会長挨拶

 喜連川優

情報処理学会創立記念日に寄せて

2015年4月22日
一般社団法人 情報処理学会
会長  喜連川 優

情報処理学会創立記念日に寄せて

学会創立55周年を会長として皆様と一緒にお祝いさせて頂くことを心より嬉しく感じます。

早いもので会長を拝命して2年近くなり、もうじき退任を迎えようとしております。振り返ってみますと2年という期間はあまりに短くあっという間でした。


会長就任時に掲げた目標は
  1. 会員数を上げる(会員が減っているような学会に入ろうとするような人はまずいないので、何はともあれ活性化させる)
  2.  若手理事枠の創設(平均年齢48歳の高齢化学会の次を支えるのは若手であり、理事も若手を入れないとダメと確信した)
  3. 長期戦略理事枠の創設(2年間の理事では1年目は勉強、2年目で何かしようとおもったらもう終わり!では限界がある。ロングターム戦略を考えるポストを導入)
  4.  女性理事枠を作ろう
などである。
  1. 学会の会員数は2年連続で増加を達成した。20数年単調減少をしていた学会を大きくモードチェンジすることができた。これは関係各位の多大なるご努力の賜物であり、これまで何をやっても会員は減るもので、会員増は無理というあきらめ感が漂っていたが、そうではなく、やればできる!という気持ちを持てたことはうれしく感じる次第である。いかに会員を増やしたかのからくりはあと2年ほど様子を見たのちに開陳したい。
  2. 後藤真孝若手理事を迎え、まず学会初のニコニコとの公式提携を実現した。アカデミアコンテンツを動画中継してアーカイブし、永続的に視聴できることはきわめて意義深い。これを活用しニコニコ生放送で新企画IPSJ-ONE等の全国大会を配信し、15万人のネット視聴を得るという快挙を達成した。若手ならではの企画である。スタンフォードのMOOCの教官が「これまでほんのわずかの学生に教えるにすぎなかったのが、MOOCでは10万人以上の学生と接することができる。この感動はなんともいえない」と言ったのに匹敵する転換点であろう。今後も本会はIT本流を支える学会としてサイバー空間を先進的に利用する企画を推進したい。
  3. 長期枠で後藤厚宏理事に活躍いただいた。IEEEにおいて最大のソサイエティはコンピュータソサイエティ(CS)である。当学会の会員が10ドルですべてではないがIEEE-CSの優良コンテンツを見ることができる仕組み作りを世界のSister Societyをリードし初めて実現した。会長就任時に中国との連携をなんとかしたいと考えていたが、後藤理事の緻密な調整によりCCF(China Computer Federation)のCEOを全国大会に招くことが実現でき、連携を確認するという大きな一歩を踏み出せた。
  4. 女性の役員を増やすことはきわめて重要だと考え、とにもかくにも女性理事枠を2年目に導入することを決め実行した。その結果女性理事を倍増することができ、これからを期待したい。加藤理事の活躍で女子部なる連載が学会誌に設けられるなど、女性ならではの企画は女性でしか実現できない。女性支援を今後も積極的に進めたい。
 これ以外も多くのことに実践的に取り組んできた。特筆すべきは、京大開催の全国大会は参加者数が50周年記念大会を除き、過去最多を達成したことである。これも「やればできる」の典型である。地道な努力を幾重にもなすことによりこの成功が実現されている。黒橋監事、岡部前理事、河原理事の努力の賜物であった。手話などの情報保障や託児サービスも導入しインクルーシブなデザインを試みた。本会は温もりのある社会を常に目指したい。全国大会不要論が展開された時期も長かった。サイバー依存度が高まる中で、実際に会って話をするという機会が従来以上に重要になってきているように感ずる。

企業との連携も合宿形式の学生向けイベントを後援や企画するなど従来にないスタイルの実績を積みつつある。

なによりも理事会が本当の議論の場になったということが会長としては大変うれしい次第である。従前の淡々と案件承認を進めるというスタイルから、常に議論をする場へと変貌した。一体感が生まれてきたと感ずる。

すべてがうまくいっているわけではない。ITの学会なのだから学会のITシステムをもっと今風に刷新しプラットフォーム化することを掲げたが、最も難渋した課題でもあった。ドキッとする様変わりまでにはもう少し時間が必要であるが一層の努力を期待したい。


情報処理学会は「失敗してもいい。とにかく前へ前へ」と進んで参りました。今後も何卒よろしくご支援のほどお願い申し上げます。

「MOVE FORWARD、実行の時代」


情報処理学会と企業の連携強化について

2015年4月13日
一般社団法人 情報処理学会
会長  喜連川 優

情報処理学会と企業の連携強化について

情報処理技術は社会のあらゆる場所で活用され、情報処理技術無くして産業や社会の成長・発展は考えられない時代となりました。一方で情報処理技術のコモディティ化が進み、ツールの利用はできても、新しい技術の研究開発と利活用が十分に進んでいるとは言い難い状況にあります。

情報処理学会は企業との連携を深め、学術と産業の接点として情報処理技術を通して社会の発展を目指して参ります。

企業や業界団体のイベントへの共催・後援や企画協力などを今まで以上に積極的に行います。また、6月に開催予定の2015年度の総会では賛助会員の皆様にも参加いただけるイベントも計画し、学術と産業の交流の場を提供いたします。

過去10年に渡り企業会員・ITプロフェッショナル向けの活動としてITフォーラム、各種セミナー、デジタルプラクティス(DP)創刊等に取組んで参りました。昨年度から開始した認定情報技術者の制度で大きな枠組みが一通り完成しました。今後は先般発表したジュニア会員制度などで若手情報技術者を育成し、学術と産業の接点としての役割を更に強化して行く所存であります。 皆様のますますのご理解とご協力をお願いいたします。

会員、賛助会員、関係団体・企業の皆様へ(連携強化のお願い)





教員免許更新講習の取り組み

教員免許更新講習の取り組み
(出典:教育家庭新聞(2015年1月1日(木)発行))

情報処理学会の皆様に

2015年1月8日
情報処理学会会長  喜連川 優

情報処理学会の皆様に


新年おめでとうございます.

会長就任2年目となりました.1年目は関係者のがむしゃらなご努力で,とにもかくにも過去21年間減少一途であった会員減を止め,増加に転じることができました.

また,理事会の構成を見直し,若い発想を学会の運営に取り込むべく「若手やんちゃ枠」として新世代担当理事,中長期的な視点から学会運営,戦略を4年間担当戴く「長期戦略枠」として長期戦略担当理事を新設いたしました.

2年目は,「学生無料トライアル会員制度」を軸として新入会者獲得の諸施策をすすめ,昨年度増加に転じた会員数をさらに増やすべく取り組んでおります.さらに次年度からは,現在の制度をさらに発展させ次世代を担う多くの若者(下は小学生から上は大学学部3年生迄を対象)に学会の活動を知ってもらい,かつ学会のコンテンツに触れて頂いて,この分野に少しでも多くの若い方々が興味を持って頂けるようトライアル制度を「ジュニア会員制度」として拡充します.

新世代企画委員会を中心として検討してまいりました,新しい企画,ワクワクするアイディアとして,3月に京都大学で開催する第77回全国大会では,各研究会から推薦された一押しの研究者が登壇発表するステージ「IPSJ-ONE」が開催されます.さらに本学会がドワンゴのniconico(ニコニコ動画など)と提携することを,本日付でプレス発表しました.提携の最初の取組として,この全国大会の一部はニコニコ生放送公式番組として配信予定です.

女性が活躍できる学会を目指し,女性会員比率30%を目指して取組を開始しました.来年度から女性理事を倍増させる他,研究会や編集委員会の女性委員の増加,女子学生会員の積極勧誘などを行っております.学生会員の女性比率は昨年度の11.6%から13.6%に大きくアップしました.会員の皆様に毎月お届けしている会誌に連載コラム「編集委員会女子部」をスタートさせ,FIT2014第13回情報科学技術フォーラムにおいてセッションを開催する等こちらも積極的な活動を推進しております.

ここに書かかせて頂いた内容は,当会の新しい方向性としての活動の一端でございますが,学会としてのトラディショナルな活動は今までどおり大切にしつつ,今後も新たな活動にチャレンジしてまいりたいと思っております.

「こんな風にしてみたら学会はもっと魅力的になるのでは.ぜひ,こんなことをしてほしい.」と言う事がございましたら,どしどしご意見を president[at]ipsj.or.jp にお寄せいただけますと幸いでございます.学会は真剣に変わろうといたしております.

「Move Forward」

本年も何卒よろしくご支援の程お願い申し上げます.

情報処理学会創立記念日に寄せて

2014年4月22日
情報処理学会会長  喜連川 優

情報処理学会創立記念日に寄せて


学会創立54周年を会長として皆様と一緒にお祝いさせて頂くことを心より嬉しく感じます。
 
情報処理学会は、本気で変わろうとしています。関係者のがむしゃらなご努力で、とにもかくにも過去21年間減少一途であった会員減を止め、増加に転じることができました。また、情報教育にさらに一歩踏み出し、学会として初めて情報分野に関心のある教員を主な対象とする教員免許更新講習を開始しようとしています。研究会の動画配信・アーカイブの本格的展開もスタートしました。総会は事業報告・計画、表彰にとどまらず、復元した情報処理技術遺産[微分解析機]の公開と併設することにより、これまで長きにわたり情報処理学会にご貢献頂いた方々に敬意を払い、もっともっとご興味を持って頂ける場にしようとしています。これも少なくとも最近はなされていない試みかと存じます。理事会の構成を考え直し、「若手やんちゃ枠」や実質4年間の「長期戦略枠」の理事を新設いたしました。また、何も発言しないと帰れない理事会としました。自分の任期中にこれをした!とはっきり言える理事を目指すようにお願いしています。
 
とりあえず前と同じようにやっていればよいというスタンスでは、日本はもうもたないことは全員が共有しているかと存じます。理事会では情報処理学会のことを考えてくださいとは言っておりません。国益を考えてほしいと常に申し上げております。日本のITを支えるために何をするかを考える学会でありたいと思っています。本気で皆が自分のカードを切る時、組織は本当に動き始めると信じております。他の学会となわばりを鍔迫り合いすることなど眼中にありません。安倍内閣がくれたこの元気を情報処理学会も大切にしたいと思っております。

会長任期中に女性会員比率30%の道筋を具体的につけたいと思います。また、『私が会長ならXXXXをする!』という発表企画も計画中です。次々と新しいことに挑戦する学会でありたいと考えております。

「Move Forward」

何卒よろしくご支援の程お願い申し上げます。

情報処理学会会員の皆様に

2014年1月14日
情報処理学会 会長 喜連川優
 

 情報処理学会の皆様に


新年おめでとうございます.

古川前会長の後任としまして,より一層活気に満ち溢れる情報処理学会のデザインを模索しております.所信表明(2013年情報処理7月号巻頭言)にも記載 いたしましたように,『やんちゃな若手枠』という発想を打ち出しましたが,それを現実のものとすべく,理事に若手枠を導入いたしました.また,長期的戦略 が不可欠との視点から戦略理事枠も創設いたしました.2年ごとの新陳代謝は不可欠ですが,海外の学会も参考にしますと,長期的な視野を持つことも必要と考えております.まず体質改善の一歩を踏み出せたと考えております.

12月の役員検討会では,支部長もお招きして,徹底的に学会を良くするための具体案に関しての議論だけをいたしました.次の一手に関するワクワクするアイディアが生まれつつあります.その実装にはやや時間がかかるやもしれませんが,乞うご期待です.
「学会の未来を考え,議論をする」理事会へと構造改革を進めております. 

多くの学会が会員減に悩んでおりますが,少なくとも情報処理学会は他の学会より上手にビッグデータを使いこなして原因の解析ができて当然であるべきです.学会そのもののIT強靭化に関してもその検討を深めつつあります.

2014年におけます最大のITトピックスはMOOCになるかもしれないと感じております.米国はビッグデータの優先領域の一つとして「教育」を掲げてい ますが,まさに,昨今のMOOCの激動が大学にとっても大きな変革を与える起爆剤となりそうです.教育のプロセスそのものの定量化が本格的に行われようと する大きな一歩と感じております.IT農業と何が違うという視点もあろうかと思いますが,それはそれとして,情報処理学会も一歩を踏み出そうとしております.たとえば,音楽情報科学研究会では,すでに,研究会の講演の録画をアーカイブ化しており,時間,距離の障害を克服して自由な視聴が可能となっておりま す.将来感を感じさせるシステムの一歩を踏み出している次第です.

「こんな風にしてみたら学会はもっと魅力的になるのでは.ぜひ,こんなことをしてほしい」ということがございましたら,どしどしご意見を president<at>ipsj.or.jp(<at>を@に変えてください。)にお寄せいただけますと幸いでございます.学会は真剣に変わろうといたしております.

本年も何卒よろしくお願い申し上げます.


会長就任にあたって

ITをイネーブラとするプラットフォーマ学会を目指す:
若手やんちゃ枠も作りたい

—会長就任にあたって—

喜連川 優
情報処理学会会長/  国立情報学研究所・東京大学


(「情報処理」Vol.54, No.7, pp.648-651(2013)より)

 第27代会長を拝命いたしました喜連川優でございます.歴史ある本会の会長を務めさせていただくことは大変身の引き締まる思いです.

全情報分野をカバーする学会の必要性を考える

 本会に限らず学会の会員数が低迷する中,学会そのものの価値が問われてきているかと存じます.創成時とは大きく異なる現在の学会の置かれた状況下において,まずその点について考えたいと思います.
 

領域の拡大によって今求められるようになった多様な専門分野の研究者の意見交換の場

 情報学における研究分野は学会創設以来大きく拡大してきました.図-1に本会における研究会の推移を示します.およそ40近い研究分野が生まれてきており,その過程で名称の変更なども機動的になされてきたことが分かります.図-2にACMにおけるSIG (Special Interest Group) の推移を示しますが,現時点での総数は概ね同じです.私が大学院学生であった昭和50年代前半には東大電気・電子工学科にはコンピュータを対象とする講座は1つしかありませんでした.今日,これほどの広がった分野すべてを1つの大学でカバーすることは不可能であり,企業においても,全分野の先端を見渡していることは困難と言えます.そのような中で,広くIT分野をカバーして活躍する学会員がその先端の動きを自由に意見交換する場,共に課題を考える場は大変貴重であり,学会の本質的必要性は明らかと思います.敢えて,コンピュータになぞらえますと,単位コミュニケーション当たりの消費電力は単位計算当たりの消費電力に比べて圧倒的に大きく,専門が異なる人々が効率よく会話する場を実現することは実は非常に難しく,学会という場の役割はとても重要と考えます.

IT全体の先端感を踏まえてバランスのとれた意見を社会に対して表明する主体

 情報技術の進展は言うまでもなく著しく速く,専門家にとっても先端の感覚を維持することは容易ではありません.技術には常に明と暗,dual useの問題があります.社会に対して,正しい意見を発信してゆくことは大変重要ですが,情報技術全般を見渡してバランスの良い意見を述べられるのは本会のようにほぼすべての情報領域の研究者を擁している学会ならではと考えます.学会は中立的な立場において,政府や社会に積極的に発言する主体でなくてはならず,情報学あるいはIT全体を見た発言が期待されるところです.

 私が副会長の折,スーパーコンピュータの仕分けに関して意見を述べることが求められ,深夜3時まで当時の佐藤三久理事とその文案を議論したことが懐かしい思い出です.大きな学会が社会にメッセージを発信する際には,慎重でなくてはなりません.バランスのとれた意見を取りまとめるには手間とエネルギーが必要となります.一人では困難なことが多くの会員の力を合わせることで可能になると確信します.たとえば,巨大データセンタの消費する電力は著しく増大しています.次々に新サービスが生まれる居心地の良い仮想世界を維持するコストが無視できない時代も遠くないかもしれず,今後,時には従来路線に警鐘を鳴らすことが不可欠な場合もあるかもしれません.
 

IT外のステークホルダとの会話主体

 本稿執筆時点では,ビッグデータ,スマートXX,IoT,サイバーフィジカルシステム等が先端のIT用語として注目を集めています.表現は微妙に異なるものの方向感はほぼ同じです.共通して言えることは,従来のような局所最適化ではなく,大きな課題の解決を目指そうとしている点で,IT業界にとどまらない他のステークホルダとの意思疎通が不可欠となって参ります.このような潮流の中にあって,ITサイドも非常に多分野にわたり総合的なデザイン力が求められ,全分野を擁する規模の大きな本会の役割はきわめて大切と言えましょう.
 

情報学における教育内容,人材育成を議論する場

 学生の質保証の議論がなされる中で,情報系の学生が体得すべき基本的な素養に関する検討はきわめて重要です.多様な分野から構成され,しかもその対象領域が急速に変化する情報学においては,学会が学問体系の整理に果たす役割は大変大きいと考えます.人材育成は長らく課題となっており,本会は多くの努力をしてきているものの,この問題はなかなか手強く,容易に解決できるものではなく,不断の努力が不可欠と考えます.たとえば,10年後の会長が本稿でMOOC(Massive Open Online Course)をどのように取り上げられるか今から楽しみです.
 

本会はどう成長すべきでしょうか?

 上述のように情報系のほぼ全分野をカバーする本会の意義は大変大きいと考えますが,学会の会員は減少を続けています.もっとも,IEEEにおける最大のソサィエティはComputer Societyですが,この4年で約1万人減少していると聞きます.グローバルなIEEE Computer Societyですら会員が減少している中で本会が会員増強をすることは容易ではないかもしれません.一方で我が国において日本情報システム・ユーザ協会(JUAS)はとても元気で,増大傾向にあると伺っております.ユーザがITの体験を語り合う場は盛り上がるのかもしれません.本会の今後の方向として次のようなことを考えております.
 

やんちゃな若手枠

 2010年に本会50周年記念全国大会の組織委員長を仰せつかりました.多くの方々のご支援により多様な企画が練られ,その結果7,250人という突出した参加者数が得られましたが,その中で最も印象的でしたのは後藤真孝氏(産総研)が企画した「CGMの現在と未来:初音ミク,ニコニコ動画,ピアプロの切り拓いた世界」です.会場への参加者もきわめて多く,加えてオンライン参加が抜きん出ていました.若手世代に企画をお願いするととんでもないことが起き得ることを実感しました.私は当時50周年だからと女性初のチューリング賞受賞者Fran Allen氏の招待に奔走しましたが,若者の最大の関心事の1つは初音ミクでした.まったく想定外でした.シニアな層の考えには限界があると感じます.本会ももっと何事にも「若手枠」を作り,闊達な場をどしどし提供し,若手にやんちゃな試みをしていただくのが良いように感じます.そこから次の世代の研究者が求める学会像の本質が見えるかもしれません. 
 

プラットフォーマを目指す

 若手にすべてを押し付けておしまいというわけには当然いきません.方向感としましてはプラットフォーム化を考えております.学会は多様な機能を有しておりますが,研究成果としての論文をパブリッシュする主体としての存在がきわめて大きいものと言えます.国際会議論文査読支援システムの機能は短期間に飛躍的に進歩しました.学会のビジネスフローのIT化に自ら率先して取り組むペインドリブン(pane driven)な発想も重要と感じます.学会はそれぞれに個性が強くマルチテナント化が難しいとの見解はそれとして,一歩一歩の努力が不可欠と考えます.大学研究者はどちらかといいますと巨大なコード開発の経験が希薄ですが,本会会員の半数以上が企業会員です.Obama for Americaでのシステム開発のように,多くの専門家が協力できるのではないでしょうか.先端的ITがイネーブラとなる学会こそが本会の本来の姿であり,リッチメディア論文サービスを始めとし,圧倒的に強力なプラットフォーマとしての学会を本会が目指すことは至極自然と感じる次第です.
 

ボランティアエコシステム

 会員の活動は原則ボランティアであることは言うまでもありません.上述のプラットフォームを作るにも潤沢な資産があるわけではありません.重要なトピックスを選び,機動的に問題を共有し会話する場をモデレイトする仕組み,モデレータによる貢献の真価を認め,フィードバックする仕組みをまずは構築できればすばらしいと感じます.ボランティアのエコシステムとでも言うべきでしょうか.

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 21世紀はITによって人と人がつながるソーシャルな時代,モノがつながる時代となりました.この大きな変化を研究の対象として見るだけではなく,学会がどうその変化の波に乗るかという視点でも考えてゆきたいと思います.会員皆様のご支援,ご協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます.

(2013年5月12日)

喜連川優(正会員)1983年東京大学工学系研究科情報工学専攻博士課程修了,工博.東京大学生産技術研究所教授,東京大学地球観測データ統融合連携研究機構長,2013年4月より国立情報学研究所所長.データベース工学の研究に従事.内閣府最先端研究開発支援プログラムを中心研究者として推進中.本会功績賞,ACM SIGMOD E.F Codd Innovations Award受賞.ACM,IEEE,電子情報通信学会ならびに本会フェロー.

 

情報処理学会における研究会の推移

図-1 情報処理学会における研究会の推移


ACMにおけるSIGの推移
図-2 ACMにおけるSIGの推移

本会研究会とSIGの関係

図-3 本会研究会とACMにおけるSIGの関係


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