2017年04月17日版

「学会がゆでガエルとならないように」

関口 智嗣(長期戦略担当理事)

 ご承知のように情報処理学会の役員・理事は全員が非常勤であり、任期は2年間の事業年度となっています。代表理事(会長、副会長)は学会の代表者として、また業務執行理事はそれぞれの事業を担当し、この任期中は理事会、委員会活動、イベント企画・実施など相当の時間を割いて学会活動の推進に貢献していただいています。私も理事に就任して「あぁ、このように学会活動は支えられているのだな」と分かり、感謝に頭が下がる思いです。

 会員の皆様も全国大会、各研究会、ITフォーラム、学会誌や論文誌の刊行物、資格認定制度などの会員サービスを通じて、日々学会の活動には触れていることと思います。イベントは魅力のあるテーマ設定やプログラム構成など個別に工夫がされており、好評を得ていますので、機会があれば積極的にご参加ください。

 さて、献身的に活動を支えてくれる運営サイドとサービスを享受する会員、というのであれば良いんじゃないのと思われるかもしれません。しかし、学会員は1991年度の32,108人をピークとして減少の一途をたどっています。ジュニア会員制度や学生会員からの退会を阻止する施策など工夫はしていますが、長期的な傾向に歯止めはかかっていません。気が付くといつか会費収入だけでは基礎サービスを賄えない限界集落ならぬ限界学会となってしまいます。

 また、昨年1月に閣議決定した第5期科学技術基本計画において『近年、情報通信技術(ICT)の急激な進化により、グローバルな環境において、情報、人、組織、物流、金融など、あらゆる「もの」が瞬時に結び付き、相互に影響を及ぼし合う新たな状況が生まれてきている。それにより、既存の産業構造や技術分野の枠にとらわれることなく、これまでにはない付加価値が生み出されるようになってきており、新しいビジネスや市場が生まれ、人々の働き方やライフスタイルにも変化が起こり始めている』として、情報処理学会が関連する技術領域への期待は高まっています。特に、情報処理技術の適用領域(by IT)はかつてない速度で拡がっています。果たして、私たちの学会活動はそれに応えられているでしょうか。

 さらに、ジャーナルのオープンアクセス化、データの共有・公開によるオープンサイエンスなど情報処理に限らない学術コミュニティに対するグローバルな動きがあります。最新の技術の話題にサクッと集まるような草の根的な活動の方が活きた情報が得られるなどとも言われています。我々の周囲を取り巻く状況も日々長周期のうねりの中にあります。こうしたことを皆さんは意識されているでしょうか。

 学会の周辺状況の変化への対応を長期的視点から検討することが役割で2014年度から設置されたのが長期戦略担当理事です。2期4年を任期として後藤厚宏理事と一緒に活動しています。学会の事業を横串で俯瞰して、学会の大きな方向性を決めたあと、それに向けての舵取りが期待されています。個別事業活動を改良・改善することでは見逃してしまう、いわば学会モデルのイノベーションが求められています。

 情報処理分野における最大の学会であるという自覚を持って
 ① IPSJイニシャティブの発信
 ②本格的な共同研究に備えた産学連携のハブ機能の強化
 ③学会のビジネスモデルの転換
などを柱としたビジョンを6月の定時総会に向けて打ち出したいと議論しています。

 個別最適化を突き進んでも全体最適には向かいません。2020年には創立60周年を迎える情報処理学会ですが、学術や事業を巡る多様性の中で環境に適合した変化を常に探索し続けなければなりません。手遅れにならぬよう、学会がゆでガエルとなる前にアクションが必要です。皆様からも気軽にご意見をいただければと思います。

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