イベント企画
秘匿計算の最前線
8/25(水) 13:10-15:10
第2イベント会場(オンライン)
【セッション概要】 秘匿計算とは,データを暗号化したまま計算を行う技術であり,プライバシーを保護しつつビッグデータを活用するための基盤技術の一つである.例えば,DNA配列のデータベースを解析し遺伝性疾患の治療に用いる場合,秘匿計算を用いればデータを暗号化したまま計算でき,計算を実行する側は個々のデータの情報は得られず計算結果のみが得られる.つまり個人のプライバシーを保ったまま学習・解析処理が行える.
 本チュートリアルでは,秘匿計算で用いられる完全準同型暗号,秘密分散等の数学的基礎と,それらを実際のデータ解析に適用した例について解説する.
司会:清水 佳奈(早稲田大学 理工学術院 教授)
【略歴】 2006年早稲田大学より博士 (工学) 取得.同年, 産業技術総合研究所入所.メモリアルスローンケタリング癌センター客員研究員, 早稲田大学准教授を経て現職. 2010~2011,2021年度~日本バイオインフォマティクス学会理事. 2019~2020年度情報処理学会理事.平成30年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞受賞.ゲノム情報解析,ゲノム等を対象としたプライバシ保護の研究に従事.
13:10-13:50 講演(1) 秘密計算上の実数アルゴリズムと秘密計算AIへの応用
五十嵐 大(NTT社会情報研究所 主任研究員)
【概要】 秘密計算とは暗号化したままデータを処理する技術であり, データを保護したデータ分析への活用が期待され暗号分野を中心に盛んに研究がされている.しかし秘密計算がネイティブに扱えるのは整数のみである.そこから実数演算を構成することはただでさえ秘密計算は処理速度が課題であるところにさらなる処理コストの増大を招くこと, また暗号とは大きく異なる実数演算のスキルセットを暗号と併せ持つ必要があり検討の敷居が高いことなどから避けられがちであり,秘密計算全体の研究の規模の割に実数演算の研究例は未だ多くない. 本講演ではビットシフト演算, 除算, 平方根や指数関数,対数関数といった, 秘密計算上で実数処理を行うためのアルゴリズム群の例として講演者の提案してきた高速なアルゴリズム群とその性能・精度を紹介し, かなりの実用性を持つ段階に至っていることを示す. さらにその応用例として秘密計算によるAIとその実装を紹介する.
【略歴】 2008年東京大学大学院情報理工学研究科修士課程修了.同年、日本電信電話株式会社入社.プライバシ保護データ分析,秘密計算,秘密分散の研究開発に従事.令和2年度文部科学大臣表彰若手科学者賞,2011年度情報処理学会学会論文賞,2012年度山下記念研究賞,SCIS2017イノベーション論文賞,CSS2009/2012/2013論文賞,SCIS2011論文賞,PPL2008論文奨励賞ほか受賞.
13:50-14:30 講演(2) 秘密計算向けの効率的なデータ処理アルゴリズム
濱田 浩気(NTTセキュアプラットフォーム研究所 主任研究員)
【概要】 秘密計算でデータ処理を行う際には,入力に関する情報を一切漏らさずに計算を行わなくてはならない.そのため,通常の計算機向けに設計されたアルゴリズムを秘密計算で使おうとすると入力の情報を隠すために効率が低下してしまう場合がある.本発表では,ソートやデータベース操作を例に,秘密計算向けの効率の良いアルゴリズムを設計する取り組みを紹介する.
【略歴】 2009年京都大学大学院情報学研究科修士課程修了.同年,日本電信電話株式会社入社.以来,NTTセキュアプラットフォーム研究所にてプライバシ保護技術,暗号応用技術の研究に従事.2011年電子情報通信学会暗号と情報セキュリティシンポジウム論文賞,2013年度情報処理学会山下記念研究賞,情報処理学会コンピュータセキュリティシンポジウム2014優秀論文賞等,各受賞.
14:30-15:10 講演(3) 秘密計算によるプライバシー保護とデータ活用の両立
佐久間 淳(筑波大学 システム情報系 教授)
【概要】 AIやオンラインサービスの高度化に伴い,個人情報やパーソナル情報におけるプライバシ保護の重要性はますます高まっている.プライバシーの保護は情報の流通形態と利用形態において様々なソリューションが考えられる.講演では暗号理論的な安全性に基づく秘密計算とこれを利用した大規模データにおいても効率的な秘密計算の基礎と応用について解説する.
【略歴】 2003年3月東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程修了. 博士(工学). 同年4月日本アイ・ビー・エム株式会社入社, 東京基礎研究所に配属. 2004年7月, 東京工業大学総合理工学研究科助手, 2007年4月同助教, 2009年4月, 筑波大学大学院システム情報工学研究科准教授, 2016年4月同教授. 2009年10月から2012年3月, 科学技術振興事業団さきがけ研究員兼任, 2012年2月から2014年3月, 国立情報学研究所客員准教授, 2016年9月, 理化学研究所革新統合知能研究センターグループリーダー, 現在に至る. 機械学習と知識発見, セキュリティとプライバシの研究に従事.