「Facelot:顔検出と顔属性をエントリとしたアドホックな抽選システム」

2020年度論文賞受賞者の紹介

Facelot:顔検出と顔属性をエントリとしたアドホックな抽選システム

[情報処理学会論文誌 Vol.60 No.11, pp.1953-1960]
[論文概要]

 抽選会の主催者は場全体の雰囲気が盛り上がり,参加者全員が楽しめることを期待する.しかし,単純な抽選やありきたりのゲームでは盛り上がりが期待できず,一方で工夫を盛り込めば,相応の事前準備や運営のコストが増える.そこで本論文では,顔検出と顔属性をエントリーとしたアドホックな抽選システム,Facelotを提案する.顔検出によってエントリーできる手軽さを持ち,抽選演出の効果と表情がもたらす心理的効果の2つの軸でエンタテイメント性を高め,場全体の雰囲気を盛り上げる設計になっている.Facelotを利用したいくつかの事例を紹介し,有効なシチュエーションを議論する.

[受賞理由]

 AIが社会の様々な場面に革命的な変化を引き起こす中で,エンタテインメントコンピューティングに関する研究は人間らしい生き方の探求・実現に不可欠な存在となりつつある.本論文が提案する情報システムは,参加者が楽しめる抽選会という着想,および顔認識・表情推定といったAIの応用により,人や社会と触れ合う温かみのあるコンピュータの活用を目指すものである.また,AIの精度を含む完成度の高さについても十分な配慮と検証が行われており,有用性および信頼性の点でも高く評価できる.査読過程における専門家からの評価も極めて高く,論文賞にふさわしいものと判断してここに推薦する.

金子 翔麻 君

2018年明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科卒業.2020年同大学大学院先端数理科学研究科先端メディアサイエンス専攻博士前期課程修了.同年,株式会社リクルートに入社.在学中,インタラクション研究に従事.

渡邊 恵太 君

2004年慶應義塾大学環境情報学部卒業.2009年慶應義塾大学院政策・メディア研究科博士課程修了.博士(政策・メディア博士).JST ERATO五十嵐デザインインタフェースプロジェクト研究員を経て,2013年度より明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科所属に着任.現在准教授.人の身体性に基づくインタラクションやインターネットを前提としたインタラクション研究に従事.