「受信ノード主導型MACプロトコルのビーコン削減に基づいた長寿命センサネットワーク」

2018年度論文賞受賞者の紹介

受信ノード主導型MACプロトコルのビーコン削減に基づいた長寿命センサネットワーク

[情報処理学会論文誌 Vol.59 No.2, pp.473-485]
[論文概要]

 本論文では,無線マルチホップ通信により測定データを集める無線センサネットワークにおいて,従来手法に比べ大幅にネットワーク寿命を延ばすMAC及び経路制御プロトコルを提案している.具体的には,省電力なMACプロトコルである受信ノード主導型MACプロトコルを拡張し,さらなる消費電力の削減を実現している.また,トポロジ変化時にも効率的に配送木を修復する手法を導入し,残電力量が低下したノードを回避した配送木を自律的に構築する仕組みにより,ネットワーク寿命を延長している.さらに,現実のセンサ端末の性能を考慮したシミュレーション評価により,ネットワークの寿命を大幅に増大できることを示している.

[推薦理由]

 本論文は、無線センサネットワークにおけるバッテリ駆動を想定したセンサ端末の省電力化に関する提案である。ビーコン信号削減によるセンサ端末の消費電力削減手法において、従来課題とされていたトポロジ変化時に、提案手法は配送木の更新を局所化することで解決しており、新規性が高い。実験においては現在主流のハードウェア構成を考慮した現実に即したシミュレーションを行っており、またその評価結果からは既存手法に比べて年単位でのバッテリ寿命の延命が示唆されるなど、実用性が高い。電源のない場所にセンサ端末を設置して無線マルチホップ通信によりセンシングデータを集める無線センサネットワークは,IoTを実現するための重要技術の一つとして最近特に注目を集めているとともに、配備コストや効率性の点から長期利用可能なセンシングシステムの実現が鍵となる。本論文は、このような社会課題に即した有用性の高い研究成果であり、また論文全体の体裁も大変読みやすく工夫されており、論文賞にふさわしいものと判断してここに推薦する。

横谷 晟人 君

 2016年和歌山大学システム工学部情報通信システム学科卒業.2018年和歌山大学大学院システム工学研究科博士前期課程修了.同年,ソフトバンク・テクノロジー株式会社に入社.現在,クラウドコンピューティングを軸としたIoT向けソリューションの設計・開発に従事.

吉廣 卓哉 君

 2003年京都大学情報学研究科博士後期課程修了.同年和歌山大学システム工学部助手.2009年同講師,2012年同准教授.博士(情報学).グラフ理論,組合最適化,情報ネットワーク,無線通信プロトコル等に関する研究に従事.本会シニア会員.日本データベース学会,電子情報通信学会,IEEE各会員.