有川 節夫 君

2014年度功績賞受賞者の紹介

有川 節夫 君 (ありかわ せつお)

 本会正会員有川節夫君は,永年にわたり情報科学の分野の教育研究およびその政策に関して先導的な役割を果たしてこられました.
 情報検索,類推,機械学習などの研究分野において数々のパイオニア的な研究業績をあげるとともに,多くの世界的研究者を育成されてきました.特に,情報検索とパターン照合の基礎研究から実用的なテキストデータベース管理システムの研究開発までを行い,その商用版は国の機関のシステムなどで広く実用に供されています.また,帰納推論等の機械学習の基礎理論を展開し,その成果をゲノム情報分野へ応用して,精度の極めて高い仮説の発見に繋げられました.機械学習に基づく機械発見の可能性と手法において,観測データによる仮説空間そのものの論駁可能性が本質的であることを指摘し,このような可能性を持つ広い空間が存在することを証明されました.こうした研究の集大成として「発見科学」と名づけた日本発・世界初の新しい学問領域を確立されました.学協会においても,本会,人工知能学会,日本ソフトウェア科学会,統計科学研究会,バイオインフォマティクス学会などに深く関与するとともに,国際会議「計算論的学習理論(ALT)」および「発見科学(DS)」を立ち上げるなど,情報科学分野の発展に大きく貢献されました.これらの卓越した功績により,本会論文賞,丹羽賞学術賞,PAKDD2000 Paper with Merit Award,人工知能学会業績賞を受賞するなど,国内外から高く評価されています.
 また,九州大学総長および文部科学省の科学技術・学術審議会委員として活躍し,学術分科会研究環境基盤部会等の部会長,学術情報作業部会主査,研究計画・評価分科会情報科学技術委員会主査などを歴任するなど,我が国の情報科学の発展を牽引してこられました.国立国会図書館の審議会委員長として,科学技術情報の整備にも貢献されました.
 以上のように,同君が国内外の情報科学分野の発展に尽くした功績はまことに顕著であります.