2022年度受賞者

2022年度情報環境領域功績賞受賞者

情報環境(IE)領域功績賞は,本領域の研究会分野において,優秀な研究・技術開発,人材育成,および研究会・研究会運営に貢献したなど,顕著な功績のあったものに贈呈されます.本賞の選考は,IE領域功績賞表彰規程およびIE領域功績賞受賞者選定手続に基づき,本領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は3研究会の主査から推薦された下記3件の功績に対し,本領域委員会(2023年3月22日)で慎重な審議を行い決定しました.表彰状が授与されます.

宮下芳明 君 (ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
[推薦理由]
宮下芳明氏は,2007 年から HCI 研究会の委員,および幹事を担当し,HCI 研究会の運営・発展に大いに寄与してこられた.2008 年からは,HCI 研究会が共催するシンポジウムであるインタラクションの実行委員を,特に 2012 年はプログラム委員長,2017 年には大会委員長をつとめ,同シンポジウムの成功と発展に大きく貢献した.これらに加えて,EC 研究会でも 2009 年から運営委員をつとめ,EC 研究会が主催するシンポジウムであるエンタテインメントコンピューティングにおいては 2014 年に大会委員長をつとめた.さらに,同年には新世代企画委員会としても学会の改革を推進し,ジュニア会員制度の制定等に貢献するなど,IE 領域のみならず,情報処理学会全体の発展に寄与してこられた.
研究面では,ヒューマンコンピュータインタラクション,エンタテインメントコンピューティングを中心としつつ,デジタルファブリケーションや味覚メディアなど幅広く研究を行い,国内外のトップカンファレンスや論文誌に多くの研究成果を発表なさっている.研究の発想と成果への評価も高く,情報処理学会では山下記念研究賞を受賞されているほか,総務省の異能vation プログラム,文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品への採択もある.最近では,同氏の研究成果のひとつである,電気味覚技術を応用し薄味の減塩食を濃い味に感じさせる食器「エレキソルト」は大きな話題となり,キリンホールディングスによって商品化・販売予定で
あり,ヒューマンコンピュータインタラクション分野における顕著な社会実装事例といえる.なお,同氏は多数のメディア対応を通じてこれらの研究成果を伝えつつ,ものつくりと情報処理技術の楽しさ,大切さを広く伝えている.
また,同氏は 2013 年から明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科(FMS 学科)を立ち上げ,ヒューマンコンピュータインタラクションに関わる多くの研究者を集め,この分野で日本有数の研究・教育拠点を築いており,以来,明治大学の先端メディアサイエンス学科に所属する学生・教員による情報処理学会での発表や貢献は目覚ましい.
以上の点から,宮下芳明氏は,IE 領域功績賞受賞候補者としてふさわしいと考え,ここに推薦する.
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児玉公信 君 (情報システムと社会環境研究会)
[推薦理由]
児玉公信氏は、2008 年から現在まで情報システムと社会環境研究会(IS 研究会)の運営委員を務め、2009 年から 2015 年まで幹事、2016 年から 2019 年まで主査を担当し、IS 研究会の運営・発展に大いに寄与してこられた。また、IS 研究会が主体となって2004年から継続的に企画している情報処理学会論文誌 IS 特集については、2009年から現在まで編集委員を、2012年発行の「社会活動を支える情報システム」特集では編集委員長を務められ、情報処理学会における IS 論文の普及・発展に貢献された。
研究・技術開発においては、社会環境を考慮した情報システム設計に関連する論文をコンスタントに情報処理学会を中心に多数発表しており、情報システム設計に関連する単著4編を含む11編の著書を発表している。また、年4回の IS 研究会のほとんどに出席し、議論の活発化や、他の研究者へのアドバイストに尽力いただいている。
さらに、IS 研究会内において、情報システムのデザイン論分科会と情報システムの有効性評価手法分科会という2つの分科会活動を主導された。前者の分科会では、2015 年に「デザイン論シンポジウム」を開催し、先行する 3 つの領域(製品設計、建築設計、社会資本の設計)におけるデザインの現状の参考として情報システムのデザインのあるべき姿について議論を深めた。この過程で示唆されたデザインコンペ(発注者が条件を提示し、応募してきた複数のデザインを競わせる活動)の教育的作用に着目し、第 79 回全国大会のイベント企画として情報システムデザインコンペを開催している。後者の分科会は、情報システム研究において必須となる「評価」に焦点を当て、情報システムの有効性評価のための手法を整理することを目的としたものであり、その成果は、「量的評価ガイドライン」、「質的評価ガイドライン」としてまとめられている。これらのガイドラインは、IS 研究会の HP にて公開されており、IS 特集号の募集告知でも参考にする旨が記載されるなど IS 論文の質の向上に大きく寄与している。
これらの功績は、顕著でかつ継続的なものであることから、情報環境領域功績賞にふさわしいと考え、児玉公信氏を同賞に推薦する次第である。
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神崎映光 君 (コンシューマ・デバイス&システム研究会)
[推薦理由]
神崎映光氏は、CDS研究会設立当初からCDS研究会運営委員、研究会幹事、およびCDSトランザクション編集委員を歴任し、研究会Webサイト管理や、研究会メーリングリストおよびCDSトランザクション論文投稿・査読システムの構築をはじめとして、研究会およびトランザクションの各種運営・運用に関する業務を担当してきました。また、DICOMO シ ン ポジ ウ ムや 国際 会 議 IEEE Annual Computers, Software, and Applications conference (COMPSAC) においてCDS研究会が企画開催するCDS Workshop等でも委員を務めるなど、CDS研究会のみならず本会情報環境領域に関連する活動において多方面でも幅広く貢献をしているといえます。
以上のように、同氏が本会情報環境領域において、CDS研究会だけでなく本会を支える様々な活動に関する継続的な功績は誠に顕著であるため、情報環境功績賞に相応しいと考え同賞の候補者として推薦します。
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