2026年度受賞者詳細

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2026年度コンピュータサイエンス領域奨励賞受賞者詳細

コンピュータサイエンス領域奨励賞は,コンピュータサイエンス領域に所属する研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な研究発表を行った若手会員に贈呈されます.本賞の選考は,CS領域奨励賞表彰規程,CS領域奨励賞受賞者選定手続およびCS領域奨励賞受賞者推薦内規に基づき,領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は10研究会の主査から推薦された計17編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定しました.本年度の受賞者は下記17君で,各研究発表会およびシンポジウムの席上で表彰状,賞金が授与されます.

●グラフ構造を考慮した負例の信頼度推定に基づく推薦モデルの提案
 [DEIM2026(2026/3/1)](データベースとデータサイエンス研究会)

曽根 良行  君 (学生会員)

発表時所属:大阪大学大学院 情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 博士前期課程1年
受賞時所属:大阪大学大学院 情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 博士前期課程2年
[推薦理由]
本論文では,グラフベースの推薦モデルにおいて,既存手法では一律に扱われていた負のフィードバックに関して,その信頼度を適応的にとらえる符号付推薦モデルを提案している.具体的には,符号付グラフの階層的な構造情報から導出される構造的な類似度を用いることで,負のエッジの信頼度を推定する.そして,構造的に矛盾する信頼性の低い負のエッジに対してグラフ構造自体を修正することで埋め込み表現の歪みを防止する.実世界データセットを用いた実験により,従来手法に対してRecall@20で最大6.34%の性能向上を示している.このようなフィードバックの暗黙的な信頼性を高精度に推定する技術と推薦精度に寄与することを示した点は,学術的にも実用的にも価値がある研究である.以上より,本論文をCS領域奨励賞にふさわしいものとして推薦する.
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●大規模言語モデルを用いたSATDの分類体系の自動生成
  [2025-SE-220(2025/7/16)](ソフトウェア工学研究会)

中島 蒼太  君 (学生会員)

発表時所属:九州大学大学院 システム情報科学府 情報理工学専攻 修士1年
受賞時所属:九州大学 システム情報科学府 情報理工学専攻
[推薦理由]
本研究は,技術的負債の中でも開発者が自ら認める負債(SATD)に着目し,その分類体系構築を大規模言語モデル(LLM)によって自動化する手法を提案している.従来,新たなドメインへの適用には多大な手動分析コストと主観性の排除が課題であった.これに対し,本手法は説明文生成と段階的なカテゴリ更新を組み合わせることで,人間による構築に近い,一貫性のある分類体系を低コストで生成することに成功した.特筆すべきは,量子ソフトウェアや機械学習といった先端ドメイン固有のカテゴリを再現できる高い精度と,448件のデータを1ドル未満・2時間で処理する圧倒的な効率性である.今後のソフトウェア品質管理における実用性と研究の拡張性を高く評価し,本論文を推薦する.
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●マークル木を用いたライブラリ後方非互換性特定手法の大規模有用性評価に向けた自動化
  [2025-SE-220(2025/7/16)](ソフトウェア工学研究会)

山﨑 和真  君 (学生会員)

発表時所属:奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 博士前期課程2年
受賞時所属:奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 先端科学技術専攻 博士後期課程 ソフトウェア工学研究室
[推薦理由]
本研究は,ライブラリ更新時に発生する後方非互換性の原因特定において,マークル木を用いた動的解析手法を大規模評価可能にする自動化基盤を構築したものである.従来手法は検証事例数が少なく実用性の実証が不十分であったが,本研究では実行トレースの収集からハッシュ値比較,木構造の編集距離算出までをパイプライン化し,実障害事例集「BUMP」を用いた大規模検証を可能とした.特に,編集距離アルゴリズムの導入により不一致箇所の抽出を自動化した点は,CI/CD環境への統合に向けた重要な進展である.現状の計算量に関する課題を明示しつつも,実例に即した高精度な不具合特定を実現するアプローチは,安全な依存関係更新を支える基盤技術として極めて価値が高く,本論文を推薦する.
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●FPGAアクセラレータ向けホスト-デバイス間通信自動最適化ツールの提案
 [2025-ARC-261(2025/6/10)](システム・アーキテクチャ研究会)

西田 宗馬 君 (学生会員)

発表時所属:名古屋工業大学大学院 工学研究科 工学専攻ネットワークプログラム
受賞時所属:名古屋工業大学大学院 工学研究科 工学専攻ネットワークプログラム
[推薦理由]
本論文は,複数の外部メモリを搭載したFPGAアクセラレータを対象に,HLSプログラムのホスト-デバイス間データ転送を自動最適化するツールを提案している.入力配列を複数の外部メモリに分散配置してカーネルを分割実行することでデータ転送時間のオーバーラップを実現する点が独創的であり,ソフトウェアプログラマの負担を増加させることなく最適化を自動化する実用的な貢献が高く評価される.Alveo U50・U200を用いた評価では平均18%の実行時間削減を達成しつつ,回路規模の増加を最大1.1%に抑えており,有効性が実証されている.HLSプログラミングの生産性向上に資する意義ある研究成果である.
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●単一磁束量子回路向けアーキテクチャレベル熱解析ツールの実装に向けたコンパクト熱モデル設計
 [2025-ARC-261(2025/6/11)](システム・アーキテクチャ研究会)

齋藤 旭 君 (学生会員)

発表時所属:九州大学大学院 システム情報科学府情報理工学専攻
受賞時所属:九州大学大学院 システム情報科学府情報理工学専攻
[推薦理由]
本論文は,次世代コンピューティング技術として注目されるSFQ回路を対象に,アーキテクチャレベル熱解析ツールの構築に向けたDFFのコンパクト熱モデルを設計している.CMOSとは発熱メカニズムや動作温度が大きく異なるSFQ回路に対し,産業技術総合研究所のアドバンストプロセスを仮定して熱回路網法を適用した点が新規性として高く評価される.COMSOLによる物理シミュレーションとの比較において最大0.319%・平均0.082%という高精度な検証結果を示しており,将来の高集積SFQ回路設計における熱設計基盤の確立に向けた重要な第一歩となる研究である.
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●仮想化システムのスループット向上のための仮想CPUの休眠と起床の最適化
  [2025-OS-169(2025/9/26)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

相馬 大地 君 (学生会員)

発表時所属:慶應義塾大学 開放環境科学専攻 D1
受賞時所属:慶應義塾大学 開放環境科学専攻
[推薦理由]
本論文は,仮想化環境においては,定期的なタイマ割り込みを抑制して性能低下を緩和する機能(dyntick)が特定のワークロードにおいてはかえって性能低下を引き起こしてしまうことを示し,その改善策を提案している.新たなハイパーコールを実装して,タイマ割り込みの有効無効の切り替え処理に伴うゲストOSとハイパーバイザ間の状態遷移を削減する.提案手法により実アプリケーションにおいて性能が向上することを示した.本研究は,性能低下を緩和する機能がかえって性能を悪化させうるという意外性のある知見を明らかにし,その解決方法を適切に示している.実システムに対する応用も期待できる.コンピュータサイエンス領域奨励賞に相応しい論文として推薦する.
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●RISC-Vの拡張をエミュレーション可能なハイパーバイザとそのモジュールの実装を支援するシステムの構築
  [ComSys2025(2025/12/1)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

髙名 典雅 君 (学生会員)

発表時所属:筑波大学 理工情報生命学術院 システム情報工学研究群 博士前期課程2年
受賞時所属:筑波大学 理工情報生命学術院 システム情報工学研究群 博士後期課程1年
[推薦理由]
本論文は,オープンな命令セットアーキテクチャ(ISA)であるRISC-Vの拡張仕様をハイパーバイザで擬似的に再現する手法を提案する.対象の拡張仕様を実際にハードウェアに実装することなく,その機能を実機上で利用可能になる.ISAの仕様を記述する言語(Sail)を用いて定義された拡張仕様から,ハイパーバイザのモジュールの雛形ソースコードや命令デコーダ等を自動生成するツールを実装した.本論文は,RISC-Vにおいて拡張仕様が策定されても実際にハードウェア実装されて利用されるものが少ないという問題に対して,有効な解決策を提示している.コンピュータサイエンス領域奨励賞に相応しい論文として推薦する.
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●動的測定回路を用いたSETパルスによるソフトエラーの周波数依存性評価
 [DAS2025(2025/8/29)] (システムとLSIの設計技術研究会)

松本 新大 君 (正会員)

発表時所属:京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 電子システム工学専攻 修士2年
受賞時所属:株式会社村田製作所
[推薦理由]
集積回路の微細化に伴いソフトエラーの影響が深刻化し,高精度な発生率評価が重要となっている.本研究では,SET(Single Event Transient)とSEU(Single Event Upset)を分離し,SETの動作周波数依存性を高精度に評価可能な動的測定回路を提案している.提案回路では,SEU耐性を有するSCANDICEFFとXOR分離構造を採用することで,高精度なSET観測を実現している.さらに,クロック伝送構成により複数周波数を同時供給し,7段階のSETを同時測定可能とすることで測定効率を向上させている.また,65nmバルクCMOSプロセスで試作したチップに対するα線照射実験により,600MHz付近でソフトエラー率が単調に増加することを示している.以上より,本研究は有用性が高く,CS領域奨励賞にふさわしい研究成果として推薦する.
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●RTOSが動作するRISC-Vプロセッサの設計とFPGA実装
 [2025-SLDM-210(2025/12/3)] (システムとLSIの設計技術研究会) 

松本 俊輔 君 (正会員)

発表時所属:高知工科大学 大学院工学研究科 基盤工学専攻 電子・光工学コース 修士2年
受賞時所属:三菱電機エンジニアリング株式会社 和歌山事業所
[推薦理由]
自動運転向け組込みシステムでは,低コスト・低消費電力・高信頼性を実現可能なRISC-Vが注目される一方,RTOS(Real-Time Operating System)動作のために特権命令やタイマ割込み機構の実装が必要不可欠である.本研究では,RISC-VプロセッサKRV32IにCSR,特権命令,例外・割込み処理機構,マシン・タイマを実装することで,RTOSが動作可能なRISC-Vプロセッサを設計している.さらに,乗除算命令セットを追加し,演算性能を向上させている.また,FPGA上でのCoreMark評価では,KRV32Iと比較してCoreMarkスコアが約2倍に向上しており,RTOS対応および特権機能追加が性能とハードウェア資源に与える影響も定量的に評価している.以上より,本研究は有用性が高く,CS領域奨励賞にふさわしい研究成果として推薦する.
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INT8による倍精度複素行列積エミュレーションの高速化と混合精度入出力に対応したライブラリの実装
 [2025-HPC-200(2025/8/5)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

中嶋 陸 君 (学生会員)

発表時所属:電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報・ネットワーク工学専攻 修士2年
受賞時所属:電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報・ネットワーク工学専攻
[推薦理由]
近年のGPUアーキテクチャは機械学習用途への最適化が進み,INT8やFP16といった低精度演算ユニットの性能が飛躍的に向上している一方で,科学技術計算に不可欠な倍精度浮動小数点(FP64)演算の性能向上は限定的である.このような状況において,低精度演算を活用して高精度演算を実現する手法の重要性が高まっている.本研究では,尾崎スキームに基づくozIMMUを複素行列積へ拡張するとともに,混合精度化および実装最適化を行った.特に,Karatsuba法を導入することで実数行列積3回による効率的な複素行列積計算を実現し,さらに実装の最適化により最大で約5倍の高速化を達成した.本成果はCS領域奨励賞を受けるに値するものとして,本賞に推薦する.
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Sparsification of Large Language Models using Supervised Fine-Tuning and Reinforcement Learning for Mathematical Reasoning Tasks
  [2025-HPC-202(2025/12/15)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

石川 智貴 君 (学生会員)

発表時所属:東京科学大学 情報工学系 博士課程1年
受賞時所属:東京科学大学 情報理工学院情報工学系
[推薦理由]
近年の大規模言語モデルにおいて,枝刈り手法に関する性能評価を理論と実験に基づき行った.特に,枝刈り手法が数学タスクむけにチューニングされたモデルの枝刈りにおいて,二次情報行列の近似精度が高いほど,枝刈り後の性能が高くなることを実験的に検証した.さらに,強化学習されたモデルは量子化が難しいことを有効パラメータ数の観点から示した.また,モデルのパラメータ数がサンプル数よりも多い過剰パラメータ系においては,枝刈り手法における二次情報行列の近似を理論的にも保証できることを示した.本成果はCS領域奨励賞を受けるに値する成果であり,本賞に推薦する.
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●Introducing Linear Implication Types to λGT for Computing with Incomplete Graphs
  [PRO-2025-3(2025/11/7)] (プログラミング研究会)

佐野 仁 君 (正会員)

発表時所属:早稲田大学 基幹理工学研究科 情報理工・情報通信専攻
受賞時所属:早稲田大学 基幹理工学研究科 情報理工・情報通信専攻
[推薦理由]
本研究は,グラフを変換するための型付き関数型言語の設計について論じている.パターンマッチングによる部分グラフの抽出,高階関数による自由なグラフの合成,そして型システムによる「意図したとおりのグラフ変換が行われる」ことの保証,の実現を目指している.先行研究では実行前に完全に型検査をすることはできていなかった.本研究では,線型含意型という「パターンマッチングで現れる不完全なグラフ」を表す新しい型を導入し,これを用いれば一定の妥当な制約の下では実行前型検査が可能となることを示した.グラフ変換のための型付き言語の設計指針はいまだ未確立であるが,本研究はそれに先鞭をつける成果であり,高く評価できる.
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●A Concurrent Extension of Reversible Imperative Programming Language with Runtime
  [PRO-2025-3(2025/11/7)] (プログラミング研究会)

黒田 将弘 君 (学生会員)

発表時所属:名古屋大学大学院 情報学研究科
受賞時所属:名古屋大学大学院 情報学研究科
[推薦理由]
可逆プログラミング言語とは,逆方向(プログラムの終わりから始まりに向かって)にも実行可能なプログラミング言語であり,デバッグやシミュレーション,低電力計算などの応用が期待されている.本研究は,可逆プログラミング言語Janusを拡張し,手続き呼び出しの並行実行を実現した.並行手続き呼び出しの逆方向実行を可能とするため,より低レベルな並行可逆言語CRILへコンパイルする方式を提案し,試作コンパイラによる動作実証も報告している.設計指針が未確立であった高レベル並行可逆プログラミング言語に対し,プログラミング要素からコンパイル方式までを一貫して設計・実装したものであり,プログラミング言語研究として高く評価できる.
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●2層k-平面的グラフのパス幅
 [2025-AL-204(2025/9/4)] (アルゴリズム研究会)

岡田 優斗 君 (学生会員)

発表時所属:名古屋大学 大学院情報学研究科 数理情報学専攻 博士後期課程 2年
受賞時所属:名古屋大学 大学院情報学研究科 数理情報学専攻 博士後期課程 3年
[推薦理由]
頂点集合が X⊔Y の二部グラフ G について,X, Y の頂点をそれぞれ異なる直線上に配置し各辺を線分として描画したものを G の2層描画と呼ぶ.本研究は,各辺の交差数が高々 k である2層描画を持つ二部グラフ,2層k-平面的グラフの構造に関する研究である.先行研究では,このようなグラフのパス幅(と呼ばれる値)は高々 k+1 と示される一方で,下界としては 0.5k+1.5 が与えられており,この上界の最適性が予想として挙げられていた.本研究はこの予想を肯定的に解決し,任意の k についてパス幅 k+1 の2層k-平面的グラフを構成するものである.この構成では辺ごとの交差数を保ったままパス幅を増加させる二つの新たな手法が導入されており,他の関連問題への応用も期待される.
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Influence of Users’ Personality Traits on Impressions of Autonomous Mobility and Autonomous Behavior in Robots
 [APRIS2025(2025/11/3)] (組込みシステム研究会)

藤原 達也 君 (正会員)

発表時所属:芝浦工業大学 電気電子情報工学専攻 修士2年
受賞時所属:オモビオ株式会社 人事総務本部
[推薦理由]
本研究は,社会的ロボットがユーザに適応した行動を行うための設計指針を明らかにすることを目的としている.従来研究で重視されてきたユーザの印象や性格特性に加え,社会的ロボットに不可欠な自律移動・自律行動を考慮している点が優れている.特に,受容的・拒否的な異なる行動特性をもつロボットを実装し,印象評価と性格特性との関係を分析した点は実証性が高い.ユーザ特性に応じたロボット行動設計に有用な知見を提供しており,今後の個別適応型HRI研究として高く評価できることから,ここに推薦する.
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●格子ボルツマン法に基づく流体シミュレーションのための量子回路実装
 [2025-QS-16(2025/10/23)] (量子ソフトウェア研究会)

上野 和雅 君 (学生会員)

発表時所属:東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻 博士1年
受賞時所属:東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻 博士2年
[推薦理由]
本論文は,流体シミュレーションに広く用いられる格子ボルツマン法(LBM)に対し,実用上不可欠な境界条件を含む具体的な量子回路実装を提示したものです.行列埋め込みオラクルを用いることで,流入・流出・No-Slip境界を効率的に実装し,オラクルあたりのリソースが格子点数に対して対数スケーリングに抑えられることを数値解析により示しています.計算流体力学への量子計算適用において,基本ゲートレベルでの実装に踏み込んだ具体的なデモンストレーションを与えた点は先駆的であり,今後の量子計算による実用的な科学技術計算の発展に資する重要な成果です.以上の理由から,本論文はコンピュータサイエンス領域奨励賞にふさわしい優れた研究成果であると推薦します.
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●Nontrivial multi-product commutation relation for reducing T-count in sequential Pauli-based computation
 [2025-QS-16(2025/10/24)] (量子ソフトウェア研究会)

森 雄生 君 (学生会員)

発表時所属:大阪大学 基礎工学研究科 システム創成専攻電子光科学領域 博士後期課程1年
受賞時所属:大阪大学 基礎工学研究科 システム創成専攻電子光科学領域 博士後期課程
[推薦理由]
本論文は,誤り耐性量子計算における重要課題の一つであるTゲート削減に対し,多重積交換則(MCR)という量子回路の新たな変換原理を提案しています.MCRは,多体パウリ回転ゲート間の特定の交換関係に基づき,従来の局所的な書き換えでは到達できない非自明な回路変換を可能にする枠組みです.さらに,「量子回路非最適化」という手法を活用することで,MCRに基づく変換を既存の量子コンパイラでは効率的に捉えきれないことを実証し,量子コンパイラ性能の向上に向けた新たな設計指針を提示しました.本研究は,高い論理性と独創性を兼ね備え,今後の量子コンパイラ設計に大きな影響を与える成果であることから,コンピュータサイエンス領域奨励賞に推薦いたします.
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