「コンピュータ将棋を用いた棋譜の自動解説と評価」

2013年度論文賞受賞者の紹介

コンピュータ将棋を用いた棋譜の自動解説と評価

[情報処理学会論文誌 Vol.53, No.11, pp.2525-2532]
[論文概要]

 本論文ではプロ棋士の強さに達しつつあると評価されるコンピュータ将棋の強さを活かして,プロ棋士の将棋の対局における現在の局面の形勢等を,自動でリアルタイムに解説するシステムを提案した.実際にオープンソースプログラムのGPS将棋と,twitter.com 等の情報基盤を利用したシステムを構築・公開し,ユーザから好評を得ている.本稿で分析した27の対局において,指手の予測は過半数の局面で的中し,また形勢判断も概ね対局の流れを表していた.これらの分析から,観戦の参考になる形勢判断と読み筋を提供することが可能になったと言える.

[推薦理由]

 本論文では,近年高度化したコンピュータ将棋における技術を,実際のプロ棋士における対局へのリアルタイム解説の実現に転用するという,大変斬新なアイデアに基づく研究の成果が述べられている.システムはオープンソースプログラムおよび既存の情報基盤を利用して構成され公開もされており,その対局解説の性能においても適切な方法で評価されている.以上のように,本論文は,その提案技術の水準の高さのみでなく,話題の斬新さや社会に夢を与えるという観点からも,社会への貢献に寄与することが強く期待されるため,本学会の論文賞にふさわしいと判断し,ここに推薦する.

金子知適 君

 1997年東京大学教養学部卒業.2002年東京大学院総合文化研究科博士課程修了.博士(学術).2002年東京大学院総合文化研究科助手.2007年助教を経て2012年より准教授.ACM, 情報処理学会,人工知能学会,日本ソフトウェア科学会各会員. 思考ゲーム,機械学習に興味を持つ.