連続セミナー2010 クラウドコンピューティングを自在に操る

「次世代クラウドコンピューティングに向けて」
コーディネータ : 後藤 厚宏(NTTサイバースペース研究所 所長)

  • 開催日時 : 2010年12月6日(月) 9:30 〜 17:00
  • 会場 : 東京電機大学 神田キャンパス7号館1F 丹羽ホール

最終回となる第6回では、企業の基幹業務、電子行政、交通制御、プラント監視などの社会インフラに適用可能な「次世代クラウド」の実現に向けた最先端技術を紹介します。
クラウドコンピューティングを構成するアプライアンス、ネットワーク、データセンタのそれぞれの分野のエキスパートをお招きし、次世代クラウドの全貌を明らかにします。

コーディネータ : 後藤 厚宏 (NTTサイバースペース研究所 所長)
【略歴】1984年東京大学大学院情報工学博士課程修了。工学博士。同年日本電信電話公社(現NTT)入社。2010年より現職。
分散処理技術、インターネット関連技術の研究開発と事業化に従事、米国研究所設立。
第五世代コンピュータプロジェクトにて並列推論マシンの研究開発に従事。
情処学会誌編集委員、SAINT組織委員、JSPP実行委員、SACSIS組織委員長。

プログラム

Session.1 9:30 〜 11:00
「クラウドデバイスとモバイルネットワーク」
栄藤 稔(株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ R&Dセンター サービス&ソリューション開発部長 / 大阪大学 サイバーメディアセンター 招聘教授)

【講演概要】 クラウドコンピューティングという概念で表現される情報処理環境が現れてからモバイル応用において何が変わったかを述べる。第2世代移動通信網により常時接続パケット通信が実現され、iモードに代表される情報端末としてのケータイが現れ
たが、今日では、クラウド、スマートホン、ワイヤレスブロードバンド (LTE)の組み合わせがイノベーションのキーイネーブラーであり、ケータイの使われ方に様相変化が起きようとしている。その変化とは、
1.アプリケーションマーケットの出現により爆発的にサービスが増えようとしている。そこでは、サービスそのものよりもサービスが連携する仕組みが重要である。
2.センサーハブとしてのケータイを通して画像、音楽、メイル、スケジュール等の個人データがクラウドに集約される。さらにこれが個人を超えて社会的ネットワークとして集約され衆知が価値化されようとしている。
上記の様相変化を俯瞰しつ、クラウドデバイスを支えるネットワーク基盤、端末 ・ネットワーク連携についても併せて述べる。

【略歴】
マルチメディア通信及びモバイルネットワーク分野において25年の研究開発経験がある。松下電器(現パナソニック)中央研究所にて動画像符号化、ATRではパターン認識の研究を行った。NTTドコモに入社し、第3世代携帯網におけるモバイルマルチメディアサービスの立ち上げを行う。現在、データマイニング、メディア理解、スマートフォン、ホームICT、マシンコミュニケーション、情報検索に関する研究開発を統率している。
Session.2 11:10 〜 12:40
「セキュアクラウド連携技術」
村上 明彦(株式会社NTTデータ 技術開発本部 ITアーキテクチャ&セキュリティ技術センタ 部長)

【講演概要】 Amazon、Google等のパブリッククラウドサービスの利用が拡大しているが、未だ、企業等での利用は限定されている。本講演では、クラウド技術を取り巻く現状、および今後の動向について説明する。また、企業ユーザが、クラウド利用に関しての抱いている課題(セキュリティ・信頼性、カスタマイズの柔軟性、既存システムとの連携等)について解説し、これらの課題に対しての取組状況を紹介する。具体的には、上記課題を解決するための方法として、クラウド間の連携を取り上げ、企業ユーザのクラウドに対する要件を詳細に整理した上で、クラウド間の連携により、相互扶助的に信頼性を高める仕組みや、セキュリティ等のポリシーの異なるクラウド間での連携法やそれに伴う標準化の動向などについて説明する。

【略歴】
1987年日本電信電話株式会社(現NTT)入社。1988年NTTデータ通信株式会社(現NTTデータ)の分社に伴い異動。2008年より現職。パタン認識、ミッションクリティカルシステム基盤、SaaS、クラウド基盤の研究開発に従事。
お昼休憩 12:40 〜 13:40
Session.3 13:40 〜 15:10
「クラウドコンピューティングを支える高信頼高性能ネットワーキング技術」
加納 敏行(日本電気株式会社 知的資産R&Dユニット 中央研究所 システムプラットフォーム研究所 所長)

【講演概要】 クラウドコンピューティングのサービス提供者は、突然の高負荷や利用者の増加に対応したシームレスなサービス拡張、利用者に負担のない機能修正や機能追加、負荷に応じたデータセンターのICTリソースの柔軟な電力制御などを実現する必要がある。このような要求に対応するためには、サーバ仮想化技術と、それに連動した新たなネットワーキング技術が必要である。ネットワーキング技術としては、ネットワークの仮想化、プログラマビリティの向上の強化、さらにネットワーク仮想化とコンピュータリソース仮想化の連携等が挙げられる。本セミナーでは、上記に関する日米欧にて検討の進むネットワーク技術の動向、標準化技術に加え、 IT技術とNW技術の連携によりクラウドデータセンタのアーキテクチャ構築への取り組みについて説明する。

【略歴】
1981年NEC入社、SONET/SDH、ATM向けシステムデバイス開発に従事。1998年より専用線システム、IPネットワークシステム開発統括を経て2006年システムプラットフォーム研究所所長としてITネットワークシステムの研究を総括。現在に至る。
Session.4 15:30 〜 17:00
「実世界リアルタイム情報処理に向けたクラウドネットワーキング」
西村 信治(株式会社日立製作所 中央研究所 新ICTプラットフォームプロジェクト プロジェクトリーダ)

【講演概要】 クラウドコンピューティング技術はICT設備投資の負担軽減や、情報処理の集約等による運用の省力化、省エネ化を実現する技術として大いに注目を集めている。そして今後、クラウドコンピューティング技術を発展させることにより安心・安全
や地球環境維持など、社会の根幹を支える実世界のリアルタイム情報処理にも適用なプラットフォームに進化させることが期待されている。われわれはクラウドコンピューティング技術、中でもクラウドネットワーキング技術を、高速かつ安定したサービス応答時間を保証しつつ、サービスの高信頼化と省電力化をより高める方向に進化させ、実世界のリアルタイム情報処理に適用可能とするための技術開発に取り組んでいる。本セミナーでは、クラウドの次世代の一つの姿として、実世界リアルタイム情報処理を実現するための、これら技術開発の取組を紹介する。

【略歴】
1991年東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻修士課程修了。同年日立製作所入社 中央研究所配属。並列計算機用光ネットワークシステム、IPルータ/スイッチ向け技術開発およびイーサネット標準化活動に従事。2009年4月より、同社中央研究所新ICTプラットフォームプロジェクトリーダ。博士(工学)、IEEE Senior Member。