2003年度(平成15年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は、これまでは研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び、その発表者に贈られていたものですが、故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため、平成6年度から研究賞を充実させ、山下記念研究賞としたものです。受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で、年齢制限はありません。本賞の選考は、表彰規程、山下記念研究賞受賞候補者選定手続および山下記念研究賞推薦内規に基づき、各領域委員会が選定委員会となって行います。本年度は表彰対象の18研究会の主査から推薦された計27編の優れた論文に対し、慎重な審議を行い、決定されたうえで、第488回理事会(平成15年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです。本年度の受賞者は下記27君で、それぞれ研究発表会、またはシンポジウムにおいて表彰状、賞牌、賞金が授与されます。
 

コンピュータサイエンス領域

●アスペクト指向プログラミングへのモデル検査手法の適用
[OO-2001(2001.8.22)](ソフトウェア工学研究会)

鵜林 尚靖君 (正会員)

昭和35年生。昭和57年広島大学理学部数学科卒業。平成8年筑波大学大学院経営政策科学研究科経営システム科学専攻修士課程修了。平成11年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系博士課程修了。博士(学術)。昭和57年(株)東芝入社。現在、同社ソフトウェア技術センターに勤務。平成14年より芝浦工業大学システム工学部非常勤講師。ソフトウェア工学、プログラミングモデルなどの研究に従事。
[推薦理由]
本論文は、アスペクト指向プログラミング(AOP)と呼ばれる、ソフトウェアの様々な特性をモジュール化する新たな方法を対象とし、特に、個別に設計されたアスペクトを合成した場合に、全体としてのアスペクトがデッドロックなどを起こさないことをモデル検証の方法を用いて自動的に検証する方法を提案している。AOPにおけるアスペクトの合成では実行に依存した動的な振舞いを合成することになるため、その合成したソフトウェアの振舞いが所期の振舞いをすることを示すことは困難である。また、振舞いが大きく変わる可能性がある。これに対して、本論文では、モデル検査の方法を適用し、合成されたプログラムの検証方法を提案し、AOP言語の一つであるAspectJを用いた例題により、その有効性を示した。また、モデル検査の記述にもAOPが有効であることも示した。本研究の成果は、AOPという新たなプログラミングパラダイムの確立に寄与する新規性の高い成果であり、今後のソフトウェア工学の研究への貢献が大きいと考えられることから、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する。
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●アクセス制御ポリシーによるClass of Serviceの導入
[OO-2002(2002.8.28)](ソフトウェア工学研究会)
 

登内 敏夫君 (正会員)

[推薦理由]
Webシステムのサービス品質として重要な応答性を優先ユーザに保証するためにアクセス制御ポリシーに基づく機構を採用し、優先ユーザへの応答時間を予測する モデルを提案した。実験システムを構築することで提案の予測モデルが実測値をうまく説明することを示した。今後のネットワークソフトウェアで重要となるSLAを支える技術として、さらなる研究の発展を期待できる。以上の点から、今後のソフトウェア工学の研究への貢献が大きいと考えられ、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する。
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●0/1の局所性を利用したデータ値予測機構のハードウエア量削減
[2002-ARC-146(2002.2.1)](計算機アーキテクチャ研究会)

佐藤 寿倫君 (正会員)

1999年10月 九州工業大学 情報工学部 助教授
1991年4月 株式会社東芝 入社
1991年3月 京都大学大学院 工学研究科 修士課程修了
1989年3月 京都大学 工学部 卒業
[推薦理由]
本論文は、値の局所性を有効に活用し、データの投機実行に欠かせない値予測の信頼性を向上させる重要な概念を提案している。また本研究は、電力消費の削減という投機実行において従来あまり考慮されていなかった検討を行ったという観点からも独創性の高いものである。さらに、候補者は従来より投機実行において多くのパイオニア的研究を行っており、当該分野の研究推進に大きく貢献してきた。本論文は今後のプロセッサアーキテクチャ研究の発展に対し大きな貢献が期待できるものであり、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦致します。
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●分散メモリシステム上でのマクロデータフロー処理のためのデータ到達条件
[JSPP2002(2002.5.31)](計算機アーキテクチャ研究会)

本多 弘樹君 (正会員)

昭和59年早稲田大学理工学部電気工学科卒業。平成3年同大学大学院理工学研究科博士課程修了。工学博士。
昭和62年早稲田大学情報科学研究教育センター助手。平成3年山梨大学工学部電子情報工学科専任講師、平成4年同助教授。平成9年電気通信大学大学院情報システム学研究科助教授、現在に至る。
並列処理方式、並列化コンパイラ、マルチプロセッサアーキテクチャ、Gridの研究に従事。情報処理学会、電子情報通信学会、IEEE、ACM各会員。
[推薦理由]
本論文はマクロデータフロー処理(MDF)を分散メモリ環境で実現するためのデータ
到達条件を提案している。MDFはループ並列処理の限界を越える技術として従来共有メモリ型並列計算機を対象として実現されてきた。本研究では、このMDFを現在急速に普及しているクラスタ型並列計算機などの分散メモリ環境環境上で実現するためのタスク間データ授受関係表現法としてデータ到達条件という新規性の高い概念を提案している。本研究は今後の並列分散処理研究への大きな貢献が期待され、山下記念研究賞に相応しい論文として推薦致します。
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●プッシュダウンシステムの拡張およびそのモデル検査法
[(2003.1.23)](プログラミング研究会)

新田 直也君 (正会員)

平成3年阪大・工・原子力卒。
平成4年~10年(株)ダイナウェアに勤務。
平成14年奈良先端大・情報博士後期課程了。
同年奈良先端大・情報助手。
現在に至る。博士(工学)。
ソフトウェア検証、形式論理に関する研究に従事。
[推薦理由]
本研究は、モデルの自動検査、特にプッシュダウンシステムのモデル検査に関して新しい方法を示唆している。その方法は項書換え系をモデル検査に適用するもので、論文では、プッシュダウンシステムを拡張した遷移システムを項書換えシステムの部分クラスとして、そのクラスで線形時相論理式のモデル検査が決定可能であることを示している。
モデル検査に項書換えシステムを適用することには独創性と新規性があり、さらにモデル検査で決定可能な対象が拡張されていて、モデル検査の研究の進展に大きく貢献している。
山下記念研究賞を受賞するにふさわしい研究である。
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●遺伝的アルゴリズムのスキーマ定理による解析-突然変異と交叉の役割-
[2002-MPS-38(2002.3.4)](数理モデル化と問題解決研究会)

古谷 博史君 (正会員)

昭和49年3月京都大学理学部卒業。昭和54年3月同大学院理学研究科博士課程物理学第二専攻単位取得退学。昭和56年3月理学博士(京都大学)。昭和56年4月高知医科大学医学部助手。病院情報システムの開発に携わる。昭和63年10月助教授。平成2年2月より京都教育大学教授。情報学担当。現在に至る。最近は遺伝的アルゴリズムの理論的解析に興味を持っている。
[推薦理由]
スキーマ定理は数少ないGAの基礎理論の一つであるが、当初導かれた定理は不等式の形で与えられ、定性的な議論しかできなかった。しかし近年、著者らにより厳密なスキーマ定理が導かれ、GAに関する定量的な解析が可能となった。本研究では、得られた定理をOneMax問題に適用し、一次のスキーマに関する厳密なスキーマ定理を導出した。交叉と突然変異の役割に注目し、二つの操作は互いに関係しあっており、強い突然変異を用いた場合、交叉の効果がマスクされてしまうことなどを示した。GAの理論的解析における有力な方法を提案した研究として評価できる。よって、山下記念研究賞に推薦するものである。
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●枝重み最大クリーク抽出アルゴリズムと実験的評価
[2002-MPS-42(2002.11.28)](数理モデル化と問題解決研究会)
 

鈴木 純一君 (学生会員)

2003年電気通信大学電気通信学部情報通信工学科卒業、
現在、電気通信大学電気通信学研究科博士前期課程に在学中。
[推薦理由]
本研究は、枝に重みが付与されているグラフの中から、サイズが最大でかつその枝重み総和が最大であるクリークを効率良く抽出する厳密アルゴリズムを提唱し、良好な実験的評価結果を示している。これは、同グループにおいて開発された非常に高効率の重みなし最大クリーク抽出アルゴリズムをさらに発展させた結果であり,重みを考慮することによる計算時間の増大を巧妙に押さえている。枝重み最大クリーク抽出問題はこれまで他に研究例が見られない新しい着眼であり、同アルゴリズムはバイオインフォマティクスや画像処理におけるある種の実問題に対して有効利用が考えられることも示されている。以上の様に本研究は優れた成果を示しており、山下記念研究賞に推薦する。
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情報環境領域

●インターネットにおけるパケット到着間隔時間及び損失率の特性
[2002-DPS-108(2002.6.7)](マルチメディア通信と分散処理研究会)

串田 高幸君 (正会員)

1985年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。同年サイエンス・インスティチュ-ト(現東京基礎研究所)配属。入社以来、ネットワークゲートウェイ、超高速ネットワークプロトコル、信頼性マルチキャストプロトコル、インターネット・トラフィック測定評価、エンドエンド・パフォーマンス解析の研究に従事。2000年よりワイヤレスマルチメディアQoSの研究に従事。現在、日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所に研究員として勤務。2000年より情報処理学会マルチメディア通信と分散処理研究会幹事、情報処理学会論文誌編集委員。IEEE, ACMの各会員。
[推薦理由]
本発表では、インターネットにおけるEnd-to-Endの特徴を調べるために、測定用のパケットを使って、実際のインターネット上で実験を行ない、データを解析し、その結果、パケットの到着時間間隔とパケット損失率について有意の関係があることが示された。この際、測定解析用のソフトウェアを新たに開発し、パケット損失率を求めることにより遅延特性を求めたり、あるいは逆にパケット遅延特性を求めることによってパケット損失率を求めることが可能な手法を明らかにした点で優れており、山下記念研究賞に推薦する。
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●相互通信環境の動的構成を可能とするミドルウェアの設計
[2002-DPS-108(2002.6.7)](マルチメディア通信と分散処理研究会)

橋本 浩二君 (正会員)

平成6年東洋大学工学部情報工学科卒業、
平成8年同大学大学院工学研究科電気工学専攻博士前期課程修了、
同年株式会社CSK総合研究所入社、
平成10年岩手県立大学ソフトウェア情報学部助手、
平成13年東北大学大学院情報科学研究科(博士課程後期)情報基礎科学専攻修了、
平成14年より岩手県立大学ソフトウェア情報学部講師。博士(情報科学)。
[推薦理由]
利用可能な帯域幅や処理能力の異なるコンピュータネットワーク上に相互通信環境を構築する際、メディアデータを適切なフォーマットに変換するトランスコーディング機能を導入することよって、利用者環境に応じた柔軟な相互通信環境の構築が可能となる。本発表では、移動エージェント技術を基盤としたトランスコーディング機能を、通信パスの適切な中間ノードへ配置し、相互通信環境を動的に構成するミドルウェアが提案された。提案システムは、数十拠点規模の相互通信を実現するための基盤技術となり、大規模相互通信を想定したマルチメディア通信アプリケーション創出にも貢献すると考えられ、山下記念研究賞に推薦する。
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●シワを考慮した顔の表情のシミュレーション
[2001-CG-105(2001.11.9)](グラフィクスとCAD研究会)

坂東 洋介君 (正会員)

平成13年東京大学理学部情報科学科卒
平成15年同大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了
現在株式会社東芝セミコンダクター社勤務
[推薦理由]
コンピュータグラフィックス(CG)においてリアルな顔のアニメーションを生成するための、シワを表現する手法を新たに提案した。提案手法は、顔を表現したメッシュに筋肉、皮膚およびシワのパラメータを指定して変形させるものであり、シワを考慮したリアルな顔の表情を高速に作成・表示できる。そして、実物の顔の形状データとの比較を行い、提案手法が実物のシワをよくシミュレートできていることを示した。以上のように、本研究はリアリティ向上のための新たな試みと、それを実現する手法の有用性において高く評価される。
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●3Dポリゴンモデルからの「折り紙建築」モデル生成手法
[2002-CG-107(2002.4.19)](グラフィクスとCAD研究会)

三谷 純君 (学生会員)

昭和50年生
平成6年4月 東京大学理科一類入学
平成10年3月 東京大学工学部精密機械工学科卒業
平成12年3月 東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻 修士課程修了
平成12年4月 東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻 博士課程入学
平成15年3月 東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻へ転専攻
現在に至る。主にコンピュータグラフィックスと計算機を用いたペーパークラフトの設計に関する研究に従事。
[推薦理由]
ボクセルによって折り紙建築モデルを表現する手法をベースにして、3Dポリゴンモデルからの折り紙建築モデルの生成法を新たに提案した。本研究では、元の形状特性を維持しつつ工作が容易な折り紙建築モデルを生成することに主眼を置き、ボクセルの解像度を上げたときに発生する幅の細い上面を取り除くことにより、工作が容易な折り紙建築モデルを生成する手法を開発した。さらに、折り紙建築を折り畳む様子を表示するための手法も提案している。以上のように、本研究は発想の新しさや着眼点のよさ、そして手法の新規性において高く評価される。
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●携帯電話を用いた友人間の文字プレゼンス情報共有実験:情報環境構築指針に向けて
[2003-GN-47(2003.3.19)](グループウェアとネットワークサービス研究会)

渡辺 理君 (正会員)

1988年東京工業大学機械物理工学科卒業。
1990年、同大大学院社会工学専攻終了。
同年、株式会社富士通研究所に入社。
現在、同社ITコア研究所Web&IPサービス研究部にてインターネットサービスの研究に従事
東京工業大学大学院情報環境学専攻博士後期過程在学中
[推薦理由]
本発表は、近年普及した携帯電話とインスタントメッセージを組み合わせた新しい情報環境を対象としている。女子大生仲良しグループによる実試行を行い、楽しみな がら生活に密着したメディアとして使われることに成功した。その具体事例から、情報の授受に関する微妙な感じ方や、独白から対話への緩やかな移行など、コミュニケーションの本質的なポイントを抽出し考察している。実践的なコミュニティウェアの可能性を唆示している点で重要であり、山下記念研究賞として推薦する。
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●メディア空間による分散勤務者のコミュニケーション支援システム「e-office」
[2001-GN-41(2001.10.18)](グループウェアとネットワークサービス研究会)

榊原 憲君 (正会員)

昭和59年東京工業大学工学部卒業。
同年キヤノン株式会社に入社、現在に至る。
平成14年度情報処理学会論文賞受賞。
電子情報通信学会会員。
[推薦理由]
本発表は、メディアスペースによる仮想オフィスの提供により、分散環境にあるユーザ間のコミュニケーションを支援し、同じオフィスで勤務しているのと同等の環境を提供することを目指したシステムに関するものである。単にオフィスのメタファを利用するだけでなく、従来のオフィスに存在する様々なルールや制約を取り入れた点、勤務状況映像と分散表示メッセージングとの組合せなどに新規性が認められる。また、メディアスペース専用映像コーデックを開発するなど実用性も重視しており、分散オフィスの実用化に向けた重要な研究であり、山下記念研究賞として推薦する。
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●H.323-SIPゲートウェイシステムの研究開発
[2002-AVM-36(2002.3.8)](オーディオビジュアル複合情報処理研究会)

笠井 裕之君 (正会員)

平成8早大・理工・電子通信卒。平成10同大大学院修士課程了。平成12同博士後期課程了。平成10~14同大国際情報通信研究センター助手。動画像符号化・トランスコーダの研究開発に従事。平成12~平成13 British Telecom BTexact Technologies 客員研究員。オーディオビジュアル通信システム及びゲートウェイシステムの実装を行う。平成14 (株)NTTドコモ入社。現在、ネットワーク研究所に勤務。以来、次世代モバイルネットワークの研究に従事。工博。
平成9 電気電子情報学術振興財団 猪瀬学術奨励賞、平成12 安藤博記念学術奨励賞、平成13 丹羽記念賞、平成13 エリクソン・ヤング・サイエンティスト・アワード。
情報処理学会、電子情報通信学会、画像電子学会各会員。
[推薦理由]
本論文ではモバイルネットワーク上のSIP端末と、インターネット上のH.323端末とのシームレスな相互接続を可能とするためのゲートウェイシステムの研究開発を論じている。実現上の重要な要素技術である、H323/SIPインタフェース構成、シグナリング変換、ビデオ・オーディオのフォーマット変換や速度変換を行うメディアトランスコーダなど詳細にわたる技術検討・設計のみならず、これらを統合した実際の装置構築を行って実現性を検証した意義は大きい。講演では実際のデモンストレーションによって実時間変換を可視化しインパクトを与えた。今後のオーディオビジュアル端末のユビキタス接続へ向けた検討の一歩を踏み出す発表としてたいへん大きく評価でき本賞の受賞に値する。
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●ウェアラブル環境のためのLEDを用いたビジュアルマーカの実現
[DICOMO2002シンポジウム(2002.7.4)](モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)

岸野 泰恵君 (学生会員)

2002年大阪大学工学部電子情報エネルギー工学科卒業。
現在、同大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻在籍。
バーチャルリアリティ、ヒューマンインタフェースに興味をもつ。
[推薦理由]
本論文は、VCC(Visual Computer Communication)において、ディスプレイ上に簡易に表示でき、持ち運びが簡単なLEDマーカを提案している。提案したマーカは小型電池で駆動し、軽量であるためウェアブルマーカとしての使用に適している。また、本マーカはURLやメールアドレスなどの任意の情報を周囲に伝達することができ、ウェアラブルコンピューティング環境におけるVCCを利用したシステム構築に大きく貢献するものと期待される。本研究では、実際にLEDマーカを試作、実装し、特性の評価、課題抽出を行い、利用領域を明らかにしている。アイデアから実装までの一連の検討を行っており、研究の意義は大きいと判断する。
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●対面無線アドホック通信に適した暗号通信路構築方法
[DICOMO2002シンポジウム(2002.7.5)](モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)

下遠野 享君 (正会員)

日本アイ・ビー・エム(株) 東京基礎研究所 専任研究員
昭和57年中央大学理工学部電気工学科卒業
同年 (株)リコー入社 ファクシミリ画像処理等の要素開発に従事
平成元年 日本アイ・ビー・エム(株) 入社 ノートPCの開発に従事
平成7年 同社東京基礎研究所異動 モバイル関連の研究開発に従事 現在に至る
平成13年情報処理学会DICOMO優秀論文賞、平成14年情報処理学会DICOMO最優秀論文賞
[推薦理由]
本論文は、対面無線アドホック通信において、公開鍵の正当性を利用者が確認することのできる出力表現をおこなうことで、事前情報なしに暗号通信路を構築する事を可能とする手法を提案している。出力表現として、文字列、図画、可聴音などを用いることで、従来の手法と比較して、匿名性を保ちつつ容易に公開鍵の正当性を判断することが可能となる新たな手法を提案している点が、論文として優れている。
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●IPトレースバック逆探知パケット方式のトラヒック量と攻撃経路再構成時間の性能解析
[2002-QAI-4(2002.7.26)](高品質インターネット研究会)

澤井 裕子君 (正会員)

平成13年年龍谷大学理工学部数理情報学科卒業、
平成15年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科修士課程修了。
同年(株)日立製作所ネットワークソリューション事業部入社。
現在、IPトレースバックの研究を行い、IPv6、ネットワークセキュリティに関するソリューション事業に従事。
[推薦理由]
本研究は、IPトレースバック技術の一つである逆探知パケット方式で問題となる二つの性能指標(トラヒック量及び攻撃経路再構成時間)を数学的解析によって明らかにした。IPトレースバックとはインターネットのセキュリティで問題となっているサービス妨害攻撃(Denial-of-Service Attack)の攻撃者を探索し、この攻撃を防御するための中心技術である。著者はIPトレースバックのうち、攻撃をいち早く防御するために用いられる逆探知パケット方式に特化して定量的に評価した。特に、数学的解析を用いたために実質的にも理論的にも有用であり、バランスの取れた研究と言える。以上の理由により平成15年度山下記念研究賞受賞候補として強く推薦する。
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●Webサイトのアーキテクチャの再考とそれに伴うサイジングについて
[2002-EVA-2(2002.2.14)](システム評価研究会)

長谷川 泰章君 (正会員)

昭和63年大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了(流体工学専攻)。
同年、(株)リクルート入社。大型計算機の運用管理、基盤系システムの開発、先端情報技術の調査研究、商用Webサイトの性能検証などに従事。
現在、(株)NTTデータにてWebシステムの開発などを担当。
[推薦理由]
商用で運用されているWebサーバのアーキテクチャを再考し、性能の観点からそのサイジング手法の標準化の試みを行っている。Webサーバのサイジングは実機上のベンチマークが主流となっているが、本稿は、アプリケーションの特性を数値化することにより、待ち行列などの従来の数学的アプローチでサーバ・サイジングを可能とするものである。さらに、本手法を、実際に運用されているシステムに適用し、現場のサーバ運用者に対して、サイジングの有用な基礎データを提供しており、有益な研究である。
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フロンティア領域

●日本語固有表現抽出における冗長的な形態素解析の利用
[2003-NL-153(2003.1.20)](自然言語処理研究会)

浅原 正幸君 (学生会員)

昭和50年生。
平成10年京都大学総合人間学部卒業。
平成13年奈良先端科学技術大学院大学博士前期課程修了。
同年同大学院博士後期課程入学。
同年より学術振興会特別研究員(DC)。
[推薦理由]
コーパスから任意の長さの語彙的情報を抽出するためには、言語に依存しない最小単位である文字を単位として問題をモデル化するのが理想的である。しかし、これまで文字単位でのモデル化に成功した例はなかった。本論文では、日本語固有表現抽出の問題に対し、冗長な形態素解析結果の情報を文字を単位として利用するモデルを提案し、実験によりその有効性を示している。ここで提案されたモデルは自然言語処理における他のタスクでも有効である可能性が高く、今後様々な処理に利用される技術になると期待できる。
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●SVMに基づく固有表現抽出の高速化
[2002-NL-149(2002.5.23)](自然言語処理研究会)

 

磯崎 秀樹君 (正会員)

1983年東京大学工学部計数工学科卒業。
1986年同工学系大学院修士課程修了。同年、日本電信電話(株)入社。
1990~91年スタンフォード大学ロボティクス研究所客員研究員。
現在、NTTコミュニケーション科学基礎研究所特別研究員。 博士(工学)。
人工知能・自然言語処理の研究に従事。電子情報通信学会、情報処理学会、人工知能学会、言語処理学会、AAAI、ACL各会員。
[推薦理由]
近年、自然言語処理の分野でもSVMは優れた学習アルゴリズムのひとつであることが知られているが、学習されたモデルを未知データに適用する際に多くの計算時間を要することが問題であった。本論文では、固有表現抽出に適用した場合のデータの特徴に基づいてSVMを高速化する手法を提案している。注目しているデータの特徴は特定のタスクに特化したものではなく、自然言語処理タスク一般に広く見られるものであるため、固有表現抽出以外のタスクの高速化も期待できる点で優れている。
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●時系列医療データにおけるルール発見支援システム-慢性肝炎データセットでのケーススタディ-
[2002-ICS-132(2003.3.15)](知能と複雑系研究会)

大崎 美穂君 (正会員)

昭和45年生。平成6年九州芸術工科大学芸術工学部音響設計学科卒業。平成8年九州芸術工科大学大学院芸術工学研究科情報伝達専攻博士前期課程修了。平成11年九州芸術工科大学大学院芸術工学研究科情報伝達専攻博士後期課程修了。同年静岡大学情報学部助手、現在に至る。
人間の主観に基づく非言語的なシステム・ヒューマン・インタラクション(対象を言葉で説明することは難しいが、見聞きすれば良し悪しを判断できる問題)に興味を持つ。現在、このような問題解決アプローチで、医療データマイニング、聴覚障害補償、画像処理手法の評価の研究に従事。
博士(工学)。IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会、人工知能学会、日本知能情報ファジィ学会、日本音響学会会員。平成10年 5th International Conference on Soft Computing and Information/Intelligent Systems (IIZUKA'98) において、 Best Paper Award 受賞。
[推薦理由]
本研究は慢性肝炎の検査データを対象に、医者とデータマイニングの専門家が協力して、医学的に有用なルールを得ることを試み、そのための手法を提案するだけでなく、有効な知識が得られた事を報告している。データマイニングシステムと専門家のインタラクションにより有用な知識を得るための仕組として、前処理・後処理の仕組や、クラスタリングと決定木の組み合わせによる分類ルールの学習システムを提案している。またシステムと専門家のインタラクションにより知識を発見するプロセスについても分析し、報告している。以上、実際に医療の専門家と情報処理技術研究者が共同して、新しい知識発見の方法を検討し、有効な結果を示した本論文は山下記念研究賞を受賞するに相応しいと考え推薦する。
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●パターンハッシング-部分画像と不変量索引を用いた分散アピアランスモデル-
[MIRU2002シンポジウム(2002.8.1)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)

山口 修君 (正会員)

1969年生。1994年岡山大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。
同年(株)東芝入社。現在, (株)東芝研究開発センターマルチメディアラボラトリー研究主務。
コンピュータビジョン, 顔画像認識, ヒューマンインタフェースの研究開発に従事。
1996年本会全国大会優秀賞受賞、2002年電子情報通信学会論文賞受賞、電子情報通信学会会員。
[推薦理由]
本論文では、幾何学的特徴と部分画像特徴の両者を融合したパターンマッチング法を提案している。本手法は、幾何学的不変量を用いることにより、画像の変形の影響を受けず、また不変量計算の際に求めた変形を適用して部分画像のマッチング計算を行うことにより、画像の部分的隠れに対しても影響を受けにくい手法を実現している。これは、Geometric Hashing の拡張となっており、これまで点や線の集合に対してしか使えなかった手法を一般の画像に適用できるようにした点は学問的にも意義深い。実験でもその有効性が示されており、実用的価値も高い。このように、本論文は、コンピュータビジョンの基本課題であるパターンマッチングに関して新規性と有用性の高い手法を提案しており、山下記念研究賞に推薦する。
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●平面パターンを用いた複数カメラシステムのキャリブレーション
[2002-CVIM-135(2002.11.8)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)

植芝 俊夫君 (正会員)

昭和59年東京大学工学部電気工学科卒業。昭和61年同大大学院工学系研究科修士課程修了。同年通商産業省工業技術院電子技術総合研究所(平成13年に独立行政法人産業技術総合研究所に改組)入所。
現在、産業技術総合研究所知能システム研究部門主任研究員。コンピュータビジョンの研究に従事。特に、動画像処理および複数画像からの三次元情報の復元に興味を持つ。平成9~10年カナダ国立研究評議会情報工学研究所客員研究員。平成10年情報処理学会第55回全国大会大会優秀賞受賞。情報処理学会、日本ロボット学会、計測自動制御学会各会員。
[推薦理由]
カメラキャリブレーションは、多くのコンピュータビジョン手法で必要とされる最も基本的かつ重要な技術である。本論文では、平面パターンを数ヶ所に置き、それを複数カメラで撮影するだけという簡便かつ極めて実用的な手法が提案されている。また、論文としても、専門分野の異なる読者にも容易に理解できるように、基礎的な理論から順に丁寧に説明されており、資料としての価値も高い。コンピュータビジョン技術が、我々のより身近な環境で利用されるためには、このような簡便なカメラキャリブレーション手法の確立が必要不可欠である。本論文は、今後のカメラキャリブレーション研究の流れに大きな影響を与えると考えられるため、山下記念研究賞に推薦する。
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●教育目的に応じて観察の抽象度が変更可能な計算機シミュレータECASの計算機構築演習での活用
[2002-CE-67(2002.12.13)](コンピュータと教育研究会)

矢原 潤一君 (正会員)

平成13年3月 大阪大学基礎工学部情報科学科 卒業
平成15年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科情報数理系専攻 博士前期課程 修了
平成15年4月 日本電気株式会社 入社 現在に至る
[推薦理由]
情報システムの動作原理の教育では、扱われているものが抽象度が高く形をもたないデータであるため、教材の抽象度の設定が極めて難かしく、概念論や「木ばかり見る」ことになってしまいがちである。本論文では、コンピュータの仕組みの理解を目的とするシステムとして、任意の抽象度の部品を定義し画面上で配置・結線しシミュレーションを行なえるものを開発し、実際に情報専門教育のコースウェアの中で使用し評価している。抽象部品の記述形式にも新しい手法を取り入れており、今後の研究発展も充分に期待できる。
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●正倉院文書研究資料のXML/XSLTによる記述と統合
[じんもんこん2002シンポジウム(2002.9.21)](人文科学とコンピュータ研究会)

後藤 真君 (学生会員)

昭和51年生。
平成12年岡山大学文学部卒業。
平成14年大阪市立大学大学院文学研究科前期博士課程修了。
現在、大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程在学中。日本学術振興会特別研究員-DC
古代法・古代史料論・歴史資料のコンピュータへの応用に興味を持つ。日本史研究会総務委員。続日本紀研究会会員
[推薦理由]
本論文は、東大寺の正倉院に伝来した8世紀の文書群や関連史料の各々の実体、及び当時の史料の復元過程をXML/XSLT (eXtensible Markup Language / eXtensible Stylesheet Language Transformations)で記述することを提案し、歴史学・史料学とのコラボレーションを深化させる研究報告である。ドキュメント標準XMLは、一般に文書の構造化記述に用いられるが、本論文では、背面再利用と19世紀初頭からの「整理」作業のため、その奈良時代の帳簿の形態が著しく損なわれ、論理構造と物理構造の差異という特徴をもつ正倉院文書の復元過程をXML/XSLTで記述し、モデル化したもので、本手法の提案は先駆的である。また、本研究は主に (1)写真版マイクロフィルム、 (2)『大日本古文書』、 (3)『正倉院文書目録』を相互に参照しながら分析が進められるが、これらの各史料の実体、及び史料の統合化の過程において、知識構造化ルールをもXML/XSLTを用いて記述している。本手法では、知識構造化ルールに基づく処理例外から新たな事象の発見が可能となり、新たな知見を得る機会になる。本研究は、当該分野の新領域開拓に大きく貢献すると共に、正倉院文書以外の古文書・古文献等の復元・提供過程への応用が期待される。本研究のプレゼンテーションも明瞭で、評価される。以上、研究報告の内容および発表共に評価されるもので、山下記念研究賞の表彰に該当する相応しい研究であり、ここに運営委員会でも全会一致で推薦するものである。
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●パピプーーン:GTTMに基づく音楽要約システム
[2002-MUS-46(2002.7.7)](音楽情報科学研究会)

平田 圭二君 (正会員)

1987 年 東京大学大学院工学系研究科 情報工学専門課程 博士課程修了。工学博士。
同年 NTT 基礎研究所入社。
'93-'95 音楽情報科学研究会主査、'01 よりフロンティア領域委員長。
情報処理学会 平成 13 年度論文賞。
音楽知プログラミング及びインタラクションに興味を持つ。
[推薦理由]
インターネットの活用を想定したアプリケーション開発は、現在の情報処理 (応用領域)の中心的な研究課題の一つとなっている。音楽情報処理領域においても、インターネット活用を意識したサービスやアプリケーションが注目を集めており、テーマを音楽検索に絞った国際会議も開かれるようになっている。音楽要約とは、効率的な音楽検索を実現するための手段として有望視される技術であり、平田氏の「GTTMに基づく音楽要約」は、世界にさきがける形で実現された実施例の一つである。このシステムは、音楽検索以外にも、音楽の新しい楽しみ方を提供するインタフェースとしても期待される。
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●局面の実現確率に基づくゲーム木探索アルリズム
[ゲームプログラミングワークショップ2001(2001.10.26)](ゲーム情報学研究会)

鶴岡 慶雅君 (正会員)

1997年東京大学工学部電気工学科卒業。2002年同大学院博士課程終了。
工学博士。同年、科学技術振興事業団研究員、現在に至る。
[推薦理由]
ゲーム木探索に関する研究はゲームプログラミング研究における重要な分野 であり、過去に前向き枝刈り、探索延長等の様々な技法が提案されてきた。本発表で提案された実現確率探索は、これまでプログラマが経験的に与えていた 探索延長パラメータを、トップレベルプレイヤーの棋譜の解析結果を元に自動的に決定するという画期的な手法で、将棋プログラムにおいてその効果が確認されている。その後の探索研究に与えた影響も大きく、山下記念賞に相応しいと判断する。
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