2026年05月14日版:長谷川 輝之(監事)
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2026年05月14日版
「理事会での10年間を振り返って」
長谷川 輝之(監事)
思いがけず2022年度から2期4年を務めることとなった学会監事の任期も、残すところあと1カ月となりました。2016年に事業担当理事を拝命し初めて理事会に加わって以来、途中4年間のブランクを挟みつつも足掛け10年が経過したことになります。改めてこの歳月を振り返ると、まさに激動の10年であったと感慨を深くしております。
真っ先に頭に浮かぶのは、AIの劇的な進化と爆発的な普及です。先日も、AIが東大と京大の入試において合格者最高点を上回ったというニュースが世間を賑わせました(恥ずかしながら、昨年度の時点ですでに東大合格点に達していた事実は、この報道で初めて知ることとなりました)。この報に接した際、理事任期中の「FIT2017」にて、東ロボプロジェクト関係者の皆様にご協力いただき、「『ロボットは東大に入れるか』大学入試自動回答の成果、技術的課題と今後」と題したイベントを開催した当時の記憶が鮮明に蘇りました。10年前は教科ごとの専用アルゴリズムで挑んでいたものが、今や汎用LLMが全科目に対応し最高点をもぎ取ってしまう。その進化の速度には驚愕するばかりです。さらに、数学の未解決問題をAIが解決したというニュースも届いています。入試での高得点獲得と、証明の生成および数学的正当性の自動検証とでは、アプローチが大きく異なると推察しますが(技術的な詳説は学会内のエキスパート諸氏にお譲りします)、いずれにせよ、人間とAIの役割分担が日進月歩で塗り替えられていることを痛感せざるを得ません。
一方、社会的側面に目を向ければ、2019年末からの新型コロナウイルスによるパンデミック、そして2022年から現在に続くロシアによるウクライナ侵攻をはじめとする各地の紛争など、情報処理技術を取り巻く環境は大きく変容しました。コロナ禍によるリモート業務へのシフト、紛争におけるドローン部隊の運用など、日常・非日常を問わず、通信・情報処理技術は人々の営みに深く浸透しました。それは文字通り「ライフライン」として、今や人々の生死をも左右するほどの影響力を持つに至っています。
前置きが長くなりましたが、こうした変化の激しい時代において、持続可能な学会運営を実現すべく監事業務に取り組んで参りました。監事の職務は、本会定款第26条に定められているとおり「理事の職務執行および業務・財産の状況を監査し、監査報告を作成すること」にあります。すなわち本会の各種活動が目的や定款、法令に則って適正に執行されているかを確認するのが主たる任務です。定款の字面だけを追うと「守り」の印象が強いかもしれませんが、本会には、当年度事業報告や次年度事業計画を受けて学会運営の方向性や課題を「監事付帯意見」として理事会に提示し、定時総会で報告する仕組みがあります。これこそが、監事業務において最も重要な役割であると考えております。
大変重責ではありますが、運営の持続可能性を高める一助となるべく、監事1期目では「データに基づく意思決定」を提言いたしました。理事会をはじめ関係各位に真摯にご対応いただきましたことを、この場を借りて厚くお礼申し上げます。2期目に入り、会員数は維持できているものの、会員構成の変化に伴う財政面の見通しには厳しさが増しております。正会員増への妙案を見出すことは容易ではありませんが、2025年度大学入試共通テストへの「情報」科目追加という追い風も捉え、まずは正会員の予備軍である学生会員の獲得と定着に向けた提言を行っていければと思います。今後とも、皆様の積極的な学会活動へのご協力とご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
