2018年05月01日版

「学会としてのイニシアティブについて」

後藤 厚宏(長期戦略担当理事)

 情報処理学会がイニシアティブまたは社会における技術リーダーシップを発揮する意義と、その最初の進め方について、企画政策委員会で議論を進めていますが、今日は、皆さんと一緒に学会としてのイニシアティブについて考えてみたいと思います。

 一般に、学会は、大学・研究機関・企業等に籍を置く会員のコミュニティ(一種のバーチャル組織)です。広く社会が、特に産業界が、このような学会に対して期待することは、個々の企業組織では担うことが難しい役割でしょう。その期待される役割の一つは、我が国の将来に向けたITの最新技術の将来展望を示すことと思います。そこで、次のような形で情報処理学会がイニシアティブを発揮することはどうでしょうか。

 「情報処理学会は、我が国の未来に向けたIT技術の将来展望を示すと同時に、その将来展望に向けた活動を情報処理学会の軸の一つとする。」

 情報処理学会がIT技術の将来展望を示すことは、学会としてITの最先端技術に対する確固たる知見を持っていること、学会としてITの技術リーダーである自負と社会的責任を示すという自負を社会に対して示すことになりますし、その将来展望についての活発な議論を産業界との間で始められれば、産業界として情報処理学会がITの技術リーダーであると認知したことになると思います。

 これは、「産業界×情報処理学会」の視点ですが、「バイオ×インフォマティクス」「マテリアル×インフォマティクス」のように、インフォマティクスとの掛け算によってイノベーションを目指している関連学会に向けて、情報処理学会がITの技術リーダーであることを示すことにつながると思います。

 情報処理学会として、ITの最先端技術に対する確固たる知見を持っていることを社会に対して示すためには、次の3つの取り組みが重要であると思います。1つは、当然ですが、学会としての将来技術の方向性を、既存の枠組みにとらわれず議論する場を設けることです。理事会が率先して議論する機会を設けることから始めるとよいでしょう。

 2つ目は、学会としてまとめた、IT技術の方向性を、学会の名の元に、社会に向けて陽に発信することです。たとえば 、学会として国の科学技術政策へのパブリックコメントを具体的に提示することはもちろんのこと、関連省庁に直接働きかけて、科学技術政策、産業政策にかかわる委員会活動等に、学会として直接関与することに積極的に取り組んではいかがでしょうか。これは、ITの技術リーダーとしての社会的責任を示すことに繫がると思います。当然ながら、本学会が、我が国のIT技術の方向性を的確に示すことができたかについては、学会内でも自己評価すべきですが、外部から学会への期待度に相当する指標(一般企業の株価に相当)についても検討する価値がありそうです。

 3つ目は、その将来の技術の方向性を軸にして、学会活動を進め方について議論することです。この中には、新たな活動を立ち上げることに加え、既存の活動の方向を変えていくことなど、学会活動を再構成することも含まれると思います。もちろん、活動の再構成の議論においては、将来を見るだけでなく、何を維持すべきかについてもしっかりとした議論が必要でしょう。

 以上の考え方は、学会を企業社会における「競争」の中に位置づけることにも相当します。これまでも、学会が単独で存在することはなく、複数の学会がそれぞれの学術領域の重要性を競い合うことは当然でした。さらに、「競争」における産学の境界がなくなり、広く社会全体の中での学会の組織としての価値を示すことが必要であると考えます。

 情報処理学会は、近日、総会を迎えます。ぜひ、大胆なイニシアティブを議論していきましょう。

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