「Traceglasses:欠陥の効率良い発見手法を実現するトレースに基づくデバッガ」

2011年度論文賞受賞者の紹介

「Traceglasses:欠陥の効率良い発見手法を実現するトレースに基づくデバッガ」

[情報処理学会論文誌 プログラミング Vol.3, No.3, pp.1-17]
[論文概要]

 本研究は実行トレースを使った効率の良い欠陥の発見手法を提案し,トレースに基づくJava のデバッガであるTraceglassesとして実装する.利用者は,プログラム実行中のイベントを記録したトレースにより, 既存のデバッガに見られるようなステップ操作を必要とせず,プログラムの動作を遡り, また指定のオブジェクトに対する操作のみを表示することで, 効率よく欠陥を発見することができる.実験として, テキスト整形プログラムの欠陥を発見する事例を説明し,提案した欠陥の発見手法と実装について実用上の有用性を示した.





[推薦理由]

 本論文では、Javaプログラムにおけるエラー発見手法として、実行を逆向きに遡及することにより、エラーの流れをたどっていく追跡手法を提案している。エラーの追跡にはトレースベースのデバッガが用いられている。提案されている追跡手法は、ステップ実行単位で追跡する局所的な方法と、特定の変数に対する代入や参照をプログラムの特定の実行に対して検索する大域的な追跡手法とからなる。この提案手法のもと、著者は実際にシステムを実装し、ユーザーインターラクションによる絞り込みが有効であることを示しており、この点において特に意義深い研究となっている。一方、提案手法・実装方法に関する記述や性能評価に関する記述は、要領よくまとめられており、明解な論文となっており、評価することができる。以上の理由により、論文賞として推薦するものである。

櫻井孝平 君

 平成21年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了.同年芝浦工業大学大学院工学研究科ポスドク研究員.平成23年より金沢大学理工研究域電子情報学系助教. 博士(学術).アスペクト指向プログラミング言語やソフトウェアテストの研究に従事.ソフトウェア科学会,ACM各会員.

増原英彦 君

 1995年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻博士課程中退.東京大学大学院総合文化研究科助手・講師を経て2002年より助教授(現准教授).2001年から2002年までカナダ・ブリティッシュコロンビア大学Visiting Assistant Professor. 博士(理学).先進的なプログラミング言語の設計や実現方式に興味を持つ.

古宮誠一 君

 昭和45年(株)日立製作所入社.昭和63年〜平成12年IPA技術センター特別研究員.平成5 年徳島大学客員教授.平成7 年−22年 千葉大学非常勤講師.平成9年より芝浦工業大学客員教授. 平成12年3月信州大学博士(工学). 平成13年より芝浦工業大学教授.平成15年より同大学専門職大学院教授を兼務.