「Rapid BRDF Measurement Using an Ellipsoidal Mirror and a Projector」

2010年度論文賞受賞者の紹介

「Rapid BRDF Measurement Using an Ellipsoidal Mirror and a Projector」

[IPSJ Transactions on Computer Vision and Applications Vol.1, pp.21-32]
[論文概要]

 我々は,楕円鏡とプロジェクタを用いたBRDF計測装置を提案しているが,試料を切り取る必要があること,及び,十分なダイナミックレンジが得られないという二つの問題があった.本研究では,楕円鏡の長軸に平行に試料を配置できる計測装置を新たに設計することで,一つめの問題を解決した.さらに,プロジェクタから投影する照明パターンをアダマール行列に基づいて多重化することで,計測時間を増やすことなく,計測データのダイナミックレンジを大幅に向上し,二つめの問題を解決した.



[推薦理由]

 物体面上の点に,ある方向から光が入射したとき,それぞれの方向へ,どれだけの光が反射されるかを表す双方向反射率分布関数(BRDF: Bidirectional Reflectance Distribution Function)の推定はコンピュータビジョンにおける基本問題の1つである.BRDFは多次元になるため計測に時間がかかるのが最大の問題点であったが,本論文では,反射特性が未知の物体のBRDFを高速に計測するために楕円体ミラーとプロジェクタを組み合わせたシステムを提案している.提案手法は,機械的な駆動機構を用いずにBRDFを効率よく計測できる特長を有し,手法の新規性に加えて実用上の価値も高い.また,ミラーの設計が詳細に検討されており,論文としての完成度が高い.以上の理由から,コンピュータビジョンと周辺分野に貢献するものと考え、論文賞に推薦する.

向川 康博 君

 1997年筑波大学大学院博士課程工学研究科修了.同年~2002年岡山大学助手.2003年~2004年10月筑波大学講師.大阪大学助教授を経て 2007年4月より同大学准教授.2009年~2010年 MIT Media Lab客員准教授.コンピュータビジョンの研究に従事.

角野 皓平 君

 2005年大阪大学基礎工学部情報科学科中退.2007年大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻博士前期課程修了.

八木 康史 君

 1983年大阪大学基礎工学部制御工学科卒業.1985 年同大大学院修士課程修了.同年三菱電機(株)入社.同社産業システム研究所にてロボットビジョンの研究に従事.1990年大阪大学基礎工学部情報工学科助手.同学部システム工学科講師,同大学院助教授を経て,2003年より同大学産業科学研究所教授.1995年~1996年英オックスフォード大学客員研究員,2002年仏ピカルディー大学招聘助教授,コンピュータビジョンに関する研究に従事.