2026年度受賞者
2026年度コンピュータサイエンス領域功績賞受賞者
コンピュータサイエンス(CS)領域功績賞は,本領域の研究会分野において,優秀な研究・技術開発,人材育成,および研究会・研究会運営に貢献したなど,顕著な功績のあったものに贈呈されます.本賞の選考は,CS領域功績賞表彰規程およびCS領域功績賞受賞者選定手続に基づき,本領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は8研究会の主査から推薦された下記8件の功績に対し,本領域委員会(2026年10月9日)で慎重な審議を行い決定しました.各研究発表会およびシンポジウムの席上で表彰状,盾が授与されます.
| 石川 博 君 (データベースとデータサイエンス研究会) |
| [推薦理由] 本会フェロー石川博氏は,データベースおよびデータマイニング分野における我が国を代表する研究者の一人であり,リレーショナルデータベース,オブジェクト指向データベース,Webデータベース,XMLデータベースなど,常に時代を先導する次世代データベース技術の研究開発において卓越した業績を上げてきた.特に,大規模データ管理技術やデータマイニング技術に関する先駆的研究を推進し,研究成果をACM・IEEE 等の当該トランザクションやVLDB・ICDE等の国際会議に発表し,学術的にも高い評価を受けている.また,富士通研究所において研究成果の実用化を推進し,先進的なデータベース技術の製品開発を通じて,我が国のソフトウェア産業の発展にも大きく貢献した.これらの功績により,本学会坂井記念特別賞(1994年)および科学技術庁長官賞(研究功績者,1997年)を受賞している. また,同氏は研究成果の創出のみならず,情報処理学会における研究コミュニティの発展にも極めて大きく寄与している.1995~1996年には情報処理学会誌編集委員会SWG主査を務め,2003~2007年にはデータベースシステム研究会主査および論文誌データベース共同編集委員長として,本分野の研究活動の活性化と研究成果の発信に尽力した.特に,我が国のデータベース研究コミュニティの発展を支える中心的役割を果たし,産学にまたがる研究交流と若手研究者育成に大きく貢献した.さらに,同氏は解説記事や専門書の執筆を通じて,データベースおよびデータマイニングに関する先端的知見を広く社会に還元し,教育および人材育成にも顕著な貢献を果たしている.大学および研究機関における教育研究活動を通じて,多くの優れた研究者・技術者を育成するとともに,研究成果の社会実装を推進し,我が国の情報技術分野の発展に大きく寄与してきた. このように,石川博氏は,次世代データベースおよびデータマイニング分野の研究開発において卓越した業績を上げるとともに,本会の研究活動・出版活動の発展に多大な貢献を果たしており,我が国のコンピュータサイエンス分野の発展に極めて顕著な功績を有することから,CS領域功績賞受賞者として強く推薦する. |
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| 松本 健一 君 (ソフトウェア工学研究会) |
| [推薦理由] 松本先生は,ソフトウェアメトリクスやソフトウェアプロセスを中心とするソフトウェア工学分野において,学術・教育の各領域で長年にわたりめざましい成果を挙げてこられました.現在は奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 情報科学領域の教授として活躍されています.ソフトウェア開発データの定量的な分析や欠陥予測モデルの研究,さらには最新の大規模言語モデル(LLM)のソフトウェア開発・セキュリティへの応用や,開発者の視線移動に基づくプログラム理解の研究に至るまで,常に最先端の研究を牽引してこられました.その実績は学術論文誌論文数194件,招待講演・査読付き国際会議発表322件にも及び,国際的なトップカンファレンスへの論文採択を通じて世界のソフトウェア工学分野を大きくリードしています.Google ScholarのSoftware Engineering分野に登録される研究者の中で引用数ランキング国内1位(2026年7月現在)であり,世界でも上位に位置しており,研究者としての国際的な評価も非常に高いことがわかります. また,学会活動においても,2016年2月に情報処理学会フェロー(ソフトウェア開発の定量的評価・管理技術に関する研究),2013年9月に電子情報通信学会フェローの称号を授与されるなど,多大な貢献を続けておられます.教育・人材育成の面においては,近年,JST次世代科学技術チャレンジプログラムの一つである NAIST STELLAの実施主担当者として,CS領域における高度専門人材の育成に顕著な貢献をされたことが高く評価されています.さらに「ソフトウェアの定量化と計測」「ソフトウェア開発におけるエンピリカルアプローチ」などの著書を通じ,最先端の知見を分かりやすく解説し,多くの技術者や研究者の育成に多大な影響を与えてきました.こうした研究活動においては,「次世代ソフトウェアエコシステムのための基盤・展開技術」(日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究S)などの大型プロジェクトの研究代表者として研究を牽引し,国内外の学会や国際会議で50件を超える多数の賞を受賞されています.ソフトウェア開発の生産性と信頼性を定量的に評価・改善するための革新的な手法の提案・検証は,ソフトウェア工学における学術的な発展のみならず,社会実装の面でも大きな指針を示してこられました. 以上のように,松本先生は本領域の研究会分野において,優秀な研究・技術開発,人材育成,および研究会運営に多大な貢献を果たされており,CS領域功績賞にふさわしい優れた研究者であると確信し,ここに強く推薦いたします. |
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| 八巻 隼人 君 (システム・アーキテクチャ研究会) |
| [推薦理由] 八巻隼人氏は,我が国のコンピュータ・アーキテクチャ分野に対して,研究活動と学会運営の両面において,大きく貢献を続けている人物である.特にネットワーク機器の高速化・低消費電力化において優れた成果をあげている.学会運営の面でも,2021~2024年度においてシステム・アーキテクチャ研究会の幹事,また2017~2020年度及び2025年度から現在に至るまで同運営員を務めており,当研究会運営に大きく貢献している.また,上記ネットワーク機器の研究を軸に,ハードウェア設計や高性能計算の研究者との協同による多面的な研究活動を進めており,システム・アーキテクチャ分野での存在感を発揮している.以上の通り,同氏によるシステム・アーキテクチャ研究会ならびにコンピュータ・アーキテクチャ分野に対する貢献は極めて大きいことから,CS領域功績賞の受賞者にふさわしいと判断しここに推薦する. |
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| 光来 健一 君 (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会) |
| [推薦理由] 本会正会員光来 健一氏は,長年に渡りシステムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会の運営に大きく貢献してきた.2007年度から2010年度まで,および2016年度に同研究会の幹事を務め,2017年度から2020年度まで主査を務めた.2026年度からはコンピュータサイエンス領域の財務委員を務める.IEEE Computer Society福岡チャプターの副支部長,国際会議APSys 2020の実行委員長,CyberSciTech 2019のプログラム委員長など国際的なコミュニティに対する貢献も顕著である.国内会議においてもxSIG 2024のプログラム委員長,CSS 2024のシステムトラックチェアなどを歴任してきた. 同氏のシステムソフトウェア分野における研究成果は国内外で高く評価されており,国内随一の研究業績を有している.当分野の最高峰の国際会議であるOSDI 2026をはじめ,著名な国際会議で継続的に論文発表を行っている.特に仮想化やTEEに関する一連の研究業績は高く評価されており,IEEE Computer Society Japan Chapter Young Author Awardや国際会議のベストペーパー賞など多くの受賞がある.また,学生の指導を通じて当該分野における多くの優秀な人材を産業界に輩出している.同氏の薫陶を受けた何名もの学生が,本会コンピュータサイエンス領域賞,システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会優秀学生発表賞を受賞している. このように,同氏によるシステムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会ならびにコンピューティングシステム分野における貢献は極めて顕著であり,CS領域功績賞受賞者としてふさわしいと考えここに推薦する. |
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| 井上 貴雄 君 (システムとLSIの設計技術研究会) |
| [推薦理由] 井上氏は,システムとLSIの設計技術研究会幹事として,2024年度から2025年度の2年間にわたり活動され,計6回の運営委員会の開催・運営を担い,研究会の円滑な運営に大きく貢献されました. また,2022年度から2023年度にかけては,研究会の主要行事である「DAシンポジウム」において実行委員会幹事として運営実務を主導されました.特に2022年度の開催では,コロナ禍によるオンライン開催を経た 3年ぶりの現地開催に加え,感染症対策のため初めてオンラインとのハイブリッド開催を実施するという困難な状況の中,配信システムの構築を含む綿密な準備を主導することで,大会の成功に大きく貢献されました.さらに2023年度においても,前年とは異なる会場で運営方法の見直しが求められる中,ハイブリッド開催を円滑に実施するため,多大な尽力を重ねられました. このように,井上氏は研究会運営をはじめ,主要行事の企画・運営においても多大な貢献を果たされており,システムとLSIの設計技術研究会の運営・発展に顕著な功績を残されました.以上のことから,CS領域功績賞の候補者として強く推薦いたします. |
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| 片桐 孝洋 君 (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会) |
| [推薦理由] 片桐先生は,高性能計算,ソフトウェア自動チューニング,超並列処理,大規模AI,量子コンピューティング等を中心に,計算機システムと科学技術計算を結ぶ基盤技術の研究を長年にわたり牽引してこられました.特に,スーパーコンピュータ上での数値計算ライブラリ,並列プログラム,アプリケーションの性能を実環境に応じて高める自動チューニング技術において,方式提案,性能モデル化,実装・評価,応用展開を一貫して進められ,CS領域の研究会分野における学術的・技術的発展に顕著な貢献を果たされています.近年も,大規模機械学習,HPC量子コンピューティング,GPU・メニーコア環境,スーパーコンピュータ「不老」の利活用など,領域の新しい課題に積極的に取り組み,研究会に継続的に質の高い成果を還元されています.これらの成果は,計算科学,AI,産業利用を支える実用的な高性能計算基盤の発展に直結するものであり,基礎研究と技術開発の双方において本領域の価値を高めるものです. また片桐先生は,人材育成の面でも多大な貢献をされています.大学院・学部教育において計算機アーキテクチャ,大規模並列数値計算,並列プログラミング等を担当され,実機を用いた教育を通じて,次世代の高性能計算技術者・研究者の育成に尽力されてきました.さらに,学生・若手研究者との共著発表,研究会での議論,スーパーコンピュータ利用講習会・説明会等を通じ,研究成果の発信にとどまらず,コミュニティ全体の技術水準向上にも寄与されています.若手が研究会で発表し,議論を深め,次の研究課題へ進むための環境づくりにも継続して貢献されてきた点は,本領域にとって極めて重要です. 研究会運営への貢献も特筆すべきものです.これまで運営委員7期,幹事2期,主査2期を務められ,長期にわたり研究会の企画・運営,発表機会の整備,若手研究者の参加促進,分野横断的な議論の場づくりに中心的役割を果たされました.研究会活動を単なる成果発表の場にとどめず,研究者・技術者が相互に学び,共同研究や新分野開拓につなげる場として発展させてこられた功績は大きいと考えます.研究面の卓越した成果,人材育成への継続的貢献,ならびに研究会運営を支えてきた実績はいずれも本賞の趣旨に極めてよく合致しており,片桐孝洋先生はCS領域功績賞にふさわしい候補者であると考えます. |
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| 河内谷 清久仁 君 (プログラミング研究会) |
| [推薦理由] 河内谷清久仁氏は,2005~2017年度にかけて,プログラミング研究会の運営委員・幹事,および論文誌「プログラミング」の編集委員を歴任され,研究会および論文誌の運営に貢献されました.また,委員在任中はもちろん,それ以外の期間も継続的に研究会に参加して,質の高い発表をされたり,プログラミング言語の実装分野の発表に対して鋭い質問をすることで分野の発展に貢献されました. プログラミング研究会の運営においては,日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所が恒常的に運営委員や幹事を輩出したり定期的に会場を提供するなど,多大な貢献をしています.同氏は同研究所においてシステムプログラミング系の部門長として学会活動を積極的に推奨し,研究所としての貢献を支えられました. 研究業績の面でも顕著なものがあります.同氏は同研究所においてJavaやX10の処理系の実装技術を研究されました.これらの論文はトップレベルの国際会議に採択され,国内外で高く評価されているだけでなく,その先進性から多くの後続の研究の基になっています.これらの研究成果は論文で発表するだけでなく,大学の講義のかたちで広く社会に還元され,プログラミング分野の人材育成に貢献されています. 以上のように,河内谷氏および日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所の長年にわたる研究会運営への貢献,ならびにプログラミング研究分野における研究,人材育成への貢献は顕著です.よって,同氏をコンピュータサイエンス領域功績賞にふさわしい方として,ここに推薦申し上げます. |
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| 玉木 久夫 君 (アルゴリズム研究会) |
| [推薦理由] 玉木久夫氏は,長年にわたり離散アルゴリズムの研究に従事し,同分野のトップクラスの国際会議であるSTOC,FOCS,SODA,ESA,ICALP等において多数の優れた成果を発表するなど,卓越した業績を上げてきた.特に近年は,パラメータ化計算において中核的な役割を果たす「グラフの幅パラメータ計算アルゴリズム」において顕著な成果を収めている.理論面では分枝幅やパス幅の計算アルゴリズムを開発して既存の計算時間を大幅に改良し,実用面ではアルゴリズム実装コンテスト「PACE 2016」の厳密木幅計算部門,および「PACE 2017」の木幅上界計算部門で優勝,同年の厳密木幅計算部門でも2位という輝かしい成績を収めた.後者のアルゴリズムと実験評価をまとめた論文は,国際会議ESA 2017において最優秀論文の1つとして表彰されている.同分野における氏の研究活動は現在も精力的に継続されており,重要な成果を生み出し続けている.加えて,2000年以前に発表された論理プログラミング,擬放物線のアレンジメント,密な部分グラフ発見に関する先駆的な成果は,四半世紀を経た現在もなお引用され続けており,分野に与えたインパクトの大きさを物語っている.特に,擬放物線のアレンジメントに関する研究においては,本学会の山下記念研究賞を受賞している. また,学会活動や教育活動における貢献も多大である.本学会においてはアルゴリズム研究会の幹事や運営委員を歴任し,国際的にはISAAC,IPEC,WG,SEAといった主要国際会議のプログラム委員を務めるなど,国内外の学会運営を支えてきた.さらに,世界のトップ研究者が集う「湘南ミーティング」では,パラメータ化計算に関する会合を日本側オーガナイザとして企画し成功に導いている.日本IBM東京基礎研究所在籍時には,PCP理論の発案者の一人であるMadhu Sudan氏をいち早く日本に招聘して講演会を主催し,国内の理論計算機科学界に多大な刺激を与えた.また,情報処理学会誌に寄稿した「巡回セールスマン問題に対する近似アルゴリズム」の解説記事ではベストオーサー賞を受賞したほか,確率や乱択アルゴリズムに関する優れた教科書を執筆するなど,後進の育成にも尽力している. 以上のように,玉木氏は極めて顕著な研究業績を上げているのみならず,学会運営や教育を通じ,多方面からアルゴリズム分野の発展を支えてきた.これらの多大な功績から,同氏はCS領域功績賞に極めてふさわしいと考え,ここに強く推薦する. |
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