2018年01月05日版

「変えること、やめることの難しさ」

長谷川 輝之(事業担当理事)

 昨年度より事業担当理事を拝命し、足掛け2年の任期もあと1/4を残すのみとなりました。事業担当理事は、全国大会・FIT(情報科学技術フォーラム)の組織・運営に関すること、国内・国際会議の協賛・後援に関すること、その他さまざまなイベント等の行事に関すること、を主な業務所掌としています。今回、FIT2017の運営を通じて、普段の会社業務や学会業務でも薄々感じていたことが改めて浮き彫りになりました。これをタイトルにして話を進めたいと思います。

 FITは本会と電子情報通信学会情報・システムソサイエティ(ISS)およびヒューマンコミュニケーショングループ(HCG)との共催で毎年秋期に開催し、例年1,000人を大きく超える方に参加いただいている大規模イベントです。2002年に本会秋季全国大会に代わって開催されて以来、両学会が学会の垣根を越えて連携・協力し、日本の情報技術(IT: Information Technology)の発展を盛り上げて参りました。一方で、ITの一般化・大衆化も相まって、近年は参加者・投稿者の数が共に減少傾向にありました。これに対して、歴代の委員の尽力で、船井業績賞の受賞記念講演やイベント企画をよりタイムリーで魅力的なものにして集客力向上を図るなどして、ようやくFIT2016で参加者の数に反転の兆しが見えて来ました。一方で、財政的には非常に厳しい状況が続き、FIT2016も自治体等の開催補助金等によってようやく収支均衡という状況でした。

 さて、FIT2017ですが、今年度は本会が幹事学会であり、事業担当理事は実行委員長を務めます。参加者数は昨年度反転した勢いを維持し、収支の健全性にも目配りをしなければなりません。一方で、今回は共催先である電子情報通信学会の100周年記念に合わせて、(ISS・HCG以外のソサイエティが主催する)電子情報通信学会ソサイエティ大会と同じ週に東京で開催することがすでに決まっており、講演者・参加者が双方の大会に分散し、東京開催のため補助金もないという非常に厳しいスタートラインでした。このため、①これまで同様、記念講演とイベントの企画に注力、②投稿数が減少し各研究会の運営負荷が相対的に大きくなっていた査読付論文制度を変える、③補助金以外の収入源を作る、取り組みを進めました。

 ①については、過去最多であったFIT2016を上回る23件の魅力的なイベントを研究会や会場をご提供いただいた東京大学などの協力もいただき実施しました。実行委員会からも、会場である東大にちなんで、東ロボプロジェクト関係者にご協力いただくことを提案し“「ロボットは東大に入れるか」大学入試自動回答の成果、技術的課題と今後”と題したイベントを開催しました。また、船井業績賞を受賞された東京大学名誉教授でマイクロソフトリサーチアジア首席研究員の池内克史先生の講演は300名近くの参加者に聴講頂くなど大変盛況でした。②については、投稿段階での各研究会による査読プロセスを廃止し、新たに選奨論文への応募という形で論文募集を行いました。発表セッションで審査委員による論文の一次審査を行い、選奨された論文を論文賞選定委員会で最終審査する形に改めたことで、選定論文の品質を保ちつつ、応募の心理的ハードルを下げるようにしました。その結果、前回を上回る100件の応募を集めることができましたが、一方で一般論文への投稿数が大幅に減少する結果となりました。③については、ランチョンクラスを含むスポンサー制度を新たに導入し、併せて展示会出展への働きかけもさらに強化しました。関係者の強力な支援もあり、13社のスポンサーと23団体の出展をいただくことができ、収支改善に大きく貢献しました。

 前述のような厳しい状況の中、FIT2017を構成する各委員会の皆さま、さらには両学会役員の皆さまの多大なるご協力・ご支援により、前年比増の1,500名を超える参加者数を達成し、収支も黒字でFIT2017を開催することができました。本誌面をお借りして、改めて厚く御礼申し上げます。

 一方で、今回を含めこれまで行ってきた取り組みは、「新たに始める・増やす」ことが中心であり、出入りで考えると入口(参加者や収入)の拡大を指向するものです。しかしながら学会員数や学会に対する企業のかかわりが減っていく現状を鑑みると(もちろんその傾向を変えていく努力は必要ですが)、今後は出口(稼働や支出)の縮小を指向する、すなわち「やり方を変える・やめる」ことを、もっと真剣に考える段階に来ていると感じています。一般に、新たな施策を打てば何らかのリターンがあるため、ボランタリーベースで進めている学会活動などコストが見えにくい体制では、「新たに始める・増やす」方向に走りやすく、逆に何らかのリターンがあるので「やめる」方向には向かいにくいのではないかと考えます。サービスやシステムでも、新たに始める・追加する理由を探すのは簡単ですが、変える・やめる理由をすべてのステークホルダに納得させるのは難しく先送りしやすい。そして、実際に変えよう・やめようと動き出したときには、関連するサービスやシステムなど色々な要素が複雑に絡み合って身動きが取れず、「やりきる」のにものすごいエネルギーと労力が必要となります。始めるときにはやめるときのことも含めて十分に検討する、必要以上に要素を増やさない、といったシステム構築の基本に立ち返る必要性を改めて感じました。私が勉強不足で知らないだけかもしれませんが、情報処理学会で「サービスやシステムを上手に畳む」ための実践的な理論や研究があれば、ぜひご教示いただければと思います。

 以上、最後は愚痴のような文章になってしまいましたが、FITや全国大会は自分の専門以外のお話を聞いたり議論を深めたりして、自身の目線を上げ視野を広げるお薦めの場所です。ぜひ、積極的な投稿・参加やイベント提案をよろしくお願いいたします。なお、FIT運営委員会では、次回のFIT2018に向け講演論文集(CDROM)の配布等「変える・やめる」ことの具体的な検討もすでに始めています。皆さまのご理解とご協力を賜れれば幸いです。

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