2006年度詳細

2006年度(平成18年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は、これまでは研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び、その発表者に贈られていたものですが、故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため、平成6年度から研究賞を充実させ、山下記念研究賞としたものです。受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で、年齢制限はありません。本賞の選考は、表彰規程、山下記念研究賞受賞候補者選定手続および山下記念研究賞推薦内規に基づき、各領域委員会が選定委員会となって行います。本年度は33研究会の主査から推薦された計57編の優れた論文に対し、慎重な審議を行い、決定されたうえで、第519回理事会(平成18年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです。本年度の受賞者は下記57君で、3月6日に早稲田大学で開催される第69回全国大会の席上で表彰状、賞牌、賞金が授与されます。

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS

<情報環境領域>
DPS HI(該当なし) CG IS FI AVM GN DSM DD MBL CSEC ITS QAI EVA(該当なし) UBI

<フロンティア領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO

コンピュータサイエンス領域

●iSCSI ストレージアクセスのトレースシステム
[2004-DBS-134(2004. 7. 14)] (データベースシステム研究会)
 

山口 実靖 君 (正会員)

工学院大学工学部情報通信工学科講師。
2002年東京大学大学院博士課程修了。博士(工学)。
iSCSIを用いたネットワークストレージの性能向上の研究に従事。
情報処理学会、電子情報通信学会会員。

[推薦理由]
受賞対象論文は、サーバ計算機とストレージ機器の分散協調システムとして動作するIP-SANシステムのアクセストレースシステムの提案と、その有効性の検証を行っている。 実験結果では、提案システムは多段プロトコルスタックの中から性能劣化原因を的確に発見できること、その回避により多並列アクセス時に4倍のI/O性能向上を実現できることが示されており、提案手法はIP-SANシステムの性能向上に大変有効な方法であると考えられる。よって本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する。
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●Webデータベースにおける入力フォーム情報の自動抽出
[2005-DBS-136(2005. 5. 20)] (データベースシステム研究会)
 

中藤 哲也 君 (正会員)

1992年3月 九州大学大学院総合理工学研究科情報システム学専攻修士課程修了。
1993年4月 九州大学大学院総合理工学研究科情報システム学専攻博士課程退学。
1993年5月 九州大学工学部助手。
2000年4月 九州大学情報基盤センター助手、現在に至る。
検索エンジン、Webマイニング、文字列処理の研究に従事。
情報処理学会、人工知能学会、言語処理学会、日本データベース学会各正会員。

[推薦理由]
受賞対象論文は、Webブラウザに表示される入力フォームから検索用キーワードを指定して利用するWebデータベース(検索サイト)の入力属性を自動的に抽出する手法を提案し、様々な実際のWebデータベースを対象として有効性を検証している。提案手法によりWebアプリケーションからWebデータベースを利用することが大変容易になると考えられる。実用化にはさらに抽出精度を向上する必要があるが、有用性は高く今後の進展が望まれる。よって本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する。
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●RTOSに基づいたソフトウェアのためのモデル検査ライブラリ
[組込みソフトウェアシンポジウム2005(2005. 10. 18)] (ソフトウェア工学研究会)
 

青木 利晃 君 (正会員)

1999年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了。博士(情報科学)。
同年4月 同大学助手。2001年12月-2005年3月まで科学技術振興機構さきがけ研究21研究員兼任、2006年3月より北陸先端科学技術大学院大学安心電子社会研究センター特任助教授。現在、情報処理学会組込みシステム研究会幹事、ソフトウェア工学研究会組込みソフトウェア研究グループ幹事。組込みシステム開発手法、形式的手法等の研究に従事。

[推薦理由]
本論文は、μITRON準拠のリアルタイムOS(RTOS)上で動作するソフトウェアを、モデル検査ツールSpinを用いて検証する手法を提案している。Spin では優先度付きマルチタスクを実行制御を扱えず、適用範囲が限定される。この課題に対し本研究は、仕様記述言語PromelaによるライブラリおよびC言語を併用したライブラリを実装し、RTOS上でのモデル検査の適用を可能とした。両ライブラリの仕様適合性および振舞いの同一性の検証に加えて、主に検証用のC言語実装と、主にシミュレーション用のPromela言語実装の2つの利用場面に応じた使い分けを提案する点でも実用性に富む。今後のソフトウェア工学や組込みソフトウェア技術への貢献が期待でき、山下記念研究賞に相応しいと言える。
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●MP3エンコーダを用いたヘテロジニアスチップマルチプロセッサの性能評価
[2006-ARC-166(2006. 1. 24)] (計算機アーキテクチャ研究会)
 

鹿野 裕明 君 (学生会員)

昭和52年生。
平成14年 中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻修士課程修了。
同年    (株) 日立製作所中央研究所入社。
平成16年より現在、早稲田大学 アドバンストチップマルチプロセッサ研究所 客員研究員。
平成18年 早稲田大学大学院理工学研究科情報・ネットワーク専攻博士課程入学、現在在学中。
現在、並列化コンパイラ並びに組み込みプロセッサに関わる研究に従事。
情報処理学会、電子情報通信学会員。

[推薦理由]
本論文では、将来の情報家電機器への応用が有望視されるヘテロジニアスチップマルチプロセッサ(以下HCMP)における、先駆的な研究を報告している。HCMPとは、汎用CPUやアクセラレータなどを複数搭載したチップであり、ソフトウェア・ハードウェア協調により低消費電力で高い性能を得ることが期待されている。本論文はHCMP の並列処理方式と電力制御方式を検討し評価したものであり、評価の結果、提案するHCMP(汎用CPU3基+アクセラレータ2基)が一つの汎用コアの16.3倍の性能、さらに電力制御を行うことにより24%の消費電力削減と高い効果を得ることを示した。本研究は今後の発展が大いに期待できる研究と考え、山下記念研究賞に推薦する。
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●電力制約下での高性能計算機クラスタ構成手法
[2006-ARC-167(2006. 2. 28)] (計算機アーキテクチャ研究会)
 

池田 佳路 君 (学生会員)

2005年 東京大学工学部計数工学科卒業
現在   同大学大学院情報理工学系研究科修士課程在学中

[推薦理由]
従来の計算機クラスタは、最大消費電力が冷却限界に対する許容電力を超えないように実装されている。しかし、最大消費電力が消費されることは稀で、通常は性能に余裕を残した状態で稼動している。本論文はこの点に着目し、最大消費電力は許容電力を超えてしまうハードウェア構成とし、実行中の消費電力を管理しながら実効消費電力が許容電力内になる最も高い周波数と電源電圧を選択する新しい計算機クラスタの構成方式を提案している。さらに、提案手法を実現するプロトタイプシステムを構築し、有効性を実機上で示している。以上から、本論文は新規性・有用性の両面で優れた研究であり、山下記念研究賞に推薦する。
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●実時間シグナルを用いたポーリングI/Oライブラリの設計
[コンピュータシステムシンポジウム2004(2004. 11. 16)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
 

河合 栄治 君 (正会員)

1996年3月京都大学理学部数学科卒業。
1998年3月奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。
2001年3月奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了。
2000年10月科学技術振興事業団さきがけ21「機能と構成」研究者、2003年4月奈良先端科学技術大学院大学附属図書館研究開発室助手、2005年7月同大学院大学情報科学研究科助手(兼任)を経て、2006年9月より同大学院大学情報科学研究科特任助教授。博士(工学)。
大規模情報配信システムを対象として、オペレーティングシステム技術、インターネット技術、分散処理技術、マルチメディア技術に関する研究に従事。

[推薦理由]
この論文では多数の同時コネクションを扱うネットワークサーバにおいて、プログラマビリティを維持しつつ高性能のI/Oの多重処理管理を実現している。ここで用いている、POSIX実時間シグナルは高性能が期待できる反面、プログラミングインタフェースが従来広く使われてきたポー リングモデルと大きく異なるため、その利用が容易ではなかった。本研究はこの問題を解消し、今後のサーバ実装において重要な技術となることが期待される。実装および綿密な性能評価も示されており、山下記念研究賞に相応しい。
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●単一システムイメージを提供するための仮想マシンモニタ
[コンピュータシステムシンポジウム2005(2005. 11. 29)]  (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
 

金田 憲二 君 (正会員)

2001年3月、東京大学理学部情報科学科 卒業。
2003年3月、同大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 修士課程修了。
2006年3月、同 博士課程修了。博士(情報理工学)。
同年6月、グーグル株式会社 入社。
在学中はクラスタ・グリッド計算および仮想計算機に関する研究に従事。

[推薦理由]
複数の計算機からなるクラスタを単一の共有メモリ型マルチプロセッサとして扱えるようにする仮想マシンモニタを開発し、実際のアプリケーションを動作させられるレベルに達している。性能に関しても、典型的な並列アプリケーションに対して高い性能を発揮できている。開発した仮想マシンモニタはオープンソースのソフトウェアとして公開されており、国産の有用な基盤ソフトウェアとして高く評価できる。また、論文もよく書けており、完成度の高い研究となっている。よって、山下記念研究賞に推薦する。
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●順序回路のタイミング例外パス検出のための実用的方法
[2004-SLDM-117(2004. 12. 2)] (システムLSI設計技術研究会)
 

樋口 博之 君 (正会員)

平成3年 京都大学工学部情報工学科卒業。
平成5年 京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。
平成5年 株式会社富士通研究所入社。現在に至る。LSIのCADの研究に従事。
平成10年8月~平成11年8月 米国Colorado大学Boulder校 客員研究員。
平成17年 九州大学大学院システム情報科学府情報工学専攻 博士後期課程修了。
博士(工学)。電子情報通信学会、ACM、IEEE 各会員。

[推薦理由]
大規模な順序回路の設計では、正確なタイミング制約情報を与えることが、必要不可欠である。本論文では、タイミング制約情報を抽出するために、フォールトパスやマルチサイクルパスといったタイミング例外パスを検出する実用的方法を提案している。マルチプレクサグラフという概念の導入により、フォールトパスの数え上げに要する計算量を削減し、また、フリップフロップの対に対するマルチサイクルパス解析の検出能力の改善手法を提案している。順序回路の高性能化のための有用な手法であり、今後の発展も期待されることから本研究賞に推薦する。
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●不完全定義多出力論理関数を表現するBDDとその応用について
[2004-SLDM-117(2004. 12. 2)] (システムLSI設計技術研究会)
 

松浦 宗寛 君 (正会員)

平成2年  九州工業大学工学部第二部電気工学科中退
平成15年 放送大学教養学部自然の理解専攻卒業
平成2年  九州工業大学情報工学部電子情報工学科技官
平成13年 同教務職員、現在に至る。
論理設計用CADの研究に従事。

[推薦理由]
多出力論理関数を二分決定グラフで表現する際に、特性関数を表現するアプローチがある。本研究では、不完全定義多出力論理関数を特徴関数で表現する方法を新たに提案している。また、不完全定義多出力論理関数を表現する二分決定グラフの幅を小さくする方法についても提案している。提案手法は関数分解や LUT カスケードの合成に有用であると考えられ、論理関数操作における基本的な手法として高く評価でき、今後の応用も期待されることから本研究賞に推薦するものである。

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●任意回路構造に対する最小幅トランジスタ配置のための計算量削減手法
[DAシンポジウム2005(2005. 8. 24)] (システムLSI設計技術研究会)
 

飯塚 哲也 君 (学生会員)

昭和54年11月 栃木県那須郡馬頭町生れ
平成14年3月 東京大学 工学部電子工学科卒
平成16年3月 東京大学大学院 工学系研究科電子工学専攻 修士課程了
平成16年4月 日本学術振興会 特別研究員DC1
現在 東京大学大学院 工学系研究科電子工学専攻 博士課程在学中
平成14年度 電子情報通信学会 学術奨励賞受賞
平成15年度 電気・電子情報学術振興財団 猪瀬学術奨励賞受賞
IEEE、電子情報通信学会 各学生会員

[推薦理由]
本研究では、任意構造を持つCMOS回路のための最小幅トランジスタ配置手法について新手法を提案している。これまで扱うことができなかった双対な関係持たないP/Nトランジスタを含む回路に対しても最小幅の配置を生成することができ、階層的なアプローチの採用により、トランジスタ配置の幅をほとんど増加させることなく計算量の大幅削減に成功している。また、実用的な実行時間でより大きな回路を処理できることを実験的に示している。CMOS回路におけるトランジスタ配置手法に関する、有効な新手法の提案であることを高く評価し、本研究賞に推薦する。
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●2.16GHz SPARC64マイクロプロセサ設計用タイミング・レイアウト設計手法
[DAシンポジウム2005(2005. 8. 26)] (システムLSI設計技術研究会)

伊藤 則之 君 (正会員)

1958年生。
1982年京都大学工学部情報工学科卒業。
同年富士通(株)入社。
入社以来、メインフレーム・UNIXサーバなどのCPUやチップセット設計用CAD開発全般に従事。

[推薦理由]
タイミング・レイアウト設計は、高い周波数性能を持つ回路を実現するための重要な工程である。本論文は、2.16GHz SPARC64 マイクロプロセッサ設計に適用された手法について述べている。提案手法はタイミング中心の設計フローであり、独自のルールドリブン設計、階層設計、カスタム設計、インクリメンタル設計を利用しており。これにより、最先端プロセスによる高性能マイクロプロセッサの開発に成功している。タイミング・レイアウト設計における有効な方法論を示し、実証した研究として高く評価されることから本研究賞に推薦するものである。
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●動的アクセスパターン解析によるソフトウェア分散共有メモリ
[先進的計算基盤システムシンポジウム2004(2004. 5. 28)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
 

松葉 浩也 君 (学生会員)

平成17年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了
平成18年8月 同博士課程中退
現在、東京大学情報基盤センター助手

[推薦理由]
本論文では、FDSMと呼ばれる新しい分散共有メモリシステムを提案している。FDSMでは通信における一貫性維持にかかるオーバヘッドを削減し、高速化を達成している。性能評価の結果、姫野ベンチマーク、NAS Parallel BenchmarksのCGを使用したベンチマークにおいてFDSMはSCASHと呼ばれる別の分散共有メモリシステムと比較して、それぞれ36%、38%の高速化を達成していることが明らかになった。本研究は今後ハイパフォーマンスコンピューティング研究への大きな貢献が期待できるものであり、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦致します。
 
●大規模SMPクラスタにおける固有値ライブラリの通信最適化について
[2006-HPC-105(2006. 2. 27)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
 

今村 俊幸 君 (正会員)

1969年生。
1996年京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻博士後期課程単位認定退学。
同年  日本原子力研究所入所。
計算科学技術推進センターにて途切れのない思考を支援する並列処理基本システムSTAの開発に従事。
2001年から2002年までシュツットガルト大学HLRSにて招聘研究員。
2003年より電気通信大学講師。現在に至る。
HPCとその周辺ソフトウェア、数値計算における並列・分散処理の研究に従事。
博士(工学)。平成11年日本応用数理学会論文賞、同年石川賞企業部門受賞。日本応用数理学会、SIAM 各会員。

[推薦理由]
本論文では、分散メモリ型並列計算機での密行列固有値計算に特有のbcast、allreduce等の集合通信を最適化している。copy、split-merge操作を再帰的に組み合わせかつ、SGI Altix3700Bx2の結合トポロジーを考慮した通信順序の選択により、bcast、allreduce等の集合通信の最適化を図るとともに、集合通信に対する自動チューニング展開への足がかりとしている。本研究は今後のハイパフォーマンスコンピューティング研究への大きな貢献が期待できるものであり、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦致します。
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●Deductive system による C プログラムのポインタ解析
[(2005. 6. 2)] (プログラミング研究会)
 

千代 英一郎 君 (正会員)

1999年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修士課程修了。
同年日立製作所(株)入社。
システム開発研究所にてコンパイラの研究開発に従事。

[推薦理由]
本研究は、Cプログラムに対するflow/context-insensitive、inclusion-based、field-sensitiveなポインタ解析の新しい定式化および実現方法を提案している。具体的にはポインタ解析を式の構造に基づきdeductive systemにより定式化することで、解析精度に加え、実用的な解析処理系に望まれる高い解析効率と実現の容易性を可能にしている。また、定式化された解析規則を関係代数演算として書き換えることで既知のRDBの最適化手法が利用できる。新規性・実用性に優れた研究であり、山下記念研究賞にふさわしい研究である。
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●閉ジャクソンネットワークに対するパーフェクトサンプリング法
[2004-AL-97(2004. 10. 14)] (アルゴリズム研究会)
 

来嶋 秀治 君 (学生会員)

平成14年3月  東京大学工学部計数工学科 卒業
平成16年3月  東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程 数理情報学専攻修了
平成16年4月  東京大学大学院情報理工学系研究科博士後期課程数理情報学専攻進学
同年4月     日本学術振興会特別研究員(DC1)
現在に至る。

[推薦理由]
この論文は、ProppとWilsonによって提案された単調CFTP(Coupling From The Past)サンプリング法を閉ジャクソンネットワークに適用して、その積形式解の分布に厳密に従う確率空間からの能率の良いサンプリング法を与えている。この結果は、目的の分布を唯一の極限分布として持ち、かつ単調なマルコフ連鎖を設計することにより達成されている。単調性の解析は優美であり、またサンプリングの手法として必ずしも周知であるとは言えなかったCFTPの手法を実用上重要な問題に適用して、その有効性を広く知らしめた意義も大きい。よって山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する。
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●Compact Encoding of Plane Triangulations with Efficient Query Support
[2005-AL-101(2005. 5. 19)] (アルゴリズム研究会)
 

中野 眞一 君 (正会員)

1987年 東北大学大学院工学研究科電気及通信工学専攻修了。同年 セイコーエプソン(株)入社。
1990年 東北大学工学部情報工学科助手。
1992年 博士(工学)東北大学
1996年 東北大学工学部通信工学科助教授。
1999年 群馬大学工学部情報工学科助教授。
2004年 群馬大学工学部情報工学科教授。グラフアルゴリズムの研究に従事。

[推薦理由]
本研究は、すべての面が三角形であるような平面グラフ構造を、極めて小さなメモリのみを使用して圧縮保存する手法を提案したものである。さらに、この圧縮したデータに対して、圧縮したまま様々な基本クエリ(指定した2点の隣接判定や指定した点に接続する辺を時計回りに列挙など)を高速に計算する手法を与えている。すなわち、データを圧縮しているにもかかわらず、各種のアルゴリズムがほぼそのまま実行可能となる効率的なデータ構造を新たに提案しており、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する。 
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●3択行動エージェントによる金融市場のモデル化
[MPSシンポジウム2005(2005. 10. 13) ] (数理モデル化と問題解決研究会)
 

佐藤 彰洋 君 (正会員)

2000-2001年、日本学術振興会特別研究員。
2001年3月、  東北大学大学院情報科学研究科 博士課程修了。博士(情報科学)
同年4月、   京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻 助手、現在に至る。
エージェントモデルに立脚した経済シミュレーションと高頻度経済時系列分析の研究に従事。情報処理学会、電子情報通信学会、物理学会、JAFEE会員。

[推薦理由]
本論文は、外国為替の高頻度価格変動と確率共鳴現象との関連を数理モデルにより扱っている。これは発展性のある大変面白いテーマであり、その内容と成果について説得力のある文章でしっかりと書かれている。本論文は2005 年度MPSシンポジウムにおいて発表されたものであり、情報処理学会誌「数理モデル化と問題解決」のシンポジウム特集論文誌の編纂において、他論文とともに専門家による厳正な査読を受けた。その時、本論文は査読者より特に高い評価を受けた。その評価は、他の研究発表会での論文と比較した際にももっとも高い評価を得た。以上のことより、本論文を山下記念研究賞受賞論文として推薦するものである。
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情報環境領域

●ユーザ指向ストリーミングサービスのための映像の主観品質と映像コンテンツの関係を利用した映像分類手法
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(2005. 12. 2)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
 

加藤 由花 君 (正会員)

1989年3月 東京大学理学部地球物理学科卒業
1989年4月 日本電信電話株式会社入社
2002年3月 電気通信大学大学院情報システム学研究科博士後期課程修了。博士(工学)
2002年4月 電気通信大学 大学院情報システム学研究科助手
2006年4月 産業技術大学院大学 産業技術研究科准教授
現在に至る。
情報ネットワーク、マルチメディア通信に関する研究に従事。情報処理学会、電子情報通信学会、IEEE 各会員

[推薦理由]
本論文は、映像の重要度を考慮したレート制御により高品質な映像配信サービスを提供するための基盤となる、映像と視聴者の主観品質との関係を示している。従来、映像の重要度の設定方法として、コンテンツ製作者の主観や映像内の動きを基に設定する方法が提案されているが、視聴者側の重要度を適切に反映しているわけではなかった。本論文では映像の重要度を視聴者の感覚に近づけるために必要となる映像分類手法を示しており、映像の重要度設定の自動化に鍵となる重要な基盤であることから、本論文を山下記念研究賞に推薦する。
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●シミュレーションによるHeavy-tailedトラフィックの特性解析
[2006-DPS-126(2006. 3. 17)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
 

中嶋 卓雄 君 (正会員)

1986年熊本大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。
富士通(株)を経て、
1991年熊本大学大学院自然科学研究科博士課程単位修得後退学。
熊本大学工学部助手を経て、
2001年より九州東海大学応用情報学部情報システム学科に勤務し、現在に至る。
自己相似性を持つネットワークの評価およびシステムパフォーマンスの評価に関する研究に従事。ACM、IEEE-CS各会員。

[推薦理由]
本論文は、インターネットトラフィック設計に重要となるトラフィックの自己相似性について、特にWebアクセスの場合の原因を解析している。シミュレーションにより、この自己相似性が、小さいShapeパラメタでのHeavy-tailedなファイルサイズの分布により導出され、パワー則に従ったデータレートの分布により強調されること、及びネットワークのエラーレートが高い場合に維持されることを示した。本論文で示したトラフィックの自己相似性の原因はネットワーク設計の重要な理論的基盤を与えることから、本論文を山下記念研究賞に推薦する。
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●物理指向補間による弾性体アニメーションの制御手法
[Visual Computing・グラフィクスとCAD合同シンポジウム(2005. 6. 16)] (グラフィクスとCAD研究会)

近藤  亮 君 (正会員)

2004年3月 慶應義塾大学環境情報学部卒業
2006年3月 慶應義塾大学政策・メディア研究科修了
同年4月 (株)ソニー木原研究所入社
現在、アニメーション技術に関する研究開発に従事。

 

[推薦理由]
キーフレームで指定された形状情報を用い、物理法則に基づいた物体の変形を制御することができる弾性体のアニメーション手法を提案している。提案手法ではこれまでと逆のアプローチである、部分的な物体の挙動をあらかじめユーザが指定し、それを元に全体のアニメーションを作成するという斬新なアイデアに基づいている。ユーザの意図 に沿いながら物体の局所的形状変形や軌跡の制御が行え、かつ物理法則に基づいた自然な アニメーションの作成を可能とする優れた手法である。今後のコンピュータグラフィクス の発展への貢献が期待されることから、山下記念研究賞に推薦する。
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●美しい曲線セグメント
[2005-CG-121(2005.11.19)] (グラフィクスとCAD研究会)
 

吉田 典正 君 (正会員)

1989年3月 早稲田大学 理工学部 機械工学科 卒業
1997年3月 博士(工学) 早稲田大学
1995年4月 早稲田大学 理工学部 機械工学科 助手
1997年10月 東京農工大学 工学部 情報コミュニケーション工学科 助手
2003年4月 日本大学 生産工学部 管理工学科 専任講師
2005年4月 日本大学 生産工学部 マネジメント工学科 助教授  現在に至る
コンピュータグラフィックスおよび形状処理に関する研究に従事。ACM、情報処理学会、電子情報通信学会、画像電子学会、精密工学会会員。

[推薦理由]
曲率変化が単調で曲率対数分布図が直線で表されるような平面曲線である「美しい曲線」の形状を対話的にコントロールして描画する方法を新たに提案している。これを実現するために、新たに方向角と弧長のそれぞれで美しい曲線を定式化し、曲率対数分布図における直線の傾きを変えたときの曲線の性質を明らかにしている。美しい曲線を実用に供することを目指した先駆的な研究であり、今後のコンピュータグラフィクスの発展への貢献が期待されることから、山下記念研究賞に推薦する。
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●コンピュータグラフィックによる永福寺の復原
[2005-IS-91(2005. 3.16)] (情報システムと社会環境研究会)

大滝 由明 君 (正会員)

平成7年4月  栃木県立矢板東高等学校入学
平成10年3月 栃木県立矢板東高等学校卒業
平成11年4月 湘南工科大学工学部電気工学科入学
平成15年3月 湘南工科大学工学部電気工学科卒業
平成15年4月 湘南工科大学大学院工学研究科電気工学専攻博士前期過程入学
平成17年3月 湘南工科大学大学院工学研究科電気工学専攻博士前期過程修了
平成17年4月 湘南工科大学研究生
平成17年9月 湘南工科大学非常勤助手

[推薦理由]
文化遺産認知に関する課題を抱えた自治体と文化財のデジタルアーカイブ化研究の課題を抱えた大学とが「協働という覚書き」を締結するメリットを議論し、実践によってその効果を実証している。情報技術を社会に還元する研究活動の一スタイルを示したことが評価された。また、この研究プロジェクトの特徴を、①自治体による文化財の発掘調査と大学による発掘図面の活用という連携、②復元のモデリングにおける同時代建築物との比較研究、③文化財復原の表現における3DCG技術の適用、④復原の完成度を高めるための建築史専門家による検証、および⑤複合遺産の登録などの活動で示している。これらの研究成果が評価された。
[ 戻る ]
●MDAによるコンポーネントベースモデリングの実例
[2005-IS-93(2005. 8.25)] (情報システムと社会環境研究会)

浜口 弘志 君 (正会員)

2000年3月 九州工業大学情報工学部電子情報工学科卒業。
2002年3月 九州工業大学大学院情報工学研究科博士前期課程修了。
同年4月 日立製作所入社。

[推薦理由]
情報システムを効率よく開発するために、組織全体のビジネスプロセスとデータと情報システムの関連構造をエンタープライズアーキテクチャの体系に合わせて整理し、業務モデルからアプリケーションモデルへ変換する方法論を提案した。モデル変換の定義であるマッピングルールはOMGが推進する参照アーキテクチャとUMLをベースとしている。これらのコンポーネントベースの開発方法論を25件のプロジェクトに適用しており、分析工程では業務機能コンポーネントやシステム機能コンポーネントの流用率が高いことを示すとともに、この結果を設計・開発まで連携できることを示している。有用性が評価された。
[ 戻る ]
●最大マージン原理にもとづく多重トピック文書の自動分類
[2004-FI-76(2004. 9.16)] (情報学基礎研究会)
 

賀沢 秀人 君 (正会員)

1997年 東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。
2006年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了。
1997-2006年、日本電信電話(株)コミュニケーション科学基礎研究所にて、自然言語処理および機械学習の研究に従事。
2006年より、グーグル株式会社にてソフトウェア開発に従事。
2004年 情報処理学会平成15年度論文賞受賞。情報処理学会、ACM、IEEE各会員。
博士(工学)。

[推薦理由]
文書に該当するトピックを全て付与する多重トピック分類問題において、複数のトピックに関連づけられることにより得られる特徴を積極的に利用するため、異なるトピックの組合せをクラスとみなした多クラス分類手法の提案している。多クラス分類を導入する際の問題として、クラス数の増大に伴った学習データの減少による過学習の問題があるが、最大マージン原理に基づいたラベリング手法を用いることにより、その影響を低減し、有用性を確認している。多重分類の新たな考え方を提案している点が高く評価できる。
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●A Further Note on Evaluation Metrics for the Task of Finding One Highly Relevant Document
[2006-FI-82(2006. 3.22)] (情報学基礎研究会)
 

酒井 哲也 君 (正会員)

1968年生。
1993年早稲田大学大学院理工学研究科工業経営学専門分野修士課程修了。
同年  (株)東芝入社。
2000年~2001年英ケンブリッジ大学客員研究員。
FIT2005論文賞受賞。
現在、情報処理学会論文誌(ジャーナルおよびTOD)編集委員、情報学基礎研究会幹事、電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティ誌幹事。工学博士。

[推薦理由]
近年のWeb検索などにおける利用実態に則した形の評価を行うためには、従来の網羅的な検索を行うための情報検索システムを評価する指標とは異なる指標が求められる。本論文では、非常に役立つ文献を一つだけ見つければ良いという課題を評価するための指標を提案すると共に、提案指標が個別課題の実験結果の影響を受けにくい安定性の高い指標であることを確認している。評価値が持つ特徴が明確であり、実用性が高いと考えられる点と、他の評価値との比較も実験をとおして、丹念に比較している点が高く評価できる。
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●画像情報のデータ量削減型階層秘密分散法に関する検討
[2006-AVM-52(2006. 3. 3)] (オーディオビジュアル複合情報処理研究会)
 

橋本 真幸 君 (正会員)

1997年 大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了。
同年   株式会社KDDI研究所入社。
以来、画像符号化伝送方式の研究、医用画像伝送システムの開発に従事。
近年では、ボリュームデータ符号化方式、画像情報の秘密分散方式の研究に従事。
情報処理学会、電子情報通信学会、映像情報メディア学会会員。

[推薦理由]
本論文では秘密分散法とJPEG 2000階層符号化方式を組み合わせた画像情報の階層的な秘密分散方式を提案し、その有効性を示している。提案方式では、秘密分散法の持つ高い安全性に加え、合成する分散情報の数に応じて再生画像品質が制御できる機能性を実現している。この際、階層符号化における各階層を重要部分とそれ以外に分割し、重要部分にはデータ量は多いが安全性の高い(k, n)しきい値秘密分散法を、重要部分以外には安全性は低いがデータ低減効果の高い(k, L, n)しきい値秘密分散法を用いて分散情報を作成する。上記により、安全性を保ったまま分散情報のデータ量が削減でき、画像情報配信システムでの応用が期待できる。
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●学習者の注目を集めることができる講義映像コンテンツの自動作成
[2006-GN-59(2006. 3.23)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)

中村 亮太 君 (学生会員)

2002年3月 東京工科大学工学部情報通信工学科卒業
2004年3月 東京工科大学大学院工学研究科修士課程修了
現在、慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程、ならびに東京工科大学Linuxオープンソース嘱託研究員、生体情報応用、マルチメディア処理に関する研究に従事。
DICOMO2004 優秀プレゼンテーション賞受賞
DICOMO2005 最優秀プレゼンテーション賞ならびに優秀論文賞受賞
DICOMO2006 最優秀プレゼンテーション賞受賞

[推薦理由]
本研究は、現在の講義において中心的な役割を果たす電子スライド資料を、講義内容に合わせて重要箇所を注目しやすくするために自動的に強調表示する仕組みに関するものである。スライド中の重要箇所を自動的に認識し、テレビ番組の手法を適用して文字の一部を隠し、受講者の興味や注目を意識的に集める工夫がなされている。この研究は、指導者側の技能や作業時間に左右されていた部分をシステム 化し、理解しやすい講義の実現を手助けする手法を提案した点で優れた研究であるといえる。今後のグループウェア研究、そして教育の質そのものへの貢献が期待されることから、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する。
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●操作者を識別可能な協調学習用多点認識テーブルトップインタフェース
[2006-GN-59(2006. 3.23)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
 

北原 圭吾 君 (学生会員)

2005年慶應義塾大学理工学部情報工学科卒業。
現在、同大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻修士課程在学中。
ヒューマンインタフェースと協調学習支援の研究に従事。

[推薦理由]
本研究では、野外学習の協調的復習作業を支援するテーブルトップインタフェースを開発し、従来の復習支援システムでは困難であった「実物体を介した効率的な復習」を実現している。特に、協調学習において重要となる「電子情報の受け渡し」および「電子情報の表示の向き」に着目し、直感的な受け渡し手法を実装したほか、多点認識可能なディスプレイ上で操作者の向きに情報を自動的に調整している点などに新規性、有用性がある。本研究の成果は学習分野以外の協調活動支援を行なう上でも有益なものであり、山下記念研究賞に相応しいものと考える。
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●ディスクレス環境の教育用計算機システムに適した Linux システムの実装
[分散システム/インターネット運用技術シンポジウム2004年度(2004.12.10)] (分散システム/インターネット運用技術研究会)
 

桝田 秀夫 君 (正会員)

1998年 大阪大学大学院 基礎工学研究科物理系専攻情報工学分野博士課程修了。博士(工学)。
1998年 大阪大学情報処理教育センター助手。
2000年 大阪大学サイバーメディアセンター情報メディア教育研究部門助手。
2005年 京都工芸繊維大学情報科学センター助教授となり、現在にいたる。
情報処理学会、電子情報通信学会、各会員。

[推薦理由]
本研究発表では、大学における大規模な教育用計算機システムの運用コストを低減するための様々な仕組みを提案している。単にオープンソースのソフトウェアを使うだけでなく、実際のコードに立ち入り読み解きながら活用することで、「オープンであること」を有効活用した事例として興味深い。また、提案されたシステムを実際に運用していることは高く評価できる。さらに、実際に教育用計算機システムを運用している多くの組織に有益な情報を提供している点などを評価する。
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●大学における印刷管理の新しい試み
[2005-DSM-38(2005. 8. 5)] (分散システム/インターネット運用技術研究会)

安東 孝二 君 (正会員)

1991年 東京大学工学部原子力工学科卒業。
1996年 東京大学大学院工学系研究科システム量子工学博士課程満期退学。
同年より東京大学教育用計算機センター助手に着任。
1999年 教育用計算機センター改組により東京大学情報基盤センター助手となる。
一貫して東京大学教育用計算機システムの設計・構築・運用に関わり現在に至る。
2004年よりインターネット協会迷惑メール対策委員。

[推薦理由]
製品化の原型であったECCS1999(製品は IO GATE) の長年にわたる運用に基づく問題点の分析をもとにそれを改善する新たなシステム,ECCS2004 を提案し、これまでの運用をもとに問題点が改善されたことを確認している。本システムも従来システム同様、実運用に耐えうる完成度を持っている。
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●デジタルドキュメント研究10年の傾向
[2005-DD-50(2005. 5.27)] (デジタルドキュメント研究会)
 

斎藤 伸雄 君 (正会員)

1987年 文教大学情報学部経営情報学科 卒業。
同年  日本電気セキュリティシステム 入社。
1991年 凸版印刷株式会社 入社、現在に至る。
文書管理、デジタルコンテンツの管理や配信に関する研究開発に従事。
情報処理学会、ACM各会員。

[推薦理由]
本論文はデジタルドキュメント研究会発足以来10年間の全研究報告の抄録情報に基づいて,データマイニングにより年代ごとのトピックと傾向を分析したものである。この分析の結果,XMLの規格の登場,インターネットの爆発的な普及などをきっかけにキーワードが変動し,対象範囲が拡大している傾向などを明らかし,今後の研究動向を予想する手がかりとしても活用可能なことを示したものである。さらに,本分析手法の他研究会等への適用可能性も極めて高いことより,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する。
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●MobiSNMP:SNMP over Mobile IPv6による移動体情報の継続的収集方法
[2005-MBL-33(2005. 5.26)] (モバイルコンピューティング とユビキタス通信研究会)
 

北形  元 君 (正会員)

1972年生。
2002年 東北大学大学院同研究科博士後期課程修了。
現在、東北大学電気通信研究所助手。
博士(情報科学)。
エージェント指向コンピューティングに興味を持つ。
情報処理学会、電子情報通信学会各会員。

[推薦理由]
本論文は、移動体無線通信のためのネットワーク管理手法MobiSNMPを提案している。ストア&フォワード型の管理オブジェクトの導入により、マネージャとエージェント間の接続が失われている間にも、エージェントが収集すべき情報をキャッシングし、情報の欠落を防ぐことを可能としている。提案手法はプロトタイプ実装によりその有効性が示されており、移動体通信のネットワーク情報収集手法としてその利用と発展が見込まれる。以上のように本研究は優れた成果を示しており、山下記念研究賞にふさわしい論文としてここに推薦する。
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●アドホックネットワークにおける送信電力制御を用いた省電力ルート構築法
[2005-MBL-34(2005. 9.15)] (モバイルコンピューティング とユビキタス通信研究会)
 

萬代 雅希 君 (正会員)

1996年慶應義塾大学理工学部電気工学科卒。
1998年同大学大学院理工学研究科電気工学専攻修士課程了。
2004年同大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻博士課程了。
1998年~2000年ソニー(株)
2001年~2003年日本学術振興会特別研究員(DC2)
2004年静岡大学情報学部情報科学科助手、現在に至る。主として、通信ネットワークに関する研究に従事。博士(工学)。電子情報通信学会、情報処理学会、IEEE各会員。

[推薦理由]
本論文は、アドホックネットワークにおいて、制御トラヒックを増大させることなく簡便に省電力ルート構築が可能なルーチング方式を提案している。提案方式は、ルート構築要求メッセージの受信電力に反比例した時間を算出し、この時間の間メッセージ転送を遅延させることにより、省電力ルートを構築する。また、市販のネットワークカードへの適用を考慮し、離散的に送信電力が制御される現実的な状況に対応する方式も提案している。ルートの消費電力およびルート構築遅延に関するシミュレーション評価により、提案方式の有効性が示されている。以上のように本研究は優れた成果を示しており、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する。
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●送信者に認証機能を付加したブロードキャスト暗号
[コンピュータセキュリティシンポジウム2005(2005.10.27)] (コンピュータセキュリティ研究会)
 

金沢 史明 君 (学生会員)

平成15年 東京理科大学理学部応用数学科卒業。
平成17年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。
現在、筑波大学システム情報工学研究科リスク工学専攻博士後期課程在学中。
電子情報通信学会、IEEE、ACM各会員

[推薦理由]
Bonehらによって提案されているブロードキャスト暗号BGW方式の問題点である送信者の身元確認を、送信者の秘密鍵をヘッダ中に組み入れることで実現し、ブロードキャスト暗号に本人認証機能を追加している。さらに、提案方式を応用し、1-out-of-n署名と検証者指定署名の両機能を持った署名方式を提案している。この方式は署名長がnに依存しないものであり、帯域制限のある環境下で非常に有効である。信頼性と実用性、完成度が高いことから、本論文を推薦する。
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●無線LANシステムにおけるシームレスユーザ認証方法に関する考察
[マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2005)シンポジウム(2005. 7. 8)] (コンピュータセキュリティ研究会)
 

朴  美娘 君 (正会員)

1983年 漢陽大学工学部電子工学科卒。
同年   漢陽大学工学部助手。
1993年 東北大学大学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程了。
同年   東北大学電気通信研究所助手。
1994年 三菱電機株式会社入社。
現在、同社情報技術総合研究所勤務。通信プロトコル設計、ネットワークセキュリティ、移動通信ネットワーク等の研究に従事。博士(工学)。電子情報通信学会会員。

[推薦理由]
本論文は、無線LANにおいて高速なハンドオーバーを可能とするための、モビリティとスケイラビリティを達成するモバイル端末の認証方式を提案している。提案方式は、従来方式による認証で課題となっていたハンドオフ遅延やパケットロスの影響を改善するために事前共有鍵に基づいた認証方式を導入し、これにより低遅延かつ高速なユーザ認証を実現している。また、提案方式を実現するための手法は、IPv6に関連する各種仕様との親和性があり、実現性の高いソリューションを提供しているので、本論文を推薦する。
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●プローブカーデータのリアルタイム補完技術
[2005-ITS-20(2005. 3.11)] (高度交通システム研究会)
 

熊谷 正俊 君 (正会員)

1975年生。
1997年 東北大学工学部機械知能工学科退学。
2002年 東北大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻博士課程修了。博士(情報科学)。
同年   (株)日立製作所入社、日立研究所勤務。
博士課程では脚車輪型移動ロボットの予測歩容制御の研究に、現職においては交通情報システムの研究開発に従事。日本機械学会、日本ロボット学会各会員。

[推薦理由]
本論文では、プローブカーデータを用いた交通情報の提供において、プローブカーデータの欠損を、特徴空間を介してリアルタイムで高精度に補完する技術を新たに提案している。また、実データを用いて従来技術と比較し、補完誤差の低減、リアルタイム補完など、良好な結果が得られていることを実証している。今後、実用化が進むと期待されるプローブカーへの交通情報提供において、研究開発者、サービス提供者に極めて有益な知見を与えるものとして評価する。よって、本論文の発表者を山下記念研究賞受賞候補者に推薦する。
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●車群ネットワークを利用した高信頼性MACプロトコルについて
[2005-ITS-21(2005. 6.17)] (高度交通システム研究会)

和田 脩平 君 (学生会員)

1981年生。
2005年静岡大学情報学部情報科学科卒業。
現在、同大学大学院情報学研究科修士課程在学中。
ITSにおける通信プロトコルに関する研究に従事。
電子情報通信学会学生会員。

[推薦理由]
本論文では、高度道路交通システム(ITS)における車車間通信において、TDMAを基本とし、各車両がマスタ車両を選出して車群ネットワークを構成し、マスタ車両を中心とした集中制御により高信頼性を実現するプロトコルを提案している。また、シミュレーションにより制御パケットの到達率の観点から評価し、低衝突率のデータ通信が可能であることを実証したものである。今後、実用化が期待される事故防止の支援や自動運転の実現などにおいて、研究開発者、サービス提供者に極めて有益な知見を与えるものとして評価する。よって、本論文の発表者を山下記念研究賞受賞候補者に推薦する。
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●複数無線基地局同時利用のためのLIN6の拡張
[2005-QAI-17(2005.10.28)] (高品質インターネット研究会)
 

藤川 賢治 君 (正会員)

1970年生れ。
平成5年京都大学工学部情報情報工学科卒業卒業。
京都大学より、平成7年に工学研究科修士号を、平成12年に博士号(情報学)を受ける。
平成9年より京都大学大学院工学研究科情報工学専攻助手、情報学研究科助手。
平成18年よりルート株式会社主任研究員。
情報処理学会会員、電子情報通信学会会員、モーバイルブロードバンド協会会員、みあこネット総括技術責任者。

[推薦理由]
本発表は、無線LANの技術を利用した移動体通信において、LIN6(Location Independent Network for IPv6)の技術を拡張し、複数の基地局を同時に利用しつつ高速にハンドオーバを行う手法を提案するものである。提案手法は実際に実装され、既存の手法との比較によってその有効性の確認も行われている。本研究は、今後の実用的なモバイルネットワークの普及に向けて意義深いものであり、山下記念研究賞に推薦する。
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●ホタテ養殖支援のための小型海洋観測ブイの開発
[2006-UBI-10(2006. 2.17)] (ユビキタスコンピューティン グシステム研究会)
 

和田 雅昭 君 (正会員)

2005.1 公立はこだて未来大学講師
2004.12 (株)東和電機製作所退社
2004.3 北海道大学大学院水産科学研究科博士後期課程修了(社会人特別選抜)
2002.4 北海道大学大学院水産科学研究科博士後期課程入学(社会人特別選抜)
1993.4 (株)東和電機製作所入社
1993.3 北海道大学水産学部漁業学科卒業

[推薦理由]
ホタテ養殖における実際のニーズに基づく取り組みである。夏季に流れ込む塩分濃度の低い冷水塊における斃死の被害が問題となっており、その対策として、多点、多層の水温を計測し水温分布を可視化できれば、冷水塊の流入を早期に把握し被害を防ぐことが考えられる。そこで、個人単位で導入可能な小型海洋観測ブイを開発し、ホタテ養殖海域に多数設置して水温分布を可視化することによって、本来の目的であるホタテの斃死の予防が可能となるほか、冷水塊の流入メカニズムの解明が期待されるなど、地域の産業の発展に大きく寄与できる取り組みである。ユビキタスコンピューティングの実用化を目指した研究事例として高く評価し、推薦する。
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フロンティア領域

●高性能計算環境を用いたWebからの大規模格フレーム構築
[2006-NL171(2006. 1.13)] (自然言語処理研究会)
 

河原 大輔 君 (正会員)

1997年京都大学工学部電気工学第二学科卒業。
1999年同大学院修士課程修了。2002年同大学院博士課程単位取得認定退学。
東京大学大学院情報理工学系研究科学術研究支援員を経て、2006年独立行政法人情報通信研究機構研究員、現在に至る。博士(情報学)。
自然言語処理、特に構文解析、省略解析、知識獲得の研究に従事。

[推薦理由]
格フレームという言語解析の基礎となる言語資源を獲得するという重要な研究課題において、大規模Webコーパスを対象にし、グリッドコンピューティングを用いて既存の50倍の規模をもつ格フレームを構築し、有意義な成果を得たことは、山下記念賞の値する。
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●極性反転に対応した評価表現モデル
[2005-NL168(2005. 7.23)] (自然言語処理研究会)
 

高村 大也 君 (正会員)

1974年生。
1997年東京大学工学部計数工学科卒業。2000年同大大学院工学系研究科計数工学専攻修了(1999年はオーストリアウィーン工科大学にて研究)。
2003年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士課程修了。博士(工学)。
2003年より東京工業大学精密工学研究所助手。
自然言語処理、特に学習理論等の応用に興味を持つ。
情報処理学会、ACL各会員。

[推薦理由]
自然言語処理において重要なトピックとなった評判検索に関して、有意義な成果を得たことは、山下記念賞の値する。
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●架空名義入札に頑健なオークションプロトコルの計算論的制度設計
[2006-ICS-143(2006. 3.28)] (知能と複雑系研究会)
 

松尾 徳朗 君 (正会員)

2001 佐賀大学文化教育学部学校教育課程卒業。
2003 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科知識社会システム学専攻博士前期課程修了。
2006 名古屋工業大学大学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。
2006 山形大学工学部情報科学科情報メディア科学講座 助教授。
2005 電気通信普及財団テレコムシステム技術学生賞受賞。2006情報処理学会FIT2005ヤングリサーチャー賞受賞。 エージェント間交渉のためのメカニズムデザイン、オークション理論、エージェントに基づく電子商取引支援および教育/学習支援、知的学務情報処理システム、定性推論に基づく学習者の概念形成のための教育支援などの研究に関心を持つ。IEEE、AAAI、電気学会、人工知能学会、電子情報通信学会、日本ソフトウェア科学会、教育システム情報学会、日本教育工学会各会員。

[推薦理由]
本研究は、分散人工知能の分野において注目されているオークション研究に関して、不正入札をコンピューテーショナルな手法に基づいて発見し、不正入札に頑健な組み合わせオークションメカニズムを構築している。その目的および手法のみならず有効性および信頼性において学術的に特に優れている。特に、不正入札に関する理論的分析だけではなく、そこから得られた知見に基づいて現実的な問題解決の視点に立ち、問題を解決している。本研究は、コンピューテーショナルなメカニズムデザイン研究の先駆けとなる位置づけであり、今後の当該分野の研究を牽引する位置づけとなりうる。
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●周波数領域における方向変換モデルを用いた歩容認証
[2006-CVIM-152(2006. 1.20)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 

槇原  靖 君 (正会員)

2001年3月 大阪大学工学部応用理工学科卒業
2002年9月 大阪大学大学院工学研究科電子制御機械工学専攻博士前期課程修了
2005年3月 大阪大学大学院工学研究科電子制御機械工学専攻博士後期課程修了
現在、大阪大学産業科学研究所助手。コンピュータビジョン・パターン認識の研究に従事。博士(工学)。
情報処理学会、日本ロボット学会、日本機械学会各会員。
日本機械学会第79期ロボティクス・メカトロニクス部門ベストプレゼンテーション表彰(2002年)、日本ロボット学会第18回研究奨励賞(2003年)受賞。

[推薦理由]
本論文では、方向の異なる歩容画像列に対し、その歩容の個人差から個人を認証手法を提案している。歩容認証の従来研究の多くが、歩容特徴の現れやすい側面方向の歩行に限定しているのに対し、本研究では方向変換モデルを用いることで、少数参照方向の周波数領域の歩容特徴をもとに様々な方向の歩容特徴に変換し、変換された特徴を用いて照合を行っている点が特長である。また、実験では24方向の歩容画像列をデータセットとして、少数の参照特徴から各方向の特徴の変換が精度良く行われ、それにより高い認証率が得られることを示している。以上より、本論文は平成17年度山下記念研究賞にふさわしいと考えここに推薦する次第である。
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●疎テンプレートコンデンセーション法による見え情報の学習を伴う実時間物体追跡
[2006-CVIM-153(2006. 3.17)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 

尺長  健 君 (正会員)

1953年生まれ。
1976年 京都大学工学部情報工学科卒。
1978年 同大学院工学研究科修士課程情報工学専攻修了。同年より、NTTに研究員として勤務。
1991年 京都大学より、工学博士の学位を取得。
1996年より、岡山大学工学部情報工学科教授。
2005年より、同大学院自然科学研究科(産業創生工学専攻計算機科学講座)教授。

[推薦理由]
移動物体の追跡は、一般に同一の物体でも、画像上での見え方が時々刻々変化するため、安定にかつ高速に追跡することは容易ではない。本論文は、この問題に対し、見え方の変化を逐次学習することと疎な画素からなるテンプレートのマッチングに基づいた確率的追跡手法を融合することによって、実時間処理を可能にしつつ、物体追跡の精度を上げる手法を提案している。特に、異なる2つの学習率に基づいたモデル更新を切り替えることによって、安定に物体追跡が可能であることを示している。以上より、本論文は平成17年度山下記念研究賞にふさわしいと考えここに推薦する次第である。
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●プログラミング入門教育用学習環境PEN
[2005-CE-81(2005.10.22)] (コンピュータと教育研究会)
 

中村 亮太 君 (正会員)

2004年3月 大阪学院大学情報学部 卒業
同年4月   大阪市立大学大学院創造都市研究科都市情報学専攻情報基盤研究分野修士課程入学
2006年3月 大阪市立大学大学院創造都市研究科都市情報学専攻情報基盤研究分野修士課程修了
2006年4月 大阪府立泉北高等学校常勤講師
現在に至る

[推薦理由]
プログラミング入門のための学習環境を実現し、評価を行っている。類似なものは他にも多数あるが、本研究はコンピュータの本質の理解を目的としたものであり、初心者に配慮した入力補助システムを導入した点が特徴である。このような環境を整えることは、本学会が提言している「手順的な自動処理」を多くの人に体験的に理解してもらうことの実現につながると考えられ、今後の発展に期待ができ、高く評価される。
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●Javaプログラミング入門単位認定型完全e-learningへ向けての試み~評価バージョン~
[2005-CE-82(2005.12.10)] (コンピュータと教育研究会)
 

高岡 詠子 君 (正会員)

平成7年 慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了 博士(工学)
平成8年 財団法人 千歳科学技術大学設立準備財団主事、慶應義塾大学訪問研究員、慶應義塾女子高等学校数学科非常勤講師
平成10年 千歳科学技術大学光科学部光応用システム学科 助手
平成13年 千歳科学技術大学光科学部光応用システム学科 専任講師 現在に至る
専門分野:コンピュータと教育、e-learningコンテンツ開発、地域連動型Webアプリケーション

[推薦理由]
言語Javaの教育を完全なe-learningで実施する実践的な研究である。大学初年度におけるJavaの教育は難度が高く、対面式の授業であっても学生の習得率は高くない。この点をオンライン教材や統合開発環境の構築など、独自の工夫で解決する試みは高く評価できる。本研究は完成度が高く、実際の教育で使われているという意味でも、価値が高い。さらに、本研究では評価もきちんと行っており、高く評価される。
[ 戻る ]
●親族関係分析システム「アライアンス」による「宗門改帳」分析の試み
[人文科学とコンピュータシンポジウム(2005.12.17)] (人文科学とコンピュータ研究会)
 

杉藤 重信 君 (正会員)

昭和26年生。
昭和49年甲南大学文学部社会学科卒業。
昭和51年甲南大学大学人文科学研究科応用社会学専攻修士課程修了。
昭和57年甲南大学大学院人文科学研究科応用社会学専攻博士課程単位取得退学。修士(社会学)。
昭和63年椙山女学園大学人間関係学部助教授。現在、同大学教授(同大学院人間関係学研究科教授を併任)。
昭和59年以来、オーストラリア先住民(アボリジニ)の文化人類学的研究に従事。最近では平成12年より科学研究費補助金(基盤B)をえて家系図作成および親族データベースの開発をおこなっている。

 

川口  洋 君 (正会員)

昭和35年生。
昭和57年 筑波大学第1学群人文学類卒業。
昭和61年 筑波大学大学院博士課程歴史人類学研究科中退。
平成6年  博士(文学)、筑波大学より。
筑波大学学術情報処理センター、東京家政学院筑波短期大学、帝塚山大学経済学部などを経て、平成14年より帝塚山大学経営情報学部・教授。
江戸時代から明治期を対象とする人口研究を支援するために、古文書史料から人口分析を行なうシステムを開発・公開している。

[推薦理由]
推薦対象となる論文は、杉藤氏の開発による親族関係分析システムと名づけられた系図データベースシステムに、川口氏の「宗門人別改帳」のデータベースを搭載することにより、歴史人口学に新たな分析手法を提示するものである。杉藤氏にはすでに文化人類学の立場から、アポリジニの親族分析関係を記録・分析するためのデータベースシステム構築の実績があり、川口氏にはDANJURO命名される宗門人別改帳の構築の実績がある。本論文は、それぞれの定評あるデータベースのコラボレーションという意味でも、今後のデータベースありようと、新たな知の可能性を提示しえるものと判断し、推薦対象とする次第である。
[ 戻る ]
●ドラムパターン推定によるドラム音認識誤り補正手法
[2005-MUS-61(2005. 8.5)] (音楽情報科学研究会)

吉井 和佳 君 (学生会員)

2003年京都大学工学部情報学科卒業。
2005年同大学大学院情報学研究科修士課程修了。
同年、同研究科博士後期課程に進学し、現在に至る。
2005年より日本学術振興会特別研究員(DC1)。
音楽情景分析・音楽推薦システム・音楽鑑賞支援インタフェースなどに興味を持つ。
2004年FIT2004論文賞、2005年MIREX2005 Best in Class Award、2006年インタラクション2006ベストインタラクティブ発表賞各受賞。
電子情報通信学会、IEEE各学生会員。

[推薦理由]
音楽音響信号認識の分野において、打楽器音認識は、音の過渡性および倍音構造の複雑性ゆえに難問とされてきた。本研究は、これを、ドラムパターンという高次のトップダウンモデルの推定問題として定式化している。その着想、実装、評価の一連の取組は緻密であり、洗練が感じられる。さらに、音楽産業界において実際に必要とされる問題設定を選びとり果敢に挑戦し成果を示した点も、高く評価されるべきものである。
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●多次元尺度構成法による音響空間の2次元可視化
[2004-SLP-52(2004. 7.17)] (音声言語情報処理研究会)
  

庄境  誠 君 (正会員)

①所属・役職名_旭化成株式会社・新事業本部・音声ソリューションビジネス推進部・部長、旭化成株式会社・新事業本部・情報技術研究所・所長、旭化成グループフェロー
②学位_〔授与機関〕奈良先端科学技術大学院大学、〔学位〕博士(工学)、〔取得年〕1998年、〔専攻〕 音情報処理学
③学歴_1981年3月京都大学工学部数理工学科卒業、1983年3月京都大学大学院工学研究科数理工学専攻前期博士課程終了、1998年3月奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科音情報処理学専攻後期博士課程修了
④職歴_ 1983年4月旭化成工業株式会社入社、1985年10月~1987年9月ヘルシンキ工科 大学客員研究員、2003年4月~情報技術研究所所長、2003年10月~旭化成グループフェロー、2006年8月~音声ソリューションビジネス推進部部長
⑤研究開発経歴_ 1983年~1984年MRIの信号処理の研究開発、1984年~1985年蛋白質の立体構造の3次元表示の研究開発、1985年~1989年ニューラルネットワークベースの音声認識の研究開発、1989年~1992年内線電話番号案内システムの研究開発、1992年~1994年音声認識LSIの研究開発、1994年~1996年固体録音LSIの研究開発、1996年~1998年音声認識LSI研究開発、1998年~2002年音声認識ミドルウェアVOREROの研究開発、2002年~2006年統計的多次元尺度構成法の研究開発

[推薦理由]
発表者は、多様な環境下で発声された音声のバリエーションを、音声認識のための音響モデル構築の観点から可視化する、COSMOS法を考案した。授賞候補とする論文発表では、様々な音声コーパスを用いて学習された音響モデルを、当該法により分析した結果を示し、その有効性を明らかにした。さらに、「統計的音声認識の応用範囲を拡大するために、今後どのような音声コーパスを、どの程度収集する必要があるのか。」という問題を提示し、COSMOS法がその問題を議論する有力なツールとなることを示した。当該問題提起の重要性は多くの研究者に認識され、当該発表は、今後進めるべき研究の方向性など、有意義かつ活発な議論を喚起したことから、山下賞に相応しい研究論文発表と認められる。
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●音声訂正の評価
[2005-SLP-57(2005. 7.15)] (音声言語情報処理研究会)
 

緒方  淳 君 (正会員)

平成10年 龍谷大・理工・電子情報卒。
平成12年 同大大学院修士課程了。
平成15年 同大学院博士後期課程了。同年、産業技術総合研究所入所、現在に至る。博士(工学)。
音声認識、音声インタフェースに関する研究に従事。
平成12年度日本音響学会粟屋潔学術奨励賞、平成13年度電子情報通信学会学術奨励賞、WISS2004ベストペーパー賞各受賞。
情報処理学会、日本音響学会、電子情報通信学会各会員。

[推薦理由]
発表者は、音声認識の認識誤りを効率良く、かつ容易に訂正できるようにすることを目指し、「音声訂正」という斬新な音声入力インタフェースを提案している(2004-SLP-54)。これは、基本的な誤り訂正機能に加えて、即時誤り訂正機能、発話中休止機能という特徴的な機能を有するものである。本発表では、被験者による評価実験を実施した結果、本インタフェースの有効性が高く評価されたことを報告した。効果的なデモンストレーションを交えており、極めて説得力に富んだ発表であった。音声認識が広く普及するためには、ユーザの視点に立った使い易さの研究が急務であることからも、山下記念研究賞にふさわしい研究である。
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●公共音声情報案内システム「たけまるくん」の運用および収集発話の分析
[2004-SLP-53(2004.10.22)] (音声言語情報処理研究会)
 

李  晃伸 君 (正会員)

平成8年 京都大学工学部情報工学科卒。
平成10年 同大学大学院修士課程了。
平成12年 同大学院情報学研究科博士課程了。
同年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助手。
平成17年より 名古屋工業大学大学院工学研究科助教授。
主として音声認識・音声言語理解の研究に従事。
博士(情報学)。平成14年 日本音響学会粟屋潔学術奨励賞受賞。情報処理学会、電子情報通信学会、日本音響学会、IEEE 各会員。

[推薦理由]
発表者は、非音声の音響的棄却機能を持つマルチモデルの音声認識器と、質問データベースの検索に基づく一問一答型の対話機構を備えた、音声対話システム「たけまるくん」による、公共案内サービスの実験運用を長年に渡り継続している。発表では、発話の内容や分布、認識精度の向上と利用頻度との対応、などについて大量のデータに基づき議論がされた。実環境下での音声対話システムの開発・運用について、示唆に富む優れた発表であり、山下賞に相応しい研究論文と認められる。
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●SLP雑音下音声認識評価WG活動報告-評価用データと評価手法について-
[2005-SLP-59(2005.12.22)] (音声言語情報処理研究会)
 

中村  哲 君 (正会員)

昭56 京都工繊大・工芸・電子卒。昭56~平6 シャープ(株)研究所に勤務。昭61~平1 ATR自動翻訳電話研究所に出向。平4 工学博士(京都大学)。平6~平12 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授。平12年4月国際電気通信基礎技術研究所(ATR)音声言語コミュニケーション研究所音声音響研究室長。平成16年1月よりドイツカールスルーエ 大学客員教授、平成17年4月より音声言語コミュニケーション研究所所長。平成18年4月より(独)情報通信研究機構知識創成コミュニケーション研究センター音声言語グループリーダ(兼務)。音声・音響・マルチモーダル情報処理の研究に従事。平4 日本音響学会粟屋学術奨励賞、平成13年当学会インタラク ション2001ベストペーパ賞。平成18年3月まで情報処理学会音声言語情報処理研究会主査。

 

[推薦理由]
発表者は、雑音環境下で劣化した音声を認識する手法を、大規模に比較評価するための研究基盤(音声データベース、基本音響モデル、音声認識実験用スクリプト、評価ツール)を整備する活動を組織・指導するとともに、中心的に活動に取り組んだ。発表では、基盤整備の重要性と今後の方向性を示しつつ、整備された研究基盤に基づく複数研究機関の実験結果を比較検討しており、多くの研究者の今後の研究に指針を与えた。
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●ゲームの著作物性とゲームソフトの競争フィールド設定
[2006-EIP-30(2006. 2.18)] (電子化知的財産・社会基盤研究会)
 

板倉 陽一郎 君 (正会員)

2002年3月 慶應義塾大学総合政策学部卒業。
2004年3月 京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻修士課程修了。
2004年4月 慶應義塾大学法務研究科(法科大学院)専門職学位課程入学、現在に至る。
2004年12月より中央大学研究開発機構客員研究員。通信産業政策及びコンテンツ産業の研究に従事。
情報処理学会、情報ネットワーク法学会、法と経済学会、社会・経済システム学会各会員。

[推薦理由]
板倉陽一郎氏は、大学院修士課程で工学系の研究を経験した後、現在は法科大学院において法律学を学んでいる。受賞対象となった論文は、工学と知的財産法を中心とした法律学の架け橋とも言うべき内容を持ち、氏のオリジナリティが存分に発揮された好著である。
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●ボードゲーム「シンペイ」の完全解析
[2006-GI-15(2006. 3. 7)] (ゲーム情報学研究会)
 

田中 哲朗 君 (正会員)

1965年生まれ。1987年 東京大学工学部計数工学科卒業。1992年 同大学院博士課程修了。博士(工学)。東京大学工学部助手、東京大学教育用計算機センター助教授を経て、1999年より東京大学情報基盤センター助教授。
情報処理学会、日本ソフトウェア科学会、ACM各会員。平成15年度情報処理学会論文賞受賞。

 

[推薦理由]
本論文では、新しく発明されたゲーム「シンペイ」について、後退解析を適用することにより、ただちに数学的な解を求めることに成功した。また、勝ちに要する最長手数やサイクル及びツークツワンクの存在など人間に興味深い結果があわせて得られている。以上のように、本研究はゲーム情報学の有効性を示しており、本論文を山下記念研究賞候補論文として推薦するものである。
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●楽曲の技術的な敷居を低くする手法の開発に向けて
[2006-EC-3(2006. 3.13)] (エンタテイメントコンピューティング研究会)

大島 千佳 君 (正会員)

1996年武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。1999年北陸先端科学技術大学院大学博士前期課程入学。2004年同大学院博士後期課程修了。優秀修了者。博士(知識科学)。2004年(株)ATRメディア情報科学研究所研究員。2005年同知能ロボティクス研究所研究員兼務。2006年より同認知情報科学研究所研究員。NICTユニバーサルメディア研究所へ出向。1993年、1995年武蔵野音楽大学にて福井直秋賞、2004年インタラクション2004ベストインタラクティブ発表賞、ACM Multimedia 2004 Best Paper Award 各受賞。日本子ども学会、日本創造学会各会員。

[推薦理由]
素人でも楽器を演奏する楽しさを体験できる方法として、楽譜を簡略化して段階的に練習することができるアプローチと実現例を提案している。 今後の研究の発展に期待したい。
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●能動学習を用いた効率的な化合物スクリーニング方法
[2005-BIO-1(2005. 7.25)] (バイオ情報学研究会)
 

麻生川 稔 君 (正会員)

1986年 東京工業大学電子物理工学専攻修士課程修了。同年 日本電気(株) C&Cシステム研究所。
1992~1993年 米国CMU(カーネギーメロン大学)客員研究員。
2003~2005年 大阪大学基礎工学部講師。
2005~2006年 東京大学大学農学生命科学研究科講師。
現在、日本電気(株)基礎環境研究所 主任研究員。バイオインフォマティクス研究と事業化に従事。
1992年 情報処理学会全国大会奨励賞。
情報処理学会、日本バイオインフォマティクス学会、各会員。博士(工学)。

[推薦理由]
創薬研究に重要なGタンパク質受容体を標的とする化合物の効果的なスクリーニング方法を開発し、実際の応用へと結び付けている。内容だけでなく、プレゼンテーションが非常によかった。
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