2019年03月04日版

「デジタルネイティブ世代の気づきを作る」

屋代 智之(調査研究担当理事)


 いうまでもなく,我々の生活にはどんどんコンピュータが入ってきています.多くの家電機器はコンピュータ制御になり,誰でもコンピュータを使うようになり,デジタルネイティブと呼ばれる若者たちがそこかしこでスマートフォンを自在に操るような時代です.さらに,車の運転はどんどん自動化され,数年後には自動運転の車が市販されそうな情勢でもあります.人工知能技術はどんどん発展し,さまざまな分野で,コンピュータは人間を上回る性能を発揮するようになってきています.

 このような時代ですから,今どきの学生は,何か分からないことがあるとすぐにスマートフォン(スマホ)で調べるし,離れている人とのコミュニケーションもサクッとできてしまう.明らかに私の世代の人間が若かったころとは異なる生活スタイルがそこにはあるように思えます.

 しかし,です.これだけスマホを使っているのですから,ということで,学生に「スマホのどういうところに不満がある? 何ができたらもっと便利になると思う?」と聞くと,なかなか芳しい答えが返ってこないことが多いようです.あまり不満を感じていないのでしょうか.それよりは,必ずしもスマホを使いこなせていない,というか機能を全部把握していないので,自分が不満に思うようなことはアプリを探せば実はすでに実現されているのではないか,という感覚があって,不満点をあまり言えない,という面もあるようです.

 このように,コンピュータが高機能化し,多くのアプリケーションが多機能になってくると,全部の機能を使いこなす,というのはなかなかハードルが高く,それよりは,自分のやりたいことができる方法を知って,その使い方以外にはあまり興味を示さない,という使い方が増えてきているように思います.必ずしもそれが正しくない,というわけではないとは思いますが,こうなる原因として,たとえば直感的なインタフェースによる分かりやすい操作方法や,それに伴うマニュアルの簡素化,などにより,新しい機能や使い方への気づきが起こりにくくなっているという面もあるのではないかと思います.

 これ自体は時代の変化ですし,今から比べるとほとんど何もできなかった昔のコンピュータを触っていた私達の時代と比べること自体に無理があるのは重々承知です.ですが,今までの多くの研究者の入り口にあった(と私は思っている),「自分がやりたいけどできないことをできるようにしたい」という欲求がなかなか見出しにくくなっているのではないかな,とは思います.そのような,ある意味勝手に情報系技術者を目指してくれるような「気づき」を作れる仕組みが出てこないと,今後の情報系技術の裾野は広くならないように思います.

 では,どうしたらいいのか?というとなかなか難しいところはあるのですが,このような状況下でも気づきを見つけた人たちに活躍してもらうのが一番良いのかな,と思います.そして,私たち上の世代もそういった若い考えに負けないように競合して考えていく.そういう意味を考えても,学会としては今後学生会員やジュニア会員制度をどんどんと拡大していくべきですし,それが今後の学会を担っていけるようになると,日本も,ひいては世界も変わっていくのではないかと期待しています.

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