特集論文募集

「量子イノベーション活用の最前線─社会実装への挑戦」論⽂募集

論文誌デジタルプラクティス編集委員会

 

本特集は、量子コンピュータを社会課題の解決に活用しようとした現場での実践知(プラクティス)を募集する。デジタルプラクティス(DP)は、従来の学術論文とは異なり、“理論の新規性” や “アルゴリズムの性能評価” を主目的としない。DPが重視するのは、次のような現場でやってみて初めて得られた知見である。
「期待した手法が現場では通用しなかった理由」「想定外の工夫が効果を発揮したポイント」「技術・組織・制度が交差する場面での判断・調整」「PoCや実践でつまずいた要因と、それを克服した方法」「実験の成否に至る試行錯誤のプロセス」「教育や普及の現場で見えた『理解の壁』や学習設計のコツ」などである。本特集では、成功だけでなく、失敗・停滞・制約への向き合い方 も積極的に歓迎する。

気候変動、エネルギー危機、食料安全保障、医療・創薬、人材不足、物流最適化、災害対応、経済安全保障──現代社会は、従来のデジタル技術では解決が困難な「複雑で相互依存的」な課題に直面している。こうした課題に対し、量子コンピュータ(量子計算)は、新たなアプローチとして世界各国から強い期待が寄せられている。量子化学シミュレーションによる新素材・新薬開発、電力需要予測・送電網最適化、交通・物流の大規模最適化、気候モデルの高度化など、量子コンピュータがもたらしうる社会価値は大きい。

従来、量子コンピュータは物理・数学・アルゴリズム研究者の領域と見なされてきた。しかし近年では、クラウドアクセスの普及、量子インスパイアード計算の活用、産業界におけるPoCの増加、教育機関での量子カリキュラム拡大などにより、社会課題の解決に量子計算を活用する機運が高まりつつある。企業・自治体・研究機関・スタートアップ・NPO など、多様な主体が量子コンピュータの利活用を検討する段階に入っている。

一方、社会実装には多くの壁がある。技術成熟度、誤り訂正コスト、計算資源と運用コスト、専門人材の不足、制度・ガバナンス・セキュリティ、公共調達や標準化の未整備、社会受容性や倫理、成果説明責任など、実装段階で顕在化する課題が次々に浮き彫りとなっている。量子コンピュータが社会基盤に深く入り込むほど、経済安全保障・技術依存・ブラックボックス性・データ連携リスクなど、新たな論点も増える。

これらの背景から、本特集は、量子計算を「社会課題の解決に向けて、どのように導入し、どのように壁を乗り越え、どのように公共価値へつなげるか」という現場視点の議論を広く募る。成功例はもちろん、停滞・失敗・制度的制約・合意形成の難しさ等、実装の知見も歓迎する。

募集対象(これらはテーマ例であるが、上記の範疇で、その他のテーマも歓迎する。)

A.実社会・産業での実践

  • 最適化(物流・金融・製造・エネルギー等)における量子計算/量子インスパイアードの適用、PoC〜運用の知見
  • 材料・創薬・ライフサイエンスにおける量子化学シミュレーションの設計と評価
  • 電力・都市・防災など社会基盤領域での業務実装

B.教育・人材育成・普及

  • 高専・大学・企業内教育におけるカリキュラム設計、教材・演習の設計と評価
  • 初学者教育(量子情報・アルゴリズム・プログラミング)の到達度評価、授業デザイン、運営ノウハウ
  • 学生プロジェクト/ハッカソン/コミュニティ運営、失敗からの学び(つまずきやすい概念、演習改善)

C.導入・運用・組織的取り組み

  • 量子計算プロジェクトの立ち上げ・運営体制(推進室・CoE 等)、スキル標準/人材像/育成ロードマップ
  • PoCで直面したコスト・データ・法務・人材の課題と解決策、部門横断の合意形成、公共調達・標準化との接続

D.技術的知見・設計指針

  • ゲート方式/アニーリング方式/量子インスパイアードの比較活用、誤り補正・誤り低減の実装知見、論理量子ビットの扱い
  • ハイブリッド計算基盤の運用知見(コスト・スループット・可用性・リスク)

なお、この特集は学会誌 情報処理2027年5月号特集と連動しています。

投稿要領

(1)論文の執筆要領
論文執筆にあたっては、 「論文誌デジタルプラクティス」原稿執筆案内をご一読の上、 「論文誌デジタルプラクティス」原稿テンプレートによりご投稿ください。提出の際は、投稿者チェックリストをチェックし、原稿と合わせて提出ください。原稿は電子メールでデジタルプラクティス担当(tdp@ipsj.or.jp)宛にSubjectに特集名を記載して送信してください。

(2)投稿締切:2026年8⽉31⽇(月) 9:00

(3)掲載特集号:2027年4月刊行号(Vol.8 No.2(予定))

(4)TDP特集号編集長:寒川哲臣(NTT(株) 先端技術総合研究所)、西田靖孝((株)東芝)、嶋田義皓(ソフトバンク(株) 先端技術研究所)、宮下健輔(京都女子大学)


コーディネータ:烏谷 彰(富士通(株))、上條浩一(東京国際工科専門職大学)


特集アドバイザ:斎藤彰宏(情報処理学会 技術応用担当理事/日本IBM)

編集委員:
石井一夫(公立諏訪東京理科大学)、飯尾 淳(中央大学)、小野田弘士(早稲田大学)、鎌田真由美(関西大学)、木村直紀(ヤフー(株))、草場 力((株)日立製作所)、倉田岳人(日本IBM)、込山悠介(国立情報学研究所)、坂下 秀(アクタスソフトウェア)、坂下幸徳(プルデンシャル・ジャパン・テクノロジー(株))、佐藤 聡(筑波大学)、下沢 拓((株)日立製作所)、高橋哲朗(鹿児島大学)、土屋英亮(電気通信大学)、滕 琳(日本大学)、戸田貴久(電気通信大学)、長坂健治(キンドリルジャパン)、服部雅一((株)東芝)、福原知宏(マルティスープ(株))、藤瀬哲朗((株)三菱総合研究所)、藤原真二((株)日立製作所)、細野 繁(東京工科大学)、細見岳生(NEC)、水田秀行(日本IBM)、南山泰之(国立情報学研究所)、宮下健輔(京都女子大学)、森村吉貴(京都大学)、山口晃広(東芝研究開発センター)、山口大輔(NTTソフトウェアイノベーションセンタ)、横山和秀(日本IBM)、吉野松樹((株)CIJ)、除補由紀子(NTTソフトウェアイノベーションセンタ)、山崎賢人(三菱電機(株))、梁 宇昕((株)日立製作所) (論文募集公開時点(2026年2月))