「ワインブドウの収穫期6カ月前でも得られる早期収量予測の指標について」
2025年度論文賞受賞者の紹介
ワインブドウの収穫期6カ月前でも得られる早期収量予測の指標について
[情報処理学会論文誌 コンシューマ・デバイス&システム Vol.15 No.2, pp.11-20]
[論文概要]
ワインブドウ農業において,早期収量予測は適切な収穫計画に重要である.近年,画像などのセンサを用いた房カウントによる収穫数の予測手法が研究されているが,葉や房同士によるオクルージョン対策が予測精度向上の課題になっている.本研究では,葉がないワインブドウ生育初期の新芽数と収穫房数の関係性に着目し,オクルージョンの影響を抑えた収穫数予測に対する新芽カウントの有効性を検証した.新芽/若枝/花序/房の各生育期でのカウント結果に基づく収穫予測数を比較し,収穫期6カ月前にあたる新芽カウントが収量予測の指標として有用であることを示した.
[受賞理由]
候補論文は,ワインブドウ栽培における喫緊の課題である収量予測に対し,コンピュータビジョンと農業ドメインの知識を高度に融合させ,従来手法の限界を打破する画期的なアプローチを提案しています.また,学術的な新規性と,現場への導入可能性を極めて高いレベルで両立させており,情報処理学会論文賞に値するものと考えます.本研究の特筆すべき点は以下の2点です.
オクルージョン課題に対する独創的なアプローチ(新規性)
従来の画像ベースの収量予測では,葉による「房の隠れ(オクルージョン)」が最大の精度低下要因でした.本研究では,葉が茂る前の「新芽・若枝期」に着目するという,生育プロセスを逆算した時間軸のシフトにより,物理的な遮蔽問題を根本から回避する手法を提案しています.この「対象が隠れる前に測る」という発想は,農業IT分野における新たな視座を与えるものです.
非破壊・低コストな実用システムの提示(社会的貢献)
熟練農家の手作業(サンプリング採取)に依存していた従来の収量予測を,汎用的なRGBカメラを用いた画像処理による非破壊かつ自動的な手法へと置き換える道筋を立てました.人手不足が深刻化する農業現場において、本手法は生産性向上に直結する実用的価値を有しており,情報学が一次産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引する好例と言えます.

眞田 慎 君
2023年立命館大学大学院博士課程修了.工学博士.2023年同大学立命館グローバル・イノベーション研究機構研究員.2024年ヤマハ発動機株式会社入社.深層学習を用いた研究に従事.

黒田 剛士 君
2010年九州大学大学院博士後期課程修了.博士(芸術工学).ラバル大学(ケベック) および国内大学の研究員を経て,2017年ヤマハ発動機株式会社に入社.深層学習を用いた研究開発に従事.

Damaris Trifena 君
2017年静岡大学学士課程修了.2017年ヤマハ発動機株式会社入社.画像処理および深層学習を用いた研究に従事.

猿田 悠 君
2019年名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士前期課程修了.理学修士.2020年三栄ハイテックス株式会社入社.2021年よりヤマハ発動機株式会社にて深層学習による画像認識技術の開発に従事.

峰野 博史 君
1999年静岡大学大学院理工学研究科計算機工学専攻修了.同年日本電信電話(株)入社.NTTサービスインテグレーション基盤研究所を経て,2002年静岡大学情報学部助手.2018年同大学教授.博士(工学).Heterogeneous Network Convergence, Agri-Cyber Physical Human System等に関する研究に従事.電子情報通信学会,人工知能学会,ACM各会員,IEEEシニア会員.本会フェロー.

難波 直樹 君
2009年名古屋大学大学院修士課程修了.2009年ヤマハ発動機株式会社入社.自動運転システムの開発に従事.

内海 智仁 君
2001年大阪府立大学修士課程修了.工学修士.同年ヤマハ発動機株式会社入社.ロボット研究に従事.
