2026年01月08日版:高岡 詠子(会誌/出版担当理事)

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    学会だからこそできること

    高岡 詠子会誌・出版担当理事)

     これまで、2016〜2017年度と2021〜2022年度に教育担当理事を、そして現在は会誌・出版担当理事を務めています。3期・計6年間の理事としての活動の間、そして今もなお、「学会にできること、学会だからこそできることは何だろう」と模索し続けています。この問いは、私だけでなく、学会にかかわるすべての人にとって大切なテーマだと思います。

     当たり前のことかもしれませんが、学会には同じ分野の研究者を集める力があります。本会であれば、「情報学」にかかわる研究者が集まり、さらにその中の「研究会」では、より狭い範囲で同分野の研究者が集まります。そこで自分の研究を発表し、意見交換や議論を重ね、共同研究へと発展することもあります。そのうちに、研究会の幹事や運営委員の仕事に携わるようになります。

     ここで自分の歩みを振り返ると、情報処理学会に入会したのは大学院1年生のとき、全国大会で発表したことがきっかけでした。研究室の先輩方は皆、学生会員で、毎年、恩師の故中西正和教授とともにプログラミング・シンポジウムに参加していたことを思い出します。大学で働き始めて間もなく、恩師は天に召され、私は飼い主のいない羊のような状態になってしまいました。そのようなとき、研究生活を支えてくれたのは学会でした。研究会に参加し発表を重ねるうちに研究の方向性が見えてきました。貴重なアドバイスをくださった先輩方は数限りなくいらっしゃいます。この場を借りてお礼申し上げます。その後、研究会の幹事や運営委員を務めるようになり、研究会も研究者自身が運営していることを知りました。このころ、企画力やリーダーシップを養うことができたのだと思います。

     プログラミング・シンポジウムに参加していたころからの大先輩方には、学生会員だった私を覚えていてくださり、学会活動や研究に関するアドバイス、新しい活動へのお誘いなどをいただきました。やがて会誌編集委員や論文誌編集委員の仕事にも携わるようになりました。会誌は、その分野の研究者が自分たちで作り上げるものです。私が会誌編集委員だったころは、ちょうど高等学校に情報科が設立された時期であり、情報教育に関する記事のニーズが高まっていました。それで教育に関する新しいWGを立ち上げ、2011年4月に「ぺた語義」という教育に特化したコーナーを会誌に新設しました。当時は高校教科「情報」に関する記事が続きました。14年後の現在、「ぺた語義」は大学における「情報」入試実施に関する記事を送り続けています。このタイミングで会誌・出版担当理事を務めていることに、ある種の感慨を覚えます。

     これらの経験は、研究者としての幅を広げる大きな契機となり、本務校での自分自身の活動が活性化され、学外での活動もますます活発になるというプラスの連鎖が生まれました。放送大学、大学入試センター、日本学術会議などのお仕事にも発展しました。日本学術会議は本会と連携し、2016年に「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 情報学分野」1)、2020年に「情報教育課程の設計指針—初等教育から高等教育まで」2)を公表しています。現在、日本学術会議情報学委員会情報学教育分科会幹事として、その改訂版の公表に向け、本会の情報処理教育委員会と連携し作業を進めているところです。こうした活動をさせていただいているのは、すべて本会に育てていただいた結果だと、いつも思っています。だからこそ、理事としてのお仕事に励み、できる限り本会に恩返しをしたいと考えています。

     学会活動は、研究者としての成長を支える重要な土台であることを改めて感じます。学会はつながりを提供してくれました。改めて「学会だからこそできるつながり」とは何だろうと考えてみると、単なる交流ではなく、研究や教育の未来を共に創る仲間との出会いなのではないかと感じます。さらにここ数年、学会のネットワークは大学や企業だけでなく、ジュニア会員や初等・中等教育の教員まで広がり、つながりは一層深まっています。こう考えると、「学会だからこそできること」は、「異なる立場・世代・専門性を持つ人々が、共通のテーマで対話できる場」を提供することだと思います。すでに全国大会での中高生情報学コンテスト、各種セミナー、賛助企業との交流会、学生交流イベントなどの場が作られています。今後は、たとえば夏休みや春休みに企業の研究部門や開発チームでジュニア会員が短期インターンを行えるよう仲介したり、企業研究者やエンジニアがジュニア会員にキャリア相談や研究アドバイスを行うメンタリング・キャリアセッション、企業が教育や技術に関する課題を提示し、ジュニア会員がアイデアを提案する「企業課題ピッチ」+「ジュニアアイデアソン」、学会の知見+企業事例で学ぶ次世代スキル研修なども実現できるのではないでしょうか。こうした取り組みは、時代の変化に合わせて新しいつながりを提供できるのではないかと、ワクワクしています。私もそのために貢献できればと日々思っています。

    1)日本学術会議:大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 情報学分野
      https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-h160323-2.pdf
    2)日本学術会議:情報教育課程の設計指針—初等教育から高等教育まで
      https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-h200925.pdf
     
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