2019年10月07日版

「小さな課題解決」

田島 玲(技術応用担当理事)


 情報処理学会では,産業界向けに大きく4つの取り組みを進めています.コミュニティ活性化(ITフォーラムなど),インプットの機会の提供(連続セミナーや短期集中セミナー),アウトプットの機会の提供(デジタルプラクティス),そして,資格制度の運営(CITP)です.それぞれ日々改善しながら,あるいは,ときに大きな変革を検討しながら運営しております.今回は,その中から連続セミナーでの気づきをひとつ紹介させていただきます.

 連続セミナーは年6回のシリーズ企画です.各回ごとに旬な技術トピックを設定し,その領域の第一人者たる経験豊富で造詣の深いコーディネータの方にプログラムを組んでいただく形での一日セッションを開催しております.時期やテーマにより振れ幅はありますが,おおむね100名強の方々に聴講いただいております.昨年からは東京の本会場,大阪会場に加え,東北会場も加わり3拠点での運営です.

 このセミナーに限らず多くの場で共通の課題だと思いますが,質問の手が挙がらず質疑が盛り上がらないことがあります.体感として,会場や参加人数規模が大きくなるほど顕著になります.また,最初の一人,口火を切る方がいるかどうか,も重要なようです.トップカンファレンスのような国際的な場ではむしろ質問用マイクの前に行列ができるほどですので,業界の特性というよりは国民性なのでしょう.

 ついては,議論が盛り上がり有意義な場になればと,最近Webベースの質問投稿サービス☆1をトライアルで使いはじめました.結果としては,非常に効果が上がっております.PCは持参されない方もいらっしゃいますがスマートフォンは大抵の方が持っておりインフラとしては充分整っています.常時複数の質問が投稿されている状況で質疑が始まるので,口火を切る方が会場にいない場合でもスムーズに議論が立ち上がり,その後会場からも質問が出ることが多くあります.また,リモート会場の方も,随時入力・参照できるため質疑への参加のハードルが下がっているようです.(マイクでの質問をやめ)むしろこちらに一本化したほうがいいのではないか,といったご意見も参加した方からいただきました.

 この質問投稿サービスに,IT産業に携わる一人として,私は原点を見た想いがしました.課題からスタートし,適切な手段を選択,その実装を提供し,価値を創出.これをコンパクト,かつ,鮮やかに実現しています.AIで人間を上回る,といった派手さはなく,最先端のアルゴリズムを使っているわけでもありませんが,軽快に動作し着実に世の中を便利にしています.

 当たり前とも見える「課題から」ではありますが,サービス提供に限らず,研究開発でも教育でも,長くやっていると手段が目的化してしまうことは起こりがちかと思います.個人的には,自分のかかわっているさまざまな取り組みを振り返ってみる良い機会となりました.ここまで読んでくださった皆様にも,何らか感じていただくことがあれば幸いです.

 最後になりましたが,今年度の連続セミナーはちょうど折返しで,残り3回開催いたします(今年分のスケジュールはこちらをご参照ください).また,来年度に向けた企画も鋭意検討しております.ぜひ,最新の技術動向にキャッチアップする機会としてご利用ください.また,アンケート等を通じて企画運営についてのフィードバックもお待ちしております.引き続きよろしくお願いいたします.
 

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