「非数値計算応用向けスレッド・レベル並列処理マルチプロセッサ・アーキテクチャSKY」(Vol.42,No.2)

平成13年度論文賞受賞者の紹介

「非数値計算応用向けスレッド・レベル並列処理マルチプロセッサ・アーキテクチャSKY」(Vol.42,No.2)

[論文概要]
 非数値計算向けスレッド・レベル並列処理マルチプロセッサアーキテクチャを提案する。複数のプロセッサを単一チップに集積し、メモリを介さずレジスタ値を直接送受信することで、同期/通信を高速化する。新しく命令ウインドウ上でレジスタに対する同期を行う機構を導入することで、受信待ちの命令に後続する命令の実行を可能にする。評価の結果、本論文で提案するマルチプロセッサアーキテクチャは、8命令発行の2つのスーパスカラ・プロセッサにより構成した場合、16命令発行のスーパスカラ・プロセッサに対して、最大46.1%、平均21.8%の高い性能を達成できることを確認した。

[推薦理由]

 近年、スーパスカラに代わる新しいマイクロプロセッサのアーキテクチャとして単一チップマルチプロセッサが注目されている。マルチプロセッサが汎用マイクロプロセッサとして実用化されるためには、小さな並列性しか有さない非数値計算プログラムにおいて効率良く並列性を引き出すことが要求される。本論文ではこのような要求に対し、従来に比べ極めて小さなオーバヘッドで並列性を引き出すことが可能なだけでなく、従来とは異なり受信待ちの命令が並列性の利用を阻害することのないマルチプロセッサのアーキテクチャを提案している。提案のマルチプロセッサは高性能を達成できることを確認している。本研究は今後のマイクロプロセッサの研究に大きな貢献をすると期待できる画期的なものである。

小林 良太郎君  1995年名古屋大学工学部電子情報学科卒業.1997年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻博士課程前期課程修了.2000年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻博士課程後期課程満了.工学博士.2000年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻助手.1999年情報処理学会山下記念研究賞受賞.

小川 行宏君  1998年名古屋大学工学部電子情報学科卒業.2000年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻博士課程前期課程修了.同年,岐阜県製品技術研究所.2001年岐阜県生産情報技術研究所.

岩田 充晃君  1996年名古屋大学工学部電子情報学科卒業.1998年名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻博士課程前期課程修了.同年,三菱重工業(株)に入社.

安藤 秀樹君  1981年大阪大学工学部電子工学科卒業.1983年大阪大学大学院修士課程修了.京都大学工学博士.1983年三菱電機(株)LSI研究所.1991年Stanford大学客員研究員.1998年名古屋大学助教授.1998~2001年東京大学大学院理学系研究科助教授併任.1998年情報処理学会論文賞受賞.

島田 俊夫君  1968年東京大学工学部計数工学科卒業.1970年東京大学大学院修士課程修了.同年電子技術総合研究所入所.1993年より名古屋大学大学院工学研究科電子情報学専攻教授.最近はマイクロプロセッサのアーキテクチャやチップ内並列処理の研究に従事.1988年度市村賞,1994年度情報処理学会論文賞,1995年注目発明賞受賞.工学博士.