2012年度(平成24年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に 贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は36研究会の主査から推薦された計53編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,理事会(2012年8月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の受賞者は下記53君で,3月7日に東北大学で開催される第75回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI CG IS IFAT AVM GN DD MBL CSEC ITS EVA UBI IOT CDS

<フロンティア領域>
NL CVIM CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE

コンピュータサイエンス領域

●推薦システムにおけるユーザ関与とユーザ満足度に関する研究
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum 2011)(2011.11.5)] (データベースシステム研究会)
 hijikata

土方 嘉徳  君 (正会員)

1996年3月 大阪大学基礎工学部システム工学科 卒業
1998年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻 修士課程修了
1998年4月 日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 入社
2002年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科システム人間系専攻 博士課程修了
2002年4月 大阪大学大学院基礎工学研究科 特任研究員
助手,講師を経て,現在同准教授.博士(工学).
情報推薦,テキストマイニング,Webインテリジェンスの研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,推薦システムにおいてユーザの関与が推薦結果の満足度に与える影響を評価したものである.従来の推薦システムに関する研究では,ユーザの嗜好や目的に合致した対象を高い精度で推定すること目標とするものが多い.しかし,本研究では,ユーザ満足度に与える要因としてユーザ関与に着目し,推薦過程への関与という行動自体が満足度を向上させるのではないか,また,推薦過程に関与すればするほど満足度が向上するのではないかという二つの仮説に関して,被験者実験に基づいた検証を行っている.本研究は,今後の推薦システムに関する研究を進展させる方向性の一つを示す研究として,高く評価できるため,山下記念研究賞にふさわしい研究として推薦する.
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●Affinity Propagation のための高速化手法
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2012)(2012.3.3)] (データベースシステム研究会)
fujiwara

藤原 靖宏  君 (正会員)

2001 年早稲田大学理工学部電気電子情報工学科卒業.
2003 年同大学大学院理工学研究科修士課程修了.
2003 年日本電信電話株式会社入社.
2011 年東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程修了,
博士(情報理工学).
時系列データ処理およびグラフマイニングの研究開発に従事.
本会平成 19 年度論文賞等受賞,
情報処理学会,電子情報通信学会,日本データベース学会各会員.
[推薦理由] 本論文では,Affinity Propagationの高速化手法を提案している.従来の高速化手法はオリジナルの結果が保証されない等の課題があったが,提案法ではデータペアのうち,収束値を計算する必要のないペアを枝狩りし,その収束値を枝刈りされなかったペアの収束値から計算するという考えに基き,オリジナル手法の結果を保証し,高速に計算する事を可能としている.Affinity Propagationは多様な分野で利用されており,この成果は,その適用範囲をさらに広げるものとして評価できるため,本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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●設計モデルを利用したテスト用データベース自動生成手法
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2011(2011.9.13)] (ソフトウェア工学研究会)
tannno

丹野 治門  君 (正会員)

2007年 電気通信大学電気通信学部情報工学科卒業.
2009年 同大学大学院電気通信学研究科情報工学専攻博士前期課程修了.
同年 日本電信電話株式会社入社.
2008年 未踏ユース・スーパークリエータ認定(情報処理推進機構),
2009年 山内奨励賞(情報処理学会).
プログラミング言語,デバッガ,ソフトウェアテスト自動化に関する研究開発に従事.

[推薦理由] 本論文は関係データベースを用いた業務システムのテストを行う際に,適切なデータベースの初期状態を生成する手法を提案するものである.テスト目的にあったデータベースの初期状態を用意することは一般に難しいが,本提案ではモデルベーステストにおける設計モデルを拡張してデータベーススキーマや検索条件の記述を可能にするとともに,設計モデルから抽出した制約をSMTで解くことで初期状態を求める手法を提案している.さらに手法に基づきツールを実装し,実際の業務システムに適用することでその妥当性を確認している.重要な問題に対する有効な手法を提案・実証しており,山下記念賞にふさわしい研究としてここに推薦する.
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●オープンソースソフトウェアにおけるコメント記述及びコメントアウトと フォールト潜在との関係に関する定量分析
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2011(2011.9.13)] (ソフトウェア工学研究会)
 aman

阿萬 裕久  君 (正会員)

1996年 九州工業大学工学部電気工学科卒業.
1998年 九州工業大学大学院工学研究科電気工学専攻博士前期課程修了.
2001年 同専攻博士後期課程修了.博士(工学).
2001年 愛媛大学工学部助手.
2007年 同大学大学院理工学研究科講師,現在に至る.
ソフトウェアメトリクス,実証的ソフトウェア工学に関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,日本ソフトウェア科学会,日本知能情報ファジィ学会,IEEE 各会員.

[推薦理由] 本論文はソフトウェアにおけるフォールト潜在率とコメント記述ならびにコメントアウトとの関係についてオープンソースソフトウェアを対象に定量分析を行うものである.コメントはプログラム文法的にはソースコードに無関係であるが,理解容易性に大きく影響を持ち,一般にはコメント記述は有効とみなされている.本研究では七種類のオープンソースソフトウェアを対象にコメントの記述状況を定量的に調査し,コメント記述の多いコードほどフォールトの潜在率が高い傾向があること,コメントアウトも潜在率の高さに関係していることなどの結果を得ている.実際のソフトウェアの姿を実証的に分析し,興味深く有用な結果を得ており,山下記念賞にふさわしい研究としてここに推薦する.
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●OpenCLの性能可搬性改善に向けた基本APIの提案
[2011-ARC-196(2011.7.27)] (計算機アーキテクチャ研究会)
kyo

京  昭倫  君 (正会員)

1987年 東京大学工学部精密機械工学科 卒業
1989年 同大学大学院工学研究科精密機械工学専攻 修了 NECに入社
1992年 電子総合技術研究所 客員研究員
1994年 オランダ デルフト工科大学 客員研究員
1997年 画像センシングシンポジウム 論文賞 受賞
2004年 東京大学大学院工学研究科精密機械工学専攻博士課程修了 博士(工学)
2009年 情報処理学会 喜安記念業績賞 受賞
2010年 画像センシングシンポジウム 高木賞 受賞
2010年 NECよりルネサスエレクトロニクス株式会社に移籍 現在に至る

[推薦理由] アクセラレータ用標準並列言語として提案されているOpenCLに関する研究である.各種並列言語や並列化フレームワークが乱立する現状を改善する可能性をOpenCLは秘めており,その性能可搬性改善に向けての基本APIを提案している.OpenCLはGPUのメモリアーキテクチャを想定しているため,それとは異なるアーキテクチャの演算性能を引き出すことが困難なためである.GPUに代表されるアクセラレータの重要性はこれから益々大きくなっていくと想像され,本研究が社会に与える貢献は大きい.山下記念研究賞に相応しい論文である.
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●BTBへのBimode Cascading手法適用による分岐先アドレス予測の高効率化
[2011-ARC-196(2011.7.28)] (計算機アーキテクチャ研究会)
ishii

石井 康雄  君 (正会員)

2004年3月 東京大学理学部情報科学科 卒業
2006年3月 東京大学情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 修士課程修了
2006年4月より日本電気株式会社に勤務し,
現在まで,スーパーコンピュータ,エンタープライズサーバなどの開発に従事.
2009年10月より東京大学情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士課程に
社会人学生として入学.高性能プロセッサの研究に従事.

[推薦理由] マイクロプロセッサの性能を決定する重要な構成要素である分岐先アドレス予測手法に関する研究である.マイクロプロセッサのマルチコア化が進んでいるとは言え,コア数を増すだけでは性能改善には十分ではなく,コア自体の性能改善も依然として重要である.分岐方向の予測手法に比べると分岐先アドレスの予測手法は十分に検討が進んでおらず,本研究の意義は大きい.提案手法を評価したところ,既存の省電力型分岐先アドレス予測手法と比較して,同等なハードウエア規模で予測ミスを約21%削減できることが確認された.新規性と有用性の両面で高く評価できる.山下記念研究賞に相応しい論文である.
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●Sheepdog: 仮想マシンのための対称型クラスタストレージ
[コンピュータシステム・シンポジウム(ComSys2011)(2011.12.1)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
morita

森田 和孝 君 (正会員)

2005年東京大学工学部計数工学科卒業.
2007年同大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻修士課程修了.
同年日本電信電話株式会社入社.
以来,分散システム,ストレージシステムに関する研究に従事.

[推薦理由] Sheepdog は仮想的なブロックデバイスを提供するクラスタ型の大規模分散ストレージである.Sheepdog の特徴は,安価な汎用 PCから構成されているにもかかわらず耐障害性に優れ,故障したノードの分離,データの回復等は自動的に行われるようになっている.ノードの追加や負荷分散も自動的に行われるようになっており,ノード数に対する高いスケーラビリティを備えたものとなっている.学術的にみて完成度の高い研究であるだけでなく,Sheepdog はオープンソースとして開発が進められている.そのため,実用的な立場からも高い評価を受けており,高価な SAN ストレージの代替技術として注目を集めている.以上から山下記念賞に値する研究であるといえる.
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●反例と設計分割に基づく高位設計に対する効率的な設計修正支援手法
[2011-SLDM-150(2011.5.19)] (システムLSI設計技術研究会)
matumoto

松本 剛史  君 (正会員)

2003年3月 東京大学工学部電子工学科卒業.
2005年3月 東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻修士課程修了.
2008年3月 東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了.
2008年4月~ 東京大学大規模集積システム設計教育研究センター 助教.
現在に至る.

[推薦理由本論文では,ハードウェア設計において,反例に基づくデバッグ作業を支援する手法を提案している.具体的には,与えられた反例および正しい実行例から,全てのテストパタンを正しく実行するための設計記述修正の候補を形式的に求める.これにより,設計者は修正すべき箇所と修正方法の候補を得ることができ,効率的にデバッグ作業を行うことができる.理論面ならびに実用面で評価が高く,また今後の発展も大きく期待できることから,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●スキャンシグネチャを用いたTriple DESに対するスキャンベース攻撃手法
[2011-SLDM-153(2011.11.28)] (システムLSI設計技術研究会)
kodera

小寺 博和  君 (学生会員)

2011年3月 早稲田大学基幹理工学部情報理工学科 卒業
2011年4月 早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工学専攻 入学
現在に至る
情報処理学会学生会員

[推薦理由] スキャンパステストは,LSIテスト容易化技術の1つであり,LSI のテスト・検証に不可欠であるが,スキャンパスを用いた暗号モジュール・ LSIに対するサイドチャネル攻撃が指摘されている.本論文では,共通鍵暗号Triple DESに対しスキャンシグニチャと呼ばれる技術を用いたスキャンパス攻撃手法を提案している.提案手法では,43個の平文を用いることで,Triple DES暗号回路内部に保存されている秘密鍵の解読に成功している.本論文は今後の暗号 LSI設計に大きな指針を与えるもので価値の高い論文と認める.本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●演算加速装置に基づく超並列クラスタHA-PACSによる大規模計算科学
[2011-HPC-130(2011.7.27)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
 boku

朴  泰祐  君 (正会員)

1984年 慶應義塾大学工学部電気工学科卒業
1988年 慶應義塾大学理工学部物理学科助手
1990年 慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻修了(工学博士)
1992年 筑波大学電子・情報工学系講師
1995年 筑波大学電子・情報工学系助教授
2005年 筑波大学システム情報工学系教授
2003年 情報処理学会HPCS2003最優秀論文賞受賞
2002年 情報処理学会論文賞受賞
2003年 情報処理学会論文賞受賞
2011年 ACMゴードンベル賞最高性能賞受賞

[推薦理由] 本論文では,大規模GPUクラスタHA-PACSの設計について述べている.GPUクラスタにおける並列化において一番の問題は,複数ノード上のGPU間通信がボトルネックとなり有効なパフォーマンスを引き出せないことである.この問題に対し,本論文ではノード間接続及びGPU間接続に独自開発の専用相互結合機構TCAを提案している.TCAは著者らが既に提案しているPCIeリンクを直接ノード間通信に利用するPEARLとPEARLのルータとして働くPEACHによって実現され,本論文はHA-PACSの構築に向けて,より通信性能を高めたPEACH2の構成に関して説明する.本論文は,GPUクラスタの有用性とそのサイエンス応用をより一層高める可能性を秘めたHA-PACSに関して端的に説明を与え,この分野における非常に興味深い取組であるため,山下記念研究賞に推薦する.
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●大規模グラフ処理ベンチマークGraph500 への2次元分割の適用と性能評価
[2011-HPC-132(2011.11.29)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
ueno

上野 晃司  君 (学生会員)

2011年 東京工業大学工学部情報工学科卒業.
現在、東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻修士課程.
グラフ処理を中心とする大規模データ処理に関する研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,Graph500ベンチマークにおける大規模グラフの幅優先探索処理の2次元分割による大規模分散環境向けの最適化手法について報告している.提案手法により,スーパーコンピュータTSUBAME2.0上で高いグラフ処理性能を達成し,2次元分割による幅優先探索が大規模に分散可能であることを実証した.近年スーパーコンピュータで大規模グラフ処理が重要性を増しているという観点からも有用性が非常に高く,今後の成果が大いに期待されることから山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●マークスイープごみ集めのマークスタック溢れ時の性能改善
[(2011.7.29)] (プログラミング研究会)
ugawa

鵜川 始陽  君 (正会員)

2000年京都大学工学部情報学科卒業.
2002年同大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻修士課程修了.
2005年同専攻博士後期課程修了.
京都大学大学院情報学研究科特任助手を経て,2008年より電気通信大学助教.
博士(情報学).プログラミング言語とその処理系に興味を持つ.
情報処理学会,ACM会員.

[推薦理由] マークスイープごみ集めでは,マークスタックの大きさの制限によってマークスタック溢れが起きる可能性がある.本研究ではマークスタック溢れを小さなオーバヘッドで対処する手法を提案している.提案手法では,マークスタックが溢れた時に積めなかったオブジェクトのおおよその位置を記録しておくことで,ヒープ全体のスキャンなしでマークスタックに積めなかったオブジェクトを見つけることができる.Dalvik VM上に実装した実験により,従来手法と比較して,マークスタックが溢れた時のスループット低下が少なく,提案手法が有効であることが示されている.時宜を得た重要な課題に対する良質な研究であり,本研究賞にふさわしいものとして推薦する.

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●Simple Memory Machine Models for GPUs
[2012-AL-139(2012.3.14)] (アルゴリズム研究会)
nakano

中野 浩嗣  君 (正会員)

1992年:大阪大学基礎工学研究科博士後期課程修了.博士(工学)
1992年: (株)日立製作所 基礎研究所 研究員
1995年: 名古屋工業大学 講師
1998年: 同 助教授
2001年: 北陸先端科学技術大学院大学 助教授
2003年: 広島大学大学院工学研究科 教授
並列分散処理・アルゴリズムなどの研究に従事.
電子情報通信学会、情報処理学会、IEEE各会員.

[推薦理由] 昨今,GPUを使った並列計算は,計算を高速に行なうための実用的な方法としての地位を確立しつつある.ところが従来のPRAMに基づく並列計算のマシンモデルは,GPUの特性を考慮した理論モデルになっていない.そのため,こうしたGPUに基づく現実的な並列計算の計算効率を評価する理論モデルとしては不適切であった.本研究では,GPUの特性を考慮した理論的な並列計算のモデルを提案し,いくつかの現実的なアルゴリズムについて,その理論的な評価を行なった.実用性を考慮にいれた並列計算のモデルと,その上での実際の評価を合わせて行なっており,今後の現実的な並列計算の理論的な評価への道を拓いた画期的な研究成果である.
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●ユーザシステム協調型進化計算を用いた 2 次元コード装飾
[2012-MPS-87(2012.3.1)] (数理モデル化と問題解決研究会)
ono

小野 智司  君 (正会員)

2002年 筑波大学大学院博士課程工学研究科修了.
2001年 日本学術振興会特別研究員.
2003年 鹿児島大学工学部情報工学科助手.
2010年 同大学理工学研究科情報生体システム工学専攻准教授,現在に至る.
博士(工学).
進化計算とその応用,2次元コードの研究に従事.
2008年度電子情報通信学会情報通信マネジメント研究賞,
2008年度人工知能学会研究会優秀賞,
2009年度芸術科学会論文誌第8回論文賞等受賞.
情報処理学会,電子情報通信学会,人工知能学会,進化計算学会,IEEE等各会員.

[推薦理由] 本論文は,質的な目的関数と量的な目的関数の双方を含むデザイン問題において,ユーザーとシステムが協調して探索を行う新しい方式を提案している.対話型進化計算では,ユーザの疲労による探索の限界という大きな問題が存在するが,本研究では,ユーザ評価値の予測,および,対話型・非対話型進化計算の統合により,システムとユーザの間で探索の役割を動的に調整することを可能にし,ユーザの労力を抑えて,質的・量的な指標の同時最適化を達成している.多くの評価者による詳細な実験評価も行われ,実用上大変興味深い研究成果である.よって,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●大規模移動体ネットワーク機器ファームウェア開発へのソフトウェアプロダクトライン適用事例
[組込みシステムシンポジウム(ESS2011)(2011.10.21)] (組込みシステム研究会)
otuka

大塚  潤  君 (正会員)

1990年 国立熊本電波工業高等専門学校 卒業
同年    富士通九州ディジタル・テクノロジー(株) 入社
2005年 富士通九州ネットワークテクノロジーズ(株) 入社

[推薦理由] 本発表は,実際のソフトウェア製品にプロダクトライン開発を行い,派生開発において大幅な改善が得られたという非常に貴重な実践論文である.開発フィーチャ数2000 以上,分散拠点の総開発人員300 名を超える大規模なプロジェクトにおいて,通信システムのファームウェアのプロダクトライン開発を行った.開発スケジュールの制約により,コアアセットを 構築するフィーチャを限定し,プロダクトライン開発は部分的に実施した.それであるにも関わらず,派生品開発において,それまでの開発と比べて, 品質,コスト,工期において大幅な改善を成し遂げた.組込み製品開発現場の問題を実践的に解決し,その効果を定量的に評価しており,山下記念研究 賞にふさわしいと考えられる.
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情報環境領域

●快適度の低下を最小限に抑える省エネデバイス制御手法
[2011-DPS-149(2011.11.25)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
yasummoto

安本 慶一  君 (正会員)

1991年3月 大阪大学基礎工学部情報工学科卒業
1993年3月 同大学大学院博士前期課程修了
1995年5月 滋賀大学経済学部 情報管理学科助手
1996年3月 大阪大学 博士(工学)取得
1997年4月 カナダ・ モントリオール大学 客員研究員(~1998年3月)
2002年4月 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 助教授
2004年8月 米国・イリノイ大学 客員研究員(~2005年2月)
2011年4月 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 教授 現在に至る
モバイルコンピューティング,ユビキタスコンピューティングに関する研究に従
事.情報処理学会,電子情報通信学会,ACM,IEEE/CS各会員.

[推薦理由] ユーザの快適性を保ちつつ省エネを実現するという,一見,定性的な要素を含んだ問題を多変量の最適化問題として扱われている点は非常に興味深く,新規性に富んでいると思われる.また,本論文で扱われる多変量最適化問題を学術的に一般化して記述された上で,具体的な事例について評価・検証されており,論文として非常にまとまっていると思われ,当該分野への貢献が大きいと認められるので本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●中間表現とフレームワークを用いたWebアプリケーションのメンテナンス法の提案と評価
[2011-DPS-149(2011.11.25)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
hayakawa

早川 智一  君 (学生会員)

2007年3月 明治大学大学院 理工学研究科 博士前期課程 修了.
2007年4月 (株)ティージー情報ネットワーク入社.
主に,UNIXサーバの設計・構築と技術開発とに従事.
2010年4月より,明治大学 理工学部 助手.
現在,同大学院博士後期課程にて,Webアプリケーションの移植に関する研究に従事.
2010年10月 DPSWS2010 学生奨励賞受賞.

[推薦理由] 中間表現を用いたWebアプリケーションの変換法を提案し,この手法で異なるプラットフォーム間の変換が可能であるかを評価していると共に,企業等が負担するコストの削減効果を評価している.本研究における手法自体は比較的古典的であるが,実際の現場の要求を反映しており,実用性の面で高い貢献が認められる.よって,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●ゲシュタルト理論に基づく思いこみ修正支援HCIモデル
[2011-HCI-142(2011.5.27)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)
ikeda

池田 文人  君 (正会員)

1989年3月 千葉県立長生高等学校理数科卒業
1994年3月 京都大学理学部化学系生物化学科卒業
1996年3月 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了
1996年4月 株式会社NTTデータ入社
2000年9月 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了(工学博士)
2001年3月 株式会社NTTデータ退職
2001年4月より北海道大学准教授

[推薦理由] 様々な場面において,人が持つ「思い込み」は生産性の低下や事故の要因となる.局所的なゲシュタルトである思い込みをうまく解消し,より大局的なゲシュタルトへと修正することができれば非常に有用である.本論文では,この目的のために,ゲシュタルトを持ち得ない計算機の特性を利用する「思い込み修正支援HCIモデル」を提案し,その有効性を検証している.現段階ではまだ初期的な取り組みではあるものの,ゲシュタルト心理学に基づく提案支援モデルには将来性・実用性が認められ,当該研究分野への貢献が大であると考えられることから,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●虚偽情報フィードバックを用いた生体情報の制御システム
[インタラクション2012(2012.3.15)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)
 nakamura

中村 憲史  君 (学生会員)

2011年3月 神戸大学 工学部 電気電子工学科 卒業
2013年3月 神戸大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻 修了課程 修了予定

[推薦理由] 本論文は,虚偽の情報を工夫して提示することによって生体をある程度操作することが可能であること,および,これを応用した新しい健康支援システムを示している.本研究に述べられている発見は極めて示唆に富み,かつその応用は将来性・実用性が高いと考えられる.また,本研究の着眼点の斬新さと,その証明に至るまでの手法についても一般性・適用性が高く,今後のヒューマンコンピュータインタラクション分野における研究に有意義な知見を含む.このように,将来性・実用性および当該研究分野への貢献が大であると考えられることから,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●リアルタイムスキンシェーダとしての曲率に依存する反射関数の提案と実装
[2011-CG-143(2011.6.27)] (グラフィクスとCAD研究会)
kubo

久保 尋之  君 (正会員)

2006年 早稲田大学 理工学部物理学科 卒業
2008年 早稲田大学大学院 理工学研究科 物理学及応用物理学専攻(修士課程) 卒業
2011年 早稲田大学大学院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻(博士後期課程) 単位取得退学
2008年~2011年 日本学術振興会 特別研究員
2011年~2012年 早稲田大学 理工学術院 助手
2012年~ キヤノン株式会社
在学中はコンピュータグラフィクス,フェイシャルアニメーション,スキンシェーダの研究に従事.
博士(工学).
[推薦理由] 本研究は,表面下散乱による影響を考慮した人間の肌のリアルな質感を,曲率に依存する反射関数を用いることによって高速に描画する手法を提案している.提案手法自体は比較的平易な近似手法であるが,望まれる効果を得られるものであり,ゲーム業界から好意的な反応を得ている点は高く評価できる.提案手法はゲーム制作のパイプラインに容易に組み込むことができるものであり,すでに商用のゲーム作品に利用されているという実績を持つ.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●画像における映り込みのマッティングと合成
[2012-CG-146(2012.2.7)] (グラフィクスとCAD研究会)
endo

遠藤 結城  君 (正会員)

2010月3月 筑波大学第三学群情報学類 卒業
2012年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻博士前期課程 卒業
同年 日本電信電話株式会社 入社
現在 NTTサービスエボリューション研究所に所属

[推薦理由] 本研究は,水面上に別の物体を画像合成する際に,その映り込みも再現して合成する手法を提案している.波打つ水面の反射を考慮して画像合成する手法自体に新規性が見受けられ,単画像から水面の凹凸を推定するという容易でない問題を解決している点も評価できる.また,水面だけでなく,オフスペキュラー反射を伴うテーブルや床などの面での反射も扱うことができる.本研究で提案された画像合成の手法は,産業界においても多くの需要があると考えられ,有用性も高く評価できる.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●スマートメータとSNS連携による再生可能エネルギー利活用促進に関する取り組み
[2012-IS-119(2012.3.15)] (情報システムと社会環境研究会)
 

佐々木隆志  君 (正会員)

 

[推薦理由] 再生可能エネルギーの利用促進が求められているが,それには産業や自治体などの組織に加え,個人の取り組みが必要である.その場合,個々人による貢献もさることながら,個人を相互に結び付け「共助」を促す仕組みがあれば,より貢献度が高まると考えられる.本論はそのような視点に立ち,再生可能エネルギーによる発電設備の所有者や設置に関心を持つ者がコミュニティを形成し,地域で融通可能な電力量や災害時に利用可能な給電スポットの可視化,再生可能エネルギー普及のモチベーション維持などに資する仕組みを提案している.再生可能エネルギーの利用促進という極めて切実かつ今日的ニーズに応え,「共助」に着目して個人の力を引き出すという時代の潮流を捉えたテーマを設定し,さらにその実現に向けHEMSやSNSなどユニークな組み合わせで有用性や現実性が高く,また期待感のあるシステム提案をしている点を評価する.
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●統計的フレーズ翻訳モデルを用いた言語横断質問応答
[2012-IFAT-105(2012.1.20)] (情報基礎とアクセス技術研究会)
ariga

有賀 美明  君 (正会員)

2010年3月 豊橋技術科学大学 工学部 情報工学課程 卒業
2012年3月 豊橋技術科学大学大学院 工学研究科 情報・知能工学専攻 博士前期課程 修了
同年 日立情報制御ソリューションズ入社

[推薦理由] 本論文は,言語横断質問応答システムの性能改善を図るため,情報検索分野におけるクエリ尤度モデルを導入し,さらにそこに,単語ではなくフレーズを単位とした統計的翻訳モデルを組み込むことを提案している.両者ともに,情報検索分野では既存のモデルであるが,それらをうまく組み合わせ,言語横断質問応答の問題に的確に応用している点は高く評価できる.また,その手法の性能を確認するための実験はNTCIR CLQA1テストコレクションに基づいて,既存手法との比較の下に行われており,この点,実験結果の信頼性も高い.提案手法が優れた性能を示した理由に関する詳細な分析が今度必要になると思われるが,この領域の発展に貢献する十分な内容が報告されており,山下賞への推薦に値する論文であると判断した.
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●複数の予測器出力に連動する多峰性確率モデルによる静止画像の可逆符号化
[2011-AVM-75(2011.12.15)] (オーディオビジュアル複合情報処理研究会)
shibazaki

柴崎 俊亮  君 (正会員)

2010年 東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 卒業
2012年 東京理科大学大学院 理工学研究科 電気工学専攻 修士課程修了
同年 東日本電信電話株式会社 入社

[推薦理由] 筆者らが開発したブロック適応予測に基づく可逆符号化方式は,画像毎に最適化された複数の線形予測器をブロック単位で適応選択している.本稿では,画像のブロック境界部における予測性能低下の問題を解決するため,隣接ブロックで選択された予測器の出力も考慮したエントロピー符号化の手法を新たに提案している.その結果,可逆符号化の国際標準方式に比較して10%以上優れた圧縮率を達成するなど,顕著な符号量削減効果が認められた.
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●タスクへの集中維持と癖の矯正促進を両立する情報通知手法の提案
[グループウェアとネットワークサービスワークショップ2011(2011.11.11)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
kikukawa

菊川真理子  君 (正会員)

2006年 カリタス女子高等学校 卒業
2006年 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 入学
2010年 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 卒業
2010年 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 入学
2012年 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 修了
2012年 楽天株式会社 入社

[推薦理由] 本研究発表は,ユーザの癖をなおすことを目的に,タスクの作業効率の維持と振舞矯正促進の両条件を満たす通知手法を提案した.VDT(Visual Display Terminals)作業時における姿勢悪化という癖を対象に,ディスプレイ上でユーザが注視している付近に,癖の影響を連想するような視覚効果を加えることで癖の矯正を試みた.評価実験の結果,作業効率に影響を与えないという効果と姿勢を矯正する効果が示された.本研究は,癖の矯正を取り上げ,人の改善に寄与する情報技術の利用として,今後のグループウェア研究の発展に寄与するものである.
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●Web会議における発話衝突回避のための発話欲求伝達手法
[グループウェアとネットワークサービスワークショップ2011(2011.11.11)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
tamaki

玉木 秀和  君 (正会員)

2008年 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了.同年日本電信電話株式会社入社.
2012年よりNTTコミュニケーションズ株式会社先端IPアーキテクチャセンタに所属,現在 に至る.
CSCW,ヒューマンインタフェース,コミュニケーションの研究に従事.
2010年,2011年グループウェアとネットワークサービス研究会ワークショップ ベストプレゼンテーション賞受賞.

[推薦理由] 本研究発表は,手軽に利用できるWeb会議において,発話の衝突を低減し,円滑な話者交替を可能にするために,参加者各々に発話欲求インジケータを表示させ,参加者の動作から推定される発話欲求度合をリアルタイムに表示し,他の参加者へ知らせる手法を立案した.小規模な評価実験を実施した結果,話者衝突を低減できることが示された.本研究は,今後のWeb会議を用いたグループウェアの研究の発展に寄与するものである.
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●テキストに現れる感情,コミュニケーション,動作タイプの推定に基づく顔文字の推薦
[2012-DD-85(2012.3.26)] (デジタルドキュメント研究会)
seki

関  洋平  君 (正会員)

1994年慶應義塾大学理工学部計測工学科卒業.
1996年慶應義塾大学大学院理工学研究科計算機科学専攻修士課程修了.
2005年総合研究大学院大学情報学専攻博士後期課程修了.博士(情報学).
同年豊橋技術科学大学工学部情報工学系助手.
2008年コロンビア大学コンピュータサイエンス学科客員研究員.
2010年筑波大学図書館情報メディア系助教,現在に至る.
自然言語処理,意見分析,情報アクセスの研究に従事.
ACM,ACL,情報処理学会,電子情報通信学会,言語処理学会,日本データベース学会各会員.

[推薦理由] 本論文では,ユーザによる適切な顔文字選択の支援を目的とし,ユーザが入力したテキストから,感情カテゴリ,コミュニケーションや動作を反映したカテゴリを推定し,顔文字を推薦する方法を提案している.本論文は,ユーザにおけるコミュニケーションの多様化に伴い,感情表現を的確かつ容易に表現する手段として,新たなドキュメント型コミュニケーション手法の可能性を示している.また,問題の十分な分析および適切な解決手法の提案と,実験による有効性評価が示されており,今後のデジタルドキュメント研究の進歩に寄与する論文であるといえる.以上の理由から,本論文を山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●グループ行動コンテキストを活用した近隣スマートフォンユーザ群の位置関係認識
[2012-MBL-61(2012.3.13)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)
higuchi

樋口 雄大  君 (学生会員)

2010年 大阪大学基礎工学部情報科学科卒業.
2012年 同大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻博士前期課程修了.
現在,同大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻博士後期課程在学中.
2012年より日本学術振興会特別研究員(DC1).
人の位置や行動・環境のセンシングとその応用に関する研究に従事.
2011年 情報処理学会創立50周年記念(第72回)全国大会 大会優秀賞受賞.
2012年 IEEE関西支部学生研究奨励賞受賞. 情報処理学会,IEEE 各学生会員.
 

[推薦理由] 本論文は,周囲の人々との位置関係を直感的に認識するためのソーシャルナビゲーションフレームワークを提案している.提案手法は携帯電話端末に搭載された機能のみを用いており,特別な追加機能を必要とすることなく,ユーザ群のクループ行動から位置補正を行い,位置推定精度の改善を実現している.屋内位置情報の精度改善,高精度化に寄与する有用性の高い技術であり,ここに山下賞に推薦する.
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●モバイル端末における低優先度通信のための低負荷パケットスケジューリング方式
[2011-MBL-59(2011.9.6)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)
yamamoto

山本 享弘  君 (正会員)

1998年 京都大学工学部電気工学第二学科卒業.
2000年 京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了.
2000年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社.
2005年 株式会社コア入社.
2012年 東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了.
現在,株式会社コア先端組込み開発センターにて組込みソフトウェアの研究開発に従事. 

[推薦理由] 本論文は,携帯電話上で,低優先度通信を実現することによって,フォアグランドアプリケーションの通信遅延抑制を狙ったLP-LBEの提案と実装を行なっている.ソフトウェア割り込みハンドラを用いることで,低優先度通信を実現しつつ,それに伴う消費電力の増大を最小限にとどめている.スマートフォンにおける通信遅延削減および消費電力削減の両立は重要かつ難しい課題であり,それらを実現した本論文は有用性の高い技術であると考える.この結果を踏まえ,ここに山下賞に推薦する.
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●Android OSにおける機能や情報へのアクセス制御機構の提案
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2011)(2011.10.19)] (コンピュータセキュリティ研究会)
kawabata

川端 秀明  君 (正会員)

2008年 東海大学電子情報学部 卒業
2010年 同大学院工学研究科 修了
同年 KDDI株式会社 入社
現在 株式会社KDDI研究所に勤務
CSS2011優秀論文賞,DICOMO2012優秀プレゼンテーション賞を受賞.

[推薦理由] Android OS搭載端末では,アプリケーションのインストール時に,利用を許す機能や情報をパーミッション単位で通知しユーザに可否を判断させており,一度許可すると後で知らないうちにアプリケーションにプライベートな情報を利用されるなどの問題がある.本論文は,実行中のアプリケーションに関して,利用する機能や情報へのアクセスをリアルタイムで動的に制御する方式を提案している.実装評価で有効性が実証され,スマートフォン時代の重大な脅威に対していち早く対策を示した点でインパクトが大きいので,推薦したい.
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●数値属性における, k-匿名性を満たすランダム化手法
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2011)(2011.10.20)] (コンピュータセキュリティ研究会)
igarashi

五十嵐 大  君 (正会員)

2005年 東京大学理学部数学科卒
2008年 東京大学大学院 情報理工学系研究科 修士課程修了
2008年 より日本電信電話株式会社現在に至る
2008年 日本ソフトウェア科学会PPL2008論文奨励賞
2009年 CSS2009優秀論文賞
2012年 電子情報通信学会SCIS2011論文賞
2012年 2012年度情報処理学会論文賞

[推薦理由] ある人のデータをデータベース上でk個までしか絞り込めないというk-匿名性は,直感的に分かりやすくユーザに安心感を与えやすい.同様に,確率的匿名化ではPk-匿名性が有望だが,従来は性別のように値の種類の少ないカテゴリ属性しか扱えなかった.本論文では,年収などの数値属性に拡張してPk-匿名性の理論を展開し,一連の重要な定理を証明している.具体的にLaplase分布加算という手法を提案しその有効性を示しただけでなく,匿名化技術開発一般に有益な指針を与えるインパクトを伴った研究であるので,推薦したい.
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●ストリーム処理を用いた車々間通信データのフィルタリング方式
[2011-ITS-45(2011.6.24)] (高度交通システム研究会)
katsunuma

勝沼  聡  君 (正会員)

2006年 東京大学工学部電子情報工学科卒業
2008年 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻修士課程修了
2008年 (株)日立製作所中央研究所入社
2011年~2012年 名古屋大学大学院情報科学研究科附属組込みシステム研究センター研究員
現在,(株)日立製作所中央研究所研究員.
データストリーム管理システムの研究に従事.

[推薦理由] データ工学分野でも注目を集めているストリームのデータ処理について,本論文では車車間通信を扱う制御アプリケーションで課題となる,データ受信量の削減のための独自フィルタリング方式を提案している.従来の車車間通信アプリケーションの提案では,複数のアプリケーションが同時に存在する場合においての通信帯域の確保については考慮されていないことが多いという問題が存在しており,今後様々なアプリケーションの併用が考えられる当分野において解決すべき問題と目されている.本論文では,現実的な問題設定とその解決法が示されており,理論的な側面からも興味深く,リアルタイム性の確保の観点からも実応用例のに繋がる非常に有用なアプローチである.
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●詳細が未知の部分を含むシステムの性能評価モデル作成手法の提案
[2011-EVA-36(2011.12.2)] (システム評価研究会)
kimura

木村 大地  君 (正会員)

2003年3月 東北大学理学部物理学科卒業
2005年3月 東北大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程前期2年の課程修了
2008年3月 東北大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程後期3年の課程修了 博士(理学)
同年4月 日本電気株式会社 入社
現在,同社情報・ナレッジ研究所に所属.
性能工学,システムインテグレーション支援技術の研究開発に従事.

[推薦理由] 本研究報告論文は,動作詳細が未知の部分を含むシステムの性能評価モデル作成においてホワイトボックスモデルとブラックボックスモデルを部分ごとに適用する手法を提案し,それによるシステム性能評価の有効性を検証したものである.特に動作詳細が未知で部分性能計測もできないブラックボックス部分の性能予測にはニューラルネットワークによる強化学習の手法を用い,全体性能計測値からのフィードバックによる該当部分の性能予測精度を検証している.検証方法については具体的に記述され,典型的なWebサーバシステムに対するモデル適用評価の結果が示されている.本研究において提案されている評価手法は一般化されており,幅広い情報処理システム性能評価の品質向上に資することが期待される.システム評価研究における優秀な研究報告として,山下記念研究賞の候補に推薦するものである.
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●ActivityAnalyzer:携帯電話搭載センサによるリアルタイム生活行動認識システム
[2011-UBI-30(2011.5.27)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
ouchi

大内 一成  君 (正会員)

1996年3月 早稲田大学理工学部応用物理学科卒業
1998年3月 早稲田大学大学院理工学研究科物理学及応用物理学専攻修了
同年4月 株式会社東芝入社.
以来,状況認識技術を活用したヒューマンインタフェースの研究開発に従事.
現在,株式会社東芝 研究開発センター インタラクティブメディアラボラトリー 主任研究員.
本会ユビキタスコンピューティングシステム研究会幹事.人間情報学会理事.
電気学会知覚融合センシング技術の実利用化協同研究委員会委員などを務める.

[推薦理由] 携帯電話に搭載されている加速度センサとマイクを利用して家庭内の生活行動をリアルタイムに認識するリアルタイム生活行動認識システムを開発した.まず加速度センサでユーザの動作を「安静」「歩行」「作業」の3状態に分類し,「作業」の場合はマイクからの音を用いて詳細な作業内容を推定する.評価実験の結果,「歯磨き」,「電気シェーバーによる髭剃り」,「ドライヤーの使用」,「トイレ水洗/手洗い」,「掃除機がけ」,「皿洗い」,「アイロンがけ」の各作業を85.9%の精度で認識できた.社会の高齢化に伴い,今後,独居高齢者などの見守りサービスのニーズが増えることが考えられるが,環境へのセンサ設置や専用のデバイスを使用せず,一般的な携帯電話単体で様々な家庭内生活行動をリアルタイムにセンシングする手法を提案したことは,ユビキタスコンピューティングの実用化に対する大きな貢献であるため,山下記念研究賞の受賞候補に本研究を推薦する.
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●移動透過IPマルチキャストに対応するグローバルライブマイグレーションの設計と性能評価
[インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2011)(2011.12.1)] (インターネットと運用技術研究会)
kamata

鎌田 恵介  君 (正会員)

2010年 3月 広島大学 工学部 第2類(電気・電子・情報・システム系) 卒業
2011年12月 インターネットと運用技術シンポジウム2011 優秀論文賞,優秀プレゼンテーション賞,学生研究奨励賞受賞
2012年 3月 広島大学大学院 工学研究科 情報工学専攻 博士課程前期 修了
IP移動透過アーキテクチャに関する研究に従事.
同年 日本アイ・ビー・エム株式会社 入社.

[推薦理由] 仮想化したサーバをシャットダウンせずに遠隔地に運ぶグローバルライブマイグレーションは一般的には移動前後でユニキャストの通信しか維持されない.さらに,そもそも移動先で外部のマルチキャストツリーに接続できない可能性があるため,マルチキャストによるコンテンツ配信のサーバなどに対しての適用は困難である.本研究は移動透過IPマルチキャストを使用してマルチキャスト配信の問題を解決し,しかも同一ネットワーク内での通常のマイグレーションと遜色ない途絶時間を実現しており,非常に有益と評価できる.
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●レイヤ3スイッチを用いた大規模なホワイトリストに対応可能な電子メール優先配送システム
[2012-IOT-16(2012.3.16)] (インターネットと運用技術研究会)
 gada

ガーダ  君 (学生会員)

2009年7月 中国内モンゴル呼倫貝爾大学計算機科学技術専攻卒業
2012年3月  岡山大学大学院自然科学研究科 電子情報システム工学専攻博士前期課程修了
同年4月  岡山大学大学院自然科学研究科 産業創成工学専攻博士後期課程に進学し,現在在学中.

[推薦理由] 本論文では,レイヤ3スイッチを使用してメール受信サーバのホワイトリストを処理する方式を提案している.一般的な方式,すなわち受信サーバ自体がホワイトリストを持つ場合,大量のspamメールが押し寄せるとホワイトリストの検索そのものに時間が掛かり,本来受け取るべきメールの受信に支障を来すことになる.本論文はレイヤ3スイッチのポリシールーティングを使用してホワイトリスト検索を迂回させ,負荷の問題を回避するものである.受信システム自体には改造を加えず,また比較的低い性能のスイッチであっても動的なポリシーの増減によって実用上問題の無い性能を達成しており,有益であると評価できる.
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●携帯カメラを使った脈拍検出方式
[2011-CDS-1(2011.6.15)](コンシューマデバイス&システム研究会)
 nakano

中野 泰彦  君 (学生会員)

1988年 熊本大学工学部電気工学科卒業.  同年(株)富士通研究所 入社
1993年 米国 University of California, Berkeley留学
2011年 ITS World CongressにてBest Paper Award受賞.
データ圧縮技術,ITS関連技術,生体センシング関連技術の研究に従事.
情報処理学会会員,電子情報通信学会会員,自動車技術会会員.

[推薦理由] 携帯電話に搭載されたカメラを脈拍検出として活用する手法について,コンシューマの利用環境に対する工夫や,それを実現する技術的な情報がよく整理されており,かつ既に市販の携帯電話に搭載されてコンシューマに利用されているという点が,CDS研究会の趣旨に沿った優れた論文及びその発表であったと評価した.
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メディア知能情報

●An ILP Formulation of Abductive Inference for Discourse Interpretation
[2011-NL-203(2011.9.16)] (自然言語処理研究会)
 inoue

井之上直也  君 (学生会員)

2008年武蔵大学経済学部経済学科卒業.
2010年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了.
同年東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程進学.
現在に至る.自然言語処理の研究 (特に談話処理) に従事.
2010年情報処理学会第72回全国大会学会推奨修士論文認定賞受賞.
2012年言語処理学会第18回年次大会優秀賞受賞.

[推薦理由] 本研究は,談話理解のために観測された論理式からそれと矛盾しない仮説を導く重み付き仮説推論(アブダクション)の新しい学習法を提案している.この問題は,可能な仮説が組み合わせ爆発を起こすため,制約付き組み合わせ最適化問題となる.これを整数計画問題として定式化することで,大データに対する効率的な解法を示している.アブダクションの問題は自然言語理解における基本的な課題であり,正確な定式化により既存のMarkov Logic Networkの欠点を解消した本論文は,言語理解研究のあるべき方向を示す意味でも優れた研究である.よって,本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●近赤外ワンショット形状計測による動体3D映像撮影
[2011-CVIM-176(2011.5.20)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 sakashita

阪下 和弘  君 (学生会員)

2009年3月 岡山大学工学部情報工学科 卒業
2011年3月 大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻博士前期課程 修了
2011年4月 大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻博士後期課程 進学
現在に至る.

[推薦理由] プロジェクタ・カメラ系による形状計測システムにおいて,可視光と2帯域の赤外光を同時に撮影可能なマルチバンドカメラを開発することで,テクスチャ情報と形状情報の同時取得を実現したものである.2色のグリッドパターンによる形状復元アルゴリズムによって,運動する物体の時系列形状を,テクスチャと同時にビデオレートで取得しており,さらに,カメラの構造の工夫によって,テクスチャと形状との位置ずれを無くすことにも成功している.運動する物体の形状計測は,ビジョン,ユーザインタラクション,ロボット制御など様々な分野での応用が期待されており,本研究はそのなかで高品質なテクスチャ付き形状計測方法の提案として高く評価できる.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●超精度くりこみ法
[2012-CVIM-180(2012.1.19)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 kanatani

金谷 健一  君 (正会員)

1972年 東京大学工学部計数工学科(数理工学専修)卒業.
1974年 同大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了.
1979年 同博士課程修了(工学博士).
1979年 群馬大学助手.
1983年 同助教授.
1988年 同教授.
2001年 岡山大学教授.
この間,米国メリーランド大学,デンマークコペンハーゲン大学,英国オック
スフォード大学,フランスINRIA研究所,各客員研究員.情報処理学会正会員,
電子情報通信学会フェロー会員,IEEEフェロー会員.

[推薦理由] 画像上に写る楕円の形状を推定することや,同一シーンの多視点画像を元にそれらを撮影したカメラの姿勢を推定することは,コンピュータビジョンにおいて,基礎的かつ最重要の問題である.本論文では,これらの問題に対する新しい推定方法として「超精度くりこみ法」を提案している.これは,本論文の著者らが以前提案していた方法を改良したもので,最も良く利用される最尤推定を推定精度で上回り,数値的にも安定である.以上より,本論文は平成23年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●大震災で見えてきた情報教育の課題
[情報教育シンポジウム(SSS2011)(2011.8.18)] (コンピュータと教育研究会)
 okumura

奥村 晴彦  君 (正会員)

1975年 名古屋大学理学部物理学科卒業
1978年 名古屋大学大学院理学研究科博士前期課程修了
1978年 神奈川県立高校教諭
1992年 松阪大学政治経済学部助教授
1999年 総合研究大学院大学数物科学研究科核融合科学専攻 博士(学術)
1999年 松阪大学政治経済学部教授
2004年 三重大学教育学部教授(情報教育) 現在に至る

[推薦理由] 東日本大震災を題材に,情報教育が社会に果たすべき役割について示している.平常時には見られなかったICTの利点と問題点を明らかにし,それを客観的な視点でタイムリーに分析している.大震災およびそれをとりまく事象を通じて,情報教育に関わる者が心がけるべきことが冷静に分析されており,社会的に重要な意味を持つ内容である.このように実際の事件や事柄と,情報教育との連携事例を,より多く社会に発表していくことは,学会としても一定の役割と考えられる.高い教育効果が期待できるすばらしい内容であり,世の中への貢献度も高い.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●ブロックエディタ方式によるプログラム構造化教育支援システム
[2012-CE-113(2012.2.5)] (コンピュータと教育研究会)
 yasui

保井  元  君 (正会員)

2010年 静岡大学情報学部情報科学科 卒業
2012年 静岡大学大学院情報学研究科 修了
同年   スズキ教育ソフト株式会社 入社

[推薦理由] ビジュアルコーディングから文字コーディングへの橋渡しを指向したプログラミング学習支援環境を構築し,授業にて実践し,評価している.ブロック表現と実用的言語であるJavaとの間を相互に行き来できるという点がユニークであり,また,授業実践による評価が可能なほどの実用性の高いツールとして実現されている.プログラミングの初学者のための有用なツールとなる可能性があり,高い教育効果が期待できるすばらしい内容であり,世の中への貢献度も高い.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●古代木簡解読支援のための画像処理および字体検索の高度化
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2011)(2011.12.10)] (人文科学とコンピュータ研究会)
 kitadai

耒代 誠仁  君 (正会員)

2004年 3月 東京農工大学大学院工学研究科電子情報工学専攻 博士後期課程 修了
2004年 4月 東京農工大学 産官学連携・知的財産センター 研究員(~2005年3月)
2005年 4月 東京農工大学 共生科学技術研究院 助手(~2007年3月)
2007年 4月 東京農工大学 共生科学技術研究院 助教(~2008年3月)
2008年 4月 東京農工大学 大学院工学府 情報工学専攻 特任准教授(~2010年3月)
2010年 4月 桜美林大学 専任講師(現職)
2008年 日本情報考古学会 論文賞
2009年 情報処理学会・コンピュータと教育研究会 Summer Symposium in Saga 2009 奨励賞

[推薦理由] 本研究は,古代木簡解読を支援するためのMokkanshopをはじめとする一連のツールの高度化を行ったものである.木簡画像の処理方法や字体検索について,木簡に固有な材料の特性などを考慮しながら高度化が進められるとともに,実際の利用者を想定しながらツールの操作性を改良するなど,実用性にも配慮がなされた点も高く評価できる.現在これらの一連のツールは木簡を用いた歴史研究に欠かせない存在となっており,人文科学と情報学の協働によって研究開発と実用化がなされた事例としても意義のある研究成果である.
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●Linked Open Dataによる博物館情報および地域情報の連携活用
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2011)(2011.12.11)] (人文科学とコンピュータ研究会)
 matumura

松村 冬子  君 (正会員)

2005年3月 同志社大学工学部知識工学科 3年次修了
2007年3月 同志社大学大学院知識工学専攻 博士前期課程修了
2010年3月 同志社大学大学院知識工学専攻 博士後期課程修了博士(工学)
2009年4月 - 2010年3月 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2010年4月 - 2011年3月 同志社大学理工学部 博士研究員
2010年4月 - 2011年3月 IBM T. J. Watson Research Center 客員研究員
2010年4月 - 2011年3月 日本学術振興会特別研究員(PD)
2011年4月 - 現在 国立情報学研究所 特任研究員

[推薦理由] 本研究は,博物館データベースの統合を目指すLODAC Museumと地域のイベント情報などを集めたLODを連携させ,地域におけるさまざまな芸術に関する情報を提供するWebアプリケーション(Yokohama Art Spot)を実装したものである.単なる実装実験にとどまらず,データ管理などにも工夫を凝らして持続的に運用するための配慮もなされており,より実用的なシステムとなっている.LODを分野間,組織間の連携に用いる有効かつ積極的な活用事例であると共に,人文科学をはじめとする幅広い分野への応用も可能な研究として高く評価できる.
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●スペクトログラムのベイジアンノンパラメトリックモデリングに基づく音楽信号の解析
[2011-MUS-91(2011.7.27)] (音楽情報科学研究会)
 nakano

中野 允裕  君 (正会員)

2009年3月 東京大学工学部計数工学科卒
2011年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻 修士課程修了
2011年4月 日本電信電話株式会社 入社
現在,同社 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 所属

[推薦理由] 受賞対象発表は,モノラルの音楽音響信号を楽音ごとの音響信号に分解する手法として近年注目を集めている非負値行列因子分解(Non-negative matrix factorization; NMF)に基づくアプローチを発展させた手法を提案している.従来のNMFに基づくアプローチは,調波構造といった音源の具体的なスペクトル形状に関する事前情報がなくともモノラル音源分離を実現可能な画期的な方法論であるが,各楽音のスペクトルが時間的に定常であるという強い仮定が置かれる.しかし,実際の多くの楽音のスペクトルは複雑に時間変化する.このため,従来アプローチでは扱える楽音の種類や分離の精度に限界があった.これに対し,本研究では,各楽音スペクトルの形状が内部状態の遷移に応じて変化する,という状態遷移モデルの概念を取り入れた新しいモデルを構築することに成功した.さらに,各楽音のスペクトルの時間変化の多様性(すなわち状態数)および総楽音数を観測信号から推定することを可能にするため,当該モデルをノンパラメトリックベイズモデルにより記述し,パラメータの推論を通して,音源分離,楽音数推定,各楽音スペクトルの時間構造推定,を一挙に行う方法を実現した.本成果は,モノラル音源分離の分野において大きなインパクトを与え,国際的にも高く評価されている.以上より,本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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●条件付きエントロピー最小化基準に基づくマルチカーネル学習を用いた発話スタイル変動に頑健な話者照合
[2011-SLP-87(2011.7.21)] (音声言語情報処理研究会)
 ogawa

小川 哲司  君 (正会員)

2000年3月  早稲田大学理工学部電気電子情報工学科 卒業
2002年3月  早稲田大学理工学研究科電気工学専攻 修士課程修了
2005年3月  早稲田大学理工学研究科電気工学専攻 博士後期課程 修了 博士 (工学).
2004年4月  早稲田大学理工学部助手
2007年4月  早稲田大学IT研究機構 客員講師
2007年11月 早稲田大学高等研究所 助教
2012年4月 早稲田大学基幹理工学研究科 准教授
エジプト日本科学技術大学 准教授.ジョンズホプキンス大学客員研究員.現在に至る.
音声認識,音響信号処理,機械学習に関する研究に従事.
2010年 日本音響学会 粟屋潔学術奨励賞.

[推薦理由] この論文は,マルチカーネル学習を用いて話者照合性能を向上させることを目的とした論文である.バイオメトリック認証の一種である話者照合においては,発話スタイルや発話時期による話者内の音声特徴変動による照合性能の低下が問題となっていた.この論文では,マルチカーネル学習(MKL)を用いて,話者内の特徴ベクトルの変動を正規化しつつ話者間の変動を強調するような学習を行うことにより,照合性能を向上することに成功している.MKLにはMCEM法アルゴリズムを用いており,この問題に対してエレガントな改善法となっている.以上より,当該論文は山下記念研究賞受賞論文としてふさわしいと判断した.
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●著作権への固定資産税課税の提案~著作権制度とパブリックドメインコンテンツ点数の関係
[2011-EIP-52(2011.5.19)] (電子化知的財産・社会基盤研究会)
 minamoto

源  直人  君 (正会員)

1991 神戸大学大学院工学研究科システム工学専攻修士課程修了
同年 日本経済新聞社入社,社内向けシステム開発に従事(現職)
2010 情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科情報セキュリティ専攻修士課程修了
同年 同大学客員研究員

[推薦理由] 現在,著作権保護期間は一律に長期の年数が定められている.しかし,その長期さが故に商業的寿命の短い著作物では,その多くが著作者等に収益をもたらさず,またパブリックドメインに帰することもなく「塩漬け」状態となってしまうことで著作権法本来の趣旨である「文化発展」にも寄与できていない現状にある.本論はこの点を問題意識として,著作権に固定資産税を課すことでコンテンツのパブリックドメイン性と商業的価値との調整を図る制度を提案している.本論の価値は著作権法本来の趣旨に立ち返り,税制度の応用により商業的価値が薄まったコンテンツのパブリックドメイン化を促進する着想のユニークさにとどまらず,本論提案制度導入の効果を過去50年間の国内の書籍出版状況に即して検証している点で実証的である点にある.以上から本研究はディジタル社会の基盤制度たる著作権の理想を模索するものとして大きな意義を有するものと評価し,源氏の上記論文を2012年度山下記念研究賞に強く推薦するものである.
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●探索が必要となる確率を用いた並列αβ探索のスケジューリング
[ゲームプログラミングワークショップ2011(2011.11.5)] (ゲーム情報学研究会)
 ura

浦   晃  君 (学生会員)

2009年3月 東京大学工学部電子情報工学科卒業
2011年3月 東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻修士課程修了
2011年4月 東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻博士課程進学
現在に至る.

[推薦理由] 大規模な計算機環境での並列探索では先回りの探索も有効であることが知られていたが,本論文ではその先回り選択の優先度に推定確率を用いることで性能が上がることを人工木において示している.将棋という具体例ではそれほどの効果が見られなかったようだが,確率推定の精度が高い場合での有用性が期待される.よって,本発表は新規性と実用性ともに山下記念研究賞に相応しいと判断する.
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●身体性を考慮した着ぐるみ装着者支援システムの設計と実装
[2011-EC-20(2011.5.14)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)
 okazaki

岡崎 辰彦  君 (学生会員)

2011年3月 神戸大学 工学部 電気電子工学科 卒業
2013年3月 神戸大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻 修了課程 修了予定

[推薦理由] 本稿は,遊園地などのエンタテインメント施設では欠かせないながらも,長く計算機による支援がなされていなかった着ぐるみの装着者に対する活動を支援する研究である.多くの人間,特に子供が接触する可能性の高い着ぐるみであるにもかかわらず,装着者の活動は,着ぐるみそのものによる厳しい制約や非直感的な行為を強制され,安全性や「生き物らしさ」にとって大事な視線一致など,身体的インタラクションにおいて自然な行動が困難である,という問題がある.この分析のもと,本研究では HMD などを用いてそれらの解決を図っている.本研究は着ぐるみに限らず,行為や行為状態の視認が困難な状況下での行動支援につながる重要な側面をも有する意欲的な研究であり,本賞の推薦を受けるにふさわしい研究である.
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●FuwaFuwa:反射型光センサによる柔軟物体への接触位置および圧力の計測手法の提案とその応用
[エンタテインメントコンピューティング2011(2011.10.8)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)
 sugiura

杉浦 裕太  君 (学生会員)

2008年 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 メディアデザイン専攻 修士課程 入学(飛び級)
2008年 JST ERATO 五十嵐デザインインタフェースプロジェクト 研究補助員
2009年 IPA 未踏IT人材発掘・育成事業 2008年度下期 未踏ユース 開発者(2009年8月まで)
2010年 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 メディアデザイン専攻 修士課程 修了
2010年 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 メディアデザイン専攻 博士課程 入学
2012年 日本学術振興会,特別研究員(DC2)
柔軟物コンピューティング、ヒューマンロボットインタラクション、エンタテイメントコンピューティングの研究に取り組んでいる.

[推薦理由] 本研究は,ぬいぐるみのような柔軟物体におけるインタラクションを可能にするために必須である,物体に対する接触位置およびその圧力を計測する手法,およびそれを実現するデバイスの開発に関する研究である.柔軟物体とのインタラクションは,エンタテインメントの高度な実現にとって重要であるが,提案されているデバイスは柔軟物体の柔軟性をほぼ損なうことなく,任意形状の物体に対し,圧力のように多段階の入力を認識できる.これらのことから,既知の柔軟物体に対するインタラクションに関する問題の多くが低減・解決され,提案されたデバイスの応用範囲やそれが与えるインパクトは極めて大きなものとなることは論を待たない.以上より,本研究は本賞の推薦を受けるにふさわしいといえる.
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●双対分解によるRNA構造アラインメント
[2012-BIO-28(2012.3.28)] (バイオ情報学研究会研究会)
 sato

佐藤 健吾  君 (正会員)

2003年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了,博士(工学).
慶應義塾大学理工学部生命情報学科助手,(社)バイオ産業情報化コンソーシアム研究員,
東京大学大学院新領域創成科学研究科特任講師を経て,
現在,慶應義塾大学理工学部生命情報学科専任講師.
RNA配列情報解析を中心とするバイオインフォマティクスに関する研究に従事.
2008年にOxford Journals JSBiPrizeを受賞.
情報処理学会,日本バイオインフォマティクス学会,分子生物学会,RNA学会,国際計算生物学会の各会員.

[推薦理由] 本研究では,期待精度最大化原理に基づいたRNA構造アラインメントを整数計画問題として定式化し,双対分解によってこれを高速に解くアルゴリズムを提案している.従来のRNA構造アラインメントは膨大な計算量を必要としたが,本手法では双対分解によってRNA構造アランメントを解きやすい部分問題,すなわち共通二次構造予測と(構造を考慮しない)配列アラインメントに分解して独立に効率よく解く.これによって,従来法に匹敵する高精度ながら大幅な高速化を達成しており,さらに拡張性が高いエレガントな枠組みを示した.よって本賞を贈るにふさわしい.
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●An Improved Clique-Based Method for Computing Edit Distance betweenRooted Unordered Trees
[2011-BIO-26(2011.9.13)] (バイオ情報学研究会)
 mori

森  智弥  君 (学生会員)

2010年3月 同志社大学工学部インテリジェント情報工学科卒業
2012年3月 京都大学情報学研究科知能情報学専攻修士課程修了
2012年4月 京都大学情報学研究科知能情報学専攻博士後期課程進学
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は無順序木間の編集距離問題のためのクリークに基づく計算手法に対し,動的計画法とヒューリスティックを導入した改良手法を与えている.従来のクリークに基づく手法では入力する木のサイズが大きい場合に計算量が大きくなり,十分に実用的であるとは言えなかった.本研究で提案されている手法は解の最適性を損なうことなく,無順序木間における編集距離計算の大幅な高速化を実現しており,木構造データ解析の今後の発展にも寄与するものである.また,本研究発表ではこの手法の独自性と有用性が十分に示されていた.よって,本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●CMS/LMS環境で利用できるスマートケータイ出席確認小テストシステムS-maqs
[2011-CLE-5(2011.10.15)] (教育学習支援情報システム研究会)
 ueki

植木 泰博  君 (正会員)

1984年 関西大学工学部管理工学科卒業
1986年 関西大学大学院工学研究科修士課程機械工学専攻修了
同年 三菱電機セミコンダクタソフトウェア株式会社入社
1991年退社後、ニュータイプシステムズ株式会社設立.代表取締役.
2002年 関西大学大学院工学研究科博士課程後期課程管理工学専攻所定単位修得後退学.
同年より関西大学先端科学技術推進機構研究員.
WEBアプリケーションシステム,食品検査システム等の研究開発に従事.
情報処理学会会員.教育システム情報学会会員.

[推薦理由] 植木泰博氏は,大学における多人数対面授業において,アンケート・小テスト・学習記録提出保存・出席確認を,携帯電話およびノートPCからイン ターネット接続で利用できるWebアプリケーションシステムS-maqs(Smart mobileattendance and quiz-taking system)を提案した.S-maqsは,コース管理システム(CMS)/学習管理システム(LMS)とデータ連携して利用できるシステムとし,CMS /LMSとの連携により「ユーザビリティ」の高いシステムとして実現することを目指している.論文では,システム開発の背景,システム開発方針およびシナリオに基づく外部設計について述べられている.論文内容は独自性があり実用的観点からも優れている.ついては,同氏を山下記念研究賞受賞 候補者として推薦します.
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