラス分類の性能を向上させることを狙っている.手法は詳細かつ明確に記述されており,手法の再現は容易と考えられるので,関連研究分野へのインパクトが期待できる.評価実験では良好な結果が得られており,今後は転移学習に関する複数の公開されているデータを利用し,本手法の特性に関する詳細な検証を通して,さらなる発展を期待する.
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●複雑な光学特性をもつ実物体の写実的な再現のための事前撮影画像による拡張現実システム
[2018-AVM-100(2018/3/7)](オーディオビジュアル複合情報処理研究会)
mihara

三原翔一郎 君 (正会員)

2012年3月 大阪大学基礎工学部システム科学科 卒業.
2014年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻前期博士課程 修了.
2014年4月 KDDI株式会社 入社.
2017年4月 株式会社KDDI総合研究所 出向.現在に至る.
拡張現実感に関する研究に従事.
2012年システム制御情報学会奨励賞受賞,2015年IEEE VR Best Paper Award,2016年第31回電気通信普及財団賞入賞.

[推薦理由] 本論文は,実物体の写実的再現表示を実現する新しい拡張現実システムを提案しており,理論に基づき手法を導出し,評価実験により有効性を実証している.位置姿勢の類似度の評価方法を工夫して,実画像群からユーザカメラの視界に近い画像を選択することを可能とし,光学特性計測および環境光推定を行わずに,実物体の写実的再現表示を実現した.主観評価実験により従来手法と比較して,より写実的かつ現実感のある物体表示が可能なことも示されている.国際的に拡張現実フレームワークの普及が進み拡張現実技術の向上が望まれている背景のもと,本論文の成果は,飛躍的な同分野の進歩を導くことが期待されることから,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●紙をちぎることで電子情報を手渡すインタラクション方式の基礎検討
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2017)(2017/6/30)](グループウェアとネットワークサービス研究会)
go

呉 健朗 君 (学生会員)

1995年生.
2018年 日本大学文理学部情報科学科 卒業.
同年,日本大学大学院総合基礎科学研究科博士前期課程に進学,現在に至る.
2017年VR学会サイバースペース研究賞,2018年情報処理学会GN研究賞.
ヒューマンコンピュータインタラクションの研究に従事.
情報処理学会学生会員.

[推薦理由] 画像や動画などの電子情報の受け渡しにおいて,事前に送信者は受信者の連絡先を知っている必要があるが,受け渡し相手が初見の場合やその場限りの相手である場合,連絡先の交換に抵抗を感じる人が多いという問題がある.そこで,紙をちぎって手渡すことで電子情報の受け渡しを可能にするモデルを考案し,プロトタイプシステムを用いた基礎検証を行った.その結果,73%の精度で対となる紙片同士のマッチングを行うことができた.当該研究は,革新的なコミュニケーションを実現する研究であり, グループウェアとネットワークサービスの研究に大きく貢献しているため推薦する.
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●雑談を誘発するテレプレゼンスロボットシステム
[2018-GN-104(2018/3/20)](グループウェアとネットワークサービス研究会)
kuzuoka

葛岡 英明 君 (正会員)

1986年 東京大学工学部機械工学科 卒業.
1988年 東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻 修士課程 修了.
1992年 東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻 博士課程 修了.
博士(工学).
同年,筑波大学構造工学系講師.
現在,筑波大学システム情報系教授.
情報処理学会,日本バーチャルリアリティ学会,日本ロボット学会,電子情報通信学会,ACM各会員.

[推薦理由] 雑談の機会が減ることによって,テレワーカが孤独を感じているという問題に対して,人々が対話を開始する前に,遠い挨拶と近い挨拶という2段階を経るというKendonの知見に基づき,雑談を誘発するテレプレゼンスロボットシステムを提案した. 提案システムを評価実験した結果,雑談を誘発できる可能性が示された.テレワークが社会的に広がっている現在,当該研究は,遠隔コラボレーショに必要なコミュニケーションを実現する価値のある研究であり,グループウェアとネットワークサービスの研究に大きく貢献しているため推薦する.
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●多言語社会におけるコミュニケーションモデルの一提案
[2017-DC-105(2017/7/6)](ドキュメントコミュニケーション研究会)
nakabasami

中挾知延子 君 (正会員)

1988年 大阪大学工学部応用物理学科 卒業.
1990年 東京国際大学商学部副手,1993年 助手.
1998年 埼玉大学大学院理工学研究科情報数理学専攻 修了,博士(学術).
1998年 東洋大学国際地域学部 助教授.
2005年 東洋大学国際地域学部 教授.
2017年 東洋大学国際観光学部 教授.
多文化社会におけるコミュニケーションの研究を現地調査も通じて行っている.

[推薦理由] 本研究は,地域社会の多言語対応への方策を検討するために,北アフリカのチュニジア共和国において言語調査およびインタビューを実施し,取得したデータに基づき,情報の送り手と受け手,そしてその間を行き来する多様な言語についてモデル化を試みている.従来の社会言語学では,言語の使用状況や接触状況等の現象を調査し,考察を加えるものが多いのに対し,本研究では,調査データを社会ネットワーク視点で分析し,将来の言語使用状況の推定に役立てている.経年データの測定を通じて多言語社会を分析することは,複数言語のコミュニケーションのあり方を明らかにするのみならず,多言語政策にもひとつのヒントを与える,極めて社会価値が高い取り組みと言える.以上の理由から,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●Stacked convolutional denoising autoencodersを用いた2誘導心電図からの特徴抽出および不整脈分類
[2017-MBL-83(2017/6/2)](モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会)
takahashi

高橋 柊 君 (正会員)

2015年 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科 修士課程 修了.
同年 株式会社NTTドコモ 入社.
2018年 SAS Institute Japan株式会社入社.現在に至る.
機械学習,自然言語処理に関する研究開発に従事.

[推薦理由] 本論文では,心電図(ECG; Electrocardiogramis)からの不整脈自動検出を実現するため,Stacked Convolutional Denoising Autoencoders (SCADE)を用いた分類手法を提案している.ECGからの不整脈検出では,対象者や環境・精神状態および観測ノイズが課題となる.これに対してSCADEにより位置普遍性の高い特徴を抽出し,全結合のニューラルネットワークを追加した再学習によって観測ノイズに対する頑健性を高めている.提案手法では,未知の波形についても高い分類能力を持つ分類器の構築に成功しており,Accuracy 95.1%を達成できている.以上のように,本論文は分析が困難な生体データに対して効果的な手法を提案しており,山下記念研究賞にふさわしい特に優秀な論文として推薦する.
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●サッカートラッキングデータを用いた機械学習に基づくプレー認識手法の提案
[2018-MBL-86(2018/2/27)](モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会)
imai

今井 友揮 君 (正会員)

2016年 立命館大学情報理工学部情報コミュニケーション学科 卒業.
2018年 大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻 博士前期課程 修了.

[推薦理由] 本論文では,プロサッカーにおけるプレーのラベル付けに多大な労力がかけられている問題に着目し,トラッキングデータに基づくプレー認識手法を提案している.カメラトラッキングシステムにより得られる選手およびボールの位置から特徴量を抽出し,機械学習によってボールタッチプレーの認識を実現する.前処理としてボールの移動軌跡の変化に基づき各プレーが発生したことを検出してから,プレー認識を行う.複数の機械学習アルゴリズムを比較した結果,Random Forestが最も高い性能を示しており,特に頻繁に発生するパスやトラップについてはF値約86%を達成している.以上のように本論文は実用性の高い手法を考案しており,山下記念研究賞にふさわしい特に優秀な論文として推薦する.
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●ユーザブロック機能の光と陰: ソーシャルアカウントを特定するサイドチャネルの構成
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2017)(2017/10/24)](コンピュータセキュリティ研究会)
watanabe

渡邉  卓弥 君 (学生会員)

2014年3月 早稲田大学基幹理工学部情報理工学科 卒業.
2016年3月 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工・通信専攻 修士課程 修了.
2016年4月 日本電信電話株式会社入社.NTTセキュアプラットフォーム研究所配属.
2018年4月 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工・通信専攻 博士後期課程 進学.

[推薦理由] 本論文では,SNSにおけるユーザブロック機能とRTTの測定により,ユーザのSNSアカウントを特定する攻撃手法を提案している.ユーザブロック機能を使ったアカウント特定という着眼点がユニークであるのみならず,その実装方法もうまく練られたものである.また,本攻撃の実現可能性について,現実的なネットワーク環境を想定して様々な条件下で詳細に評価を行った上で,実際に攻撃が成立することを説得力のある形で示しており,その信頼性も高く評価できる.よって,山下記念研究賞の受賞にふさわしいものとして推薦する.
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●静電容量方式タッチパネルに対する敵対的な干渉の脅威
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2017)(2017/10/25)](コンピュータセキュリティ研究会)
maruyama

丸山 誠太 君 (学生会員)

2017年3月 早稲田大学基幹理工学部情報理工学科 卒業.
2017年4月 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工・情報通信専攻 修士課程 入学.
CSS2016 最優秀論文賞, SEC道後2017 最優秀学生研究賞, CSS2017 優秀論文賞等受賞.

[推薦理由] 本論文では,静電容量方式のタッチパネルへの能動的な干渉により,ユーザが意図しない偽のタッチイベントを引き起こす攻撃手法について提案している.先行事例が見られない新しい攻撃手法の提案として新規性が高いのみならず,複数の市販デバイスを用いた実際の誤動作発生の確認などを通じて手法の有効性を詳細に検証しており,その信頼性も高く評価できる.よって,山下記念研究賞の受賞にふさわしいものとして推薦する.
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●CANを用いた階層統合型車載ネットワークの提案
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2017)(2017/6/29)](高度交通システムとスマートコミュニティ研究会)
tokunaga

徳永 雄一 君 (正会員)

1990年 東京理科大学工学部電気工学科 卒業.
1990年 三菱電機株式会社 入社.
2009年 立命館大学大学院理工学研究科総合理工学専攻 博士課程 修了.
産業用計算機アーキテクチャ,無線アドホックネットワーク,動態監視の研究に従事.
工学博士.
情報処理学会,システム制御情報学会,電子情報通信学会会員.

[推薦理由] 自動車の進化に追従する車載制御システムの実現という課題に対して,明確なコンセプトと実環境の状況を踏まえた実用的なネットワーク方式が 提案されており,シミュレーションでその有用性が評価されている.提案手法では,I/OデバイスとECUの配線をネットワーク接続することで,I/Oデバイスの設置制限を除外し,交換を容易にしている.ECU間通信に使うCANに本ネットワーク方式を重畳させる方法や,I/Oデバイスの変更に合わせて制御S/Wも交換する方法をECUの標準プラットフォームであるAUTOSAR上に実装する方法を提示するなど,現状を踏まえた実用的な提案となっている.課題となる応答特性を,シミュレーションで評価しており,質の高い研究と言える.
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●Lokemon:その場に潜むモンスターを介した参加型センシング手法
[2017-UBI-54(2017/5/25)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
sakamura

坂村 美奈 君 (学生会員)

2014年3月 慶應義塾大学環境情報学部 卒業.
2016年3月 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 修士課程 修了.
2016年4月 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 後期博士課程 入学.
2016年10月 ACM MobiCom2016 (The 22nd Annual International Conference on Mobile Computing and Networking) Mobile App Competitionにて優勝.
現在に至る.日本学術振興会特別研究員(DC2).

[推薦理由] 本研究は,参加型センシングにおいて,プライバシ保護や参加者の動機付け,発信内容の品質の担保といった課題を同時に解決することを目指した取り組みである.具体的には,ユーザーに各Point of Interest(PoI)に仮想的に設置されたモンスターへなりきって情報発信をしてもらうシステムLokemon(Location monster)を作成し,新たな情報発信モデルを提案している.当該モデルは,極めて新規性,有用性の高いモデルであり,ユビキタスコンピューティング分野に有益な知見をもたらした.また,本研究を通した人々の行動変容に対する知見は,「個」と「集団」のコミュニケーションモデルを明らかにし,情報科学に限らず社会学や都市計画の分野でも意義が認められる.さらに,行政業務での活用といった社会的な貢献も期待できる.よって,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●腕装着型センサによる飲水量推定法の提案
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2017)(2017/6/30)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
hamatani

濱谷 尚志 君 (正会員)

2013年3月 大阪大学基礎工学部 卒業.
2015年3月 大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻 博士前期課程 修了.
2017年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2).
2018年3月 大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻 博士後期課程 修了.博士(情報科学).
2018年4月 株式会社NTTドコモ入社.サービスイノベーション部配属.現在に至る.
モバイル・ヘルスケアに関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,近年普及しつつある腕装着型のデバイスを用い,ジェスチャの認識により飲水量を推定する画期的な取り組みである.提案方式では,生活での大枠の行動を捉えるマクロ行動分類器,各行動における細かいジェスチャを捉えるミクロ行動分類器,および飲水中の慣性センサ読み取り値に基づく飲水量推定モデルを組み合わせ,単一の腕装着デバイスによる飲水量推定を実現している.本研究は,これまで特別な容器や人による計量が必要であった飲水量の把握という課題に対し,利用者の生活を妨げないデバイスを用い,行動認識技術と独自の飲水量のモデル化を組み合わせ解決を測っており,新規性,有効性ともに非常に高い.よって本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●He loved the cloud, but the cloud did not love him.
[2017-IOT-37(2017/5/26)](インターネットと運用技術研究会)
kashiwazaki

柏崎 礼生 君 (正会員)

2001年 北海道大学 退学.
2005年 北海道大学 退学.
2009年 北海道大学 退職.
2012年 東京藝術大学 退職.
2014年 博士(情報科学).
現在,大阪大学 講師.

[推薦理由] クラウドコンピューティングのおかげで人は莫大な計算資源を瞬時に手に入れられるようになった.本稿ではクラウドコンピューティング利用の際に著者が実際に直面した事案(情報漏洩によって第三者に大量の計算資源を盗用された)を題材にして,その原因を究明しクラウドコンピューティングの利用者と事業者の双方の対策と課題を明らかにしている.クラウドコンピューティング利用が一般化した現在にあって本稿のような(失敗)事例を共有することはとても興味深く有用性に富むものであり,研究発表会においても活発な質疑があり好評を博したので,山下賞候補として推薦する.
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●九州工業大学における情報セキュリティ対策の取り組みについて
[インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2017)(2017/12/8)](インターネットと運用技術研究会)
nakamura

中村  豊 君 (正会員)

2001年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学領域 博士課程 修了.
同年 大阪大学大学院基礎工学研究科 リサーチアソシエイト.
2002年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学センター 助手.
2005年 九州工業大学情報科学センター 助教授.博士(工学).
2007年 同大 准教授,同大 ネットワークデザイン研究センター兼任.
2013年 同大 情報基盤運用室室長兼任.
WWW技術,サーバ管理手法,インターネット計測技術,ネットワーク運用技術,ネットワークセキュリティに関する研究に従事.
電子情報通信学会,情報処理学会,WIDEプロジェクトメンバー各会員.

[推薦理由] 2013年,九州工業大学はネットワーク管理を全学で一体的に運用し,情報セキュリティ対策を強化するための組織を発足した.著者らはその組織において九州工業大学全体のネットワーク管理および情報セキュリティ対策に従事しており,本稿では彼らが実施してきた情報セキュリティ対策について実例を挙げて詳しく紹介している.このような情報を公表することは「手の内を晒す」ことに繋がるため躊躇する組織が多いが,その分,他の組織がそこから学べることは非常に多く,価値の高い情報となる.実際,発表の際には議論が大いに盛り上がった.本稿を発表した著者に敬意を表するとともに,山下賞候補として推薦する.
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●オプトアウトの神話と事実:行動ターゲティング広告におけるオプトアウトの効果に関する調査
[2017-SPT-26(2017/11/29)](セキュリティ心理学とトラスト研究会)
sakamoto

坂本 一仁 君 (正会員)

2009年 奈良先端科学技術大学院大学 修士課程 修了.
同年 セコム株式会社 入社.
セコム(株)IS研究所にてWebセキュリティやプライバシー保護の研究に従事.

[推薦理由] Webの広告事業者は,プライバシーへの懸念を抱くユーザへ行動ターゲティング広告のオプトアウト機能を提供し,選択の機会を与えている.しかしながら,広告オプトアウトの措置は広告事業者によって違いが存在する.また,ユーザが広告オプトアウトに期待する効果も様々である.本論文は,実際に数多くWebサイトを調査し,広告オプトアウトの操作を行った際のブラウザの挙動を記録し,広告オプトアウトの実態を明らかにしている.Webにおけるプライバシー保護は今後ますます重要な課題であり,波及効果も大きく,とくに優秀な論文として推薦したい.
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●音声対話型AI帳票を実現する現場作業支援ソリューションの提案
[2017-CDS-20(2017/8/29)](コンシューマ・デバイス&システム研究会)
tabuchi

田淵  仁浩 君 (正会員)

1987年 早稲田大学理工学部電子通信学科 卒業.
1993年 同大大学院理工学研究科電気工学専攻博士 後期課程 修了.
1989~1993年 同大学情報科学研究教育センター 助手.
1993年 日本電気(株)C&C研究所入社.
現在, NECソリューションイノベータ(株)で認知科学や人工知能を用いた人間機能拡張の事業開発に従事.
博士(工学).
1988年 情報処理学会第35回全国大会学術奨励賞, 1994年 情報処理学会平成6年度山下記念研究賞, 人工知能学会2016年現場イノベーション賞, 情報処理学会2017年度業績賞など受賞.
電子情報通信学会会員.

[推薦理由] 課題が明確であるとともに,現場での実績を元にした結果がベースの論文であり,今後の社会において事業/技術ともに大きく貢献される可能性がとても高い.要件が整理されており,実際にシステムを構築して現場で有効性を評価している.人手不足が深刻化する今日において,作業現場の改善に真摯に取り組むこの研究は,日本の産業界に大きく貢献をするものと期待される.実証実験においても有効性が証明されていることから,当該論文を推薦する.
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●SDM3602:音楽イベントのための自由視聴点映像音声のインタラクティブ再生
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2017)(2017/6/30)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
tsukada

塚田 学 君 (正会員)

2005年 慶應義塾大学環境情報学部 卒業.
2007年 慶應義塾大学政策・メディア研究科 修士取得.
2007年より フランス・パリ国立高等鉱業学校 (Mines ParisTech) ロボット工学センター博士課程在籍および,フランス国立情報学自動制御研究所 (Inria)にて研究員として勤務.
2011年 博士号取得.
現在は,東京大学 大学院 情報理工学系研究科の特任助教.
2014年より WIDEプロジェクトのボードメンバー,およびSoftware Defined Media(SDM)コンソーシアム・チェア.
自動車の情報化など,次世代インターネットIPv6における移動体通信,SDMに取り組む.

[推薦理由] 対象論文は「SDM360^2」というシステムの提案,実装,体験実験を述べたものである.このシステムは多数の360度カメラとマイクを用いてあるシーンの映像と音声を収録しておき,それらをタブレット等を用いて自由視聴点でインタラクティブに鑑賞することができるものである.これにより,システムでコンサート等を収録した場合には,会場内や舞台を自由に動き回るような感覚でコンサートの映像と音声を楽しむことができる.提案システムは従来の映像音声コンテンツでは困難な映像と音声の新しい鑑賞方法を実現しており,実装したシステムは完成度が高く,将来的な実用化に関する有用性も高い.以上により,本論文の発表者を山下記念研究賞候補として推薦する.
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●コミュニティの特徴を考慮した高齢者見守りサービス設計手法の開発
[2017-ASD-8(2017/6/19)](高齢社会デザイン研究会)
hiekata

稗方 和夫 君 (正会員)

1998年3月 東京大学工学部船舶海洋工学科 卒業.
2000年3月 東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻 修士課程 修了.
2000年4月 日本アイ・ビー・エム株式会社ソフトウェア開発研究所.
2004年9月 東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻 助手.
2007年4月 東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻 助教.
2008年4月 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 助教.
2008年7月 博士(工学)取得.東京大学大学院工学系研究科.
2010年2月 東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻 准教授,現在に至る.
2013年6月17日-2014年6月14日 マサチューセッツ工科大学客員研究員.
産業や社会の設計のためのシステムズアプローチ,システムオブシステムズ技術に関する研究に取り組む.
   
2006年10月 天才プログラマー/スーパークリエータ, 独立行政法人情報処理推進機構.
2007年5月 日本船舶海洋工学会奨励賞(乾賞), 社団法人日本船舶海洋工学会.
2009年7月 JCOMM技術賞, 一般社団法人 日本モビリティ・マネジメント会議.
2010年6月 人工知能学会研究会優秀賞,社団法人人工知能学会.
2014年5月 日本船舶海洋工学会論文賞, 社団法人日本船舶海洋工学会.
2016年10月 Best Paper Award, Advanced Maritime Engineering Conference 2016 of the 7th Pan Asian Association of Maritime Engineering Societies.

[推薦理由] 高齢化の進行にともなって高齢者の見守りサービスの需要が高まっている.その導入には効率的な見守りを実現するための情報技術に加え,見守られる側の受容性への配慮も必要である.本研究はシステムズアプローチの考え方により,自治体,高齢者などの利害関係の中で見守りが実現される仕組み全体をシステムとして捉え,見守りサービスを設計している.具体的にはStakeholder Value Networkによる利害関係の分析による要求定義と,Morphological Matrixの形式での設計上の選択肢の記述により設計空間および技術と受容性のトレードオフを明示する設計方法を提案し,三重県玉城町の移動ログデータを利用した事例でその有効性を示している.情報技術と社会的便益を結ぶ方法論を提案するとともに,実証した優れた研究と評価できる.以上より,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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メディア知能情報

●教師なし系列マッチング
[2017-NL-234(2017/12/20)](自然言語処理研究会)
wada

和田 崇史 君 (学生会員)

2017年3月 東京大学工学部システム創成学科 卒業.
2017年4月 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士前期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,Bidirectional LSTMを用いたAutoEncoderによる教師なし系列マッチング手法を提案し,提案手法によって学習された分散表現を用いて対訳文のマッチングにおいて評価を行っています.教師あり手法との比較において,ドメインごとに教師あり学習が提案手法に対して精度を上回るポイントも示しており,本手法の適用範囲も明らかにしています.系列マッチングとして定式化される問題は豊富であり,特に有用性と汎用性の観点から重要な技術と考えられます.今後,少量の教師データを使うことでより精度が上がる可能性もあり, 発展性もあると考えられ,山下記念賞に推薦します.
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●楽曲聴取行動系列の階層化による聴取傾向変化の検出と行動分析
[2017-ICS-188(2017/7/20)](知能システム研究会)
takano

高野 雅典 君 (正会員)

2004年 会津大学コンピュータ理工学部ソフトウェア科学専攻 卒業.
2006年 名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻 博士前期課程 修了.
2006年 日本学術振興会特別研究員DC1.
2009年 名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻 博士後期課程 修了.博士(情報科学).
システムインテグレータを経て,現在は株式会社サイバーエージェント 技術本部 秋葉原ラボに勤務.
東京大学大学院工学系研究科 共同研究員.
自社サービスのデータ分析と計算社会科学研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,サブスクリプション型音楽配信サービスのユーザ行動ログデータを分析し,ユーザの聴取傾向とその変化をモデル化する手法を提案した論文である.提案手法自体は,階層的にHMMを構築するという手法であり,高い新規性を持つわけではない.しかし,「ユーザに聴取傾向の変化を促すにはどのような施策があるか?」という問題設定に新規性がある点,実サービスのデータを分析し,実際に実用性のある分析結果が得られている点を評価し,山下賞に推薦するものである.
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●Discrete Inference Approaches to Image Segmentation and Dense Correspondence
[2017-CVIM-207(2017/5/10)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
taniai

谷合 竜典 君 (正会員)

2012年3月 東京大学工学部電子情報工学科 卒業.
2014年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程 修了.
2014年4月 日本学術振興会特別研究員(DC1).
2017年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 博士課程 修了.
同年より,理化学研究所 革新知能統合研究センターにて特別研究員.現在に至る.
2012年から2016年にかけて,マイクロソフト・リサーチ(米国)や同アジア(中国)にて研究インターンとして勤務.2015年にマイクロソフト・リサーチ・アジア・フェローシップを受賞.

[推薦理由] 本論文は,マルコフ確率場の推論問題と同時に,その応用として画像の領域分割と密対応点推定に ついて取り組んだ研究である.数理的な背景としては,離散最適化アプローチのもつ「非劣モジュラ」「高階」「多値ラベル」の3つの困難に包括的に取り組みつつ,それらを応用した実問題としては,ステレオ視の標準ベンチマークで1位の精度達成や,画像領域分割と密対応点推定を統合する新たな枠組みも提案しており,数理ならびに実用の双方の観点において,コンピュータビジョン分野の研究の進展に大きく貢献するものである.以上より,本論文は平成30年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する.
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●Measuring Translucent Objects using Spatially and Temporally Modulated Light
[2017-CVIM-207(2017/5/10)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
tanaka

田中賢一郎 君 (正会員)

2017年 大阪大学大学院情報科学研究科 博士後期課程 修了,博士(情報科学).
同年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 助教,現在に至る.
コンピュテーショナルイメージング・コンピュテーショナルフォトグラフィに関する研究に従事.

[推薦理由] 本論文では,空間的・時間的に強度を変調した光を用いて,半透明物体の内部構造の可視化や材質推定を実現するという新しい計測原理に基づくシーン解析手法をまとめている.半透明物体の計測では,光の散乱により,見えが不鮮明になるが,空間的に強度変調した光を照射することで,透過型・反射型の双方で鮮明に半透明物体内部を可視化できることを示した.また,時間的に強度変調した光を照射することで,半透明物体の材質を推定できることを示した.これらの一連の手法を,強度変調光の照射という観点で体系的にまとめており,新しい観点からコンピュータビジョンの方向性を示した.以上より,2018年度山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●マイクロタスク型クラウドソーシングによる協調的三次元モデリング
[Visual Computing / グラフィクスとCAD合同シンポジウム2017(2017/6/23)](コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会)
suzuki

鈴木 良平 君 (学生会員)

2014年 東京大学理学部情報科学科 卒業.
2016年 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 修士課程 修了.
2018年 東京大学理学部物理学科 卒業.
2018年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究発表は,単一画像からの三次元モデル生成という,グラフィクス分野で長く取り組まれてきた問題に対し,マイクロタスク型クラウドソーシングに基づくヒューマンコンピュテーションを活用したアルゴリズムを用いた,極めて斬新かつ有効な手法を提案している.提案システムでは,三次元モデル生成のスキルを持たないクラウドワーカーでも簡単に取り組めるようにマイクロタスクが設計され,明らかな間違いや多少の不整合性はノイズ除去や平均化によってうまく吸収されるようになっている.また,他の高度で創造的なタスクも同様のフレームワークで解決できる可能性もあり,本研究は大きな意義をもつと考えられる.よって,本研究発表を山下記念研究賞候補として推薦する.
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●ピクトグラミング -人型ピクトグラムを用いたプログラミング学習環境-
[情報教育シンポジウム(SSS2017)(2017/8/18)](コンピュータと教育研究会)
itoh

伊藤 一成 君 (正会員)

2005年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科 後期博士課程 修了.博士(工学).
2005年4月 青山学院大学理工学部 助手,2007年4月同助教.
2008年4月 青山学院大学社会情報学部 助教.
2010年4月 青山学院大学社会情報学部 准教授,現在に至る.
2018年4月より 放送大学客員准教授を兼任.
メディア情報処理,メディア情報学に関する研究に従事.
現在,本学会会誌教育WG(EWG)編集委員,本学会セミナー推進委員会委員.

[推薦理由] 本発表は人型ピクトグラムを題材に,楽しみながらプログラミングを学習する「ピクトグラミング」という新しいプログラミング学習環境を提案している.ピクトグラムをプログラムから操作する学習環境は従来に例がなく,高等学校での授業例などで教育的な効果も確認できている.小学校から高等学校までのプログラミング教育の必修化が社会的に注目されている中で,プログラミング初学者の教育に役立てることが期待される.
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●情報システムにおけるデータベースの仕組みを学ぶ共通教科「情報」授業の提案と実践
[2018-CE-144(2018/3/17)](コンピュータと教育研究会)
shirai

白井詩沙香 君 (正会員)

2007年 武庫川女子大学生活環境学部情報メディア学科 卒業.
2012年 武庫川女子大学大学院生活環境学研究科生活環境学専攻 修士課程 修了.
2015年 武庫川女子大学大学院生活環境学研究科生活環境学専攻 博士課程 修了.博士(情報メディア学).
2015年 武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科 助教.
2018年 大阪大学サイバーメディアセンター 情報メディア教育研究部門 講師.現在に至る.
ヒューマンコンピュータインタラクション,学習支援システム,情報科学教育の研究に従事.

[推薦理由] 本発表は高等学校共通教科「情報」における専門基礎としてのデータベース教育を扱った実践例を紹介しており,今後の情報教育に有益な知見を与えると考えられる.実践では,高校現場での指導が難しいデータベースの分野を漫画とデータベース学習ツールを利用することにより,高い指導効果を示しており,高校教育での良いモデルケースとなる.社会の情報基盤である情報システムについて,興味を引く教材と体験的な演習を組み合わせて理解を促す授業が設計されており,今後の情報教育の具体的な方法の一つとして示唆に富む内容と考えられる.
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●地方小集落の「集落アーカイブ」の課題と実践的取り組みについて
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2017)(2017/12/9)](人文科学とコンピュータ研究会)
fujimoto

藤本 悠 君 (正会員)

2010年3月 同志社大学大学院文化情報学研究科 博士後期課程 終了. 博士(文化情報学)
2010年5月~11月 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン 客員研究員.
2011年4月 同志社大学研究開発推進機構・文化情報学部 特別任用助教.
2013年4月 奈良大学文学部地理学科 専任講師. 現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,消滅の危機に瀕している小集落の記録を体系的に残していくためのデジタルアーカイブ「集落アーカイブ」の構築に取り組んでいる.数多く存在する小集落消滅の危機は社会問題の1つとしてあげられており,喫緊の課題である.「集落アーカイブ」の構築は情報学・人文地理学・地域研究との協働によって実践された事例研究,さらには伝統文化の保存手法として位置づけられる.「集落アーカイブ」に収録していく内容,その活用方法などについても検討を進めており,さらに低コストに構築していることなどから,継続的に発展していくと期待される.
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●古典中国語Universal Dependenciesへの挑戦
[2018-CH-116(2018/1/28)](人文科学とコンピュータ研究会)
yasuoka

安岡 孝一 君 (正会員)

1990年3月 京都大学大学院工学研究科情報工学専攻 修士課程 修了.
1990年4月 京都大学大型計算機センター 助手.
1997年8月 京都大学大型計算機センター 助教授.
2000年4月 京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター 助教授.
2009年4月 京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター 准教授.
2015年4月 京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター 教授.
現在に至る.京都大学博士(工学).人文科学と情報科学の橋渡しをすべく,人文情報学の研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,言語横断的な依存構造記述であり,かつSyntaxNetなどのニューラルネットワークで採用されているUniversal Dependencies(UD)を古典中国語での係り受け解析へ適用していく挑戦的課題に取り組んでいる.古典中国語の文法構造は,いくつかの点でUDとの相性がよくなく容易に適用できない.本研究ではその理由を実例で示し,さらに普遍的な文法規則仮説と古典語の文法の対応付けを実例に基づいて行い,汎用的な形態素・係り受けタグの付与への可能性を示しており,まさにこの分野の最先端に位置づけられる研究である.統計的言語処理をはじめとする他分野との連携など今後の発展も期待できる.
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●調とリズムを考慮した階層隠れセミマルコフモデルに基づく歌声F0軌跡に対する音符推定
[2017-MUS-116(2017/8/25)](音楽情報科学研究会)
nishikimi

錦見 亮 君 (学生会員)

2016年3月 京都大学工学部情報学科 卒業.
2018年3月 京都大学大学院情報学研究科 修士課程 修了.
2018年3月 京都大学大学院情報学研究科 博士後期課程 進学.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,歌声の連続的な音高軌跡から離散的な音符系列を推定する問題に対して,音楽的な妥当性を評価する言語モデルと,音響的な再現性を評価する歌唱モデルを確率的に統合した階層ベイズモデルに基づく手法を提案している.複雑な時間変化を伴う音高軌跡を,楽譜に起因する階段関数と,歌唱者の物理特性に依存する連続関数との和で説明することは,一種の音源分離問題と解釈できる.このような不良設定問題に対して,階層ベイズモデルの自由度を適切に拘束することにより,曖昧性を見事に解消している.技術的に極めて高度であり,歌声の理解にも資するものであるので,山下記念研究賞に推薦する.
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●記号と信号処理の相互作用フレームワークの構築に向けたGTTMの大域的構造を考慮した音響信号の分節の調整
[2018-MUS-118(2018/2/21)](音楽情報科学研究会)
sawada

澤田 隼 君 (学生会員)

2016年3月 公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科 卒業.
2018年3月 公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科 博士前期課程 修了.
2018年4月 公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科 博士後期課程 進学.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,人間が行っている記号と信号の統合処理を解明するという音楽音響理解の根幹にかかわる問題を視野に入れた大変野心的なものである.その第一歩として,音楽音響信号から直接タイムスパン木を抽出する課題を設定した.タイムスパン木のレベル(記号レベル)での構造安定性や表現効率を最大化する処理と音楽音響信号レベルでの記号創発の間に相互作用を導入することで,人間のような柔軟で適切な記号接地が実現できることを示した.人間の知能解明のドメインとして音楽が有望であることを実証したという意味でも意義深く,山下記念研究賞に推薦する.
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●End-to-EndモデルによるSocial Signals検出および音声認識との統合
[2017-SLP-117(2017/7/28)](音声言語情報処理研究会)
inaguma

稲熊 寛文 君 (学生会員)

2016年3月 京都大学工学部情報学科 卒業.
2018年3月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻 修士課程 修了.
2018年4月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻 博士後期課程 進学.
2018年4月 日本学術振興会特別研究員DC1.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究ではEnd-to-End音声認識にSocial Signal検出を統合する手法を提案している.従来のSocial Signal検出はフレーム単位の検出が多くフレーム単位の正解ラベルが必要となっていた.しかし,Social Signalは振る舞い単位での頑健が望ましくフレーム境界が曖昧であるため正解ラベルの用意が困難であった.本論文は,CTCを損失関数とするEnd-to-EndモデルであるBLSTM-CTCを用いSocial Signalを直接検出し,かつ文字単位のEnd-to-End音声認識を統一的に扱うことで,日本語の大規模コーパスにおいて最高レベルの性能を達成した.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●日米欧の自動走行に関する政策動向比較と今後の我が国の方向性に関する一考察
[2017-EIP-76(2017/5/31)](電子化知的財産・社会基盤研究会)
katoh

加藤 尚徳 君 (正会員)

2009年 新潟大学法学部 卒業.
2014年 総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻博士5年一貫課程単位取得満期退学.修士(情報学).
2015年 株式会社KDDI総研調査一部海外市場・政策グループ 研究主査.
2016年~現在 株式会社KDDI総合研究所フューチャーデザイン1部門3グループ アソシエイト.

[推薦理由] 本論文における自動車自動走行の論調では,論点は技術的なものに限定されておらず,社会制度を含めて広範にわたっている.また,欧州及び米国における政策動向についての差異を分析し,政策として重視すべき公共的側面及び経済的側面を指摘している.とくに,欧米における自動車産業の重要性を踏まえ,自動走行に対する厳格な規制と,規制緩和による競争促進を組み合わせて国際競争力の源泉とする点に着目している点は高く評価できる.さらに,加藤は本研究に留まらず,技術と社会の両面から継続的に研究を重ねており,山下記念研究賞にふさわしいと考えるので推薦する.
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●花札のこいこいにおける方策勾配法とNeural Fitted Q Iterationの適用
[ゲームプログラミングワークショップ2017(2017/11/11)](ゲーム情報学研究会)
satoh

佐藤 直之 君 (正会員)

2014年9月 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士前期課程 修了.
2018年3月 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士後期課程 修了.
2018年4月 佐世保工業高等専門学校電子制御工学科 助教.

[推薦理由] 囲碁をはじめとして,近年強化学習手法への関心が高まっている.本論文は花札のゲーム「こいこい」について,強化学習の手法を適用しールベースのプログラムよりも強いプレイヤを作成することに成功した.先行研究の少ない花札ゲームにおいて一定の強さを示しただけでなく,複数の学習法を比較,またゲーム固有の知識にあまり依存しない入力特徴量を試みるなど,今後の研究のベースラインとして重要な研究であり,山下記念研究賞に推薦する.
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●視聴覚コンテンツの音情報から生成した振動の高次感性促進効果
[エンタテインメントコンピューティング2017(2017/9/17)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
yagyu

柳生 寛幸  君 (正会員)

2009年 山形大学工学部電気電子工学科 卒業.
2011年 東北大学大学院情報科学研究科 博士課程前期課程 修了.
運送会社勤務を経て,
2016年 東北大学大学院情報科学研究科 博士課程後期課程 単位取得後退学.
現在,東北大学電気通信研究所勤務(東北大学総合技術部技術系職員).
修士(情報科学).

[推薦理由] 本研究は,視聴覚コンテンツの臨場感と迫真性を向上させることを目的に,音情報の70Hz以下の低周波信号成分を用いてモーションプラットフォームによる体幹への全身振動刺激を生成する手法の提案と評価を行った研究である.評価実験の結果,全身振動刺激がコンテンツに対する臨場感および迫真性の向上につながることを明らかにし,提案手法における最適な刺激パラメータの抽出も行った.VR技術の研究において,多感覚コンテンツシステムの設計法の構築は重要な研究課題であり,研究分野への波及効果や社会への展開という観点からも本研究の学術的価値は高く,山下記念研究賞受賞にふさわしいと判断する.
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●自己実現理論を起点としたEntertainment Design Assetの提案とその分析事例報告
[2017-EC-46(2017/12/22)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
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小笠 航 君 (正会員)

2016年3月 関西学院大学理工学部人間システム工学科 卒業.
2016年4月 関西学院大学大学院 理工学研究科 人間システム工学専攻 修士課程 修了.
2018年4月 株式会社バンダイナムコスタジオ 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,これまで十分に整備されていなかったエンタテインメントコンテンツの「面白さ・楽しさ」を実現するための設計指標として,Entertainment Design Assetの提案を行った意欲的な研究である.論文ではAssetの中でも特に,「人に語りたくなる要素」を取り上げ,過去の制作された2つのエンタテインメントコンテンツに対しての分析を行い報告を行っている.本研究の取り組みは,エンタテインメントコンテンツの制作支援に寄与するだけではなく,制作されたコンテンツの分析や評価方法の標準化に対しても多大なる貢献が期待される.以上から,本研究は山下記念研究賞受賞にふさわしいと判断する.
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●Characteristic of functional enrichments of putative transcriptional target genes and its application
[2017-BIO-52(2017/12/4)](バイオ情報学研究会)
ohsato

大里 直樹 君 (正会員)

筑波大学農学研究科応用生物化学専攻 修士取得後,理化学研究所ゲノム科学総合研究センター,国立遺伝学研究所生命情報・DDBJ研究センター,東京大学先端科学技術研究センター等を経て,大阪大学情報科学研究科バイオ情報工学専攻 特任助教.
遺伝子発現制御に関する研究に従事.博士(学術).

[推薦理由] 本研究は,転写因子と転写標的遺伝子の組を予測する手法を提案している.転写因子が標的とする遺伝子を見つける事は,生命システムを解明するために不可欠の事項である.大里氏は,1)転写標的遺伝子の発現量変化,2)転写因子を要因とした転写標的遺伝子の機能エンリッチメントの統計量,そして3)クロマチン相互作用に関わるCTCFタンパク質のDNA結合配列のゲノムでの方向の各情報を用いる事により,転写因子の標的遺伝子を予測する事が可能である事を明らかとした.また併せて予測誤りを少なくする基準を明らかにしている事は本研究の高い有用性を示している.よって,賞の授与に値する研究発表であると考え,本発表者を推薦する.
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●Implementing A Blockchain Based Learning Analytics Platform
[2018-CLE-24(2018/3/21)](教育学習支援情報システム研究会)
ocheja

Ocheja Patrick Ileanwa 君 (学生会員)

2014年8月 B.Eng. Electronic Engineering, University of Nigeria, Nsukka, 卒業.
2017年10月 京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻 博士前期課程 入学.現在に至る.
緒方研究室において「ブロックチェーンを用いた教育データの分析プラットフォーム」の研究に従事.

[推薦理由] 本論文は学習管理システムで得られる学習履歴データを分散台帳技術で蓄積管理することを提案している.教育機関を超えた学習履歴データの蓄積は生涯にわたる学習プロセスや成果を示すために重要である一方,分散した学習履歴データを教育機関をまたいで蓄積する手法の考案やデータの安全な保存手法など,課題も多い.本論文はこれらの課題をブロックチェーン技術により解決する方法を提案している.提案されたシステムにおいては,多様な学習管理システムから効率よく安全にデータを取得蓄積する方法が具体的に提案されている.また,提案した枠組みを評価する試行も実施しており,試行の評価から本枠組みの有効性を示すとともに,学習履歴データ蓄積にかかる時間遅れの問題や細かなプライバシー設定を含めた課題も明らかにしている.組織をまたぐ学習履歴の解析に分散台帳技術を用いる基礎的な取り組みであり,今後の発展が期待される.
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●視覚障害者向け屋内ナビゲーションシステムの大規模施設における測位精度の評価
[2017-AAC-4(2017/8/26)](アクセシビリティ研究会)
satoh

佐藤 大介 君 (正会員)

2003年 筑波大学情報学類 卒業.
2005年 筑波大学システム情報工学研究科 修士号取得.
2005年 日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所に入所.
2011年 筑波大学システム情報工学研究科 博士課程 修了,博士(工学).
2018年 カーネギーメロン大学に客員研究員として着任.

[推薦理由] 候補者は,視覚障害者の単独歩行を目的とした音声による経路案内アプリケーションを開発しており,本発表ではBLEビーコンを使った屋内測位システムの位置精度と,視覚障害者のナビゲーションに必要な推定精度について,21,000m2の大規模施設にBLEビーコンを約220個設置した実証実験をもとに議論した.視覚障害者へのナビゲーションの成功率は85%であり,位置推定誤差が3m以上になると失敗する確率が増えることがわかった.また,ビーコン間の距離と測位精度の関係を調べたところ,95%分位点の精度における誤差が3m程度に収まれば,10-20mのビーコン間隔でもナビゲーションに利用できることがわかった.視覚障害者による実証実験のみならず,ビーコン設置のコスト削減に関する考察も含んでおり,実用化も見据えた優れた研究であり推薦する.
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