2026年05月28日版:高橋 克巳(副会長)

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    情報処理学会の会員は2万人

    高橋 克巳副会長)

     2026年現在、情報処理学会には約2万人の会員がいます。今日はこの「2万人」という数字から、本会情報処理学会の立ち位置を考察してみます。


    本会は180万人中の2万人

     学会名鑑1)によると、日本には学会が約2,200団体あり、その会員総数は360万人程度とされています。学会活動で一人が複数の会に所属することがあるので、本稿ではそれを一人平均2学会とします(乱暴ですが)。そうすると日本の学会活動者は360万人(延べ)から、推計実人数180万人(実質)となります。本会会員は日本の学会に所属している人の2万人/180万人となります。会員数で見ると本会は29位に位置します。日本の学会は医学・医療系がとても多いので、それを除くと本会は9位、自動車技術会、土木学会、建築学会が3万人を超えていて2万前後に機械学会、電子情報通信学会、応用物理学会、電気学会、化学会らが本会と一緒に位置付けられています。


    日本:世界、学会サイズ2万:10万、支える人口1億:20億

     世界を見てみましょう。IEEEの40万人超が突出しています。次いでACS(化学)、ASCE(土木)、ASE(自動車)、ASME(機械)などが20から10万のレンジでいます。医学系もこのレンジにいくつかあります。情報分野では、ACMも10万程度で、中国のCCFが10万に迫ろうとしています。

     日本を代表する学会と世界を代表する学会の会員数を比べると、2万人対10万人という数字が見えてきます。なお母集団を人口で見ると、日本は1億、世界は(全人口80億はともかく)20億人(先進国的人口)という感じなので、日本の学会は母集団が小さい割には頑張っているといえますし、伸び代に関しては世界の方にあると言えるでしょう。


    日本の情報の学会会員4万

     さて、話を日本国内に戻します。日本の学会会員数360万人(延べ)を、独自クラスタを作って分類しました。内訳は、支配的な医療クラスタ 220万人、次いで工学 28万、農水環 16万、土木建築 13万、教育 12万などが会員数の多い分野です。情報は約8万人です。ほかに、心理臨床、化学、バイオなどがあり、それ以外にも人文系や理学系の多数の学会があります。商業に関するクラスタは8,000人程度でした。なおこれら学会クラスタの会員数は延べ人数なので、平均登録係数2で割ったものを実質数とみなすこととします。情報分野で学会の会員になっている人は4万人(実質数)となります。


    1:10、1:100、1:2500 こんなに違う会員率

     ここで、それぞれの学会群の潜在母集団を考えてみます。これが分かれば、どれだけ会員になってもらえているか、会員率が分かります。多少乱暴ですが、国の労働力調査2)の産業別就業者数(働いている人数)を分母にできないかと考えました。たとえば、農林業 174万人、建設業 478万、製造業 1,033万、情報通信業 302万、卸売業・小売業 1,029万、医療・福祉 947万などです。これを前に述べた学会独自クラスタの人数と対比してみましょう。学会クラスタを分子、就業者数を分母と見てください。クラスタの人数は2で割ったみなし実質数を使っています。なお分母には産業分類として別分類になるアカデミアも考慮すべきですが、大学関係者(教員・院生等)は50万程度なので分野別に割り振ると小さくなり本稿の分析粒度では無視してよいと考えました。

     

    学会会員数
    (独自クラスタ)
    産業就業者数
    (日本標準産業分類)
    医療 110 
    医療・福祉
    947
    工学
    製造業
    1033
    情報 情報通信業 302
    商業 0.4 卸売小売 1029

    ※単位 万人 

     この表から、医療系の学会員数と潜在母集団数の比は約1:10、工学や情報は似ていて1:100、そして商業においては1:2500ということが分かりました。医療系は「多くの人が学会に入っている」、工学や情報は「まれに入っている人と出会う」、商業においては「ほとんど誰も入っていない」という印象かと思います。したがって情報分野の会員率は1/100であると考えられます。会員率の大きさから医療、工学系、商業それぞれの学会の成り立ちが想像できるのではないかと思います。


    違う母集団も考えてみよう、たとえば450万? 1000万?

     ところで、情報系学会の会員の潜在母集団は、情報通信業従事者302万だけでしょうか。なんでも比較コーナーをやってみましょう。

    「情報I」年間履修者 100万
    情報処理技術者試験(IPA)年間応募者数 70万
    Wikipedia日本語編集者 1.5万
    GitHub日本登録者 450万
    SNS動画投稿経験者@日本 1,000万(超推定)

     情報には、それを学ぶ、資格に挑戦する、知識を編集する、プログラムを作る、動画を作るって公開する、などなど、さまざまな立場でかかわる人がいることが分かります。本会は、どんな母集団のどんなニーズにこたえていけるのでしょうか。


    おわりに

     情報処理学会の会員数2万人をテーマに考察を行いました。なお本稿は必ずしも会員増の単純な拡大路線を標榜するものではありません。学会の会員数には母集団に対する均衡点があるようにも思えますし、日本の学会は飽和点に達しているようにも思えますし、見方を変えると伸び代がたくさんあるようにも思えます。身の丈を正しく理解して、その上で楽しいことにチャレンジする精神が大事です。

    1)学会名鑑:https://gakkai.scj.go.jp
    2)労働力調査、5-1主な産業別就労者数 R7年、https://www.e-stat.go.jp/

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