2013年度詳細

2013年度(平成25年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に 贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は36研究会の主査から推薦された計52編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,理事会(2013年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の下記受賞者には,3月11日に東京電機大学で開催される第76回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI CG IS IFAT GN DD MBL CSEC ITS EVA UBI IOT SPT CDS

<フロンティア領域>
NL CVIM CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE

コンピュータサイエンス領域

●個々のノードの視点に基づく機能コミュニティ抽出法
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum 2012)(2012.11.21)] (データベースシステム研究会)
fushimi

伏見 卓恭  君 (学生会員)

2009年3月 静岡県立大学経営情報学部 中退(飛び級のため)
2011年3月 静岡県立大学大学院経営情報学研究科修士課程課程 修了
2011年4月 静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科博士後期課程 入学
2013年4月 日本学術振興会特別研究員DC2
2014年3月 静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科博士後期課程 修了見込
現在に至る.
複雑ネットワーク,可視化,データマイニングの研究に興味を持つ.
データベース学会,情報処理学会,人工知能学会,電子情報通信学会各学生会員.

[推薦理由] 本論文では,個々のノードの視点に基づくコミュニティの概念として,パーソナライズ機能コミュニティ,およびその抽出手法について提案している.パーソナライズ機能コミュニティは,個々のエゴノードの視点において,機能や役割が類似するノードをコミュニティとしたものであり,コミュニティ抽出としては新しいパラダイムと言える.ノードの役割や機能は,視点を変えると異なるものになるため,従来の機能コミュニティ抽出手法と比べ,提案手法は実用上極めて有効である.ネットワークにおける機能コミュニティ抽出は多様な分野で利用されており,本研究成果はその適用範囲をさらに広げるものとして評価できるため,本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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●アウトオブオーダ型データベースエンジンOoODEの試作とその実行挙動
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2013)(2013.3.3)] (データベースシステム研究会)
aida

合田 和生  君 (正会員)

2000年 東京大学工学部電気工学科卒業.
2002年 同大学院工学系研究科電子情報工学専攻修士課程修了.
2005年 同大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程単位取得満期退学.
同年 博士(情報理工学).
日本学術振興会特別研究員,東京大学生産技術研究所産学官連携研究員等を経て,
現在,東京大学生産技術研究所特任准教授.
データベースシステム,ストレージシステムの研究に従事.
本会,日本データベース学会,ACM,IEEE,USENIX各会員.
[推薦理由] 本論文では,アウトオブオーダ型データベースエンジンと称する高速データベースエンジンについて述べている.開発したデータベースエンジンは,問合せ処理においてタスク分解する機能を有しており,高多重のタスク並列実行と非同期入出力発行を行うことにより処理の効率化を図っている.マルチコアプロセッサの演算パワーとディスクストレージの入出力帯域を効率的に活用することにより,従来の逐次的な実行方式によるエンジンと比べて顕著な性能向上を達成している.巨大データの管理を担うデータベース技術の研究開発に関して貢献が大きく,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●UNICOEN: 複数プログラミング言語対応のソースコード処理フレームワーク
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2012(2012.8.28)] (ソフトウェア工学研究会)
sakamoto

坂本 一憲  君 (正会員)

2009年 早稲田大学 理工学部 コンピュータネットワーク工学科 卒業
2010年 早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 情報理工専攻 修士課程 修了
2012年 情報処理推進機構 未踏ユースプロジェクト スーパークリエータ認定
2013年 早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 情報理工専攻 博士後期課程 修了
2013年 国立情報学研究所 特任助教
ソフトウェアテスティング,プログラミング言語,教育工学に関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,日本ソフトウェア科学会,ACM,IEEE各会員.

[推薦理由] 本研究は,複数プログラミング言語によるソフトウェア開発を対象としたソースコード処理フレームワークUNICOENを提案している.UNICOENは言語非依存な言語モデルを提供することで,ツールの開発コストおよび言語の拡張コストを削減している.実際に複数言語向けの処理系を構築,提案手法を実装・評価するなど,その信頼性も高く評価できる.ソフトウェア開発に係る問題を現実的に解消するためには適切なツールの適用が不可欠であるが,本研究は,多様なプログラミング言語とツールへの拡張性を備えており,学術的な側面に加え,リエンジニアリングを中心とした実践に寄与することから,山下記念研究賞受賞候補にふさわしいと判断する.
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●業務観点でのレビューを目指した不具合情報の分析
[2013-SE-179(2013.3.12)] (ソフトウェア工学研究会)
morisaki

森崎 修司  君 (正会員)

2001年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.博士(工学).
2005年まで(株)インターネットイニシアティブ(IIJ)でエンジニアとしてソフトウェア開発に従事
2007年まで奈良先端科学技術大学院大学研究員として文科省「e-Society基盤の総合開発」,経産省「先進社会基盤構築ソフトウェア開発事業」においてソフトウェア開発活動の分析に従事
2007年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教
2011年 静岡大学情報学部助教
2013年 静岡大学大学院情報学研究科准教授
2013年名古屋大学大学院情報科学研究科准教授
実証的ソフトウェア工学,ソフトウェアレビュー,ソフトウェアメトリクスの研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,金融システムの開発工程で得られる不具合情報をヒアリングにより抽出し,スケジュール遅延リスクや欠陥修正コストの低減効果の有無について統計的検定を行っている.熟練者のヒアリング情報という,現実的に入手し辛いが直感的に説得力の高い情報に基づいて,スケジュール遅延リスクの減少に貢献するレビュー技法を提示し,業務に特化した欠陥種別の検出が可能であるという知見を導いている.問題の本質となる定性情報を精緻に分析して結果に結びつけている点は特に優れている.本研究による実証的な評価はレビューのコスト対効果を考えるためのヒントを提示している点も大変有用である.ソフトウェア工学における理論と実証のバランスがとれた優れた研究成果であり,山下記念研究賞受賞候補にふさわしいと判断する.
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コア数と動作周波数の動的変更によるメニーコア・プロセッサ性能向上手法の提案
[2012- ARC-200(2012.5.8)] (計算機アーキテクチャ研究会)
imamura

今村 智史  君 (学生会員)

昭和63年生.
平成23年 九州大学工学部電気情報工学科卒業.
平成25年 同大学大学院 システム情報科学府情報知能工学専攻修士課程修了.
平成25年 同大学大学院博士課程に進学,現在に至る.
マルチコア/メニーコア・プロセッサに関する研究に従事.

[推薦理由] マルチコア・プロセッサの性能向上を目指した研究である.消費電力制約下において並列プログラム実行時の性能を最大化するDynamic Core Count and Frequency Scaling(DCFS)手法を提案し,評価している.実行時に最適なコア数と動作周波数を導き出し,時々刻々と変化するアプリケーションの特性に対応している.従来の全コア実行に対し平均で22%,最適な組み合わせを静的に選択した場合の実行に対し平均で9%の性能向上を達成した.現在主流であるマルチコア・プロセッサを対象としており,その実用性は高い.また,使用するコア数を制限する方が性能が高いケースがあるということを見出しており,着眼点が独創的である.山下記念研究賞に相応しい論文である.
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●Tightly Coupled Accelerators アーキテクチャ向け通信機構の予備評価
[2012- ARC-202(2012.12.13)] (計算機アーキテクチャ研究会)
hanawa

塙  敏博 君 (正会員)

平成10年 慶應義塾大学大学院理工学研究科計算機科学専攻博士課程修了.博士(工学).
同年 東京工科大学工学部情報工学科講師,
平成15年 東京工科大学コンピュータサイエンス学部講師,
平成19年 筑波大学計算科学研究センター研究員を経て,
平成20年より筑波大学システム情報工学研究科准教授.
計算機アーキテクチャ,高性能相互結合網,ハイパフォーマンスコンピューティング,
GPUコンピューティング等に関する研究に従事.平成7年度情報処理学会論文賞.IEEE CS会員.

[推薦理由] 次世代のアクセラレータ間結合の要素技術の研究で,Tightly Coupled Accelerators(TCA)アーキテクチャを提提案し,その予備評価を行なっている.TCAは,筑波大学計算科学研究センターの大規模GPUクラスタであるHA-PACSを構成する実験クラスタである.HA-PACSは,素粒子・宇宙物理・生命科学等の極めて大量な演算を要求する大規模並列アプリケーションにおいてサイエンスの新しい分野を切り拓くために,数百~千台規模のGPUを定常的に利用した大規模並列実行を目指している.将来の科学技術研究の発展における本研究の寄与は大きい.山下記念研究賞に相応しい論文である.
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●準仮想化ページフォルトを用いたポストコピー型ライブマイグレーションの性能向上手法
[コンピュータシステム・シンポジウム(ComSys2012)(2012.12.6)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
hirofuchi

広渕 崇宏 君 (正会員)

2001年 京都大学理学部地球物理学教室卒業
2002年 京都大学理学研究科地球惑星科学専攻修士課程退学
2007年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士課程修了
同年,独立行政法人産業技術総合研究所入所
現在,情報技術研究部門主任研究員
グリッドコンピューティング,クラウドコンピューティング,Green ITの研究に従事.
システムソフトウェア,ネットワーク,仮想化技術等に興味を持つ.
情報処理学会会員.博士(工学).

[推薦理由] 仮想マシンを動作させたまま,あるホストから別のホストに移送するライブマイグレーションは,クラウド環境などにおける負荷分散やハードウェア機器のメンテナンスのために利用することができ,高い注目を集めている.本研究発表では,ポストコピー型のライブマイグレーションにおける仮想マシン移送後の性能低下を緩和する手法として,未転送メモリページへのアクセス時に仮想マシン全体ではなく,アクセスを行ったプロセスだけを停止させ,他のプロセスの実行は継続させる手法を提案している.実用性の高い方式の提案であり,ソフトウェアシステムの実装および評価も高い水準で行われている.本研究賞にふさわしい優れた研究発表である.
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●動的複数電源電圧およびフロアプラン統合化アーキテクチャを対象とした低電力化高位合成手法
[DAシンポジウム(2012.8.30)] (システムLSI設計技術研究会)
abe

阿部 晋矢  君 (学生会員)

2011年3月 早稲田大学基幹理工学部情報理工学科 卒業
2012年3月 早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工学専攻修士課程 修了
2012年4月 早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工学専攻博士課程 入学
現在に至る.
情報処理学会学生会員.

[推薦理由] 本論文では動的複数電源電圧と配線遅延を高位合成に統合するプラットフォームとして,AVHDRアーキテクチャとその高位合成アルゴリズムが提案されている.フロアプラン情報をフィードバックし,反復改良する合成フローを取る.近くに配置されたモジュールを抽象化するハドルにより,配線遅延の影響を予測した合成を実現する.電源電圧を演算器ごとに動的に制御している.従来技術に比較して50%程度消費エネルギーを削減した.本論文は今後の動作合成・物理合成の新たな指針を与えるものであり価値の高い論文と認める.本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●Routability-oriented Common-Centroid Capacitor Array Generation
[2012-SLDM-158(2012.11.28)] (システムLSI設計技術研究会)
nakatake

中武 繁寿  君 (正会員)

1992年3月 東京工業大学 工学部 電気電子工学科卒
1994年3月 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科情報工学専攻 博士前期課程修了
1996年3月 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科情報工学専攻 博士後期課程中退
1996年4月 東京工業大学 工学部 電気電子工学科 助手
1999年1月 博士(工学)取得 (授与機関: 東京工業大学)
1999年4月 北九州大学 国際環境工学部設置準備室 講師
2001年4月 北九州市立大学 国際環境工学部 情報メディア工学科 准教授
2011年4月 北九州市立大学 国際環境工学部 情報メディア工学科 教授,現在に至る.
LSIレイアウトアルゴリズム,ミクストシグナルLSI設計に関する研究開発に従事.
情報処理学会,電気電子情報通信学会,IEEE 各会員.

[推薦理由] 本論文では,オンチップ容量のレイアウト生成手法について論じている.製造プロセスのばらつきに起因するシステマティックミスマッチを抑制するために,配線可能性を考慮しながら単位容量をコモンセントロイドのスタイルで配置する.この方式は,オンチップ容量のレイアウト自動生成に適用され,逐次比較型 ADO 回路の容量アレイレイアウトへ適用される.従来技術と比較して (1) 同等の容量ミスマッチに抑えられ,かつ (2) 100% 配線可能性を保証した.本論文は今後のアナログLSI設計自動化に大きな指針を与えるもので価値の高い論文と認める.本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●「京」のための MPI 通信機構の設計
[先進的計算基盤システムシンポジウム(2012.5.18)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
sumimoto

住元 真司  君 (正会員)

1986年 同志社大 学工 学部電子工学科卒業
同年  富士通株式会社
1988年 株式会社富士通研究所
1997年 技術研究組合新情報処理開発機構出向
2000年 慶応義塾大学大学院理工学研究科(工学博士)
同年  情報処理学会論文賞受賞
2001年 株式会社富士通研究所
2007年 富士通株式会社
2010年 SACSIS2010最優秀論文賞受賞
超高性能並列計算機向 けのシステムソフトウェア開発に従事.

[推薦理由] 本論文は,8万ノード規模の「京」6次元トーラス・メッシュのTofuインタコネクト上で,高いアプリケーション性能を実現するMPIライブラリの設計について論じている.このMPIライブラリは,低遅延通信を実現する1対1通信,4つのRDMAエンジンを持つTofuインタコネクト性能を引き出す集団通信アルゴリズム,通常ノード数に比例して必要なメモリ使用量を確実に抑える省メモリの実現方式を特徴としており,本論文はその設計,実装および京コンピュータでの実運用について論じている.京コンピュータを用いた成果は2011年,2012年のゴードンベル賞を受賞しているが,これらの成果に貢献したものである.このように,本研究はHPC分野において顕著な業績であり,山下記念研究賞にふさわしいものとして推薦する.
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●Tofuネットワークにおけるプロセス配置形状による集団通信アルゴリズムの性能解析
[2012-HPC-136(2012.10.4)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
nanri

南里 豪志  君 (正会員)

1993年3月 九州大学工学部情報工学科卒業
1995年3月 九州大学大学院工学研究科情報工学専攻 修士課程修了
1995年4月 九州大学大学院工学研究科情報工学専攻 進学
1996年7月 九州大学大型計算機センター 助手
2001年1月 九州大学情報基盤センター 助教授
現在,九州大学情報基盤研究開発センター 准教授.博士(情報科学).
高性能計算,特に並列計算の高速化技術に興味を持つ.

[推薦理由] スーパーコンピュータのノード数が増大するに従い,ネットワークトポロジーとしてメッシュやトーラスが増えている.これに伴い,通信の衝突などによる通信時間の増大が急速に顕在化しており,これを最小限に抑えるための工夫が渇望されている.本研究はプロセス配置の形状が集団通信の性能に与える影響について,京コンピュータやFX10で用いられているTofuインターコネクトにおいて分析したものである.本研究により,集団通信の性能において通信の衝突が極めて重要な役割を果たしており,また,プロセス配置とアルゴリズムの協調的最適化により性能向上が期待できることを具体的事例をもって示したものとなっている.このように,本研究は今後のHPCの研究開発に多大な貢献をするものであり,山下記念研究賞にふさわしい研究発表として推薦する.
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●解析表現文法とSchemeマクロ展開器を用いたJavaScript向けHygienic構文マクロシステムの実装
[(2013.1.16)] (プログラミング研究会)
homizu

甫水佳奈子  君 (正会員)

2011年 東京工業大学理学部情報科学科卒業
2013年 同大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻修士課程修了
同年,三菱電機株式会社入社.
現在に至る.

[推薦理由] この研究は,Scheme言語の特徴的な機能の1つであるHygienic構文マクロシステムをJavaScript言語でも利用可能にしたものである.提案手法はJavaScript以外の言語にも適用可能だと考えられ,非S式言語でもプログラマがパターンマッチを利用した簡便な記述で構文拡張が行えるようになるという点で実用性が非常に高い.実装の面でも,非S式言語における構文マクロの実現の困難さを克服するため,パーザの動的拡張や既存のSchemeのマクロ展開器の利用といった巧妙な手法を用いておりとても興味深い.また,このような複雑な実装を口頭発表でわかりやすく説明されていた点も評価し,山下記念研究賞にふさわしい研究として推薦する.

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●無理数遷移確率ランダムウォークの脱乱択化
[2012-AL-142(2012.11.2)] (アルゴリズム研究会)
shiraga

白髪 丈晴  君 (学生会員)

2012年3月 九州大学工学部電気情報工学科 卒業
2012年4月 九州大学大学院システム情報科学府 入学
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,ランダムウォークの脱乱択化のモデルを提案し,理論解析を与えている.ランダムウォークとは,現在の状態から次の状態への移動が確率的に無作為(ランダム)に選ばれる(これを乱択と呼ぶ)運動のことで,統計力学や数理ファイナンス等の実応用のシミュレーションのモデルとしても用いられる.本研究では,ランダムウォークを決定的な過程によって模倣すること(脱乱択化)を目標としており,これにより乱択というコストのかかる計算を省力化できると期待される.特に本論文が,有理数の遷移確率しか模倣できなかった既存のモデルを改善し,無理数の遷移確率をも模倣するモデルを提案している点は非常に優れた進歩であると評価できる.よってここに推薦する次第である.
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●混合正規分布モデルを用いた経時観測蛍光画像からの細胞核の検出と追跡手法
[2013-MPS-92(2013.2.27)] (数理モデル化と問題解決研究会)
seo

瀬尾 茂人  君 (正会員)

2001年 大阪大学基礎工学部情報科学科卒業
2003年 大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了
2004年 日本学術振興会特別研究員
2006年 大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了
博士(情報科学).同年同研究科助手.
2007年 大阪大学大学院情報科学研究科助教.現在に至る.
バイオインフォマティクスの研究に従事.
情報処理学会,日本バイオインフォマティクス学会,分子生物学会,IEEE各会員.

[推薦理由] バイオイメージングにおけるセグメンテーションとトラッキングという問題に対して,混合分布を適用し,この問題を混合分布パラメータ推定の問題として扱っている部分が非常に興味深い.一般的に,データの分類の問題に対して混合正規分布が用いられることはよくあるが,ノイズの多い画像から特定の細胞をみつけるという問題に対して混合正規分布を適用しているところに説得力があると考えられる.現実の癌細胞を対象とした検証実験を行っており,その有用性についても十分な結果が得られているものと判断される.
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●GPU制御用ファームウェア開発環境
[組込みシステムシンポジウム(ESS2012)(2012.10.19)] (組込みシステム研究会)
fujii

藤居 祐輔  君 (学生会員)

2013年3月 立命館大学情報理工学部情報システム学科 卒業
2013年4月 立命館大学大学院 情報理工学研究科情報理工学専攻 博士前期課程 入学
現在に至る.

[推薦理由] 本発表は,GPU上のマイクロコントローラのファームウェアを効率的に開発できる環境を提供し,GPU資源管理の新たな方向性を示した貴重な実践論文である.コンパイラの実装にはLLVMを用い,デバッグ支援ツールはマイクロコントローラ上でファームウェアを実行し,コマンドの実行や管理を行う.実際にNVIDIA社製のGPUマイクロコントローラのファームウェアを開発・評価を行い,開発環境が改善された下でのファームウェアの性能低下が許容範囲内に収まることを確認している.実用的な有効性が高いと考えられ,山下記念研究賞にふさわしいと考えられる.
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情報環境領域

●秘密分散法に基づくセキュアな無線通信リンクの形成 -狭ビーム形成の効果とその弊害-
[2012-DPS-152(2012.9.13)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
yamanaka

山中 仁昭  君 (正会員)

1999年3月 大阪大学工学部通信工学科卒業.2002年3月 大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了.
2002年4月 広島国際大学社会環境科学部助手,2007年4月 同大工学部助教,2013年4月 同大工学部講師,
現在に至る.
博士(工学).無線通信方式,無線干渉対策,Physical Layer Securityに関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各会員.

[推薦理由] 本論文では,無線LAN環境下におけるセキュリティ向上のために,秘密分散法の考え方に基づいた経路分散を実現するための指向性アンテナを用いた狭ビーム形成方式を提案している.また,提案方式の導入に伴い,目的ノードでの伝搬利得の減少を回避するための送信電力増大の弊害について評価も行っている.このように,提案方式の利点と併せて弊害についても公平に評価を行った本論文は同研究分野において学術的に高い貢献が認められる.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●密な基地局群の無線相互干渉調停のための空間分割スケジューリング技術
[DPSワークショップ(2012.10.18)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
yamaguchi

山口 弘純  君 (正会員)

1994年3月 大阪大学基礎工学部情報工学科修了
1996年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了
1998年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了(博士(工学))
1996年4月 日本学術振興会 特別研究員(1999年3月まで)
1999年4月 大阪大学 大学院基礎工学研究科 助手
2007年4月 大阪大学 大学院情報科学研究科 准教授,現在に至る
2008年5月 情報処理学会平成19年度長尾真記念特別賞
2010年11月 情報処理学会創立50周年記念論文賞
2012年3月 第27回電気通信普及財団テレコムシステム技術賞

[推薦理由] 本論文では,無線基地局が密に設置されていたり,将来的に追加設置されていったりするような地理空間環境において,無線資源の高い利用効率と,資源管理の容易性をともに達成する空間再利用型時分割多重アクセス(STDMA)スケジューリングアルゴリズムを提案している.本研究は,領域間の干渉を最小化する最適化問題として問題を定式化し,これを解くアルゴリズムを提案したうえで,実環境での有用性を評価しており,高度なアルゴリズムでありながら実用性が高く,実用化が期待できる.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●SpecificFont:受け手の状況を考慮したメッセージの提示を実現するためのフォントの提案
[2012-HCI-150(2012.11.2)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)
nomada

野間田佑也  君 (正会員)

2001年3月 多摩美術大学 美術学部 グラフィックデザイン学科卒業
2004年3月 同大学 大学院美術研究科(デザイン専攻)修士課程修了
2007年3月 筑波大学 大学院 システム情報工学研究科 博士後期課程 単位取得退学
2007年4月 多摩美術大学 美術学部 グラフィックデザイン学科 助手(~2012年3月まで)
2013年4月 同大学 非常勤講師 就任 現在に至る.
情報処理学会,日本デザイン学会,芸術工学会,ACM 各会員.
博士(工学).

[推薦理由] 本発表は,特定条件下でのみ可読状態になる新奇なフォント「SpecificFont」を提案している.従来のフォントが書体情報のみを有していたのに対し,SpecificFontでは可読条件と可読状態,非可読状態に関する情報をもフォント情報に持たせることにより,新規フォントのみならず既存フォントをSpecificFontとすることも可能としており,高い拡張性を有する.また,非可読状態は単なる非表示ではなく,文字とは異なる多様な視覚表現とすることを可能としており,1つのメッセージを状況によって文字情報としたりビジュアルイメージとしたりすることができる.このように,本研究は文字と人の新しいインタラクションを提案するものであり,幅広い応用展開が期待できる点で優れた将来性を有すると判断し,山下記念研究賞候補として推薦する.
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●アクティブ音響センシングを用いた把持状態認識
[インタラクション2013(2013.3.1)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)
ohno

大野  誠  君 (学生会員)

2011年4月 筑波大学情報学群情報メディア創成学類三年次編入学
2013年3月 筑波大学情報学群情報メディア創成学類卒業
2013年4月 筑波大学大学院システム情報研究科コンピュータサイエンス専攻入学
現在に至る.

[推薦理由] 物体の把持状態(姿勢や把持力等)は,その物体の用途によって様々に変化するため,把持状態の正確な認識は,人と物体との高度なインタラクションの実現のために非常に有用である.本発表は,物体を振動させる振動スピーカと振動応答を取得するピエゾマイクを物体に取り付け,把持状態によって音響特徴が変化することを利用した把持状態認識手法を提案し,プロトタイプシステムによってその有用性を示している.提案手法によれば,既存の物体に単に小型のスピーカとマイクを貼付するだけで容易かつ安価に様々な物体の把持状態を認識可能になるため,幅広い応用展開が可能であり,人と物体の新しいインタラクションが期待できる点で優れた将来性を有すると判断し,山下記念研究賞候補として推薦する.
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●例示ベースの弾性変形の実時間計算手法
[VC/GCAD合同シンポジウム(2012.6.23)] (グラフィクスとCAD研究会)
koyama

小山 裕己  君 (学生会員)

2012年 東京大学理学部情報科学科 卒業
2012年 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 入学
2013年 未踏IT人材発掘・育成事業 スーパークリエータ認定 (情報処理推進機構)
コンピュータグラフィクス,ユーザインタフェースに関する研究に従事.
[推薦理由] 本研究は,例示ベースによる弾性変形の実時間計算手法を提案している.従来提案されている例示ベースの弾性体変形手法では,有限要素法を用いた非線形最適化を行う必要があり,物理的には正確だが,高い計算コストを必要としていた.提案手法では,Shape Matching法による弾性体の表現を拡張することによって,コンピュータグラフィックスなどの用途に必要な正確性を維持させながら,数百倍程度の高速化を実現している.提案手法を応用することによって,髪の毛や布などに応用されることも期待される.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●ボリュームレンダリングにおける伝達関数の推定法
[2012-CG-148(2012.8.29)] (グラフィクスとCAD研究会)
shibukawa

渋川 雄平  君 (学生会員)

2012年3月 北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科 卒業
2012年4月 北海道大学大学院情報科学研究科メディアネットワーク専攻 入学
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,炎などのボリュームデータを表示する際,ユーザが所望する表示になるように伝達関数を推定するインタラクティブな手法を提案している.ボリュームレンダリングにおける伝達関数の設計は,コンピュータグラフィックスにおける重要な問題の一つである.提案手法では,伝達関数を基底関数の線形和によって近似し,目的色との誤差を最小二乗法により最小化することで,逆問題を高速に解く独創的な手法を提案している.提案手法は,複数の特徴量を用いてユーザの意図を反映する表示システムへの応用が考えられるなど,さらなる発展が見込まれる.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●エージェント技法を用いた津波避難評価システムの構築と社会実装
[2013-IS-123(2013.3.15)] (情報システムと社会環境研究会)
nakai

中居 楓子  君 (学生会員)

2012年 自由学園 卒業
2013年 京都大学大学院 情報学研究科社会情報学専攻 修士課程在学中

[推薦理由] 南海トラフ地震で最大34.4mの津波の可能性が指摘された高知県黒潮町内を対象とし,津波避難評価システムの構築と避難計画策定作業への適応について検討している.東日本大震災発生以降,極めて社会的要請が高い分野を対象にし,避難行動をシュミレーションで分析すると共に動画で可視化もし,理解性・受容性の高いシステムとなっている.研究の堅実性と共に,情報処理を実社会に直結する形で提示しており,情報システムと社会環境研究会の主旨との整合性も高い.これらのことから推薦に値すると考える.
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●TwitterとBlogの共通ユーザプロフィールを利用したTwitterユーザ属性推定
[2013-IFAT-109(2013.1.11)] (情報基礎とアクセス技術研究会)
itoh

伊藤  淳  君 (正会員)

2009年3月 早稲田大学 理工学部 コンピュータ・ネットワーク工学科 卒業
2011年3月 早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 情報理工学専攻 修了
2011年4月 日本電信電話株式会社 入社.現在に至る.
NTTサービスエボリューション研究所所属.
Webマイニングの研究開発に従事.
情報処理学会,日本データベース学会,各会員.

[推薦理由] 本論はツイッターユーザの自動分類を目指しているが,教師データを人手によらず,ツイッターとブログを両方持っているユーザに着目し,ブログのプロフィール情報を再利用することで構成している点が斬新である.大規模な実験を通しアプローチの効果を実証しており, アイデアに顕著な新規性,有用性,有効性が認められるので推薦する.
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●未来の在室情報を予報する在室管理システム「Docoitter」の開発
[DICOMO2012(2012.7.5)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
tanaka

田中 優斗  君 (学生会員)

2013年3月 和歌山大学システム工学部デザイン情報学科 卒業.
2013年4月 和歌山大学大学院システム工学研究科システム工学専攻博士前期課程 入学.
現在に至る.
コミュニケーション支援に関する研究に従事.
DICOMO2012最優秀論文賞,DICOMO2012優秀プレゼンテーション賞を受賞.

[推薦理由] 本研究発表は,現時点の在室情報だけでなく,在室履歴と個人のスケジュールから未来の在室情報を予報する在室管理システムを開発し,その効果を確認した.従来,様々な手法を用いて在室管理に関する研究が行われているが,主として提示する情報は,現時点の在室情報あるいは行き先である.訪問者は目的の人物が不在の場合,次回の都合の良い訪問日時を把握することが困難である.本研究では,システムの利用実験を行い,未来の在室情報の提示により,訪問者が在室状況と訪問日時の手掛かりとなる情報を得る可能性を示した.本研究は,ユーザの未来のプレゼンス情報を提示する新しい手法であり,グループウェアの研究の発展に寄与するものである.
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●ゲーミフィケーションを活用した自発的行動支援プラットフォームの試作と実践
[2013-GN-87(2013.3.19)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
nemoto

根本 啓一  君 (正会員)

2001年 慶應義塾大学理工学部情報工学科 卒業
2003年 同大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 修了
同年  富士ゼロックス株式会社に入社
2009年 米国 MIT Center for Collective Intelligence 客員研究員(~2011年4月)
2011年より富士ゼロックス株式会社 コミュニケーション技術研究所に所属
現在に至る.
コミュニケーション,社会ネットワーク,集合知,ゲーミフィケーションの研究に従事.
第84回,第87回グループウェアとネットワークサービス研究会 ベストプレゼンテーション賞受賞.
情報処理学会,ACM会員.

[推薦理由] 本研究発表は,多様な参加者が参加し,社会課題の発見や解決のための主体的行動を集合的に生み出すワークショップ手法として注目されるホールシステムアプローチを使った対話の場の分析に関する.同アプローチとして最も普及しているワールドカフェを用いたワークショップを対象とし,参加者の対話プロセスとその影響を分析し,考察を加えた先駆的な研究である.同アプローチは組織開発の分野で実践が先行している.同分野の実務家にとって価値が高いだけでなく,研究者と実務家との交流,本学会にとって新領域の研究者との交流をもたらす研究としても価値が高い.
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●東日本大震災にともなう歴史資料保全の取り組み
[2012-DD-86(2012.7.20)] (デジタルドキュメント研究会)
amano

天野 真志  君 (正会員)

平成16年(2004)3月 富山大学人文学部人文学科卒業
平成18年(2006)3月 東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了
平成22年(2010)3月 東北大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学
平成22年(2010)4月 東北大学東北アジア研究センター教育研究支援者
平成23年(2011)5月 博士(文学、東北大学)取得
平成24年(2012)4月 東北大学災害科学国際研究所 助教

[推薦理由] 本論文では,2011年3月に発生した東日本大震災に伴い,消滅の危機に瀕していた歴史資料の保全について,NPO法人の活動を紹介するとともに,デジタルドキュメント技術の活用および効果について考察を行っている.本論文は,資料保全活動におけるデジタルドキュメント技術適用に際し,所在に基づく歴史資料のデジタル化・保存ワークフロー,ネットワークを介したリスク分散,データバックアップ機能の有効性について検証を行っており,今後起こりうる災害を想定したデジタルアーカイブのあり方について示唆を与えるものである.以上の理由から,本論文は今後のデジタルドキュメント研究の進歩に寄与するものであり,本論文を山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●グリッドグラフを利用した位置推定手法
[2012-MBL-64(2012.11.16)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)
kubo

久保  健  君 (正会員)

1999年 京都大学工学部電気電子工学科卒業
2001年 京都大学大学院工学研究科電子物性工学専攻 修士課程修了
同年  KDDI株式会社入社
2008年 電子情報通信学会学術奨励賞受賞
 

[推薦理由] 本論文はセンサノードの位置推定手法に関する論文である.GPS等の測位手段を持たない安価な小型センサが多数配置されている状況で,各センサの位置を高精度に推定する手法を提案している.このような手法はrange free localizationと呼ばれ,広く研究されているが,本研究では,従来研究で大きな誤差要因となる「非凸包な領域」を含む空間での推定精度向上を可能とする画期的な手法を提案している.センサ間で自律分散協調して直行座標系を構築するなど,提案手法のアプローチは非常に斬新である.理論的な裏付けやシミュレーションによる有効性評価・考察も行われており,大変興味深い論文となっている.
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●重畳符号化を用いた無線通信における転送量に基づく電力割当方式
[2012-MBL-64(2012.11.16)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)
aoki

青木 勇太  君 (正会員)

2013年3月 静岡大学院 情報学研究科情報学専攻 修士課程修了
同年4月 富士通株式会社入社

[推薦理由] 本論文では,無線資源を効率的に利用する技術の1つとして,1回の送信で2端末に異なるデータを送信できる重畳符号化に着目し,重畳符号化を想定した無線通信メディアアクセス制御プロトコルTSPC-MAC(Traffic-aware Superposition Coding Medium Access Control)を提案している.無線通信の物理層とMAC層のクロスレイヤ技術であり,干渉除去を駆使した通信プロトコルとして無線LANの新しい領域を切り開くことを期待できるため,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●テイント伝搬に基づく解析対象コードの追跡方法
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2012)(2012.10.30)] (コンピュータセキュリティ研究会)
kawakoya

川古谷裕平  君 (正会員)

2003年 早稲田大学理工学部情報学科 卒業
2005年 早稲田大学理工学研究科修士課程 修了
2005年 日本電信電話株式会社 入社
以来,マルウェア対策技術の研究開発に従事.

[推薦理由] 本論文は,Taint Analysisによるマルウェア解析手法を提案している.Taint Analysisは日本ではまだ弱い分野であり,先進的な研究といえる.提案システムを実際に実装した上で,マルウェアの挙動を模擬したテストコード,および実際のマルウェアを利用して評価しており,報告内容の信頼性も高い.以上の通り,マルウェア解析の効率化に大きく貢献する研究であることから本論文を推薦する.
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●秘匿計算上の集約関数中央値計算アルゴリズム
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2012)(2012.10.31)] (コンピュータセキュリティ研究会)
hamada

濱田 浩気  君 (正会員)

2007年 京都大学工学部情報学科卒業
2009年 京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻修士課程修了
2009年 より日本電信電話株式会社現在に至る
2012年 電子情報通信学会SCIS2011論文賞
2012年 2011年度情報処理学会論文賞
2012年 CSS2012優秀論文賞

[推薦理由] 本論文では,従来の秘匿計算では適応が知られていなかった中央値の計算プロトコルを提案している.リーズナブルな通信量によるプロトコルを実現しており,特に,集約関数a/(a+b)分位数計算アルゴリズムは実用性が高い提案となっている.ビッグデータの利活用は今後益々重要となると予想されているが,本研究はその際の必須要件となるプライバシ確保に大きく貢献する.以上の通り,クオリティとインパクトの観点から本論文を推薦する.
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●ビッグデータ分析を活用した電気自動車充電ステーション推奨技術の研究
[2012-ITS-51(2012.11.15)] (高度交通システム研究会)
kawano

川野晋一郎  君 (正会員)

2001年3月 群馬大学工学部情報工学科卒業
2003年3月 群馬大学大学院情報工学専攻博士前期課程修了
2006年3月 群馬大学大学院電子情報工学専攻博士後期課程修了.博士(工学).
2007年4月 東芝ソリューション株式会社入社
現在,同社IT研究開発センターにてシステム最適化,データ分析の研究開発に従事.

[推薦理由] 電気自動車は従来のガソリン車に比べてバッテリーへの充電に時間を要するため,ユーザの利便性向上のためには,充電のスケジューリングが大きな課題となる.本論文では,それぞれのユーザが必要なタイミングで充電でき,かつ,全体の待ち時間が少なくなるよう,られた数の充電ステーションをユーザ間で効率的に共有するための割り当て手法が提案されている.提案手法では,交通状況などの情報を収集し,それに基づき各ユーザに対して,充電を推奨する充電ステーションを提案する形で目的を達成しており,社会のニーズに合った研究と言える.また,考慮すべき条件が適切に定式化された上で最適化されていると言う点で理論面からも価値があるものと認められる.
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●分散データストアシステムに対するEnergyCapping制御
[2012-EVA-38(2012.8.2)] (システム評価研究会)
kan

菅  真樹  君 (正会員)

2001年3月 東京工業大学工学部制御システム工学科卒業
2003年3月 東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻 修士課程修了
2003年4月 日本電気株式会社入社
現在,同社クラウドシステム研究所主任.
入社以来,分散ストレージシステム,情報検索システム,省電力クラウドシステムなどの研究に従事.

[推薦理由] 本研究報告論文は,分散データストアシステムのEnergyCapping制御についてNodeStop 制御とNodeCapping 制御の2種類の制御手法を提案し,プロトタイプシステム上の性能評価により各手法の有効性を検証したものである.検証方法については具体的に記述され,NodeCapping制御がNodeStop制御よりも優位となるシステム条件が定量的に示されている.ITシステム,特に分散データストアシステムにおける利用電力の節減の必要性は近年特に高まっており,本研究において提案される制御手法とその性能評価は幅広い情報処理システムの品質向上に資することが期待される.システム評価研究における優秀な研究報告として,山下記念研究賞の候補に推薦するものである.
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●Control Manually:視聴者協力型ライブ演出システムによるコミュニケーションと演出効果の拡張
[2012-UBI-35(2012.7.14)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
yonezawa

米澤 拓郎  君 (正会員)

2005年 慶應義塾大学環境情報学部卒業
2007年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了
2008年 日本学術振興会特別研究員
2010年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士過程修了 博士(政策・メディア)
2012年 米国・カーネギーメロン大学 客員研究員
現在   慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任助教

[推薦理由] 本研究では,新しいユーザ参加型のライブ映像配信手法を提案し,実際にライブ映像配信を行って演出効果およびコミュニケーションの変化を評価した.現在多くのアマチュアユーザがライブ映像配信を行なっているが,プロの配信と比較すると演出上の乏しさが際立つ.また配信時のコミュニケーションはテキストチャットに限られており,配信者がパフォーマンス等を行う際にコミュニケーションが希薄となる場合が多い.提案手法ではライブ映像を視聴するユーザが配信者のカメラ等の機器を操作可能とすることにより演出効果の向上を実現するとともに,非言語コミュニケーションの創発に関して考察した.今後の新しいインタラクティブシステム創出のための示唆にも富んでおり,重要な研究報告として位置づけられるため,山下記念研究賞に推薦する.
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●CPUクロック制御によるサーバのピークエネルギー消費削減の試み
[2012-IOT-19(2012.9.28)] (インターネットと運用技術研究会)
ishijima

石島  悌  君 (正会員)

1989年3月 京都工芸繊維大学工芸学部電気工学科卒業
1991年3月 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科
博士前期課程電子情報工学専攻修了
1991年4月 大阪市役所都市整備局で電気設備の営繕業務に従事
1995年3月 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科
博士後期課程情報・生産科学専攻修了.博士(学術)
1995年4月 大阪府立産業技術総合研究所入所.
電子工学ならびに情報通信分野での企業支援と研究業務に従事.
研究所の独立行政法人化により,現在,地方独立行政法人
大阪府立産業技術総合研究所業務推進課主任研究員.
日本物理学会,プラズマ・核融合学会,軽金属学会各会員.

[推薦理由] 東日本大震災以降,ICT機器の省電力化が強く求められている.CPUのクロックの動的変更による省電力機能は電池を前提とする可搬端末用ばかりでなく,一般交流電源に接続して使用するようなサーバ機器用のCPUにも搭載されている.しかし,CPUクロックの低下によって消費電力を削減すると電力以上に処理性能が低下し,CPU負荷の高い機器に適用すると積分消費電力量はむしろ増えてしまうため,広く行われてはいなかった.特にサーバ機器ではCPU以外の部分が消費する電力が無視できないくらい大きく,ピーク電力の削減量と処理性能のトレードオフについて定量的な評価が必要である.著者は先行研究では電源に挟んで使用するタイプの安価な消費電力計やサーバ機器に搭載されているセンサーの誤差などについて調査しており,本研究ではそれらの成果がひとつに結実したと評価できる.
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●一般カードを用いた認証システムにおけるハッシュ関数を用いたPINコード生成方式
[インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2012)(2012.12.13)] (インターネットと運用技術研究会)
shimizu

清水さや子  君 (正会員)

2011年3月 信州大学大学院工学系研究科情報工学専攻 修士課程 修了
2011年10月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻 博士後期課程(在学中)
2005年より 東京海洋大学情報処理センター技術職員,2011年より同技術専門職員.
現在に至る.
DICOMO2012優秀論文賞受賞.

[推薦理由] 大学には大学間連携や共同研究により,構成員ではない利用者が多く存在する.計算機上のサービスを利用させるにあたり,セキュリティ確保のためには旧来のユーザ名とパスワードのような記憶情報のみによる認証ではなく,ICカードなどの物理デバイスを使用した認証が望ましいが,これらの利用者の参加/脱退は不定期であるため,発行体を統一して認証デバイスを適時供給することは困難である.さらに各研究グループが構築している小規模システムでは認証が集中管理されていないことも多く,認証デバイスの調達を求めるとコスト高になる.本研究は,利用者本人が所持する非接触ICカードを使用した認証を可能にする手法を提案している.提案する手法では発行体の異なるICカードをICカード上の情報を改変することがなく,かつ,認証サーバには利用者個々の情報を登録する必要もない.認証システムの運用にリソースを割けない小規模な組織に対して非常に有効な手法と評価できる.
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●ネットショッピング・オークション利用に際する不安調査結果に対する一考察
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2012)(2012.10.31)](セキュリティ心理学とトラスト研究会)
yamamoto

山本 太郎  君 (正会員)

1992年 北海道大学工学部情報工学科卒業
1994年 北海道大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了
1994年 日本電信電話株式会社入社
現在,NTTセキュアプラットフォーム研究所研究主任.
ITと人間心理(主に安心と不安)の結びつきに関する研究に従事.
情報処理学会正会員,社会情報学会会員.

[推薦理由] インターネット利用に際する「安心」は,セキュリティ心理学とトラスト分野における重要な研究課題である.受賞候補者らは,不安制御による安心を実現するための現実的なソリューションを検討するにあたり,具体的な23 件のネットワークサービスの各利用者を対象として,各サービスにおける不安に関するWeb アンケート調査が実施した.本論文では,そのうちネットショッピングとネットオークション各2 件に関し,それらに不安を感じるサービス利用者各110 名程度が,どのような不安をどのような理由で感じ,どのような解決策を望んでいるのか等について調査結果を提示するとともに,豊富な知見を導出し,深く考察している.当該分野の発展に貢献する成果であるので,推薦したい.
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●ホームネットワークマップ特定プロトコルHTIPの設計と診断ツールへの適用
[2012-CDS-4(2012.5.10)](コンシューマデバイス&システム研究会)
mihara

美原 義行  君 (正会員)

 2004年3月 東京工業大学理学部情報科学科卒業
2006年3月 東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻 修士課程修了
2006年4月 日本電信電話株式会社入社
現在,西日本電信電話株式会社研究開発センタ勤務.
入社以来,ホームネットワーク管理,データ分析などの研究に従事.

[推薦理由] 本発表は,ホームネットワーク内の端末から機器情報を取得可能なプロトコ ルHTIPの設計手法について述べたものである.概して性能が低いホーム向け端 末においても搭載できるようプロトコルを設計したプロセスは,学術的価値も 高く,また,発表者らはHTIPを国際標準機関であるITU-Tでの標準化させ,産業 的な注目も非常に集めている取り組みである.以上より,評価に値する発表であると考えられるため,本研究会として推薦する.
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メディア知能情報

●Split Head Automataによる依存構造解析
[2012-NL-206(2012.5.10)] (自然言語処理研究会)
hayashi

林  克彦  君 (正会員)

2011年4月~2013年3月 学術振興会特別研究員(DC2)
2013年3月 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士課程 卒業
2013年4月 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 リサーチアソシエイト博士(工学)
2013年   NAIST情報科学研究科 最優秀学生賞 受賞
構文解析、機械翻訳などの言語処理技術に関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究は高速かつ高精度な解析を実現する下降型依存構造解析アルゴリズムを提案したものである.提案法は,大域的な情報を用いて解析を行うことができるという下降型のアルゴリズムの特徴により,従来の上昇型のアルゴリズムが不得手としていた長距離の依存関係を捉えることに成功している.長距離の依存関係の取り扱いは自然言語処理の基本課題であり,この課題に一つの方向性を示した意義は大きく,これを高く評価する.また, Split-Head 文脈自由文法による構文解析アルゴリズムとの比較を通じ提案法をこれまで提案されてきたアルゴリズムの中に適切に位置付けている点,提案するアルゴリズムの正当性の証明を行っている点も評価できる.以上の理由より本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●Binary code-based Human Detection
[2012-CVIM-182(2012.5.24)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 

山内 悠嗣  君 (正会員)

 

[推薦理由] 本発表は人物検出を少ないメモリ使用量で高精度に実現するものであり,局所領域同士の関係を二値表現することで大幅に圧縮された特徴量を検出に用いる手法を提案したものである.従来からよく用いられる輝度勾配ヒストグラム特徴量による人物検出は高次元でかつ実数表現であるため大量のメモリを使用するが,提案手法は二値符号列の関係性を量子化残差に基づき表現する遷移尤度モデルを検出に用いることでコンパクト化を達成している.実験にて検出率の高さとメモリ使用量の少なさを実証しており, 新規性とともに高い実用性を示していることから,最近注目されている同分野の読者に対して大きなインパクトを与えるものである.以上より,本論文は平成24年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●フレーム間の連続性を保持する動画編集法
[2012-CVIM-184(2012.12.4)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
yatagawa

谷田川達也  君 (学生会員)

2010年3月 京都大学 理学部理学科 卒業
2012年3月 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 修士課程 修了
2012年4月 同専攻博士課程 進学
現在に至る.

[推薦理由] この論文では,動画像中の特定領域の色調やテクスチャの編集を少ないユーザ入力から行うことを目的とし,各ピクセルに与えられた編集パラメータを継承行列により時間方向に伝搬する手法を提案した.実験の結果,提案手法は従来手法と比較して,フレームの進行に伴う誤差の蓄積が少なく,かつ細かいテクスチャの変動に対応が可能であることが示された.また,提案手法のフレームワークは,グレースケール動画への着色処理や画像から動画像への色転写などへの応用が可能であった.以上より,本論文は平成24年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●プログラミング初学者の段階的な理解モデルの検討とツールによる支援
[2013-CE-118(2013.2.9)] (コンピュータと教育研究会)
hofuku

保福やよい  君 (正会員)

1984年 御茶の水女子大学理学部数学科卒業
1984年 神奈川県立高等学校教員として勤務,現在に至る.
2012年 大阪電気通信大学 医療福祉工学研究科 博士後期課程入学

[推薦理由] 段階的なプログラム理解のための構造,および,難易度検証のためのツールを提案している.教員がテキストを検討したり使ったりする際にも,またテキストを作る際にも有用なツールであると考えられる.プログラミングの演習課題等のギャップを自動的に検出するというアイデアは面白く,有益である.高い教育効果が期待できるすばらしい内容であり,世の中への貢献度も高い.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●ビジュアル型言語とテキスト記述型言語の併用によるプログラミング入門教育の試みと成果
[2013-CE-119(2013.3.15)] (コンピュータと教育研究会)
matsuzawa

松澤 芳昭  君 (正会員)

2000年 慶應義塾大学環境情報学部卒業
2002年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了
2007年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博課程単位取得退学
2008年 学位取得,博士(政策・メディア)
2008年 静岡大学情報学部特任助教,2010年同助教
オブジェクト指向技術を応用したソフトウエアの設計と開発,情報教育,情報システム開発教育の研究に従事.

[推薦理由] Javaの教育において,テキストプログラミング環境だけでなく,タイル(ヴィジュアル)プログラミング環境も提供し,テキストとタイルを相互に往来させることで教育成果を上げようとしている試みは極めて示唆に富んでいる.開発環境の構築だけでなく,その利用のされ方の調査がきちんとなされており,その結果には注目するべき示唆が多く見受けられる.高い教育効果が期待できるすばらしい内容であり,世の中への貢献度も高い.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●古代エジプト神官文字写本を対象とした言語情報表示システムの試作
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2012)(2012.11.17)] (人文科学とコンピュータ研究会)
nagai

永井 正勝  君 (正会員)

1990年 同志社大学文学部 卒業
1997年 慶應義塾大学大学院前期博士程史学専攻民族学考古学 修了[史学修士]
1998年 ヘブライ大学ローズバーグスクール大学院 留学(イスラエル政府奨学金留学生)
2009年 筑波大学大学院人文社会科学研究科文芸・言語専攻 修了 [博士(言語学)]
2010年 筑波大学大学院人文社会科学研究科文芸・言語専攻 準研究員
2013年 筑波大学人文社会系国際地域研究専攻 助教
2004年 日本オリエント学会 奨励賞
2012年 情報処理学会・人文科学とコンピュータ研究会じんもんこん2012 ポスター賞

[推薦理由] 本研究は,古代エジプト神官文字を扱うものではあるものの,その手法は新たな研究対象を含む他の言語の文字にも応用しうる興味深いものであり,将来性が期待される.文字レイヤーと言語レイヤーを統合したグリフコーパスに関するものとしては希少かつ高水準の研究であると評価できる.また,これをスタンドアローンなシステムから自由ソフトウェアを用いたWebアプリケーションにしたことも評価に値する.今後TEIやRDFといったオープンな標準に基づく,より可搬性の高いオープンなデータとしての発展が期待される.
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●関連史料収集のための手法に関する考察 -日本の南北朝期における史料を対象に-
[2013-CH-97(2013.1.25)] (人文科学とコンピュータ研究会)
yamada 

山田 太造  君 (正会員)

2000年3月 愛媛大学教育学部情報科学教育コース 卒業
2002年3月 名古屋大学大学院人間情報学研究科社会情報学専攻博士前期課程 修了
2005年3月 総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻博士後期課程 修了 博士(情報学)
2005年4月 国立情報学研究所 特任研究員
2007年5月 東京大学史料編纂所 特任助教
2010年7月 人間文化研究機構本部 特任助教
2013年4月 東京大学史料編纂所 助教
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,日本の南北朝期における史料を対象に,その本文を用いて類似する史料を収集し,提示する手法について紹介するものである.史料の本文を扱う手法として新たな可能性を提示しており,歴史研究を含む人文科学の様々な場面での応用が期待される.また,用いた技術の目新しさよりも,その用途としても評価できる.データベースの「活用」という新しい方向性を研究会として示す意味でも,またこれまでの著者の研究の積み重ねと今後の発展性という点でも高く評価できる.
[ 戻る ]
●ピアノ演奏補助情報からの独立を促す学習支援システムの構築
[2012-MUS-96(2012.8.10)] (音楽情報科学研究会)
takegawa

竹川 佳成  君 (正会員)

2003年 三重大学工学部情報工学科卒業
2005年 大阪大学大学院情報科学研究科修士課程修了
2007年 大阪大学大学院情報科学研究科博士課程修了,博士(情報科学)
2007年 神戸大学自然科学系先端融合研究環重点研究部助教
2007年 神戸大学大学院工学研究科助教,CrestMuseプロジェクト共同研究員を兼任.
2011年 MIT Media Lab.にて客員研究員を兼務.
2012年 公立はこだて未来大学システム情報科学部助教.現在に至る.
音楽情報科学,エンタテインメントコンピューティング,ヒューマンコンピュータインタラクション,教育工学の研究に従事.情報処理学会の会員.

[推薦理由] 本発表のシステムは,学習者の視線を認識しピアノ演奏時の各音符への依存度を分かりやすく学習者にフィードバックする機能を持つ.その結果学習者に対し集中的に練習を要する箇所を指示でき,学習効率が5%向上するという効果が認められた.従来の光るピアノ鍵盤のような直感的に打鍵位置を提示する学習支援システムの問題点として,学習者の支援システムからの離脱をほとんど考慮していないという点と支援環境が快適なあまりシステムからの離脱にかえって時間を要するという点が指摘されていた.例えば,従来の支援システムの多くは,学習者が上達しても同様に打鍵位置を提示し続け,打鍵位置提示はオンとオフの2つのモードのみのため学習者はその急激な環境変化に追従するのが難しく打鍵位置提示をオフにするタイミングを見失いがちであった.本発表のシステムの特長は,ユーザに負担をかけない視線計測の手法により音符単位でユーザの上達度を認識することで,練習を要する箇所を効果的に指示し,円滑に支援システムから離脱させることが可能な点である.従来研究のほとんどが打鍵位置の直感的な提示法のみに注目しているのに対し,本研究はピアノ演奏学習を長期間に渡るスキル熟達ととらえて,多角的にその学習過程を支援する点が画期的であり,本質的な学習効果をもたらすと期待される.以上より,本発表は山下記念研究賞候補にふさわしいと判断する.
[ 戻る ]
●音声データの隠れ属性を利用した異種音響モデル群の構築
[2012-SLP-93(2012.10.26)] (音声言語情報処理研究会)
fukuda

福田  隆  君 (正会員)

1998年3月 神戸市立工業高等専門学校電子工学科 卒業
2000年3月 豊橋技術科学大学知識情報工学課程 卒業
2002年3月 豊橋技術科学大学大学院工学研究科知識情報工学専攻 修士課程修了
2005年3月 豊橋技術科学大学大学院工学研究科電子・情報工学専攻 博士後期課程修了
2005年4月より,日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所にて勤務.博士(工学).音声言語処理に関する研究に従事
2010年 日本音響学会 粟屋潔学術奨励賞 受賞
2011年 電子情報通信学会 音声研究会研究奨励賞 受賞

[推薦理由] 複数の音声認識システムによって個別に認識を行った結果を統合して最終認識結果を得るシステム統合法は,単一のシステムによる結果をさらに改善できる方法として,盛んに研究されている.本論文では,このようなシステム統合法による音声認識を前提として,統合したときに性能が最も高くなるための音響モデル構築法を提案している.複数の音響モデルを学習するために,学習データを最適に分割する方法が提案され,それによって分割された学習データ学習した複数の音響モデルによる音声認識結果を統合することにより,単一システムによる結果を改善することができた.これは音声認識システムの高精度化・実用化に大きく寄与する結果であることから,山下記念研究賞に推薦するものである.
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●ソーシャルメディア利用における亡くなったユーザ情報の扱いに関する一考察
[2012-EIP-57(2012.9.13)] (電子化知的財産・社会基盤研究会)
orita

折田 明子  君 (正会員)

1998年 慶應義塾大学総合政策学部 卒業
1998年 米国スタンフォード大学 コンピュータ音楽・音響研究所(CCRMA)訪問研究員
2000年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程 修了
2001年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特別研究助手
2007年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程 単位取得退学
博士(政策・メディア)取得
2008年 中央大学大学院戦略経営研究科 助教
2009年 情報社会学会優秀論文賞 受賞
2010年 中央大学学術研究奨励賞 受賞
2010年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特別研究講師(2011年より特任講師)
2011年 Kennesaw State Univerisity, Visiting Assistant Professor
2013年 関東学院大学人間環境学部現代コミュニケーション学科 専任講師 
現在に至る.
情報処理学会,人工知能学会,情報社会学会,経営情報学会,ACM,AIS等各会員.
内閣官房IT戦略本部・情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会委員などを務める.

[推薦理由] 従来,日本ではインターネットを介したコミュニケーションは実生活上のアイデンティティと分離される傾向が強かった.しかし,ソーシャルメディアは現実の生活をより色濃く反映し,特に他者との繋がりが情報として重要な価値を持点に特色がある.そのような中,ユーザの死後,サービスそのものへのアクセス権限であるアカウント情報の帰趨とは別に一度ソーシャルメディア上に公開した情報の帰趨が問題となる.以上の問題意識に立ち,筆者は(1)匿名性が失われつつあるソーシャルメディアの現状,(2)ソーシャルメディア上の死者の情報をめぐる内外の制度,(3)死者の情報に関する主要ソーシャルメディアサービスの規約上の扱いを分析し,死後の「遺産」としての自身のアカウント情報とそこに蓄積された情報につき,その取扱の方針を検討する必要性を指摘する.本研究の価値はソーシャルメディア利用者の情報が生存中ではなく,その死後にどのように扱われるべきかというその問題意識について,ソーシャルメディアが今後のディジタル社会の基盤を担うシステム並びに制度としてその価値を発揮する上で見過ごされてきた論点にいち早く光を当てた点でその先見性にある.そして,現行の著名ソーシャルメディアサービスの規約を検討し,今後の課題を抽出している点でその手法も評価できる.以上から折田明子氏の上記論文を2013年度山下記念研究賞に強く推薦するものである.
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●大規模な対局に基づいた教師データの重要度の学習
[ゲームプログラミングワークショップ2012(2012.11.9)] (ゲーム情報学研究会)
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佐藤 佳州  君 (正会員)

2008年 筑波大学第三学群情報学類 卒業
2010年 筑波大学大学院システム情報工学研究科博士前期課程 修了
2010年 パナソニック株式会社 先端技術研究所 入社
2011年 筑波大学大学院システム情報工学研究科(社会人博士課程) 入学

[推薦理由] 近年,ゲームプログラミングの分野では機械学習が大きな注目を集めており,評価関数の学習,探索深さの制御など,多くの場面で成功を収めている. 現在のゲームプログラミングにおける機械学習では,人間のエキスパートの棋譜を教師として,その指し手に近づけるようにパラメータの調整を行っている.しかし,将棋などのゲームでは,コンピュータは既に人間のトッププレイヤに迫る強さとなっており,単純に人間の指し手を再現することが必ずしも「強い」プレイヤの生成に結びつくとは限らない.本論文では,教師データの重みを自動調整することで,学習によって得られるモデルの性能が有意に向上することを,将棋プログラムを用いた実験によって明らかにしている.大幅な性能向上を汎用的な枠組みで達成しており,応用範囲の広い優れた研究成果である.
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●起立-着席訓練のためのリハビリテーション用シリアスゲームの介護老人保健施設への導入
[2012-EC-24(2012.5.14)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)
matsuguma

松隈 浩之  君 (正会員)

1997年-2003年 凸版印刷株式会社 CGデザイナー
2003年-現在  九州大学大学院 芸術工学研究院 講師

アニメーションやゲーム等のコンテンツデザインを中心に研究活動を行う.2009年より,産学官連携での福岡市委託事業「シリアスゲームプロジェクト」代表を務め,若手クリエイターの育成及び,新たな分野でのゲーム・コンテンツ産業の拡大に力を注いでいる.現在は地元の病院との密な連携をもとに,主に高齢者を対象としたリハビリ系ゲームの研究開発をすすめ,実用化も果たしている.

[推薦理由] 本研究は,厳しく苦しいものであるリハビリテーションを支援するゲームシステムの実現と評価に関する研究である.モチベーションや継続意識の維持向上を実現するシステムはエンタテインメント技術の社会応用のひとつであるが,本研究では,実際の医療現場に提案システムを導入することで,より実践的な設計問題や要求を抽出することに成功し,またそれに基づいて改善されたシステムの評価で,特に有用性のみならず安全性についても検証を加えている.本研究は,エンタテインメントコンピューティング技術の社会的応用においてきわめて示唆に富んだ知見を提供するものであり,山下記念研究賞にふさわしいと判断する.
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●鍵盤上への演奏補助情報投影機能をもつピアノ学習支援システムにおける熟達化プロセスの調査
[2013-EC-27(2013.3.15)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)
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竹川 佳成  君 (正会員)

2003年 三重大学工学部情報工学科卒業
2005年 大阪大学大学院情報科学研究科修士課程修了
2007年 大阪大学大学院情報科学研究科博士課程修了,博士(情報科学)
2007年 神戸大学自然科学系先端融合研究環重点研究部助教
2007年 神戸大学大学院工学研究科助教,CrestMuseプロジェクト共同研究員を兼任.
2011年 MIT Media Lab.にて客員研究員を兼務.
2012年 公立はこだて未来大学システム情報科学部助教.現在に至る.
音楽情報科学,エンタテインメントコンピューティング,ヒューマンコンピュータインタラクション,教育工学の研究に従事.情報処理学会の会員.

[推薦理由] 本研究は,特に習熟に時間や労力がかかる楽器の習熟化プロセスを深く検討した研究である.本研究では単なる支援情報の提示とその効果の評価にとどまらず,支援システム使用者の継続的な観察を実施しており,その結果に基づき,熟達化過程が進むにつれて学習方略が変化し,かつその方略に沿った支援機能の利用頻度が上昇することを明らかにすることで,熟達の度合い-学習方略-支援手法の関係性を明確に示した.本研究は,エンタテインメントのひとつである楽器演奏の熟達を目指す支援システムの実現においてきわめて示唆に富んだ知見を提供しているものであり,山下記念研究賞受賞にふさわしいと判断する.
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●Predicting Protein-RNA Residue-base Contacts Using Two-dimensional Conditional Random Field
[2012-BIO-30(2012.8.9)] (バイオ情報学研究会研究会)
hayashida

林田 守広  君 (正会員)

2000年3月 東京大学理学部情報科学科 卒業
2002年3月 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻 修士課程修了
2005年3月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻 博士課程修了,博士(情報学)
同年4月より,京都大学化学研究所 特任助手,助手を経て助教.

[推薦理由] 生体内分子の機能やネットワークを明らかにするためにタンパク質-RNA間の相互作用を理解することは重要である.林田氏は,タンパク質とRNAの内部構造であるアミノ酸残基と塩基間の相互作用に注目して,二次元格子における条件付き確率場を利用した予測手法を開発した.本研究では,アミノ酸等に対するラベルを導入することによって,相互情報量のみの場合よりも高い予測精度を得ることに成功した.この成果は,効率的に生体内の分子間ネットワークを明らかにすることを可能にするものであり,山下記念研究賞受賞候補として推薦を行うものである.
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●LMSとの連携を実現するためのLTI準拠学習支援ツールの実装例と実装方法
[2012-CLE-8(2012.11.2)] (教育学習支援情報システム研究会)
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村上  幸生  君 (学生会員)

1991年3月  北九州市立北九州大学(現公立大学法人北九州市立大学)商学部経営学科卒業
2012年9月  国立大学法人熊本大学大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻博士前期課程修了
2012年10月 国立大学法人熊本大学大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻博士後期課程(科目等履修生)入学
現在,専門学校において情報処理系教員として勤務する傍ら,社会人学生としてeラーニングを用いた学習支援システム,特にLTI規格を利用した疎結合による柔軟な学習支援ツールの開発研究に従事.

[推薦理由] 「LMSとの連携を実現するためのLTI準拠学習支援ツールの実装例と実装方法」は,学習支援システムについての国際標準規格であるLTI(Learning ToolsInteroperability)規格を利用し,LMSと疎結合で連携する学習支援ツールの基礎的なシステム実装を行ったものである.LTI規格は,近年eラーニングにおける学習支援ツールの相互運用を保証する標準規格としてLMS側での準拠は進んでいるが,学習支援ツール側での準拠は,海外ではいくつか見られるものの日本で開発された実装例や日本語に対応した実装例はほとんどなく,この報告は国内におけるLTI規格活用の先鞭をつけるものであり評価できる.
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