特集論文募集

「生成AIの実社会への導入と乗り越えるべき壁2027:導入・運用・課題解決の最前線」論⽂募集

論文誌デジタルプラクティス編集委員会

 

経済社会環境が大きく変化する現代において,企業や団体が生産性や付加価値の向上等を通じて大きなビジネス機会を引き出すとともに,さまざまな社会課題の解決に資する技術として生成AIに大きな期待が寄せられている. これまでのAI技術においては,AIの研究者,開発者,技術者を中心にその研究や実装,ユースケース検討が進んできたが,生成AI,特に大規模言語モデル(LLM)は経営層から利用者まで,多くの人々がAIが持つ可能性を感じられる技術であり,AI技術が社会への受容・導入が進む動因となった. 企業による調査*1によると90%近くのCEOが生成AIを自社の投資に組み入れており,また別の調査*2では,日本の全就業者のうち,今後,生成AIと補完関係あるいは生成AIに置き換えられる可能性のある就業者は全体の約40%と予測されている.

生成AIが社会に浸透することで企業や団体の価値創造,社会課題の解決と付加価値の創出を実現してゆくためには,現在の生成AI活用検討の中心である事務や法務など決まったルールや過去の事例に基づく業務だけではなく,新たなユースケースやアプリケーションの登場が期待されている.生成AIの「創造的」な能力をAIの新しい可能性として捉えた場合,その可能性はさらに広がる.

一方で企業や政府,団体の中における生成AIの導入では,ハルシネーションなどの誤回答リスク,個人情報や機密情報の漏洩リスク,著作権侵害の訴訟リスク,不公平や差別などの学習データの偏見リスクなども指摘されている.生成AIの導入・運用に伴い,今まで検討されてきた課題がより大きくなったり,新しい課題が顕在化してきていることが想像され,前述のような懸念やリスクを解消するためのメソッドやノウハウの共有は重要になると考える.

そこで,2025年1月には論文誌/学会誌デジタルプラクティスに特集「生成AIの実社会への導入と乗り越えるべき壁」*3を発行し,生成AIの実践活用について議論した.2025年特集に寄せられた大きな反響を受け,本特集では生成AIの導入事例や,導入・運用に際して直面した課題,その解決方法に関する幅広い論文を,生成AIの導入がより進み,同時にさまざまな課題も顕著になっている現在に改めて募集する.

以下は,具体的なトピックの例であるが,上記の範疇で,その他のトピックも歓迎する.
 

  • 従来のAIと比較して,生成AIを導入・運用することで,より大きくなった課題や,顕在化した新しい課題,そしてそれらへの対応に関する知見.
  • 生成AIを業務に利用し,業務効率化につなげた知見.
  • 業務におけるオープンなLLMやクローズドなLLM,SLM(小規模言語モデル)を含むさまざまなサイズのLLMの使い分けや組合せに関する知見.
  • 生成AIを運用する際の,エージェントシステムの設計,複数LLMを使い分ける統合基盤の開発・利活用,運用フロー,運用組織に関する知見.
  • 生成AIを業務に利用し,その際のリスクを適切に管理し,競争力強化につなげた知見.
  • 生成AIを導入する際の,社内部門間・社外関係者との調整,法律・規制・プライバシーの遵守に関する経験・知見.
  • 生成AIを業務に利用する際の,電力・廃熱管理,省電力化,環境保全,サステイナビリティに関する取り組み・知見.
  • 生成AIやオープンソースを利用しながら,その性能・リスクを評価・管理した知見.
  • 基盤モデル・生成AIを構築し,業務に活用した事例,およびその際の課題に関する知見.
  • 業務における「ソブリンAI」の必要性や,それに求められる要件についての知見.
  • 機密性の高いデータを,生成AIの構築や,生成AIでの処理に利用した事例,およびその際の配慮に関する知見.
  • AI人材の育成,または生成 AI を適切に使うためのスキル取得に関する知見.
  • AI を利用した IT 運用管理や研究開発支援のような、生成AIの新たなフロンティアに向けた取り組みと,乗り越えるべき壁.

なお,この特集は学会誌 情報処理2027年2月号特集と連動しています.

*1 : EY Japan : The CEO Outlook Pulse survey July 2023, https://www.ey.com/ja_jp/news/2023/09/ey-japan-news-release-2023-09-22 (2023)
*2 : 大和総研:生成AIが日本の労働市場に与える影響③,p.7, https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20240206_024243.pdf (2024)
*3 : 倉田岳人:「生成AIの実社会への導入と乗り越えるべき壁」編集にあたって,トランザクションデジタルプラクティス,Vol.6, No.1 (Jan. 2025), https://www.ipsj.or.jp/dp/contents/publication/61/ (2025)

投稿要領

(1)論文の執筆要領
論文執筆にあたっては、 「論文誌デジタルプラクティス」原稿執筆案内をご一読の上、 「論文誌デジタルプラクティス」原稿テンプレートによりご投稿ください。提出の際は、投稿者チェックリストをチェックし、原稿と合わせて提出ください。原稿は電子メールでデジタルプラクティス担当(tdp@ipsj.or.jp)宛にSubjectに特集名を記載して送信してください。

(2)投稿締切:2026年5⽉29⽇(金) 9:00

(3)掲載特集号:2027年1月刊行号(Vol.8 No.1(予定))

(4)TDP特集号編集長:倉田岳人(日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所)、是枝祐太((株)日立製作所 研究開発グループ)、宮下健輔(京都女子大学)

コーディネータ:梁 宇昕((株)日立製作所)、水田秀行(日本IBM)、横山和秀(日本IBM)

特集アドバイザ:斎藤彰宏(情報処理学会 技術応用担当理事/日本IBM)

編集委員:
石井一夫(公立諏訪東京理科大学)、飯尾 淳(中央大学)、小野田弘士(早稲田大学)、鎌田真由美(関西大学)、上條浩一(東京国際工科専門職大学)、烏谷 彰(富士通(株))、木村直紀(ヤフー(株))、草場 力((株)日立製作所)、込山悠介(国立情報学研究所)、坂下 秀(アクタスソフトウェア)、坂下幸徳(LINEヤフー/ゼットラボ)、佐藤 聡(筑波大学)、下沢 拓((株)日立製作所)、高橋哲朗(鹿児島大学)、土屋英亮(電気通信大学)、滕 琳(日本大学)、戸田貴久(電気通信大学)、長坂健治(キンドリルジャパン)、服部雅一((株)東芝)、福原知宏(マルティスープ(株))、藤瀬哲朗((株)三菱総合研究所)、藤原真二((株)日立製作所)、細野 繁(東京工科大学)、細見岳生(NEC)、南山泰之(国立情報学研究所)、森村吉貴(京都大学)、山口晃広(東芝研究開発センター)、山口大輔(NTTソフトウェアイノベーションセンタ)、吉野松樹((株)CIJ)、除補由紀子(NTTソフトウェアイノベーションセンタ)、山崎賢人(三菱電機(株))
(論文募集公開時点(2025年10月)