「LSTMモデルによる金融経済レポートの指数化」

2022年度論文賞受賞者の紹介

LSTMモデルによる金融経済レポートの指数化

[情報処理学会論文誌 デジタルプラクティス Vol3 No.2, pp.93-103]
[論文概要]

 本稿では自然言語処理を用いて,金融経済に関する文書から景況感を読み取り指数化する手法を示し、その実務での応用例を紹介した.景況感を推定するモデルにはLSTM を用い,学習に必要な大規模教師データとして景気ウォッチャー調査を用いることを提案した.手法の有効性を示すために,政府の発行する月例経済報告と日本銀行が発行する金融経済月報をそれぞれ指数化して既存の経済指標と高い相関があることが確認した.本手法による指数は実務でも応用が進み,企業や政府がSNS や地域経済レポートを指数化して公表される等の活用が為されている.

[受賞理由]

 本論文は、自然言語処理を用いて金融経済に関する文書から景気センチメントを推定する手法を提案している。また、実験において、政府発行の月例経済報告と日本銀行発行の金融経済月報の景気センチメントを求め日経平均株価との比較を行い高い相関性があることを示している。また、既に実務でも応用がなされていることが述べられており、論文誌ディジタルプラクティスにとっても大変有益な論文であるため。

山本 裕樹 君

2004 年京都大学理学部卒業.2006 年同大学大学院修士課程修了.同年野村證券株式 会社入社.2017 年東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了.景気ナウキャスティング,NLP,金融市場分野の研究開発に従事.証券アナリストジャーナル賞(2010年度).

落合 桂一 君

2008年 千葉大学大学院博士前期課程修了.同年株式会社NTTドコモ入社.2017年東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了.2020年8月より東京大学特任助教.博士工学).SNS,位置情報,ヘルスケアデータやス マートフォンログ解析,FinTech 分野の研究開発に従事.ICWSM 2020 Best Paper Honorable Mentions 受賞.ACM,日本データベース学会各会員.

鈴木 雅大 君

2013年 北海道大学工学部卒業.2015年同大学大学院修士課程修了.2018 年東京大学工学系研究科博士課程修了.博士(工学).2020年まで東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻特任研究員.同年より同大学特任助教.人工知能,深層学習の研究に従事.

松尾 豊 君

1997 年 東京大学工学部卒業.2002 年同大学大学院博士課程修了.博士(工学).産業技術総合研究所,スタンフォード大学を経て,2007 年より,東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻准教授.2019 年より同大学大学院人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻教授.2014年より2018 年まで人工知能学会倫理委員長.2017 年より日本ディープラーニング協会理事長.人工知能学会論文賞,情報処理学会長尾真記念特別賞,ドコモモバイルサイエンス賞など受賞.専門は,人工知能,深層学習,Web工学