2016年度(平成28年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に 贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は38研究会の主査から推薦された計54編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,理事会(2016年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の下記受賞者には,3月16日に名古屋大学で開催される第79回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI CG IS AVM GN DC MBL CSEC ITS UBI IOT SPT CDS DCC ASD

<メディア知能情報領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE

コンピュータサイエンス領域

●統計情報制限下におけるRDF問合せ最適化のための結合選択率の間接的見積り手法
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum 2015)(2015/11/25)](データベースシステム研究会)
matono

的野 晃整  君 (正会員)

2005年3月 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程 修了.
博士(工学).
2005年5月 産業技術総合研究所 特別研究員.
2007年4月 同 研究員.
2012年4月 同 主任研究員,現在に至る.
データベース,RDFに関する研究に従事.
2008年 第1回日本データベース学会/電子情報通信学会データ工学研究会/情報処理学会データベースシステム研究会最優秀若手研究者賞 受賞.
ACM,情報処理学会各会員.

[推薦理由] 本論文ではRDFデータに対する問合せコストの算出法が示されている.本論文の独創的な点は,不完全な統計情報下でも利用可能な,条件付き確率を用いた数理モデルに基づく算出法を提案している点にある.この方法によって,キャッシュサーバに残された部分的なデータでも問合せコストを見積もることが可能となる.また,実データに適用して提案手法による見積値がある程度妥当に得られることも示されている.近年,オープンデータのフォーマットとしてRDFが用いられることが増えているが,提案手法は大規模かつ分散したRDFデータに対する結合演算の実行計画に有用である.よって,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●生態系モデルに基づくオンライン活動データの非線形解析
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2016)(2016/3/1)](データベースシステム研究会)
matsubara

松原 靖子  君 (正会員)

2006年 お茶の水女子大学理学部情報科学科卒業.
2009年 同大学院博士前期課程修了.
2012年 京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻博士後期課程修了.博士(情報学).
2012年 NTTコミュニケーション科学基礎研究所RA.
2013年 熊本大学大学院自然科学研究科日本学術振興会特別研究員(PD).
2014年より同大学院助教.この間,カーネギーメロン大学客員研究員.
2016年 日本データベース学会上林奨励賞受賞.
センサデータ処理やWeb情報解析など,大規模時系列データマイニングに関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,検索キーワードの出現回数のような,人々のウェブ上での大規模時系列データに対する非線形解析手法を提案している.本研究をユニークにしている点は,人々の活動を自然界の生態系における種内・種間競争としてモデル化している点である.提案手法を用いることで,人々の長期的な非線形パターン,季節的なパターン,そしてトピック間の競合関係などのマイニングや予測が可能となる.近年,ビッグデータからの時系列パターンマイニングは社会的価値が高く,その中でも自然界の生態系モデルを本問題に適用した本研究は,研究としても極めて価値が高いと言える.よって,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●ソースコードの静的検査における警告の版間追跡ツール
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES2015)(2015/9/8)](ソフトウェア工学研究会)
kuwabara

桑原 寛明  君 (正会員)

2006年 名古屋大学大学院情報科学研究科情報システム学専攻博士後期課程 満期退学.
2007年 立命館大学情報理工学部 助教.
2016年 南山大学情報センター 講師.
博士(情報科学).
ソフトウェア工学,形式手法,プログラム解析に関する研究に従事.

[推薦理由] コードレビューにおいて静的検査ツールが報告する警告を版間で追跡することで,過去の検査において開発者がすでに確認済みの警告を,繰り返し報告しない手法を提案している.従来の検査ツールでは,無視できる警告を確認したという事実が残らず,同じ警告が検査を行うたびに報告され,新たに発生した重要な警告の見逃しが発生しやすい.これに対して,提案手法では,開発者が確認済みの警告を記録することで,無駄な警告を排除することができる.警告を版間で追跡するという発想は興味深く,手法を実装したツールの完成度も高い.また,実際のコードレビュー作業で発生する問題を扱っており,実際の開発現場での効果が期待できる.以上より,山下記念研究賞にふさわしい論文である.
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●コンカレントフィードバック開発方法の車載ソフトウェア開発への適用
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES2015)(2015/9/8)](ソフトウェア工学研究会)
hayashi

林 健吾  君 (正会員)

2003年3月 名古屋大学大学院人間情報学研究科修士課程 修了.
2003年4月 (株)デンソー 入社.
2015年9月 ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2015 最優秀論文賞(実践論文部門),企業賞受賞.
情報処理学会会員.

[推薦理由] システムの内部品質の確保を目指したコンカレントエンジニアリングのフィードバック機構に着目した開発方法を提案している.具体的には,仕様開発フェーズから製品開発部門がプロトタイプ開発に参画することで,研究開発部門と協働して製品を進化させる3パターンのフィードバックループを取り入れた開発手法となっている.企業におけるソフトウェア開発プロセスを改善した事例の報告は貴重であり,実践論文としての貢献はきわめて大きい.また,実際の車載システムの開発に適用し,開発期間の短縮と内部品質の改善という観点から,従来のプロトタイプモデルとの比較評価を定量的に実施している点も高く評価できる.以上より,山下記念研究賞にふさわしい論文である.
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ランダムバッファの発行キューにより生じる性能低下の抑制
[2015-ARC-216(2015/8/5)](システム・アーキテクチャ研究会)
sakai

酒井 信二  君 (学生会員)

2015年3月 名古屋大学工学部電気電子・情報工学科 卒業.
2015年4月 名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻 博士前期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 発行キューはマイクロプロセッサの性能・電力に大きな影響を与える.発行キューとして,従来,命令がフェッチ順に並ぶシフトキューが用いられることが多かったが,電力制約が厳しい今日では,低電力なランダムキューが用いられることが多い.しかし,命令の並びがランダムとなるため,発行時,高性能化に必須な古い命令を優先して選択する回路を実現することが困難という問題があった.そこで,本論文では,キューを小さな部分 (OQ: old queue) と残りの部分(MQ: main queue) に分割し,MQ から OQ に最も古い数命令を移動させ,単純な選択回路で古い命令を優先的に選択し,性能低下を抑制することを提案した.極めて有効かつ実用的な方式であり,高く評価できる.以上の理由より,本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●分散ルータによる高性能NoC
[2016-ARC-218(2016/1/20)](システム・アーキテクチャ研究会)
yasudo

安戸 僚汰 君 (学生会員)

2014年 慶應義塾大学理工学部情報工学科 卒業.
2016年 同大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 前期博士課程(修士課程) 修了.
同年より,同大学大学院 後期博士課程 在学.
現在,主としてチップ内ネットワーク,相互結合網の研究に従事.

[推薦理由] 今後のチップ内ネットワーク (NoC) の設計には,配線長とホップ数のディレンマが付きまとう.すなわち,昨今研究が進んでいる低遅延トポロジはホップ数を劇的に削減できるが,それに付随する長い配線によって配線遅延・エネルギーが増加する.本論文はこの問題に対して,ルータ設計思想による新しい解決法を示した.これは,ルータを複数のユニットに分解して配線上に分散配置することで長い配線を区切るという方法である.さらに,ユニット間の配線長,挿入するリピータを調節することで最もエネルギー効率の良い設計が可能となる.本論文の重要な問題提起とその画期的・効果的な解決法,広範囲の実験は,今後の NoCの研究に大きく貢献すると考えられる.よって本賞に推薦する.
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●縮退表現に基づくシーケンスパタン集合の圧縮
[2016-OS-136(2016/3/1)](システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
kawashima

川島 英之 君 (正会員)

1999年 慶應義塾大学理工学部電気工学科 卒業.
2005年 同大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 後期博士課程 修了.
同年  慶應義塾大学 理工学部 助手.
2007年 筑波大学大学院システム情報工学研究科講師,並びに計算科学研究センター講師.
2016年 筑波大学計算科学研究センター准教授.
博士(工学).データ基盤に興味を持つ.
日本データベース学会,情報処理学会,電子情報通信学会,ACM,IEEE,各会員.

[推薦理由] 本研究発表は,skip-till-any-matchにおけるシーケンス演算子処理を効率化するために縮退表現を提案している.縮退表現により出力されるシーケンスパターン集合の空間コストは汎用圧縮ライブラリに比べて削減され,さらにその縮退化に要する処理時間は汎用圧縮ライブラリより高速であるという特徴がある.提案手法を実装して評価した結果,汎用ライブラリGZIP2に対して時間効率で8,210倍,空間効率で9,928倍の改善を示した.本研究では,空間サイズの削減を扱う研究を著者らが初めて提案し,その有用性を実装評価により示しており,山下記念研究賞に値する特に優れた論文であると判断しここに推薦する.
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●統計的タイミングモデルに基づくニアスレッショルド回路のゲートサイジング
[DAシンポジウム2015(2015/8/27)](システムとLSIの設計技術研究会)
shiomi

塩見 準  君 (学生会員)

2014年3月 京都大学工学部電気電子工学科 卒業.
2016年3月 京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻 博士前期課程 修了.
2016年4月 京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻 博士後期課程 進学.
2016年4月 日本学術振興会特別研究員 DC1 採用.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,CMOS回路をトランジスタの閾値電圧近傍(ニアスレッショルド)で動作させたときのエネルギー効率の劇的な向上を実現する手法を提案している.特に,論理ゲート間の入出力スリューを介した遅延相関と遅延バラツキを考慮した回路遅延モデルを構築し,その上で,バッファ回路の遅延を最小化するゲートサイジング手法を提案した.そして,トランジスタレベルでのシミュレーションにより,このゲートサイジング手法が有効であることを示した.本論文は,ニアスレッショルド動作における高エネルギー効率なCMOS回路の実現方法を提案しており,非常に有意義なものである.また,論文構成,及び,発表内容も非常に優れていた.以上より,本論文を山下記念研究賞受賞論文として強く推薦するものである.
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●サブスレッショルド領域におけるラッチ回路の動作安定性モデル
[DAシンポジウム2015(2015/8/28)](システムとLSIの設計技術研究会)
kamakari

鎌苅 竜也  君 (正会員)

2014年3月 京都大学工学部電気電子工学科 卒業.
2016年3月 京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻 博士前期課程 修了.
2016年4月 株式会社東芝 入社.現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,記憶素子の基本要素として利用されるラッチ回路に関し,極低電圧動作における安定動作性を精度よくモデル化する手法を提案している.具体的には,ラッチ回路を構成するMOSトランジスタの電流特性を利用し,ラッチ回路の歩留まりモデルを導出している.そして,シミュレーション結果と比較し,提案モデルの妥当性を確認している.更に,そのモデルから得ることのできるラッチ回路の設計指針を示している.これらの結果は,LSIにおける極低電圧動作の根幹を与えるものであり,非常に有意義なものである.また,論文構成,及び,発表内容も非常に優れていた.以上より,本論文を山下記念研究賞受賞論文として強く推薦するものである.
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●FPGAによる津波シミュレーションの専用ストリーム計算ハードウェアと性能評価
[2015-HPC-149(2015/6/26)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
sano

佐野 健太郎  君 (正会員)

2000年 東北大学大学院情報科学研究科 博士課程後期3年の課程修了.
2000年 東北大学大学院工学研究科 助手.
2001年 東北大学大学院情報科学研究科 助手.
2005年 東北大学大学院情報科学研究科 助教授.
2006年 インペリアルカレッジロンドン 客員研究員.
2007年 東北大学大学院情報科学研究科 准教授(名称変更).
現在に至る.博士(情報科学).
高性能計算のためのカスタム計算機に関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE CS,ACM各会員.
国際シンポジウムHEART創設およびステアリング委員.

[推薦理由] 本研究は,浅水方程式の数値解法の一つである MOST(Method Of Splitting Tsunami)に基づく津波シミュレーションのプログラムを解析し,ハードウェア実装に適したストリーム計算化を施した上で,単精度浮動小数点計算を行う大規模パイプラインの専用ハードウェアを設計した.さらに,28nmテクノロジによるStratix V FPGAを用いて試作実装を行い,4.0GB/s のストリーム帯域に対し80GFlop/s を超える実効性能を得たものである.近年,低消費電力で高速計算する手段として,回路再構成可能半導体デバイス FPGA を用いたカスタム計算が注目されており,本研究は今後のハイパフォーマンスコンピューティング分野の研究開発のひとつの方向性を示すものとして重要な成果である.このため,山下記念研究賞にふさわしい研究発表として推薦する.
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●NVIDIA GPUにおけるメモリ律速なBLASカーネルのスレッド数自動選択手法
[2015-HPC-150(2015/8/4)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
mukunoki

椋木 大地  君 (正会員)

2006年3月 岐阜工業高等専門学校 電子制御工学科 卒業.
2009年3月 筑波大学 図書館情報専門学群 卒業.
2011年3月 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 博士前期課程 修了.
2013年4月 日本学術振興会特別研究員(DC2).
2013年11月 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 博士後期課程 修了.
2013年12月 日本学術振興会特別研究員(PD).
2014年6月 理化学研究所 計算科学研究機構 特別研究員.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,BLAS ルーチンである SAXPY,SGEMV,STRMV をNVIDIA GPU上で実行する時に,問題サイズに応じたNVIDIA GPUの最適なスレッド数をオフラインおよびオンライン自動チューニングにより決定する手法を提案し,評価実験により本手法が最適なスレッド数を選択できることを示したものである.一般に,NVIDIA GPUにおいては,スレッド数が実行性能に大きな影響を与えるため,最適なスレッド数を選択できることが高い実行性能を得るために必要である.本研究は最適なスレッド数を与えるひとつの手法を提案しており,ハイパフォーマンスコンピューティング分野において重要な成果といえる.このため,山下記念研究賞にふさわしい研究発表として推薦する.
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●RL78マイコン向けCコンパイラCC-RLにおける機種依存最適化の設計
[(2016/1/13)](プログラミング研究会)
chiba

千葉 雄司  君 (正会員)

1997年 慶應義塾大学大学院 修士過程 修了.
1997年 株式会社日立製作所 入所.
現在に至る.博士(工学)(慶應義塾大学).
中央大学兼任講師,中央大学大学院客員教授を兼務.
1999年度,2008年度 情報処理学会論文賞受賞.

[推薦理由] 本論文は,ルネサスエレクトロニクス社のマイクロコンピュータ向け既存CコンパイラをRL78という機種に向けて最適化した成果についてまとめたものであ る.コンパイラに関する論文には個別の最適化手法について実現方法や効果を述べたものが多い.しかし本論文は,実際の製品開発経験に基づいて,全体の設計 思想から,各個別最適化手法が必要となる背景,およびその実現方法を採用した理由までを,サンプルを交えて分かりやすく解説した大変貴重なシステム開発記 録となっている.これは専門書や他の論文では容易に得られない価値の高い研究報告であるため,山下記念研究賞に推薦する.

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●幾何双対ナップサック多面体の体積のためのFPTAS
[2016-AL-157(2016/3/6)](アルゴリズム研究会)
ando

安藤 映  君 (正会員)

2004年4月 富士通株式会社.
2008年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2).
2009年10月 九州大学大学院システム情報科学府 博士後期課程 修了 博士(工学).
2010年4月-現在 崇城大学情報学部 助教,現在に至る.

[推薦理由] n次元多面体の体積の計算は一般に困難であり,様々な多面体に関する計算が #P-困難であることが知られている.本研究では,幾何双対ナップサック多面体に着目し,その体積計算に完全多項式時間近似スキーム (FPTAS) が存在することを示している.このために,この問題を二つの cross polytope の重なり部分の体積を求める問題に帰着し,その重なり部分の体積を表す定積分の繰り返しを階段近似する手法をとっている.幾何双対性と多面体の体積との関係を明らかにする本研究の着想は,計算困難な問題への取り組みとして大きな貢献を与えている.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしいものとして本研究を推薦する.
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●Periodic Pattern Mining with Periodical Co-occurrences of Symbols
[2015-MPS-105(2015/9/29)](数理モデル化と問題解決研究会)
ootaki

大滝 啓介  君 (正会員)

2009年3月 福井工業高等専門学校 電子情報工学科 卒業.
2011年3月 京都大学 工学部情報学科 計算機コース 卒業.
2014年4月 日本学術振興会特別研究員(DC2).
2016年3月 京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 博士後期課程修了.
2016年4月 株式会社豊田中央研究所 入社.
現在に至る.博士(情報学).

[推薦理由] データに含まれる周期的なパターンの繰り返しを発見することはデータマイニングの分野において重要であり,様々なアルゴリズムが開発されているが,パターンの組合せ爆発などが原因で,現実データへの適用は未だ十分な成果が出ていなかった.本研究は,周期的なパターンの発見のために,出現パターンのグラフ表現上でのクラスタリングを行うスケルトン化という新たなアルゴリズムを導入することで,この組合せ爆発に対応している.本研究ではこのアルゴリズムを合成データだけでなく,実データへの適用を行い,非常に精度高くパターンの繰り返しを発見することに成功しており,データマイニングの領域での進展に貢献した点が評価された.
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●企業内部品情報システムにおける部品選定作業効率化のための類似設計者抽出手法の提案および有効性の評価
[組込みシステムシンポジウム2015(ESS2015)(2015/10/22)](組込みシステム研究会)
yamamoto

山本 達也  君 (正会員)

2000年 弘前大学理学部物理学科 卒業.
2002年 弘前大学大学院理学研究科物理学専攻修士課程 修了.
2004年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科情報システム学専攻博士前期課程 修了.
2004年 株式会社富士通研究所入社.
低消費電力LSI設計,形式的検証関連研究を経て,現在ものづくり分野におけるCSCW研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,組込み機器設計業務で必要となる部品選定作業を効率化するための部品情報システムにおいて,有効な企業内情報蓄積・流通システムを構築する方法を確立することを目的とし,部品情報システムを用いた設計作業ワークフロー分析,検証手法を提案した.また,提案法による分析および,分析にもとづくシステム作成と試行,定性評価により,設計者が注目する特性の表示項目を用いた類似作業者の分類により部門横断的に情報共有することが,部品選定作業に有用であることを見い出した.組込み機器設計支援のための企業内情報蓄積・流通システムの実現に向けた取り組みの研究として評価できる.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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情報環境領域

●脳波からの指示による電動車いす制御システムの実装と評価
[2015-DPS-163(2015/5/28)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
nakazawa

中沢 実  君 (正会員)

1991年 金沢工業大学情報工学科 卒業.
1993年 同大学大学院工学研究科修士課程(情報工学)修了.
1993年 (株)富士通研究所通信網システム研究部研究員を経て,
1996年 本学助手就任.講師,助教授を経て,2011年現職.
自律分散システム,ロボティクス,画像認識の研究に従事.

[推薦理由] 本論文では,利用者が頭の中で目的地を指定するだけで車いすが自律的に移動するもので,最終的には利用者が初めて訪れる施設であっても脳波から利用者の意図を読み取り,容易に目的地まで辿りつくシステムの実現をめざしている.現在は,脳波の読み取りはディープラーニングを用い,利用者が思い浮かべた数字を区別して目的地を判定している.今後の発展が期待できる実用性の高い研究である.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●動的に変化するネットワークシステムのための知識型障害解決支援システム
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ2015(2015/10/16)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
tanimura

谷村 優介  君 (学生会員)

2013年 東北大学工学部情報知能システム総合学科 卒業.
2015年 東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻 博士前期課程 修了.
2015年 同専攻 博士後期課程 進学.
現在に至る.

[推薦理由] ネットワーク管理の中で管理者の負担が大きい障害管理に着目し,構成変化に柔軟に対応可能な知識型ネットワーク障害解決支援システムを提案している.本提案では,ネットワークサービスに関する知識を用いてシステムの構成を自律的に推測することで,構成管理に係る管理者負担を軽減する.試作システムを用いた実験まで行い,本提案の有効性を示しており,実用性の高い研究である.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●眼球型ディスプレイによる視線方向提示手法の開発
[2016-HCI-166(2016/1/21)](ヒューマンコンピュータインタラション研究会)
kawano

河野 大器  君 (正会員)

2014年3月 千葉大学工学部電気電子工学科 卒業.
2016年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻 博士前期課程 修了.
2016年4月 アルパイン株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,人間の眼球をもした半球状の眼球型ディスプレイを開発し,ディスプレイ上で黒目の表示位置を変化させることで眼球が回転しているように見せ,映像通信を利用した遠隔対話状況において遠隔対話者の視線方向を正確に読み取ることを可能にしたものである.通常の平面ディスプレイに顔画像を表示した場合,顔の姿勢が正面向きでない場合に視線方向の観察誤差,いわゆるモナリザ効果が発生してしまうが,本提案ディスプレイでは誤差が抑制されることが実験の結果明らかになると共に,視線の読み取りやすさは従来とほとんど変わらないことが示された.この成果は遠隔条件における対話の自然性を向上させることが期待され,ヒューマンコンピュータインタラクション分野における貢献が大きい.このことから山下記念賞にふさわしい成果と判断し,ここに推薦する.
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●曲率フローに基づく閉曲線ブレンディング
[2015-CG-161(2015/11/7)](コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会)
hirano

平野 正浩  君 (学生会員)

2013年3月 東京大学工学部計数工学科 卒業.
2015年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻博士前期課程 修了.
2015年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻博士後期課程 入学.
同年4月 日本学術振興会特別研究員(DC1).現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,任意の閉曲線同士の滑らかな遷移を記述する閉曲線ブレンディングと呼ばれる問題に対して,曲率エネルギーに基づく曲率フローを用いたブレンディング手法を提案するものである.これにより高品質,ロバストかつ超高速なブレンディングが可能となり,アニメーションの生成やシェープマッチング等への応用が期待される有用な技術である.今後,より一般的な形状間のブレンディング問題に対して,提案手法を拡張することが期待できる.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●写真からの多色織パターン生成
[2016-CG-162(2016/2/8)](コンピュータグラフィクスとビジュアル情報学研究会)
toyoura

豊浦 正広  君 (正会員)

2003年 京都大学工学部情報学科卒業.
2005年 京都大学大学院情報学研究科修士課程修了.
2007年 日本学術振興会特別研究員(DC2).
2008年 京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了.
同年 日本学術振興会特別研究員(PD),カリフォルニア大学サンタバーバラ校訪問研究員.
2009年 山梨大学大学院総合研究部助教,現在に至る.
コンピュータグラフィックス,視覚情報処理,画像・映像処理に関する研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,日本VR学会,芸術科学会,画像電子学会,IEEE,ACM 各会員.博士(情報学).

[推薦理由] カラー写真などの任意の画像から多色織ジャカード織物パターンを生成する手法を提案している.任意色の経糸・緯糸による織物パターン化を実現し,また,手持ちの糸の中から最適な糸の集合を選択することを可能にした.実際に織り上げた結果を以って手法の有効性を示しており,対話的処理に耐えうる高速化も実現していることから,産業への貢献も期待できる.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●難聴者の生活スタイルとその生活音支援
[2015-IS-133(2015/9/4)](情報システムと社会環境研究会)
sarudate

猿舘 朝  君 (正会員)

2007年3月 岩手県立大学ソフトウェア情報学研究科ソフトウェア情報学専攻 博士前期課程 修了.
2008年4月 岩手県立大学ソフトウェア情報学研究科ソフトウェア情報学専攻 博士後期課程 入学.
2016年3月 岩手県立大学ソフトウェア情報学研究科ソフトウェア情報学専攻 博士後期課程 満期退学.
2016年4月 東北化学薬品㈱ 入社 現在に至る.
生命システム情報研究所所属.

[推薦理由] 屋内には,目覚まし時計,ドアチャイム,ガス警報機,電話などの通知音や,水道の音,子供の泣き声,ドアのノック音など,さまざまな音があり,これらを認識することは生活上,非常に重要である.しかし難聴者はこれらを認識しにくく,不自由な生活を余儀なくされている.これを解決するため,必要な音声信号を事前に登録し, 発音をスマートフォンで受け画像や振動などで通知するシステムを開発した.社会的にきわめて有意義なシステムであり,研究内容もわかりやすく述べられている.また実際にシステムを開発し,有効性を確認している点も評価できる.以上のことから,本研究を山下記念賞に推薦する.
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●Performance Evaluation of Proactive Content Caching for Mobile Video through 50-User Field Experiment
[2015-AVM-89(2015/8/3)](オーディオビジュアル複合情報処理研究会)
kanai

金井 謙治 君 (正会員)

2010年 早稲田大学理工学部コンピュータ・ネットワーク工学科 卒業.
2012年 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工学専攻 修士課程 修了.
2014年 早稲田大学基幹理工学部情報理工学科 助手.
2015年 早稲田大学基幹理工学研究科情報理工学専攻 博士後期課程 修了.
博士(工学).
2016年 早稲田大学 基幹理工学部 情報通信学科 助教.
現在に至る.マルチメディア通信に関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各会員.

[推薦理由] 本論文は,電車内で映像コンテンツを携帯端末で視聴する際の映像ストリーミング配信技術に関し,実際の走行車両と無線ネットワークを用いた50人規模の実証実験の評価結果を報告したものである.実証実験では,タブレットPCとWindows端末各25台を受信端末とし,次世代ネットワーク技術であるNDN(Named Data Networking)およびHTTPによる通信を対象に2Kコンテンツの配信を行った.映像品質とユーザ体験の観点から評価し,50名の同時視聴が高品質・高精細で可能であることを示した.携帯端末による映像視聴のニーズの急激な高まりと共にコンテンツの高精細化が進む背景の下,本実証実験の成果は,今後の実社会での運用が大きく期待されることから山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●DIVE:視覚的連続性をもった3次元入力可能な液体ディスプレイ
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2015)(2015/7/9)](グループウェアとネットワークサービス研究会)
kojima

小島 夏海  君 (正会員)

2014年3月 東京工科大学コンピュータサイエンス学部コンピュータサイエンス学科 卒業.
2016年3月 東京工科大学大学院バイオ・情報メディア研究科コンピュータサイエンス専攻 修了.
2016年4月 ヤフー株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究発表は,3Dデザインにおける,3次元のオブジェクトを扱い,3Dオブジェクトを回転させるオービット操作や垂直・平行に移動させるパン 操作を,ユーザの手や指の位置や,実物体の3次元形状を用いて直感的な入力を可能とする既存提案が,操作を行うための手と操作対象が視覚的につながってい ないため,意図せぬ方向に操作してしまう課題に対し,3次元入力を視覚的連続性をもったまま行うことを目的とするシステム「DIVE」を提案している. DIVEでは,3Dオブジェクト投映箇所に手を挿入し,オブジェクトの座標と手の座標をリアルタイムに計測して,操作を行えるようにすることにより,ユー ザは自分の手で3Dオブジェクトを操作しているように感じることが可能になる.評価の結果,入力可能領域は限定されるものの,視覚的連続性をもった3次元 入力を行うことを実証しており,有用な情報を提供している点が高く評価できる優れた研究であるため,推薦する.
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●拡張現実感による食品咀嚼回数の増加手法
[2016-GN-97(2016/1/22)](グループウェアとネットワークサービス研究会)
inoue

井上 亮文  君 (正会員)

1999年 慶応義塾大学理工学部計測工学科 卒業.
2001年 慶応義塾大学大学院理工学研究科計測工学専攻 修士課程 修了.
2005年 慶応義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 博士課程 修了.
博士(工学).
2004年 東京工科大学コンピュータサイエンス学部 助手.
2007年 東京工科大学コンピュータサイエンス学部 助教.
2010年 東京工科大学コンピュータサイエンス学部 講師.現在に至る.

[推薦理由] 本研究発表は,摂食者が感じる食品の食感を拡張現実感で変化させ,咀嚼回数を増加させる手法を提案している.提案手法はヘッドマウントディスプレイで食品の見た目を,骨伝導スピーカーで食品の咀嚼音を上書きし,食品の主観的な硬さを向上させることにより,咀嚼回数を増加させ,摂食者の満腹中枢を 刺激し,少ない食品摂取量での満足感向上を期待するものである.プロトタイプを用いた実験により,視覚を上書きする CG 表示の質感と精度に改善の余地があるものの,摂食者の主観的な食感を操作し咀嚼回数を増加させる可能性が確認されており,肥満の解消への貢献を期待できる 研究成果として評価できるため,推薦する.
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●システム開発系PBL教育での組織的メンタリングのための情報共有
[2015-DC-100(2015/12/1)](ドキュメントコミュニケーション研究会)
watanabe

渡辺 知恵美 君 (正会員)

筑波大学システム情報系助教.
2003年 お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 修了.
2003年 奈良女子大学理学部情報科学科 助手.
2005年 お茶の水女子大学理学部情報科学科 講師.
2013年 現職に至る.
データベースシステム,特にプライバシ保護検索技術,匿名化処理などの研究に従事.また現職よりアジャイル開発を中心とした教育活動に従事.博士(理学).

[推薦理由] 問題解決型学習(PBL:Problem Based Learning)では,指導者が受講生の問題を引き出せない,受講生の状況を指導者間で共有できないことがある.本研究は,これらに対し,ソフトウェア開発の課題管理とドキュメントによる情報共有を用いた手法を提案し,実際のPBL教育に適用することで,具体的にその有効性を検証している.実践の場においてドキュメントコミュニケーションの可能性を示した研究であり,今後の発展が大いに期待できることから,山下記念研究賞に推薦する.
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●装着型センサを用いた生体温熱モデルにおける日射熱のモデル化とパラメータ調整法の提案
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2015)(2015/7/8)](モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会)
hamatani

濱谷 尚志  君 (学生会員)

2013年3月 大阪大学基礎工学部情報科学科 卒業.
2015年3月 大阪大学大学院情報科学研究科 博士前期課程 修了.
2015年4月 大阪大学大学院情報科学研究科 博士後期課程 進学
現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,熱中症の早期検知のため,運動中に装着可能なモバイルセンサおよび2ノードモデルと呼ばれる生体温熱モデルを用いた深部体温の推定手法を提案している.環境センサから得られる環境情報とモバイルセンサにより得られる生体情報を組み合わせ,体温の上昇に伴う発汗などの生体反応の個人差を調整することによって,推定精度の向上を図る.実験では,歩行や走行といった運動に対し,提案手法による精度改善の効果が確認されている.本研究は把握が困難な人の内部状態の推定を実現しようとする挑戦的な取り組みであり,人々の安心・安全への貢献が期待できる.以上の理由により,山下記念研究賞に値する特に優秀な論文として推薦する.
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●軍艦島センサネットワークのためのタスクスケジューリングの設計と評価
[2015-MBL-77(2015/12/4)](モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会)
kuroki

黒木 琴海  君 (学生会員)

2016年 静岡大学情報学部情報科学科 卒業.
2016年 静岡大学大学院総合科学技術研究科情報学専攻 入学.
センサネットワークに関する研究に従事.
情報処理学会学生会員.

[推薦理由] 本論文では,建築構造物のヘルスモニタリングを対象に,太陽光を電力源として動作するセンサネットワークにおけるタスクスケジューリング方式を提案している.センシングやデータ送信などのタスク実行タイミングによって消費電力やセンシングデータの時間的な網羅性が異なるという課題を明らかにした上で,センサノードの起動時間とスリープ時間の調整および実行タスクの適切なスケジューリングにより,バッテリの枯渇を防ぎながら,データの時間的な網羅性の向上を実現する.性能評価では,シミュレーションによって提案手法の有効性が明らかにされている.本研究は,実際に軍艦島においてセンサネットワークを運用するという実践的な取り組みであり,山下記念研究賞にふさわしい特に優秀な論文として推薦する.
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●メモリ再利用禁止によるUse-After-Free脆弱性攻撃防止手法の実現と評価
[2015-CSEC-69(2015/5/22)](コンピュータセキュリティ研究会)
yamauchi

山内 利宏  君 (正会員)

1998年 九州大学工学部情報工学科 卒業.
2002年 九州大学大学院システム情報科学府 博士後期課程 修了.
2002年 九州大学大学院システム情報科学研究院助手.
2005年 岡山大学大学院自然科学研究科助教授.現在,同准教授.
博士(工学).
オペレーティングシステム,コンピュータセキュリティに興味を持つ.
2010年度 JIP Outstanding Paper Award,2012年度 情報処理学会論文賞,2014年度 情報処理学会喜安記念業績賞など受賞.
情報処理学会,電子情報通信学会,ACM,USENIX,IEEE各会員.

[推薦理由] 解放後のメモリ領域を参照するダングリングポイントを悪用したUse-After-Free脆弱性攻撃が増加している.そこで,メモリ領域の再利用を一定期間禁止することでUAF攻撃を防止する手法を提案している.提案手法はライブラリの改変により実現されており,保護対象プログラムの改変を必要としないため,その適用対象が広く有用性が高い.また,LinuxとWindows上の両方で実装・評価されており,一般的なOSに適用可能な手法として評価できる.既存研究のサーベイ,それに基づく問題点,その解決のための提案手法についても明確に述べられている.また,既存手法との比較も十分に行われている.よって推薦するに相応しいと判断した.
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●ゲノム検査結果の開示によるプライバシ侵害の評価
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2015)(2015/10/23)](コンピュータセキュリティ研究会)
arai

荒井 ひろみ  君 (正会員)

2010年 東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻 博士(理学).
同年   筑波大学研究員.
2012年 理化学研究所 基礎科学特別研究員.
2014年 東京大学情報基盤センター 助教.
現在に至る.

[推薦理由] 個人のゲノム検査結果(疾患リスク)からプライバシ情報(リスクアレル数や他の疾患に関するリスクアレルの有無)を推定する手法を提案し,実データ実験により,疾患リスクの丸め値が十分に小さい場合はプライバシ情報が漏洩してしまうことを明らかにしている.また推定の計算を効率的に行うため,整数線形計画問題として解く方法を提案した.本結果により,ゲノム検査結果の開示リスクを定量評価することができ,実用性が高いと考えられる.
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●Dynamic Time Warpingを用いた路側設置マイクロフォンによる車両カウントシステムの設計と初期的評価
[2016-ITS-64(2016/3/7)](高度交通システムとスマートコミュニティ研究会)
ishida

石田 繁巳  君 (正会員)

2006年 芝浦工業大学工学部 卒業.
2008年 東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程 修了.
2012年 同大学院工学系研究科博士課程 修了.博士(工学).
2008年 (株)アクティス 入社.
2012年 日本学術振興会特別研究員(PD).
2013年 米国ミネソタ大学客員研究員.
2013年より九州大学システム情報科学研究院助教.
無線通信,センサネットワークに関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各会員.

[推薦理由] 本論文はITSにおいて,既存の車両カウントシステムに比べ機器コスト,設置コストが安価でしかも同等以上の精度のある手法を提案している.現在の主流は道路にセンサを埋め込むかカメラで映像を写し画像処理する手法であるが,設置の手間,天候や昼夜によって精度が違うなど主にコスト面で問題がり限られたところにしか設置されていない.本提案手法が実用化されると,多くの場所に設置可能となり,道路の状況把握がさらに詳細化され,自動運転時代における渋滞の削減,CO2排出量の削減などにつながると想定され,新規性有用性ともに高い論文である.よって,山下研究記念賞に相応しい内容であり,ITS研究会より山下研究記念賞に推薦する.
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●家庭内行動センシングにおける機械学習データの家庭間転移について
[2015-UBI-48(2015/11/30)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
inoue

井上 創造  君 (正会員)

2002年 九州大学大学院システム情報科学研究科博士後期課程 修了・博士(工学).
2002年より 同システム情報科学研究院・システムLSI研究センター 助手.
2006年より 同附属図書館研究開発室 助教授(准教授).
2009年より 九州工業大学大学院工学研究院基礎科学研究系 准教授.
現在に至る.この間,
2009-2014年 九州大学附属図書館 特別研究員,
2011-2012年 九州大学大学院システム情報科学研究院 非常勤講師,
2014年 ドイツカールスルーエ工科大学 訪問研究員,
2015年- 九州先端科学技術研究所 特別研究員,
2016年- 九州工業大学イノベーション推進機構戦略的研究推進領域兼務.
Web/ユビキタス情報システム,スマートフォンを用いた人間行動認識,センサ情報システムの医療応用に興味を持つ.
IEEE,ACM,日本データベース学会,情報処理学会,電子情報通信学会,日本知能情報ファジィ学会,日本医療情報学会会員.

[推薦理由] 本研究は,家庭内に簡易センサを設置して家庭内の行動をセンシングする技術において,既存の家庭で取得した訓練データセットを新たな家庭に適用する際に,家庭間の差異を考慮して認識精度を向上する手法を提案している.提案手法では,種々の転移学習の考え方を用いて,推定対象家庭の行動ラベルが与えられない場合と与えられる場合の2つを考え,教師あり転移の手法と教師なし転移の手法を組み合わせている.家庭に設置したタブレット端末のセンサデータとスマートメーターの電力データを同時に収集し,そのデータから生活行動を推定し,住人に提示して記録/修正してもらうシステムを開発し,35軒の家庭から約4ヶ月実験を行い,精度向上を確認している.このように,行動センシング・行動認識において重要となるデータの転移の問題に対して工夫ある手法を提案し,システム開発及び比較的大きな規模での実データにおいて実証した研究は他に類を見ないため,山下記念研究賞の受賞候補に本研究を推薦する.
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●みまもメイト:家族介護者のための介護記録用Webアプリの開発とその効果
[インタラクション2016(2016/3/2)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
yamashita

山下 直美  君 (正会員)

2001年 京都大学情報学研究科数理工学専攻 修士課程 修了.
同年,NTT入社.NTTコミュニケーション科学基礎研究所配属.
2006年 京都大学情報学研究科社会情報学専攻 博士取得.
現在,NTT 主任研究員/特別研究員.
2010年 長尾真記念特別賞,2014年 ACM Recognition of Service Award受賞.

[推薦理由] 本研究では,病気の介護者を支援することを目的とし,うつ病患者の家族を対象として,患者の日常行動,突発的出来事と患者の気分,家族介護者の活動などを記録するとともに,介護者ら自身による振り返り分析を促進するシステム「みまもメイト」を提案している.提案システムは,事前の調査から記録項目を検討し,介護者にとって負担とならないよう設計され,webアプリとして実現された.また,6週間にわたる実験から,提案システムが介護者らの患者に対する新たな理解や気付きを与えるとともに,コミュニケーションのきっかけとなり,介護者,患者双方にとって有益な結果をもたらすことを示した.このように,患者に対する積極的な支援ではなく,介護者らが自身で情報の記録・分析を行なう環境を提供することで,個々の事例における患者・介護者双方の細やかな支援を行なうことができることを示したことは,社会に対する情報技術の新たな貢献の方向性とその重要性を示しており,その成果は極めて価値が高い.よって,山下記念研究賞候補として本研究を推薦する.
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●TLS/SSLプロトコルを対象とした汎用ハニーポットシステムの実装とHTTPSによる収集結果
[2015-IOT-29(2015/5/21)](インターネットと運用技術研究会)
sato

佐藤 聡  君 (正会員)

1996年3月 筑波大学大学院工学研究科 単位取得退学.
1996年4月 広島市立大学情報科学部 助手.
2001年4月 筑波大学 講師.
2013年3月 筑波大学システム情報系 准教授,現在に至る.
博士(工学).主に,キャンパスネットワークの企画管理運用に関する研究に従事.

[推薦理由] 本発表では記録の際にSSL通信を復号せず,SSLメッセージ単位に分割して記録する点に新規性が認められる.また,ほどいたあとの通信をプラグイン的に処理できる構造としていることで将来の展開も非常に期待できる.セキュリティ調査に加え,若者の研究プラットフォームとして非常に有効と評価できる.本研究では,TLS (Transport Layer Security) / SSL (Secure Socket Layer) プロトコルを用いた通信に対する汎用ハニーポットシステムを提案している.このシステムではIPアドレス毎に自己署名証明書を切り替え,別個の証明書を持つHTTPSサーバが複数動作しているように見せかけることが可能である点で興味深い.また,TLS/SSL通信をプラグイン的に処理できる構造としていることで将来の展開も期待できる.セキュリティ調査に加え,若者の研究プラットフォームとして大いに有効と評価できるため,山下記念研究賞の受賞者として推薦する.
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●なぞり操作によるメール誤送信抑止手法の検討
[2015-IOT-29(2015/5/21)](インターネットと運用技術研究会)
 

中村 麻奈美  君 (正会員)

 

[推薦理由] 本研究は電子メールの誤送信防止手法として,メールアドレスや添付ファイル等の重要な情報を「指」という身体の一部で「なぞる」動作を行うことで意識的に確認する方法を提案し,また実業務での評価を行っている.また,なぞり操作を習慣化しないための工夫,実際の業務現場への導入した際に得られた新たな課題への対応なども詳細に考察しており,実用性を非常に高く評価できる.以上の理由により,山下記念研究賞の受賞者として推薦する.
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●全周囲型メンタルローテーションCAPTCHAの提案
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2015)(2015/7/10)](セキュリティ心理学とトラスト研究会)
fujita

藤田 真浩  君 (学生会員)

2013年3月 静岡大学情報学部情報科学科 卒業.
2015年3月 同大学院修士課程 修了.
現在,同創造科学技術大学院博士後期課程.
情報セキュリティ,ヒューマンインタフェースに関する研究に従事.

[推薦理由] 歪んだ文字を読むなど人間にしか解答できないと期待される課題を含ませることにより「プログラムによる自動的な攻撃」を防ぐよう意図された技術(CAPTCHA: Completely Automatic Public Turing tests to tell Computers and Humans Apart)を構成要素とするシステムは,応用範囲が広い.本論文は,情報機械だけでは解答できない課題の困難さとは何かという本質的な問いを,現実的なシステムにおける情報機械が飛躍的に発展する中で具体的に研究する技術として,独創性が高いものを提案している.当該分野における波及効果も大きく,とくに優秀な論文として,推薦したい.
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●対災害情報分析システムDISAANA及びその質問応答モードの性能評価
[2015-CDS-14(2015/10/2)](コンシューマ・デバイス&システム研究会)
mizuno

水野 淳太  君 (正会員)

2006年 豊橋技術科学大学 工学部 情報工学課程 卒業.
2009年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士前期課程 修了.
2012年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程 修了.博士 (工学).
同年,東北大学 大学院情報科学研究科 研究員,2013年より情報通信研究機構 研究員.現在に至る.
自然言語処理の研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,災害時にTwitterへ投稿される膨大な情報を効率良く検索するための対災害SNS情報分析システムDISAANAの改善および新たな言語解析モジュールについて述べている.具体的には,不適切な回答候補の抽出回避を行うモダリティ解析,ツイート属性判定,予報表現抽出処理を導入し,従来の東日本大震災関連の災害情報に加えて,台風や大雪などの一般的な災害へ拡張した性能評価を行っている.また,実証実験を通して,システムの有用性に関する検証を行っており,論文としての完成度も高い.本論文の成果は,災害時の情報分析という重要なテーマを取り扱っており,当該分野への貢献が非常に大きいものと考えられることから,山下記念研究賞に推薦する.
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●インタラクティブコンテンツ「お絵描きダンスステージ」の開発
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2015)(2015/7/9)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
mizuno

水野 慎士  君 (正会員)

1998年 名古屋大学大学院博士後期課程 修了.博士(工学).
1999年 豊橋技術科学大学情報処理センター助手.
2009年 愛知工業大学情報科学部講師.
2010年 愛知工業大学情報科学部准教授.
2014年 愛知工業大学情報科学部教授.現在に至る.
コンピュータグラフィックス,インタラクティブシステム,バーチャルリアリティに関する研究教育に従事.
情報処理学会,芸術科学会,日本VR学会,画像電子学会,ACM SIGGRAPH各会員.

[推薦理由] 本論文は「お絵描きダンスステージ」というインタラクティブコンテンツに関するものである.このコンテンツでは,紙にペンでキャラクタを描くとともにダンスをすると,描いたキャラクタがCGキャラクタになって自分の振り付けで踊りだす.また,CGキャラクタは運動視差立体視CGとしてテーブル上に実在するように表示されて,手を近づけると声を出してジャンプするなど,インタラクション性も持つ.論文中ではこのコンテンツを使ったワークショップについて報告しており,ペンを使ったお絵描きとダンスという日常的なアナログ操作を通じたデジタル空間との対話が,子供からお年寄りまで容易に受け入れられたことを示している.DICOMO2015ではデモ発表を行って野口賞第1位を受賞しており,学術的な新規性や有用性も確認されている.以上のことから,本論文を山下記念研究賞として推薦する.
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●介護映像に基づくマルチモーダル・チーム・インタラクションの分析
[2016-ASD-4(2016/2/27)](高齢社会デザイン研究会)
ishikawa

石川 翔吾  君 (正会員)

2005年4月 静岡大学情報学部 卒業.
2006年9月 静岡大学大学院情報学研究科 修了.
2011年9月 静岡大学創造科学技術大学院 修了.博士(情報学).
2011年より静岡大学情報学部 学術研究員.
2013年10月から静岡大学大学院総合科学技術研究科 助教.現在に至る.
認知症情報学に関する研究に従事.

[推薦理由] 介護施設における複数人の介護従事者と高齢者とのチーム・インタラクション分析方式の提案と結果に関する報告である.ユマニチュードという「見る」「話す」「触れる」から構成される介護技法のIntra-modality,Inter-modality,Multimodal-interactionという観点からの評価に,Multimodal-team-interactionという評価軸を追加導入し,介護映像の分析評価基盤を構築し,認知症チームケアの状況の「見える化」を実現した.実際の介護施設での介護映像を各評価軸で分析を行うことで,介護従事者と高齢者のコミュニケーションの状況を視覚化でき,介護施設でのカンファレンスに活用することで,介護スキルの向上に役立つことを示した.高齢者人口は急増しており,介護施設における認知症ケアの質の向上と高齢者のQOL向上は喫緊の課題である.本研究発表の社会的意義は高く,山下記念研究賞に相応しい.
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メディア知能情報

●畳み込みニューラルネットワークを用いた複単語表現の解析
[2015-NL-223(2015/9/27)](自然言語処理研究会)
shindo

進藤 裕之  君 (正会員)

2007年 早稲田大学先進理工学部電気・情報生命工学科 卒業.
2009年 早稲田大学先進理工学研究科電気・情報生命専攻 博士前期課程 修了.
同年,NTT入社.NTTコミュニケーション科学基礎研究所配属.
2013年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士後期課程 修了.博士 (工学).
2014年より,奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 助教.
自然言語処理の研究に従事.

[推薦理由] 本研究では,畳み込みニューラルネットを用いて複単語表現の同定と品詞タグ付けを同時に行う複単語表現解析手法を提案している.提案手法は複単語表現が連続する単語群から成るか,非連続である単語群から成るかに問わず適用可能であり,また素性テンプレートを不要としつつ,従来手法に比べて頑健かつ高精度な解析精度を達成しており,その有用性は高い.著者らの主張するとおり「文字の組み合わせが単語を構成し,単語の組み合わせが複単語表現を構成する」という言語が持つ階層性を自然な形でモデル化している.他のタスクにも同様な解析が可能であることを示唆しており,有用性も高く,山下記念賞に値する.受賞によってより広い領域の技術者の目にとまる価値がある論文と評価する.
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●親近アンビエントエージェントの継続的先行行動によるユーザの自発行動変容効果
[2016-ICS-183(2016/3/16)](知能システム研究会)
fujiwara

藤原 邦彦  君 (学生会員)

2015年3月 関西大学総合情報学部総合情報学科 卒業.
2017年3月 関西大学大学院総合情報学研究科知識情報学専攻前期博士課程 修了予定.
擬人化エージェントを用いた人間関係の調整に関する研究に従事.
情報処理学会 学生会員.

[推薦理由] ユーザの身近な存在として生活に寄り添う擬人化エージェントを提案している.エージェントがユーザに先行して生活行動を提示することにより,ユーザの行動意欲を刺激し,自発行動を促す効果を示している.擬人化エージェントの人への社会的な関わり方において有望性の高いシステムデザインを示するといえる.また,エージェントの効果に関する仮説を設定し,ユーザの行動を誘発し,その後の自発行動を促進することを検証しており,興味深い結果を導くに至っており,高く評価できる.
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●Shape from Scattering: Shape Estimation for Translucent Objects Based on Light Transport Analysis
[2015-CVIM-197(2015/5/19)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
inoue

井下 智加  君 (正会員)

2008年3月 詫間電波工業高等専門学校情報工学科 卒業.
2010年3月 大阪大学基礎工学部 情報科学科 卒業.
2012年3月 大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻博士前期課程 修了.
2015年3月 大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻博士後期課程 修了.博士(情報科学).
2015年4月 キヤノン株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究では,Shape from Scatteringと名付けられた,散乱光の伝播を手がかりとした半透明物体の形状推定手法を提案している.光の散乱は複雑な現象であるが,実際に様々な物体で生じる表面下散乱を詳細に計測し,材質が光学的に濃い場合と薄い場合には,それぞれ単純なモデルで近似できることを示した.また,これらのモデルと観測された散乱光の強度から半透明物体の形状を推定する手法を明らかにした.これまで,散乱光は解析の邪魔になる不要な成分とみなされてきたが,本研究は逆に形状推定の手がかりとして活用しようというこれまでにない新しい発想の研究であり,散乱光解析の礎を築いた.以上より,2016年度山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●Four-dimensional City Modeling using Vehicular Imagery
[2015-CVIM-197(2015/5/19)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
sakurada

櫻田 健  君 (正会員)

2009年 東北大学 工学部 機械知能航空工学科 卒業.
2011年 東北大学 大学院情報学研究科 修士課程 修了.
2013年 日本学術振興会特別研究員 DC2.
2013年 カーネギーメロン大学客員研究員.
2014年 東北大学 大学院情報学研究科 博士後期課程修了.博士(情報学).
2015年 東京工業大学 大学院工学研究科 博士研究員.
2016年 名古屋大学 大学院工学研究科 助教,現在に至る.
コンピュータビジョンに関する研究に従事.
2015年 画像の認識と理解シンポジウム MIRUフロンティア賞.
2014年 Asian Conference on Computer Vision, Best Application Paper Honorable Mention Award.
2010年 International Symposium on System Integration, Best Paper Award Finalist.

[推薦理由] 本研究は,車載カメラで撮影した複数時刻の画像列を元に,市街地の時空間変化を推定する新しい問題を扱っている.異なる時刻に撮影された画像列どうしの比較を行う方法や,上空視点画像との統合など,多様な条件・ニーズに対応できる複数の方法を提案しており,それらは東日本大震災の被災地の時空間変化を主な対象としつつ,汎用性も備える.市街地の時空間変化を自動認識することは,自然災害に関わる利用だけでなく,自動運転のための市街地3次元モデルの維持更新など,幅広い応用を持つとともに,その実現が社会的にも期待されている.以上より,2016年度山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●未来の情報倫理教育
[情報教育シンポジウム(SSS2015)(2015/8/17)](コンピュータと教育研究会)
tatsumi

辰己 丈夫  君 (正会員)

1997年 早稲田大学理工学研究科数学専攻 博士後期課程 単位取得退学.
2014年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程 修了.博士(システムズ・マネジメント).
1993年 早稲田大学情報科学研究教育センター助手.その後,神戸大学講師,東京農工大学助教授,放送大学准教授を経て,2016年から放送大学教授.
現在,本会情報処理教育委員会幹事,コンピュータと教育研究会・運営委員など.
情報教育,情報倫理,数学教育の情報化に興味を持つ.
著書に「情報化社会と情報倫理・第2版」(共立出版),「情報科教育法・改訂3版」(オーム社),「情報の科学」(高校「情報科」検定教科書)(日本文教出版)など.

[推薦理由] 本発表では,2045年に強い人工知能が広く普及し,人間の知能を越える「シンギュラリティ」を迎えるという予想に対して,その時代に通用する情報倫理とは何かを考察している.ここでは,これまでの情報倫理教育を踏まえた上で,モラル,人権,情報セキュリティなど様々な観点から未来の情報倫理教育について議論しており,情報教育に携わる多くの人々の参考になりうるものであった.著者の辰己氏は,古くから情報倫理に関する研究に携わっているが,それのみに留まらず,広く情報教育に関して研究,実務の面で幅広く活躍しており,本発表は情報処理学会から発信する優れた先進的な発表であったので,山下記念研究賞に推薦する.
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●高等学校情報科における教科担任の現状
[2015-CE-131(2015/10/10)](コンピュータと教育研究会)
nakayama

中山 泰一  君 (正会員)

1965年生.
1988年 東京大学工学部計数工学科 卒業.
1993年 同大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程 修了.博士(工学).
同年,電気通信大学情報工学科 助手.
現在,同大学院情報理工学研究科 准教授.
オペレーティング・システム,並列処理,情報教育などに興味をもつ.
情報処理学会論文誌「教育とコンピュータ」編集幹事,初等中等教育委員会副委員長などを務める.
2014年度学会活動貢献賞受賞.

[推薦理由] 本発表は高等学校情報科の教科担任の現状を明らかにするため,公文書公開手続きによって得られた情報に基づいて,都道府県教育委員会における臨時免許状の授与と,免許外教科担任の許可の状況を調査している.その結果,本来の免許状を持たない多くの教員が情報科を教えているという高等学校情報科における教科担任の現状の問題点が明らかになり,それをもとに今後の我が国の情報教育について示唆に富んだ考察が行われている.また,この調査結果をメディアが伝えたことにより,社会にも大きな反響を与えた.発表者の中山氏は研究会のみならず,情報処理学会のさまざまな委員会で委員を務めるなど,情報教育に関する活発な活動を行っており,本発表は本学会が発信するにふさわしい社会的インパクトの大きな優れた発表であったので,山下記念研究賞に推薦する.
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●Motion Characteristics of Bon Odori Dances in Areas along Ushu Kaido Road in Akita Domain
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2015)(2015/12/20)](人文科学とコンピュータ研究会)
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三浦 武  君 (正会員)

1991年3月 岩手大学大学院工学研究科 修士課程 修了.
1993年3月 北海道大学大学院工学研究科 博士課程 中退.
同年4月秋田大学鉱山学部電気電子工学科助手.
現在,同大学大学院理工学研究科数理・電気電子情報学専攻准教授.
2005~2007年度における地域情報通信技術振興研究開発(総務省)の研究プロジェクトへの参加以降,4つの文理融合型研究プロジェクトに参加.
秋田大学プロジェクト研究所「民俗芸能情報技術研究所」所長(2014~2015年度).
博士(工学).

[推薦理由] 本研究は,モーションキャプチャデータの分析とテキスト分析を組み合わせ,秋田県の盆踊りの系統を明らかにするという,チャレンジングな研究である.本研究のモーションキャプチャデータの分析手法は,舞踊の時空間芸術性に着目し,データを時空間成分の2つに分け,定量的に比較可能としたものであり,技術的な新規性を持つ.さらに,単に舞踊動作の解析にとどまらず,郷土史に関連する資料を解析し関連付けることで,舞踊スタイルと産業との結び付きを明らかにするなど,民俗学的な知見との融合も果たす成果を上げており,人文科学とコンピュータ領域での典型的な成功研究である.本研究の成果は,これまでにデータの積み重ねや解析を堅実に行ってきた一連の研究の成果であり,研究の質も大変高いものである.
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●楽譜と表情を関連付けた統計モデルに基づく楽器演奏の比較分析の検討
[2015-MUS-107(2015/5/24)](音楽情報科学研究会)
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奥村 健太  君 (正会員)

2007年 名古屋工業大学工学部 卒業.
2009年 名古屋工業大学大学院工学研究科 博士前期課程 修了.
2016年 名古屋工業大学大学院工学研究科 博士後期課程 修了.博士(工学).
同年 株式会社DDS 入社.
同年 名古屋工業大学 プロジェクト助教.現在に至る.
2012年度 情報処理学会東海支部 学生論文奨励賞 受賞.
音声信号処理,音楽情報処理,生体認証に関する研究に従事.
情報処理学会,日本音響学会,人工知能学会各会員.

[推薦理由] 本論文では,楽器演奏に付与される表情について,表情付けに寄与する規則の度合いや関連性を分析する手法を提案している.一般的に,演奏者が楽器を演奏する際,楽譜の指示から楽器の操作に表情を付与するが,その指示の解釈と操作へどのように反映するかは演奏者に依存する.先行研究では,演奏に関する経験的な知見の客観的な証明がなされており,演奏者の有する表情付けを自動で付与する技術へも応用可能であることが示されている.本研究は,先行研究と比較して,表情付けに関する規則がどの程度寄与しているか,またそれらの関係性を説明できる点でさらに有用性の高い研究成果といえる.以上より,本論文を山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●基本周波数推定法の性能を概観するフレームワークの試作
[2016-MUS-110(2016/2/29)](音楽情報科学研究会)
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森勢 将雅  君 (正会員)

2006年 日本学術振興会特別研究員DC1.
2008年 和歌山大学大学院システム工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).
同年 関西学院大学大学院理工学研究科ヒューマンメディア研究センター 博士研究員.
2009年 立命館大学情報理工学部メディア情報学科 助教.
2013年 山梨大学大学院総合研究部 特任助教 現在に至る.
医工融合領域での音声・歌声・聴覚情報処理に関する研究に従事.
研究に関する様々な賞を合計21件(共同受賞含む)受賞.

[推薦理由] 音声の基本周波数推定研究は,現在も広く取り組まれている音声分析の主要なトピックである.一般的に推定法の評価には,発話音声と同時に収録した声帯振動の情報から何らかの手法で推定した基本周波数を真値とし,真値と推定値との誤差を用いる.この評価法では,真値そのものに誤りが含まれる可能性があるため,各手法の軽微な差が方法の優劣が真値の誤差かを判断することが困難といえる.本論文は,この問題に対し,真値が既知の信号を人工的に生成し,各推定法の優劣ではなく各推定法の特性を俯瞰するための枠組みを提案し,評価している.アイデアの独創性は高く技術的完成度も優れていることから,山下記念研究賞に強く推薦する.
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●統計的パラメトリック音声合成のための FFTスペクトルからのDeep Auto-encoderに基づく低次元音響特徴量抽出
[2015-SLP-109(2015/12/3)](音声言語情報処理研究会)
takaki

高木 信二  君 (正会員)

2009年 名古屋工業大学情報工学科 卒業.
2011年 名古屋工業大学大学院工学研究科創成シミュレーション工学専攻 博士前期課程 修了.
2011年 名古屋工業大学大学院工学研究科創成シミュレーション工学専攻 博士後期課程 修了.
2014年 国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 特任研究員.

[推薦理由] 本論文では,統計的パラメトリック音声合成において,Deep Auto-encoderを用いて低次元音響特徴量を抽出する手法を提案している.既存手法では一般に先ずスペクトル包絡を抽出し,そこから抽出した低次元特徴量が音響モデル構築に用いられている.これは正確かつ安定したスペクトル包絡を推定することを目的としたものであるが,音声波形の再現を目的とする音声合成においては必ずしも最適な方法とは言えなかった.提案法はより原信号に近いFFTスペクトルを入力として用いることでこの問題を低減し,合成音声の品質を大幅に高めている点で非常に優れている.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●プライバシーに配慮したアプリケーションログ出力の設計
[2015-EIP-68(2015/5/29)](電子化知的財産・社会基盤研究会)
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石田 茂  君 (学生会員)

1987年 小樽商科大学商学部管理科学科 卒業.
2006年 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻 修了.
2012年 産業技術大学院大学産業技術研究科情報アーキテクチャ専攻 修了.
2012年 情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科 入学.
大手SIer,イベント関連会社,シンクタンク,ソフトウェア開発会社を経て,現在は株式会社ビーシーエスにて,情報セキュリティコンサルティングに従事.
1990年-1993年 財団法人新世代コンピュータ技術開発機構 研究員.
2014年-2016年 学校法人岩崎学園 情報科学専門学校 非常勤講師.

[推薦理由] 現在,情報セキュリティの事後対策のために,アクセス要求,認証,アプリケーション利用などさまざまな場面で利用についての履歴がログ情報として収集されている.しかし,これらのログ情報は,個人に関する情報であり,プライバシーの保護対象でもある.本稿では,これらのログ情報について,プライバシーの漏えいリスクを低減するための「ログ出力指針」を提案している.論文では,指針の提案だけではなく,実際の場面を想定した簡単なシステムを例示して,具体的に,指針に基づいてどのようにログ収集機能を設計すればよいかについて,プライバシー情報を秘匿化できることを実証している.その結果として,指針に基づいて,ログ情報としての分析を可能としながら,収集されたログから個人を特定できないことを確認している.本論文は,理論面だけではなく,指針を提案し,これをもとに実証している点が優れている.本業績は,今後のログ収集機能の設計において,どのようにプライバシー保護をすればよいかに役立つ.以上から本研究は今後のディジタル社会の基盤として大きな意義を有するものと評価し,石田氏の上記論文を2016年度山下記念研究賞に強く推薦するものである.
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●期待最終順位に基づくコンピュータ麻雀プレイヤの構築
[ゲームプログラミングワークショップ2015(2015/11/8)](ゲーム情報学研究会)
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水上 直紀  君 (正会員)

2013年3月 金沢大学理工学域 電子情報学類 卒業.
2015年4月 東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻 修士課程修了.
2016年 同大大学院博士課程に在学中.

[推薦理由] プレイヤーがゲーム状態を完全には知ることのできない「不完全情報ゲーム」は,将棋や囲碁に代表される「完全情報ゲーム」とは本質的に異なる性質を有しており,近年のゲームAI研究における重要なターゲットになっている.本研究は,代表的な不完全情報ゲームである「麻雀」に関して,機械学習とモンテカルロ木探索を組み合わせた一連の研究をさらに推し進めた完成度の高い研究である.論文では,麻雀のゲーム特性を踏まえ,和了確率や和了点数ではなく,期待最終順位を最良にしようとする新しいアルゴリズムを提案している.手法の有効性と作成されたプレイヤの強さを裏付ける実験結果も示されており,山下記念研究賞にふさわしいと考える.
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●Toolification of Games : 既存ゲームの余剰自由度の中で非ゲーム的目的を達成するゲーミフィケーションの考察
[エンタテインメントコンピューティング2015(2015/9/25)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
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栗原 一貴  君 (正会員)

1978年 栃木県生まれ.
2007年 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士課程修了.PhD.日本学術振興会特別研究員(DC2)を経て同年,独立行政法人産業技術総合研究所研究員に就任.
2013年より同,主任研究員.
2014年より津田塾大学学芸学部情報科学科准教授,
2016年よりDiverse技術研究所上席研究員,現在に至る.
2007年から2008年にかけて東京大学大学総合教育研究センター助教および特任助教を兼任.
2010年から2012年にかけて総務省フューチャースクール推進事業における東日本地区全体委員会委員.
2012年 イグノーベル賞,第12回・第18回日本ソフトウェア科学会論文賞,WISS'11論文賞・発表賞,
2014年 原島賞,EC'15論文賞,HCI研究会貢献賞等受賞.第25回暗黒星雲賞次点入賞.
情報処理学会,日本ソフトウェア科学会 各会員.

[推薦理由] 本論文では,ゲーミフィケーションの派生概念としてToolification of Gamesを提案し,過去の事例の分析や具体的な開発事例を通じてその特徴について考察している.ゲーミフィケーションが抱えている「実際に面白くすることが難しい」という問題点に対して,Toolification of Gamesはその問題を解決するだけでなく,ゲーミフィケーションの可能性をさらに広げるものであることを示唆している.本研究は,エンタテインメントに関する新たな概念を創出し,その概念を丁寧に論じて特徴を整理していることから,高い学術的評価を得ている.以上から,山下記念研究賞受賞にふさわしいものと判断する.
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●難易度の高い協力型ボードゲームによる縦割り組織思考の克服
[2016-EC-39(2016/3/16)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
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塩瀬 隆之  君 (正会員)

1996年 京都大学工学部精密工学科卒業.
1998年 京都大学大学院工学研究科修了.
2000年 神戸大学自然科学研究科助手.
2002年 京都大学大学院情報学研究科助教.
その間,日本学術振興会特別研究員DC1,ATR知能ロボティクス研究所客員研究員,慶應義塾大学SFC研究所上席所員などを併任.
2009年 京都大学総合博物館准教授を経て2012年6月退職.
同7月より経済産業省産業技術政策課において技術戦略担当課長補佐として従事.
2014年7月京都大学総合博物館准教授に復職より現職.
文部科学省中央教育審議会専門分科会「数理探究」委員.
第10回科学技術予測調査「サービス化社会分野」サービスデザイン分担執筆.
2015年ヒューマンインタフェース学会研究会賞受賞.

[推薦理由] 本研究は,ゲームを通して,縦割り組織で弊害となる思考を払拭することを念頭に,組織内での協力・対話スキルの向上を目指している.これらのスキルの学習を志向したゲーム型教材の開発過程について,特に協力や対話についての学習効果を高めるため,敢えてゲームの達成難易度を高く,また協力の条件も厳しく設定した仕掛けについてそれぞれ報告している.ボードゲーム「TATEWARI」を開発し,大事業の成立を目指すという設定のゲームを用いて,その設計指針,また開発に取り組んだ過程について示している.本研究は,実際には体験することの難しい未知の状況を,ゲームという仮想環境で疑似体験するというエンタテインメント性のある取り組みは高く評価できるため,山下記念研究賞受賞にふさわしいと判断する.
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●三次元空間における効率良い近似点集合マッチングと分子パターン照合への応用
[2015-BIO-42(2015/6/25)](バイオ情報学研究会)
sasaki

佐々木 耀一  君 (学生会員)

2015年3月 北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科 卒業.
2015年4月 北海道大学大学院情報科学研究科 情報理工学専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 蛋白質などの高分子の三次元構造の検索技術は,蛋白質の機能が知られていない場合でも既知な構造との類似性から,機能を類推可能にするが,近年のデータベースの急速な拡大に伴いより高速な検索技術が求められている.本研究は,蛋白質の構造の検索を近似点集合マッチング問題として考え,ナイーブな解法では計算量が膨大になるところを,Upper bound function of minimum RMSDを導入することで,上限関数による分岐限定法を用いた点集合マッチング問題とすることで高速化を実現しており,今後の分子データベースへの適用はもとより,時系列データベースの近似検索への応用が期待されるため.
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●円滑なコミュニケーション形成支援を目的とした符号化・記述手法
[2016-CLE-18(2016/2/6)](教育学習支援情報システム研究会)
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後藤 義貴  君 (正会員)

2012年3月 岐阜工業高等専門学校電子制御工学科 卒業.
2014年3月 長岡技術科学大学工学部経営情報システム工学課程 卒業.
2016年3月 長岡技術科学大学工学研究科経営情報システム工学専攻 修了.
2016年4月 三菱電機メカトロニクスソフトウエア株式会社 入社.

[推薦理由] 本論文は,コミュニケーション形成支援を目的とし,ソシオン理論に基づくコミュニーション場の構造モデルに基づき具体的に計測できるコミュニケーション要素を符号化・記述するコミュニケーション分析手法を提案している.先行研究を良く調査しており言語・非言語および時系列上でのインタラクションについてもデータ化して分析の下準備を行った取組として,また,近年のLearning Analyticsの発展と期待の高まりの中でLMSなどで記録される学習者のアウトプットデータに加えて,学習中のプロセスに関するデータも学習の分析及び改善に重要なデータとなると考えられる.今後,教育分野においてどのように効果的な学習・教育方法へと発展していくのか期待したい.
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