2009年度(平成21年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,これまでは研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は35研究会の主査から推薦された計51編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,理事会(平成21年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の受賞者は下記51君で,3月9日に東京大学で開催される第72回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI CG IS FI AVM GN DD MBL CSEC ITS EVA UBI IOT

<フロンティア領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP(該当なし) GI EC  BIO

コンピュータサイエンス領域

●ロックフリーGCLOCKページ置換アルゴリズム
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum)2008(H20.12. 2)] (データベースシステム研究会)

油井 誠  君 (正会員)

早稲田大学IT研究機構(ITバイオ研究所)客員研究員.
日本学術振興会特別研究員PD.博士(工学).
2003年芝浦工業大学工学部工業経営学科卒業.
同年(株)NEC情報システムズ入社. グリッド・コンピューティングの研究開発に従事.
2006年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了.
2008年日本学術振興会特別研究員DC2.
2009年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.
現在に至る.
XMLデータベースと高性能データベースの研究に従事.
2003年IPA未踏ソフト創造事業「未踏ユース」スーパークリエータ.
情報処理学会,日本データベース学会各会員.

[推薦理由]受賞対象論文は,ロックフリーなページ置換アルゴリズムを提案している.さらに無待機のハッシュ表と組み合わせ,要求されたページをバッファフレームに固定する処理をノンブロッキングに行う手法を開発している.データベースのバッファ管理にノンブロッキング同期を適用する初めての試みであると言える.既存アルゴリズムでは,並列プロセッサでの実行において,スケーラビリティの限界があったが,提案手法は高いスケーラビリティを示している点で,高く評価できる.よって,本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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●ジャクソン法(JSP)による状態遷移設計
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2008(H20. 9. 3)] (ソフトウェア工学研究会)

紫合 治 君 (正会員)

1971年東京電機大学工学部電子工学科卒業.同年日本電気(株)入社.
中央研究所,ソフトウェア生産技術研究所,NECアメリカ等にて,ソフトウェア工学,インタネットセキュリティ等の研究開発に従事.
2003年より東京電機大学情報環境学部教授,現在に至る.ソフトウェア設計技法,設計支援ツール等の研究に従事.
情報処理学会20周年記念論文賞(1980年),大河内記念技術賞(1984年)受賞.ソフトウェア科学会会員.

[推薦理由]本論文では,組込みソフトウェア分野の典型的な問題フレームである「振舞い問題」での状態遷移設計にジャクソン法(JSP)の考え方を応用する手法を提案している.従来のJSPにおける入出力データ構造対応の代わりに制御されるドメイン(機器)の状態間の対応を定め,そこから制御システムの状態遷移設計を系統的に導き出す方式であり,ビジネス分野のファイル処理で古典的ともいえるJSPの手法を組込み分野の状態遷移設計に蘇らせたアイデアとして非常に興味深い.状態遷移設計に対する新しい手法としても新規性があり,かつ実用的でもあるので,その学術的価値は高い.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●Webアプリケーション開発向けAOP機構の実装
[2009-SE-163(H21. 3.18)] (ソフトウェア工学研究会)

外村 慶二 君 (学生会員)

2001年3月 北九州工業高等専門学校 卒業
2003年3月 九州工業大学 情報工学部 卒業
2005年3月 九州工業大学大学院 情報工学研究科 修士課程 修了
2005年4月 - 2007年3月 フリーランスプログラマとしてWebシステムの開発に従事
2007年4月 九州工業大学大学院 情報工学研究科 博士課程 進学
現在に至る

[推薦理由]今日,Web アプリケーションはソフトウェアの主要な形態の一つとして広く普及している.Webアプリケーションにはアクセス制御やページ遷移制御といった分野固有の横断的関心事があり,それらの適切なモジュール化は保守性に関する重要な研究テーマとなっている.本発表では,それまでに著者らが提案してきているWebアプリケーション開発向けのアスペクト指向言語 AOWPについて,その機構の実現方法と有用性を分かりやすく説明しており,当該分野の研究者のみならず一般会員に対する貢献も大きいことが推薦の理由である.
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●予測ミスした命令の実行を継続する投機手法
[2008-ARC-178(H20. 5.13)] (計算機アーキテクチャ研究会)

喜多 貴信  君 (学生会員)

2008年 東京大学 工学部 電子情報工学科 卒業
同年,東京大学大学院 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 修士課程に進学
プロセッサのマイクロアーキテクチャ,ディペンダビリティの研究に従事

[推薦理由]近年のプロセッサ上では,分岐予測をはじめとしてさまざまな予測機構が実装されており,性能に大きな影響を与えている.本論文は,予測ミスした命令の中にはミスに影響されない命令も存在することに着目し,それらの実行結果を再利用して予測ミスの緩和をはかる手法を提案している.予測ミスした命令を継続して実行するという手法の斬新さ,予測ミスした命令の結果を予測器のソースとして再利用することにより機構をシンプルに抑えている点,分岐予測だけでなく予測器全般に適用でき,幅広いアーキテクチャにも対応しているという一般性・適用性の高さ,などを高く評価できる.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●組み込み向けマルチコアSoCにおける周期的プロセッサ間通信手法の提案
[2008-ARC-179(H20. 8. 7)] (計算機アーキテクチャ研究会)

上久保 雅規 君 (正会員)

1993年 京都大学工学部金属系学科卒業 1995年 同大学院工学研究科金属加工学専攻修士課程修了同年 日本電気株式会社入社現在、同社システムIPコア研究所にてメニーコアアーキテクチャ研究に従事

 

[推薦理由]高性能組込み用途で多く用いられる非対称型マルチプロセッサシステムにおいては,通信系ストリーム処理を複数プロセッサに分散させる際のプロセッサ間交信処理のオーバヘッドが問題となる.この問題に対し,本論文は受信側のプロセッサからシステムタイマ同期でまとめて受信する粗粒度タイマ駆動型手法を提案し,実システムに適用した場合のオーバヘッドが従来割り込み手法と比較して30%程度低減できることをシミュレーションにより実証した.具体的なシステムへの現実的かつ高効率な手法の提案と,詳細なシミュレーションによる有効性検証,解析を行っており,今後のアプリケーション並列化に伴うオーバヘッド削減手法に有効な知見を与える研究である.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●マルチコアSHにおける複数カーネル実行機構の設計と実装
[2008-OS-109(H20. 8. 7)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

下沢 拓 君 (学生会員)

2007年 東京大学理学部情報科学科 卒業
2009年 同大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了
現在、同大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士課程に在学中。

[推薦理由]本研究は,近年重要度を増しているマルチコアプロセッサ向けのOS実装法について,複数の異なるOSをマルチコアプロセッサ上で実行し,OSの特性を活かした上でオーバヘッドの少ないカーネル実行方式を提案している.デバイス,メモリなどの資源を各OS間分割占有し,プロセッサ間連携を行う方式を提案,SHマルチコアプロセッサ,x86プロセッサ上で実装し,仮想機械方式と比較評価を行うことにより方式の有効性を確認している.方式の有用性も高く,複数のプロセッサおよび仮想機械と比較評価していることなどから,他のプロセッサ,方式に対して有意義な知見を含む結果となっている.今後の展開も期待でき,山下記念賞に相応しい研究である.
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●広域分散環境のための仮想機械を利用したサービス協調複製基盤
[コンピュータシステムシンポジウム2008(H20.11.12)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

杉木 章義 君 (正会員)

2002年 電気通信大学情報工学科卒業.
2007年 電気通信大学大学院電気通信学研究科博士後期課程修了,博士(工学).
2007年 科学技術振興機構CREST研究員
2009年 筑波大学大学院システム情報工学研究科助教

仮想計算機を利用した分散システム,ウェブサーバの性能改善に関する研究に従事.

[推薦理由]本研究は分散システムにおけるサービス提供において,資源の複製を用いて高信頼性・高可用性を実現する方式として仮想機械を利用した方式を提案し,その方式をXenおよびUser mode Linux上に実装し,方式の有効性を確認している.広域環境において効率を考慮した上で複製を作る点,近年のOSの主題の一つである仮想機械において複製を作る手法は新規であり,XenとUser mode Linuxの二つの異なる実装方式で方式の有効性を確認している.これらの結果は他の仮想機械,分散システムの研究の参考になる内容である.論文の質も高く,今後の展開も期待できることから山下記念賞に相応しい研究である.

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●プロパティ分割と限定モデル検査を利用した長い反例を持つ設計誤りの検出手法
[DAシンポジウム2008(H20. 8.26)] (システムLSI設計技術研究会)

西原 佑 君 (学生会員)

2005年3月東京大学工学部電子工学科卒業.
2007年3月同大学大学院工学系研究科電子工学専攻修士課程修了.
同年4月同博士課程進学.
形式的検証技術の研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会各学生会員..

[推薦理由]本論文は,大規模集積回路の検証を高速化する手法を提案している.現在非常に有効な検証手法と考えられているモデル検査は,適用する回路の規模が大きくなると状態爆発を起こし,検証時間が急激に増加するという問題がある.提案手法は検査対象の状態遷移列長を制限する限定モデル検査を多段に組み合わせることにより,初期状態から多くの状態を遷移して初めて出現する設計誤りを効率よく検出する.実用的な例題を用いた実験により従来の限定モデル検査法と比較して検証にかかる時間を1/3以下に短縮できることを確認している.手法の独創性および有効性ともに高く評価できる.以上の理由により本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●トレースログ可視化ツールの開発
[2009-SLDM-139(H21. 3. 6)] (システムLSI設計技術研究会)

後藤 隼弐 君 (正会員)

1985年 2月 生まれ
2007年 3月 立命館大学理工学部情報学科 卒業
2009年 3月 名古屋大学大学院情報科学研究科情報システム学専攻
ITスペシャリストコース 前期課程博士課程 修了
同 年 4月 ソニー株式会社 入社

[推薦理由]本論文は,マルチコアプロセッサ上で動作するソフトウェアのデバッグ支援手法を提案している.マルチコアプロセッサ環境では複数のタスクが別々のプロセッサ上で並列に動作するため,シングルプロセッサと比べてタスクの状態や実行順序の検証が難しい.提案手法は,タスクの状態を時系列に沿って形式的に表現する方法を一般化している.このことより,タスクの状態遷移やシステムコールの発行順序を図形として可視化することが可能になる.実例を使った評価実験では一つの画面の中に並列動作するタスクの状態が効率よく表示できることが示された.手法の独創性・有効性ともに高く評価で きる.以上の理由により本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●CUDA環境における高性能3次元FFT
[先進的計算基盤システムシンポジウム(SACSIS 2008)(H20. 6.12)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

額田 彰 君 (正会員)

1999年3月東京大学理学部情報科学科卒業.
2001年3月東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.
2004年3月東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士過程退学.
科学技術振興機構研究員を経て,
2007年11月より東京工業大学学術国際情報センター産学連携研究員として現在に至る.
FFT等の数値計算のGPUによる高速化の研究に従事.

[推薦理由]本発表ではGPU向け高性能3D-FFTアルゴリズムを提案・実装・評価している.GPUはメモリバンド幅が高く,CPUに比べて高い3D-FFT性能を期待できるが,本研究ではメモリアクセスパターンの定量的評価に基き,一般的なストライドアクセスパターンがGPUに不向きであることを明確にした.その上で,高メモリバンド幅を実現できるメモリアクセスパターンを調査し,その結果に基づいてBlock FFTアルゴリズムとMultirow FFTアルゴリズムを組み合わせたGPU向け3D-FFTアルゴリズムを提案・実装・評価している.この結果,ベンダー提供の3D-FFTライブラリに対して3倍強の性能を実現している点も高く評価できる.これらの理由から,本研究発表を山下記念賞に推薦する.
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●GPGPU上での流体アプリケーションの高速化手法~1GPUで姫野ベンチマーク60GFLOPS超~
[2008-HPC-117(H20.10.15)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

成瀬 彰 君 (正会員)

1996年 名古屋大学大学院 工学研究科情報工学専攻 修士課程修了
同年 (株)富士通研究所入社
HPCシステムに関する研究開発に従事

[推薦理由]本発表では,GPUを汎用計算に利用するGPGPUテクノロジにおいて,GPU内の高いメモリバンド幅を利用し,流体計算の標準ベンチマークの一つである姫野ベンチマークで,単一GPUで60GFLOPSを越えるという極めて高い性能を実現した.GPGPUはCUDAに代表されるプログラミング手法により使い易くなっているが,本発表においては,公開されている技術情報から予想される,GPU内部構造にも踏み込んだチューニングを行い,GPGPUの性能を引き出す高度な知見を提供している.これらの理由から,本研究発表を山下記念賞に推薦する.
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●JNI プログラム中のバグ発見
[(H20. 5.22) ] (プログラミング研究会)

近藤 豪 君 (正会員)

1996年 慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業
1998年 慶應義塾大学大学院理工学研究科計算機科学専攻修士課程終了
同年 日本アイ・ビー・エム株式会社に入社.東京基礎研究所勤務

[推薦理由]本研究は,Java Native Interface (JNI)を用いたプログラムからバグを発見するための静的解析方法を提案したものであり,実装を通してバグ発見に対する有効性を示している.研究会運営委員,研究会論文誌編集委員の間で議論及び投票をおこなった結果,受賞するに足る研究成果であることを確認し,ここに推薦するものである.

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●A Proof of the Molecular Conjecture
[2009-AL-123(H21. 3. 5)] (アルゴリズム研究会)

谷川 眞一 君 (学生会員)

平成17年3月 京都大学工学部建築学科卒業
平成19年3月 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 修士課程修了
平成19年4月 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 博士課程進学
現在に至る

[推薦理由]剛板ヒンジ構造とは,剛な板がヒンジで繋がれた3次元構造モデルである.TayとWhietelyは剛板ヒンジ構造が剛である必要十分条件が,その構成要素の接続関係を表現するグラフをGとしたとき,5Gに6つの辺素な全域木が詰め込める事であると予想した.分子構造をモデル化した際得られる構造物の剛性と剛板ヒンジ構造の剛性が等価であるため,この予想はMolecular Conjectureと呼ばれている.本論文では,25年間未解決であったこの予想の証明に成功した.この成果によって,タンパク質の自由度計算において用いられている既存アルゴリズムの理論的正当性を与えた意義は大きい.以上のことから本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●内包の核を考慮した疑似形式概念のTop-N抽出
[2008-MPS-71(H20. 9.18)] (数理モデル化と問題解決研究会)

大久保 好章 君 (正会員)

1988年  東京工業高等専門学校機械工学科卒業
1990年  千葉大学工学部機械工学科卒業
1995年  東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士後期課程修了.博士(理学)
同  年  北海道大学工学部助手
2007年~ 北海道大学大学院情報科学研究科助教.知識獲得・データマイニングの研究に従事.

[推薦理由]形式概念に基づいたクラスタ抽出において,些細な違いしか持たない重複の大きいクラスタがTop-Nの大部分を占めてしまうことがしばしば問題となる.本発表では,核となる主要な属性集合とそれ以外の副次的属性集合から構成される内包を用いて定義される疑似形式概念を提唱し,適切なTop-Nを抽出するアルゴリズムを提案している.これは実用上重要で優れた研究成果である.
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●COSMIC法による機能規模測定の信頼性評価
[2008-EMB-9(H20. 6.19)] (組込みシステム研究会)

野中 誠 君 (正会員)

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒業
1997年同大学院理工学研究科修士課程修了
2000年同大学院理工学研究科博士後期課程単位取得退学
早稲田大学理工学部経営システム工学科助手を経て、
2003年東洋大学経営学部専任講師
2006年東洋大学経営学部助教授(現:准教授) 現在に至る。
2000年情報処理学会第61回全国大会奨励賞受賞

[推薦理由]組込みソフトウェアの機能規模を見積もるために提案されているCOSMIC法は適用条件や利用者のバックグラウンドなど様々な要因により見積もりの誤差が発生することが知られている.この研究では,実際に具体的なシステム開発にCOSMIC法を適用し,見積もり誤差を発生させる要因を明らかにし,それらを防ぐための方策について検討し整理している.組込みソフトウェア開発における機能規模や開発コスト,期間の見積もりについては,いかに精度よく見積もるかが重要な課題となっており,この研究はこの課題に対して,現実的な解決策に結びつく極めて有効かつ実用的な研究であり,山下記念研究賞にふさわしいと考えられる.
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情報環境領域

●作業トレースによる工業製品の品質保証の試み
[2008-DPS-135(H20. 6.19)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)

佐藤 永欣 君 (正会員)

昭和51年生まれ.%平成13年東洋大学大学院修士課程(情報工学)修了.
平成16年東洋大学大学院博士後期課程修了.博士(工学).
同年東洋大学植物機能研究センター研究助手.
平成19年岩手県立大学ソフトウェア情報学部講師.
分散情報検索,農産物の産地推定,磁気センサの応用などの研究に従事.
IEEE,電子情報通信学会,情報処理学会各会員.

[推薦理由]工業製品の品質保証において,組立工程の作業は非常に重要な要素であるが,本論文では品質を確認する後工程のみでは検出が困難な作業の内容に注目し,作業内容をコンテキストとして扱う手法を提案している.本手法では,地磁気センサと加速度センサの組合せにより作業員の腕の動きなどをトレースし,コンテキストの識別と作業内容を把握し,問題のある動作を識別可能である事を示しており,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●MANETにおけるノードの信頼度を用いた利己的ノードの検出方法
[2008-DPS-137(H20.11.28)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)

佐藤 文明 君 (正会員)

1984年3月 岩手大学工学部電気工学科卒業
1986年3月 東北大学大学院工学研究科電気及通信工学専攻博士前期課程修了
1986年4月 三菱電機株式会社入社
1992年2月 博士(工学)学位取得(東北大学)
1995年1月 静岡大学助教授
2005年10月 東邦大学教授(現在に至る)
分散処理,モバイルコンピューティング,通信プロトコルに関する研究に従事
2006年学会活動貢献賞受賞
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員

[推薦理由]本論文は,MANETにおける利己的ノードの効果的な検出を目的として,ノードの通常の動作を評判情報として評価することによる誤検出の低減を提案している.本方式は,信頼のおける隣接ノードの情報のみを用いる事で,構成を簡易にし,信頼度に関する影響を小さくする.また,シミュレーションにより行動モデルに基づき評価した結果,パケットロス率がある程度低い範囲において,ルート発見率,誤検出率共に有効性が示されており,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●指の近接/接触検知が可能な 3 次元タッチパネル
[2009-HCI-131(H21. 1.26)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)

岡野 祐一 君 (正会員)

1992年,東北大大学院修士課程了.同年三菱電機(株)入社.
以来, オンライン文字認識,文字認識応用システム,
ヒューマン・マシン・インタフェースの研究開発に従事.
現在,同社情報技術総合研究所 音声・言語処理技術部
主席研究員.情報処理学会会員.電子情報通信学会会員.

 

[推薦理由]透明なITO電極のみで指の近接・接触を検知可能な3次元タッチパネルを開発した.近接時の感度を向上するために,センサ電極を動的に結合する電極結合制御方式,シールド電極制御方式を新たに開発した.静電容量検出IC,タッチパネル(ITO電極)は汎用品を使い,独自の結合制御回路を実装するのみで,上記機能が実現でき,コストアップ要素を抑えた実用的な技術である.また,従来は抵抗値及び寄生容量の増加などの要因により困難であった,大型サイズ(15インチまで)にも対応可能である.
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●固有解を用いた表面下散乱の高速表示
[Visual Computing/グラフィクスとCAD合同シンポジウム(H20. 6.21)] (グラフィクスとCAD研究会)

新谷 幹夫 君 (正会員)

1979年,早稲田大学理工学部応用物理学科卒.
1981年,同大学理工学研究科物理及び応用物理学専攻修士課程了.
同年,日本電信電話公社武蔵野電気通信研究所入所.
2001年,東邦大学理学部情報科学科教授.
コンピュータグラフィックスの研究などに従事.博士(工学)

[推薦理由]本研究発表は,肌や食品のように表面下散乱を伴う物体の写実的なレンダリングについて,既存手法における課題の解決を試みている.表面下散乱のレンダリングに関してはいくつかの手法が提案されているが,提案手法における主な新規性は,演算の高速化と品質の両立,テクスチャの扱いを可能にした点の2点に集約できる.まず提案手法では,微小距離での媒質の均質性を仮定として導入することで散乱光を近似し,可能な事前計算を前処理として行うことにより,演算の高速化を実現している点で新規性がある.提案手法による実験例では対話速度での画像生成が報告されており,レンダリング結果の妥当性については,従来の演算モデルで不合理な結果となる照明条件においても良い近似が実現できていることがわかる.また,提案手法では反射特性の空間的な変化による散乱を効率的に近似することで,テクスチャの扱いを可能にしている点で新規性がある.これまでに提案されている表面下散乱の表現では,表面が均質な媒質に限定されているため対象も限定され,新たにテクスチャを扱うことで幅広い対象における写実性の向上に役立つと思われる.人物の肌をはじめとした半透明の物質は日常的に多く存在し,提案された効率的なレンダリング技法は映像産業等での有用性も高いと期待できる.特に対話速度にて一定の品質が実現できており,今後の改善によりリアルタイムでのアプリケーションへ適用範囲を拡大することが期待できる.以上の理由により,本研究会は上記の研究発表を山下記念研究賞に推薦する.
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●典型的曲線の非定常化とその曲面への拡張
[2008-CG-133(H20.11. 8)] (グラフィクスとCAD研究会)

三浦 憲二郎 君 (正会員)

1984年 東京大学大学院 工学系研究科 精密機械工学専攻修士課程修了.
1984年 キヤノン株式会社 研究員.
1991年 コーネル大学大学院 機械工学専攻博士課程修了.Ph.D.
1993年 会津大学コンピュータ理工学部コンピュータソフトウエア学科 助教授.
1997年 静岡大学工学部機械工学科 助教授.
2004年 同大学 教授.
2006年 同大学創造科学技術大学院情報科学専攻 教授.

[推薦理由]本論文は、対数(型)美的曲線式の離散化によりに遷移行列の非定常化を行い,曲率対数グラフの傾き(α)が任意の対数美的曲線へ近似するBezier曲線の制御点を生成可能とする手法を提案している.また,対数(型)美的空間曲線への拡張を行うとともに,3次B-splineで近似する際の曲率単調性の条件を導いており、新規性,有用性ともに高く評価できる.対数型美的曲線と典型的Bezier空間曲線の関係は,従来は,α=1(対数螺旋)のみが知られていたが,非定常化により任意の傾きαの対数美的曲線と関連付けられた.これは,自由曲線形式と対数型美的曲線形式との間のギャップに橋渡しする重要な進歩の一つであると考えられる.対数型美的曲線が自由曲線形式で利用可能になったことの意味は大きく,今後様々な研究が期待される.以上に理由により,本研究会は上記の論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●食品加工工程における余剰在庫削減を目的とした生産計画立案システムの構築
[2009-IS-107(H21. 3.18)] (情報システムと社会環境)

十文字 豊 君 (学生会員)

2008年3月 岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 ソフトウェア情報学科 卒業.
現在,同大学大学院 ソフトウェア情報学研究科 ソフトウェア情報学専攻 博士前期課程在学中.
情報処理学会,日本経営工学会各学生会員.

[推薦理由]本研究は対象とする食品加工業務を十分に調査して分析することにより,生産計画立案システムの機能をまとめ,MRP(資材所要量計画)展開結果から新提案である逆展開MRP処理,追加受注可能品目提案処理を行うことで,余剰在庫を販売計画へと反映させる仕組みを提案した.さらに,提案システムのプロトタイプ構築により,提案システムの動作検証と効果検証を行っており,余剰在庫を削減できることを示した.このように,分析・提案・試作・評価の一連の研究により,効果的で新しいシステムの提案を行っており,推薦に値すると判断した.
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●多重多型トピックモデルを用いたアノテーション付きテキストからのエンティティ検索
[2008-FI-91(H20. 6.20)] (情報学基礎)

江口 浩二 君 (正会員)

神戸大学大学院工学研究科准教授,
国立情報学研究所客員准教授.博士(工学).
情報検索,Web情報処理,データマイニングの研究に従事.

[推薦理由]エンティティ名・カテゴリラベル・テキスト記述から構成されるWikipediaのデータのように複数種の属性をもった構造化文書を検索するタスクのために,多重多型トピックモデルを応用した検索手法を提案し,その有効性を実験的に示している.最近の研究成果である高度なベースラインと比較を行い,複数の評価指標により丹念に評価を行っている点が高く評価できる.また,最近の確率的トピックモデルに関するチュートリアルとしての価値も高い.
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●テレビ視聴環境を利用した顔認識のための変動学習
[2009-AVM-64(H21. 3. 6)] (オーディオビジュアル複合情報処理研究会)

松尾 賢治 君 (正会員)

1998年 神戸大学工学部電気電子工学科卒業
2000年 神戸大学大学院自然科学研究科修士課程修了
2000年 KDD株式会社入社、株式会社KDD研究所配属
現在、株式会社KDDI研究所特別研究プロジェクト研究主査
高効率動画像符号化、顔画像認識、一般画像認識の研究開発に従事

[推薦理由]テレビに出てくる人物の顔画像認識精度を向上させるにあたって,さまざまに変動する顔画像を同定することが課題となっている.そのため,別途収集した同一人物の多数の顔画像から現在登録されていない変動を抽出して変動を学習させる取り組みがある.本発表は,これまで人間が目視した上で行う必要があった変動学習用の顔画像の収集を,テレビ視聴環境上で自動化する方法の提案であり,電子テレビ番組表EPGや動画の連続性を利用して,テレビ映像から変動学習用の顔画像を収集する点に特長がある.連続ドラマを対象とし実験を行った結果,F値を評価尺度とする顔認識精度が大幅に向上できている(変動学習無し時0.59に対し変動学習時0.79).以上から,同賞推薦に値すると考えられる.
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●滞在場所を考慮したコミュニケーション検出システム
[GNワークショップ2008(H20.11. 7)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)

注連 隆夫 君 (正会員)

2005年 大阪府立大学工学部情報工学科卒業
2007年 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻博士前期課程修了
同年 日本電気株式会社入社
現在、C&Cイノベーション研究所にて、オフィス業務におけるノウハウ抽出に関する研究に従事

[推薦理由]本研究発表は,実際の一ヶ月に及ぶ研究開発業務のセンシング記録を分析することで,オフタイムでのコミュケーショングループや円滑でない上司部下コミュニケーションの状態などを抽出でき,従来の観察ベースでは抽出困難な人間の関係性を抽出することができた.これは,今後のグループワーク分析において,新たな可能性を示せたといえる.また,オフィス内の場所によって主たるコミュニケーションの種類が異なることに着目し,場所特性に適応させることで,高精度のコミュニケーション検出を実現できたこと,また,コミュニケーションを双方目的型,無目的型,片方向目的型の3種類に分類活用できたことは技術的に傑出している.
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●メンバ間協力関係の図示ツールとその事例による評価
[2009-GN-70(H21. 1.23)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)

鵜飼 孝典 君 (正会員)

1992 年 3 月 東京工業大学 電気電子工学専攻修士課程を修了
1992 年 4 月 (株)富士通研究所に入社. 現在に至る
情報処理学会,人工知能学会,ソフトウェア科学会,ACM各会員

[推薦理由]本研究発表は, 社会ネットワークの理論を実践的に適用して組織の状態を「見える化」するアプリケーションの開発事例である.その妥当性と効果をソフトウェア開発をビジネスとする組織のオフィス内のコミュニケーション, 協力関係の改善結果によって示した. 自分の周りのことが良く分からなくなっている「縦割り組織」などの組織文化とその改善効果をグラフと自動レイアウトによって理解しやすく表現したことは,今後のグループワークの支援に新たな可能性を示したといえる.また, フィールド調査との比較をおこない, その正当性と優位性を示したことによって, 今後のグループワーク分析の効率化に大きな貢献となる.
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●WEB上の画像の分類とメタデータ付与による携帯電話向けWEB表示
[2009-DD-70(H21. 3.25)] (デジタルドキュメント研究会)

成川 夏子 君 (正会員)

1984年生まれ
2007年 東京工業大学 工学部 情報工学科 卒業
2009年 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 知能システム科学専攻 修士課程修了
同年 ソニー株式会社 入社

[推薦理由]本論文では,携帯電話でのWEBドキュメント閲覧において,ドキュメントに含まれるコンテンツやボタンなど種々の画像データを自動分類し,適切なメタデータを付与することにより,個々の画像の性質・構造・重要度に基づく最適な表示を行なう手法を提案している.本論文は,重要かつ普遍的なテーマとして,今後発展が見込まれる携帯型端末での新たなデジタルコンテンツ表現手法の可能性を示している.また,問題の十分な分析及び的確な解決手法と実験による有効性が示されており,今後のデジタルドキュメント研究の進歩に寄与する論文であると言える.以上の理由から,本論文を山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●センサネットワーク省電力化機構HGAFにおけるノード間ネットワーク接続性に関する検討
[2008-MBL-45(H20. 5.22)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)

稲垣 徳也 君 (正会員)

2007年3月 静岡大学 工学部 システム工学科 卒業
2009年3月 同大学大学院 工学研究科 システム工学専攻 修士課程修了
同年4月 株式会社デンソー 入社

 

[推薦理由]本論文では,無線センサネットワークの接続性を維持するために必要な省電力化に関して,既存手法GAFを改良することでセンサの長寿命化が図れることを示している.著者らは以前の論文で,GAFを改良した省電力化機構HGAFを提案しており,今回の論文では提案機構HGAFの有効性を,解析的評価とシミュレーション評価の両面から示している.本論文は,省電力化機構HGAFの提案とその評価からなる優れた論文であり,センサネットワークの発展に大きく寄与するものである.よって,ここに山下賞に推薦する.
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●ワイヤレスセンサネットワークの設計開発支援環境D-sense
[マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム(H20. 7. 9)]
(モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)

森 駿介 君 (学生会員)

2008年 大阪大学基礎工学部情報科学科 卒業.
同年 同大学大学院情報科学研究科 博士前期課程進学.
現在,ワイヤレスセンサネットワークの設計開発支援に関する研究に従事.

[推薦理由]本論文では実環境およびシミュレーション環境の双方で利用可能なワイヤレスセンサネットワークで使われるプロトコルの設計・開発ツールが提案されている.アルゴリズムレベルで記述できるAPIを提供することにより,低レベル言語による実装の負荷を抑え,シミュレーションのための実装負荷も抑えている.複数の著名なプロトコルを実際に実装してみて,その性能を実環境およびシミュレーション環境の双方で評価し,その有効性を示しており,ツールとしての完成度が高い.実際にAPIが公開されれば多くの研究者に有用になると考えられ,ワイヤレスセンサネットワークの研究の発展に大きく貢献する有用性の高いものであり,ここに山下賞に推薦する.
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●ボット攻撃における加害者PCおよび指令サーバの探索
[マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム(H20. 7. 9)] (コンピュータセキュリティ研究会)

竹森 敬祐 君 (正会員)

1994年慶應義塾大学理工学部 卒業.
1996年同大学院理工学研究科 修了.
1996年KDD(株)入社.
2004年慶應義塾大学大学院 博士課程了,博士(工学).
現在,(株)KDDI研究所に勤務.
ネットワークセキュリティ,通信ネットワークに関する研究に従事.
2002年度電子情報通信学会学術奨励賞,2006年Interop Tokyoグランプリ,
2007年DICOMO最優秀論文賞および最優秀プレゼンテーション賞各受賞.
情報処理学会,IEEE,電子情報通信学会各会員

[推薦理由]ボットの被害者PCからの自己申告をもとに,被害者PC自身が加害者PCであることを自己申告するクレームドリブンな感染PC探索方式と,各加害者PCの通信履歴をセンターに集め,共通する情報から指令サーバを抽出する方式とを提案している.これにより,これまで単一プロトコルを想定した追跡では困難だった指令者PC/指令者サーバを特定できるようになった.本提案方式を実装し,その有効性を示している.提案方式は,新たなボット対策として有用性が高いく,山下記念研究賞として相応しい.
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●情報セキュリティ対策におけるモチベーションの構造に関する研究
[コンピュータセキュリティシンポジウム2008(H20.10.10)] (コンピュータセキュリティ研究会)

菅野 泰子 君 (正会員)

中央大学大学院理工学研究科博士課程後期課程情報セキュリティ科学専攻3年在学.
お茶の水女子大学文教育学部中国文学専攻卒業後,(株)日本航空勤務.
2003年から(独)情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンター研究員,
2006年より同,調査役,現在にいたる.現在,IPAにて,情報セキュリティの普及啓発,
海外セキュリティ組織との連携等に従事.2008年,CSS2008優秀論文賞受賞.

[推薦理由]情報セキュリティ対策は必要」だとわかっていても,なかなか進まない理由等を,心理学的観点から調査,分析を行ったことは大変評価に値する.これは企業の大小にかかわらず共通すると考えられる.実際,大企業ですら,対策整備に何年もかかっている.今後,中小企業へのセキュリティ対策を行うべきであるが,これを速やかに進めるための一考察になると考えられる.それゆえ,本研究論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●指向性アンテナおよび車車間通信を用いた歩行者位置追跡手法とその評価
[2009-ITS-36(H21. 3. 5)] (高度交通システム研究会)

澤 悠太 君 (正会員)

2007年 東北大学 工学部 情報工学科 卒業
2009年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報処理学専攻 修士課程修了
同年 株式会社メガチップス 入社

 

[推薦理由]本論文では,歩行者の交通安全支援を行うことを目的として,複数車両で協調して歩行者の位置を追跡する手法が提案されている.提案手法では歩行者の持つ端末が発するビーコンを,複数の車両が指向性アンテナを用いて受信することで歩行者の存在位置を推定する.推定した情報を車両間で無線通信を介して共有することで複数方向からの位置推定が可能となり,結果として歩行者の位置を1.5メートル程度の小さな誤差で推定でき,また,歩行者の移動も追跡できることが示されている.本研究は,現実的な設定から実用可能な結果を得ており,歩行者の安全確保という重要なアプリケーションの基礎として有用であるため,山下記念研究賞授賞候補者として推薦する.
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●MANETにおける通信グレーゾーン問題を考慮した高スループット経路の選択手法の提案と評価
[2008-EVA-25(H20.6.27)] (システム評価研究会)

田頭 茂明 君 (正会員)

2000年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程修了
2000年 広島大学工学部助手
2007年 九州大学大学院システム情報科学研究院 特任准教授(SSP学術研究員)
現在に至る。博士(工学)

[推薦理由]モバイル・アドホック・ネットワークでは,データパケットの到着が不安定な範囲に存在する端末を中継端末とした場合,経路のスループットが低下してしまう通信グレーゾーン問題がある.そこで発表者らは,二段階の経路探索方式を採用し,接続性を確保しつつ高スループットな経路を構築する手法を提案した.更に,提案手法を実機上で動作させて性能評価を行った結果,高スループット経路構築時には従来と比較して4倍程度,それができない場合でも低スループット経路による端末間の接続を確保できていることを確認した.本研究は実用性の高い経路探索方式を提案し効果を確認している点で有用性の高い研究であり,システム評価研究会からの山下記念研究賞候補に推薦したい.
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●振動波と加速度センサを用いた物体間の接触関係の取得手法
[2008-UBI-19(H20. 7.18)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)

柳沢 豊 君 (正会員)

1994 年大阪大学工学部情報システム工学科卒業、
1998 年同大学院工学研究科博士後期課程修了、
同年日本電信電話公社入社(基礎研究所)、
NTTコミュニケーション科学基礎研究所を経て、
2009 年西日本電子電話株式会社、現在に至る。博士(工学)
IEEE、情報処理学会、各会の会員。

 

[推薦理由]測位技術は,ユビキタスコンピューティングにおいて重要な研究テーマの一つとなっている.従来は物体の位置座標を正確に取得することを目指すものが中心で,高精度な位置を取得するための多大なコストの削減が課題であった.本研究は,状況依存サービスで必要とされる位置情報が,必ずしも座標値でなく,多くの場合,他の既知物体からの距離情報であるとに着目し,この中でも最も基本的な関係である接触状態を,安価で小型な振動モータと加速度センサを用いて正確に検出する方法を提案した.ユビキタスコンピューティングの実用化に貢献する研究事例として高く評価し,推薦する.
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●全教員に個別ファイアウォール機能を提供するキャンパスネットワークの構築
[2008-IOT-2(2008.7.24)] (インターネットと運用技術)

相原 玲二 君 (正会員)

1986年 広島大学大学院工学研究科博士課程後期修了(工学博士)
1986年 広島大学工学部助手
1989年 広島大学集積化システム研究センター助教授
1994年 広島大学総合情報処理センター助教授
2001年 広島大学情報メディア教育研究センター教授
2009年 広島大学情報メディア教育研究センター長
インターネット,動画像伝送システム,移動透過ネットワークアーキテクチャ等
の研究ならびにキャンパスネットワーク構築,運用等の業務に従事.

[推薦理由]本論文は,キャンパスネットワークにおいて研究者単位の個別ファイアウォールを提供する点に特徴があり,広島大学への導入事例と共に説明されている.本論文で提案する方式は,全学的な一元管理体制を構築し,全利用者(教員)に対して個別ファイアウォールを提供することを目標に,学内ネットワークを四つのゾーンに分割する階層型のセキュリティ構造を導入している.これにより,これまでは各サブネット内に設置されていたファイアウォール機能をゾーン境界に設置することが可能となり,対外接続部分への機能集約を回避して利用者の便宜を図りながら管理運用コストの低減を実現するなど,学内ネットワークにおける新しい運用管理方式として今後注目される試みである.
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●目的環境に適合した最少パッケージ構成の自動構成システム
[インターネットと運用技術シンポジウム2008(2008.12.4)] (インターネットと運用技術)

八木 貴之 君 (正会員)

2007年3月 京都工芸繊維大学 工芸学部 電子情報工学科卒業
2009年3月 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 情報工学専攻博士 前期課程修了
同年4月 三菱電機株式会社 入社

[推薦理由]本論文は,特定用途を目的としたOSの最小パッケージを構成する方式について提案をしている.特定用途を目的としているため,一般的な利用に全て対応する必要はないことに着目し,目的の環境で実際に動作させた結果を元にパッケージを構成する手法を採用している.具体的なパッケージ構成においては,各パッケージの依存関係グラフをもとに,実際の動作に関係ないパッケージは依存度の少ないものから削除し,仮想パッケージや選択的パッケージを再構成するといった最適化を行なう.本論文は,パッケージ情報の静的な解析では難しい最小パッケージの自動構成を,動的なアクションに対応させることで実現した点が評価できる.具体的な実例でも十分効果のあることが示されている.
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フロンティア領域

●全ての部分文字列を考慮した文書分類
[2008-NL-187(2008.9.25)] (自然言語処理研究会)

岡野原 太輔 君 (学生会員)

2007年3月東京大学情報理工学系研究科修士課程修了.
現在,同博士課程在学中.自然言語処理,機械学習,データ構造の
研究に従事.2005年IPA未踏ソフト創造事業,スーパークリエータ認定.
2009年言語処理学会年次大会優秀発表賞受賞.

[推薦理由]L1-ロジスティック回帰におけるGraftingを用いて,カーネルによらない部分文字列の総列挙による識別器の学習を実現した.全ての部分文字列を素性とした文書分類において拡張接辞配列をデータ構造に用いて極大部分文字列を利用するという工夫を行うことによりデータ量に対して線形の計算時間で実現しており,学術的にも,実験結果から得られる知見にも非常に興味深い内容であるので,山下記念賞に推薦する.
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●重要文摘出と文圧縮を組み合わせた新たな抽出的要約手法
[2009-NL-189(2009. 1.22)] (自然言語処理研究会)

富田 紘平 君 (学生会員)

2008年 東京工業大学 工学部 情報工学科 卒業
2009年 東京工業大学大学院 総合理工学研究科知能システム科学専攻 修士課程在学中

[推薦理由]本論文では,重要文抽出と文圧縮を同時に行うために,整数線形計画法により複数のスコア関数や制約を統合して扱う方法を提案し,実験によりROUGE-1で他のシステムよりも高い性能を得ているので,山下記念賞に推薦する.
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●複雑ネットワークからの構造情報抽出
[2009-ICS-155(2009.3.21)] (知能と複雑系研究会)

大沢 英一 君 (正会員)

1982年東京工業大学理学部数学科卒業.
1982年ソニー(株)入社.
1986~87年ハーバード大学大学院言語学科.
1989年(株)ソニーコンピュータサイエンス研究所入社.
2000年より公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科教授,現在に至る.
博士(工学).
マルチエージェントシステム,組織的問題解決モデル,エージェントアーキテクチャ,複雑ネットワークなどの研究に従事.
1994年人工知能学会全国大会優秀論文賞,2009年人工知能学会研究会優秀論文賞を受賞.
ACM,情報処理学会,日本ソフトウェア科学会,人工知能学会各会員.
日本ソフトウェア科学会理事.

[推薦理由]本論文では,複雑ネットワークの典型例であるWWWのハイパーリンクのネットワークを対象として,ネットワークの構造情報である弱い紐帯を手がかりにした情報抽出手法を提案していている.既存の検索エンジンを利用することでネットワーク全体は参照せずに,計算コストを削減した提案技術によって,従来のキーワード検索では発見が困難であった有用な関連ページの抽出を可能としている.また,実験により,提案手法を用いてWWWから有用で関連性の高い情報を抽出が可能であることを確認している.このように,本論文の有用性は高く,種々の実験を通してその妥当性を示している.これらの点から,本論文を山下賞候補論文として推薦するものである.
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●屋外環境下における大規模拡散反射物体の表面色推定
[2008-CVIM-163(2008. 5. 8)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)

川上 玲 君 (正会員)

2003 東大・工・電子情報工卒.
2008 同大学院博士了(情報理工学).
現在,同大生産技術研究所特任助教.
色恒常性,スペクトル解析,コンピュータビジョンにおける光学的解析と応用に関する研究に従事.

[推薦理由]本発表は,表面色を推定するために,光源の変化を用いて表面色推定を行う手法,屋外のシーンに対しても安定で正確な計算が可能な表面色推定の手法,さらに屋外の大規模物体に対して表面反射率推定を行う効率的な手法の3つを提案し,屋外環境下における大規模拡散反射物体にも適用しうる新手法を提案したものであり,新規性,有用性ともに極めて高いレベルを達成している.以上より,本論文は平成21年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●局所特徴量の関連性に着目したJoint特徴による物体検出
[2009-CVIM-166(2009. 3.13)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)

藤吉 弘宣 君 (正会員)

1992年中部大学工学部電子工学科卒業.
1994年同大大学院工学研究科修士課程修了.
1997年同大大学院博士後期課程満期退学.
1997~2000 年米カーネギーメロン大学ロボット工学研究所Postdoctoral Fellow.
2000 年中部大学講師を経て
2004年より同大准教授.現在に至る.博士(工学)
2005 年から1年間米カーネギーメロン大学ロボット工学研究所客員研究員.
計算機視覚,動画像処理,パターン認識・理解の研究に従事.
2005 年度ロボカップ研究賞.

[推薦理由]本発表は,複数のHOG特徴量間の共起を表現するJoint特徴を用いた動画像からの物体検出法に関するものであり,組み合わされた2つのセル間のHOG特徴量の共起を表現したJoint特徴を1段階目のReal AdaBoostにより組み合わせ,生成されたJoint特徴候補のプールを入力とした2段階目のReal AdaBoostによって最終識別器を構築することによって,単一のHOG特徴量のみでは捉えることができない物体の対称的な形状や連続的なエッジを捉え得ることを示したものである.人と車両を対象とした実験による評価もおこなっており,新規性,有用性ともに極めて高いレベルを達成している.以上より,本論文は平成21年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●ICTの活用と論述力支援の実践
[2009-CE-97(2008.12.20)] (コンピュータと教育研究会)

奥田 麻衣 君 (学生会員)

2005年9月 広島大学大学院国際協力研究博士課程前期 修了
現在    広島大学大学院国際協力研究科博士課程後期 在籍中 開発科学専攻
日本経済学会、日本金融学会、日本地域学会、国際開発学会、
情報処理学会、教育システム情報学会 各会員

[推薦理由]大学の社会科学系の学生に対して,マスプロ形式の授業を補完する目的で,論述力支援システムを構築し,運用した報告である.社会科学の分野での主要な論述スタイルを教員側で予め準備し,学生がガイドラインに沿って論述を進めると課題に解答できるよう設計してある.本システムへ移行する前は, WebCTを利用したインライン記述式によるレポート添削で指導をしていたが,採点コメントの該当箇所を特定できないという欠点があった.本システムによって, 200名程度の規模の授業でも不具合を生ずることなく,教育の効果を上げることができた.本システムは実用に供されており,完成度も高い.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●情報系工学科におけるロボットを用いた組込みシステム教育の実践
[2009-CE-98(2009. 2.28)] (コンピュータと教育研究会)

早川 栄一 君 (正会員)

1994年東京農工大学大学院工学研究科電子情報工学専攻博士後期課程単位取得退学.
同年同大学助手.
1998年拓殖大学工学部情報工学科助手
現在,同学科准教授.博士(工学).
組込みシステム,オペレーティングシステムなどのシステムソフトウェアの研究に従事

[推薦理由]大学の情報工学科の教育においてロボットを用いた組込みシステムを取り上げることは,システムプログラミングなどの理解が難しい科目で学習のモチベーションを持たせる上で大きな効果があることはよく知られているが,実施上で多大の困難を伴う.本発表では,カリキュラムを工夫することで,学生側のハードウェアに対する知識不足,プログラミングの難しさなどの問題点を克服し,ソフトウェア工学的要素も取り入れ,学生が主体的に課題に取むことを可能にしたことを報告している.また,教員側の負担に関して,実施上の工夫を述べている.本発表は,事例研究報告として優れており,多くの理工系学部の教育に示唆を与えるものである.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●Google Earthと『乾隆京城全図』を用いた北京歴史空間の情報基盤
[じんもんこん2008(2008.12.20)] (人文科学とコンピュータ研究会)

西村 陽子 君 (正会員)

1999年3月 中央大学文学部史学科東洋史学専攻卒業
2001年3月 中央大学大学院博士前期課程(東洋史学)修了
2007年3月 中央大学大学院博士後期課程(東洋史学)終了
2007年4月 国立情報学研究所特任研究員、現在に至る
じんもんこん2008最優秀論文賞

[推薦理由]約250 年前に作成された最古の北京実測図である『乾隆京城全図』のデジタル化と情報基盤としての活用について論じた.まずGoogle Earth を用いた幾何補正手法として,直線状の地物の形状を保存する「直線保存型距離加重法」を提案した.次に『乾隆京城全図』の古地図としての錯簡を訂正し,附された索引を全面的に再照合することで,その情報基盤としての信頼性を高めることに成功した.さらに古写真データベースとの統合や,参加型アーカイブへの発展などを論じており,人文科学と情報技術を融合した新たな研究手法を開拓するものとして学術的価値がきわめて高い.よって,本研究会より研究賞に推薦するものである.
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●コンピュータによる訓点資料の整理について
[じんもんこん2008(2008.12.21)] (人文科学とコンピュータ研究会)

岡本 隆明 君 (正会員)

1999年大谷大学大学院文学研究科仏教文化専攻修士課程修了
2003年同大学院同研究科同専攻博士後期課程満期退学
2005年大谷大学聖教編纂室委託聖教編纂室員.博士(文学)
2008年立命館大学グローバルCOEプログラム「日本文化デジタル・ヒューマニティーズ」P.D.

[推薦理由]歴史学・古文書学研究のために,史料内のすべての文字を位置情報とともにコンピュータ上で管理し,史料上の文字定位情報の効果的な検索・表示を実現するシステムの検討を行った.その結果,文字の論理的な位置情報と文書画像上の座標とを組み合わせることで,文書画像上に検索語の位置を示すという,誰が見てもわかりやすい表示方法を実現した.また,画像と文字とを関連付けたシンプルなデータを基礎として,訓点の整理・カタログ化を実現した.本研究には,隣接分野も含めた研究史の接合において,なお難点はあるものの,今後の可能性と人文科学における利用可能性の高さが,それを凌駕すると判断し,ここに研究賞に推薦するものである.
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●VocaListener:ユーザ歌唱を真似る歌声合成パラメータを自動推定するシステムの提案
[2008-MUS-75(2008. 5.28)] (音楽情報科学研究会)

中野 倫靖 君 (正会員)

2008年3月筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程修了.
博士(情報学). 2008年4月から 産業技術総合研究所特別研究員.
音楽デザイン転写・音響信号理解に基づく音インタフェースに従事.
歌声に関する音楽情報処理システムに興味を持つ.

 

[推薦理由]本発表では,歌声合成技術を用いた音楽制作を支援するために,ユーザの歌唱音声からその歌い方を真似て歌声合成するためのパラメータを,自動的に反復推定するシステムVocaListenerが提案された.本提案により,歌声合成システムやその音源(歌手の声)の違いにロバストな歌声合成が初めて実現された.また,ユーザ歌唱の音高が外れた場合にそれを補正したり,ビブラートを自動検出して抑制・強調するなど,歌い方を変更したりできる機能も導入している.本発表は,人々の音楽表現活動を劇的に高品質化する技術を実現しただけでなく,発表資料や説明も魅力的で説得力が高かったため,極めて山下記念研究賞にふさわしいと考える.
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●Orpheus:歌詞の韻律に基づく自動作曲システム
[2008-MUS-76(2008. 5.28)] (音声言語情報処理研究会)

深山 覚 君 (学生会員)

2008年 東京大学理学部卒業
現在, 同大学大学院情報理工学系研究科 修士課程在籍中
自動作曲や自動アナリーゼなどを可能とする,
高度なソルフェージュ能力を持つ計算機の実現を目指して研究を行っている.
情報処理学会, 日本音響学会, 先端音楽芸術創作学会, 日本音楽知覚認知学会, 各会員.

[推薦理由]本発表では,日本語の歌詞を希望のリズムと和音パターンとともに入力すると,歌詞の韻律(イントネーション)も考慮して作曲する新たな自動作曲手法が提案された.歌詞の韻律などの制約条件下で最尤経路探索問題を動的計画法で解くことで作曲を実現している.また,この作曲原理を実装した自動作曲システム"Orpheus"を構築し,評価実験により妥当な音楽性をもった歌唱曲を生成できることを示した.本発表は,人々の歌唱表現への欲求を強力に支援する技術を実現しただけでなく,発表資料や説明も魅力的でインパクトが高かったため,極めて山下記念研究賞にふさわしいと考える.
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●集合知を利用した語彙情報の収集・共有・管理システム
[2008-SLP-71(2008.5.23)] (音声言語情報処理研究会)

中野 鐵兵 君 (正会員)

1977年1月7日生.
1999年早稲田大学理工学部電気電子情報工学科卒業.
同年よりエレクトロニック・データ・システムズ(株),(株)アプレッソ勤務を経て,
2006年同大学大学院理工学研究科修士課程修了.
2009年同大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).
現在,同大学IT研究機構助教.
知覚情報処理技術を応用したソフトウェアの開発支援技術,
及びユーザインタフェースに関する研究に従事.

[推薦理由]音声言語処理システムにおいては,日々増えていく新しい語彙をどのように追加・更新していくかが大きな問題になっている.本研究ではこの問題に対して,Web上の様々な資源から新しい単語を自動的に収集するとともに,複数のサイトで単語辞書の情報を交換・共有できる枠組みを提案し,プロトタイプシステムを実装している.発表者はこれに加えて,プロキシエージェントに基づいて,特定の音声認識エンジンに依存しないで,音声アプリケーションを構成する方式を提案するなど,開発者/ベンダの壁を越えた枠組みを提唱しており,音声言語技術の普及への貢献が期待できる.
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●会議録作成支援のための国会審議の音声認識システム
[2008-SLP-74(2008.12.10)] (音声言語情報処理研究会)

秋田 祐哉 君 (正会員)

2000年 京都大学工学部情報学科卒業.
2002年 同大学院情報学研究科修士課程修了,
2005年 同博士後期課程修了.
京都大学博士(情報学).
2005年より京都大学学術情報メディアセンター助手(現 助教).
音声言語処理の研究に従事.
2007年 日本音響学会粟屋潔学術奨励賞受賞.
電子情報通信学会,日本音響学会,IEEE各会員.

[推薦理由]音声認識技術はこの10年余りの間に大きな進歩を遂げているが,人間の自然な話し言葉への対応は依然困難である.本研究では,国会での審議音声を対象として,大規模なコーパスを構築した上で,話し言葉の発音や言語モデルの精密な統計的モデル化を行い,音響モデルにも本格的に識別学習を導入している.その結果,85%の単語正解精度を実現し,音声認識技術が国会の会議録作成支援に利用可能であることを示した.当該技術は衆議院の次期会議録作成システムへの導入が進められており,高く評価できる.
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●将棋の棋譜を利用した,大規模な評価関数の調整
[ゲームプログラミングワークショップ2008(2008.11. 9)] (ゲーム情報学)

金子 知適 君 (正会員)

1997年東京大学教養学部卒業.
2002年東京大学院総合文化研究科博士課程修了.博士(学術).
2002年東京大学院総合文化研究科助手.
2007年助教.

[推薦理由]思考ゲームをプレイするプログラムの評価関数のパラメータを調節するための学習アルゴリズムの開発は,ゲーム情報学研究における最も重要な研究課題の一つである.本発表は先行研究よりも一般的なモデルを利用した新しいパラメータ調節手法を提案すると共に,強い将棋プログラムを作るためにプロ棋士の棋譜と探索を利用して評価関数の多数のパラメータを学習させた実例を報告している.作成された将棋プログラムが本発表の半年後に世界コンピュータ将棋選手権で優勝したことからも提案手法の実用性は確認できたと考えられる.以上,本発表は新規性と実用性ともに山下記念賞に相応しいと判断する.
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●分散制御されたLEDマトリックスを用いた電飾アート制御プラットフォーム
[2009-EC-12(2009. 3. 8)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)

木下 浩平 君 (正会員)

2007年神戸大学工学部電気電子工学科卒業
2009年同大学院工学研究科電気電子工学専攻修士課程修了
同年 (株)オリエンタルランド入社

[推薦理由]発表者は,複数のLEDマトリクスアレイを連動させるためのハードウェアアーキテクチャと,そのためのプログラム言語を自ら開発し,容易にLEDマトリクスを用いた表現を実現するための基礎技術を実現しました.研究会での発表では,実際に開発したシステムを用い,デモンストレーションを行いました.デモンストレーションでは単に開発したハードウェアを動作させるだけではなく,実際に開発したプログラム言語による明滅パターンを作成するなど,工夫に富むものでした.これらから,当研究会としては,山下記念研究賞の候補として十分と判断し推薦いたします.
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●木の最適ラベリング問題とその進化系統樹への応用
[2009-BIO-16(2009. 3. 6)] (バイオ情報学研究会)

柳橋 史成 君 (学生会員)

2009年 北海道大学 工学部情報エレクトロニクス学科 卒業現在、同大学 大学院情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻 修士課程在学中

 

[推薦理由]本論文は,インフルエンザウイルスの地理的な拡散の問題に対して,これを進化系統樹に対する最適ラべリング問題として定式化し,理論的解析に基づいて高速なアルゴリズムを与えている.さらにこれを実装し,その有効性を実際のウイルスのデータを用いた実験で確かめている.提案のアルゴリズムは,ウイルスの地理的拡散の解析以外にも,さまざまな解析問題に適用可能であり,系統樹解析における大きな可能性を拓くものである.まとめると,本論文は,バイオ情報学上の興味深い問題を,数理的な定式化と理論的なアルゴリズム設計によって統一的に解決しており,価値の高い研究である.
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