「パーピープン:ジャズ和音を生成する創作支援ツール」(Vol.42,No.3)

平成13年度論文賞受賞者の紹介

「パーピープン:ジャズ和音を生成する創作支援ツール」(Vol.42,No.3)

[論文概要]
 本論文は,音楽創作支援ツール「パーピープン」の設計方針,音楽知識表現手法,動作原理,実装等について述べた.パーピープンに単純な和音進行が与えられると,ケーデンス単位で和声的文脈を考慮しながら事例に基づく推論でユーザ意図を反映した演奏を生成する.既存の楽曲分析理論と演繹オブジェクト指向データベース技術を援用した結果,音楽的な直観に合致する和音進行の類似検索とケーデンス木を用いてユーザ意図を操作する GUI を実現した.実際に,多様で一貫した曲調の楽曲を効率的に生成することを確認した.

[推薦理由]
 本論文では和音進行から和声づけを行い、演奏を生成するための創作支援ツール「パーピープン」が報告されている。パーピープンは DOOD の枠組を知識表現形式に用いて、ケーデンスなどの音楽構造を表現し、入力和音列に対して事例ベース推論によって適切な和声づけを生成してユーザに提供し、ユーザが生成結果を選択・編集するためのインタフェースを備えている。
 音楽情報処理システムでは表層的な特徴量の統計的・時系列解析的なアプローチの研究が主流である。これに対し、本研究では音楽構造の扱いに正面から取り組み、明瞭な形式的枠組によって、類似性の扱い、それに基づく事例検索や生成を見通しよく実現しており、この方面の研究の重要性及び有効性を示すものとして高く評価できる。今後の同種の研究の発展が期待される。システムそのものもプロトタイプ段階ではあるものの、音楽創作支援ツールとして高い有用性を実現している。

平田 圭二君  1987 年 東京大学大学院工学系研究科 情報工学専門課程 博士課程修了.工学博士.同年 NTT 基礎研究所入社. 1990-93 年 (財) 新世代コンピュータ技術開発機構 (ICOT), KLIC 協会理事.  共訳書「コンピュータ音楽 - 歴史・テクノロジー・アート」(東京電機大学出版局).

青柳 龍也君 1960年生.1988年東京大学大学院情報工学専門課程博士課程修了.同年電気通信大学助手.音楽情報処理およびCAIの研究に従事.1998年より津田塾大学助教授.