イベント企画
3次元チップ実装とワイヤレス誘導結合チップ間インタフェース
8/27(金) 13:10-15:40
第2イベント会場(オンライン)
【セッション概要】 半導体のプロセスの進歩が限界に達しつつある今、小さいサイズのチップレットを複合して大きなチップを実現する2.5次元、3次元実装は、半導体チップ実装の主流となりつつある。この中で、チップ間無線通信技術は、TSVに比べて柔軟性に優れ、特殊なプロセスを必要としない点で注目されている。この技術に関する最近の動向を紹介し、製品レベルに持って行くための問題点と、それに関する解決手法について議論する。
13:10-13:50 講演(1) 半導体戦略と3D集積
黒田 忠広(東京大学 システムデザイン研究センター 教授)
【概要】 半導体を取り巻くさまざまな変化の根源には、エネルギー問題が共通する。エネルギー効率を高めるために、汎用チップから専用チップに産業の主役が交代し、ノイマン型から神経回路網にアーキテクチャが刷新され、微細化から3D集積に技術が変わろうとしている。微細化からカーボンニュートラルに時代が移るのに応じて、これまでの貪欲(グリーディ)な成長戦略から、グリーンな成長戦略への大転回が求められる。
3D集積は、データの移動に要するエネルギーを桁違いに削減できるので、グリーン成長戦略の要である。シリコン貫通電極TSVとマイクロバンプでチップを積層実装する技術は、機械的な制約と電気的な制約の両立が困難であった。一方で、磁界結合を用いた積層チップ間接続(ThruChip Interface; TCI)は、両者を分離できるが電源の問題が残った。
本講演では「先先の先を撃つ」反転の半導体戦略を論じ、3D集積技術を展望する。
【略歴】 1982年から18年間、東芝で半導体集積回路を研究開発。2000年から20年間、慶應義塾大学とカリフォルニア大学バークレイ校で教壇に立った。現在は、システムデザイン研究センターd.labセンター長、先端システム技術研究組合RaaS理事長、国際会議VLSIシンポジウム委員長を務める。IEEEと電子情報通信学会のフェロー、慶應義塾大学名誉教授。
13:50-14:10 講演(2) 3次元積層チップの温度解析と温度制御技術
宇佐美 公良(芝浦工業大学 工学部情報工学科 教授)
【概要】 複数枚のチップを積み重ねて実装する3次元実装では、上下段のチップの発熱が、両者に挟まれた中間段のチップの温度に影響を与えるという特徴がある。さらに、チップ間無線通信方式ではチップを少しずつずらして積層するため、ずらした部分に熱が滞留する現象も観測されている。これらの複雑なふるまいを定量的に明らかにし、温度制御への知見を得るため、複数の発熱回路とオンチップ温度モニタ回路だけを搭載した実験チップThermo2を設計、試作し、3次元実装して評価を行った。講演では、3次元Thermo2での実機評価から得られた知見に加え、商用の熱流体解析シミュレータFlothermとの結果比較についても述べる。また、積層加工時に実際に遭遇したチップ間ショート不具合と、その対処方法についても紹介する。
【略歴】 1982年早稲田大学理工学部卒、84年同大学大学院理工学研究科修士了。工学博士(早稲田大学)。1984年、(株)東芝入社。半導体技術研究所にてマイクロプロセッサをはじめとするLSI設計技術の研究開発に従事。1993~95年、スタンフォード大学客員研究員。2003年、芝浦工業大学工学部情報工学科助教授、2005年より同大学教授。研究テーマは、低消費電力LSI設計技術、3次元積層チップの温度制御技術、ハードウェアセキュリティ技術。電子情報通信学会フェロー。
14:20-14:40 講演(3) チップ間無線通信技術を活用した形状自在計算機システム
門本 淳一郎(東京大学 大学院情報理工学系研究科 助教)
【概要】 チップ間無線通信技術を活用した柔軟な計算機システムのアーキテクチャやアプリケーションについて述べる。マイクロロボット群や、計算機システム自体の形状変化を利用するユーザインタフェースといった新たなアプリケーション領域を開拓していくにあたっての現状の課題について述べる。
【略歴】 2017年慶應義塾大学理工学研究科総合デザイン工学専攻修士課程修了。2021年東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程修了。博士(情報理工学)。同年より、東京大学大学院情報理工学系研究科助教。組み込み計算機システム、ユーザインタフェースに関する研究に従事。
14:40-15:00 講演(4) TCIを用いた3次元積層型DNN向けアクセラレータSNACC
近藤 正章(慶應義塾大学 理工学部情報工学科 教授)
【概要】 近年、特に組込みシステム用途に様々なディープニューラルネットワーク(DNN)向けのアクセラレータチップが開発され、その重要性は増す一方である。我々は、高い電力効率で多様なネットワーク構造に対応できる柔軟性を持ち、かつTCI (ThruChip Interface)を用いた3次元積層が可能なDNNアクセラレータSNACCを開発した。本発表ではSNACCのアーキテクチャを紹介し、4コア構成の実LSIチップにおける性能・電力評価結果を報告する。
【略歴】 2003年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻修了。博士(工学)。JST CREST研究員、東京大学先端科学技術研究センター特任助手、電気通信大学大学院情報システム学研究科准教授、東京大学大学大学院情報理工学系研究科准教授などを経て、2021年4月より慶應義塾大学理工学部教授。理化学研究所計算科学研究センターチームリーダーを兼務。計算機アーキテクチャ、ハイパフォーマンスコンピューティング、人工知能、量子コンピュータに関する研究に従事。
15:00-15:20 講演(5) mRubyVMによるチップ間インタフェースの電力制御基盤の実現
並木 美太郎(東京農工大学 教授)
【概要】 本プロジェクトは、実チップにおいては、GC-SOTB技術でチップ間インタフェースを実現した。GC-SOTBは、バイアス電圧を制御することで状態保持しつつ電力制御を実現できる。本研究では、電力制御において、mRubyというRubyの仮想機械を
実チップに実装して電力制御の基盤を実現した.
【略歴】 博士(工学)
日立製作所基礎研究所 所員(1986-1989)
東京農工大学 工学部 数理情報工学科 助手(1989-1992〜平成5年10月)
東京農工大学 工学部 電子情報工学科 助教授(1992-2006)
米国ノースカロライナ州立大学 シャーロット校計算機科学科 文部省長期在外研究員 訪問教授(1996-1997)
東京農工大学 大学院 共生科学技術院 教授(2007-)
東京農工大学 工学府産業技術専攻/工学部情報工学科 教授(2010-
IPA(情報処理推進機構)未踏ソフトウェア創造事業 プロジェクトマネージャ(2006-2007)
情報処理学会システムソフトウェアとオペレーティングシステム研究会主査(2007-2010)
情報処理学会CS領域委員長(2017-2018)
情報処理学会理事(2018-2019)
長らく計算機システム、OSなどのシステムソフトウエアの研究、教育に従事。
15:20-15:40 講演(6) 組み込み領域におけるTCI技術の問題点
天野 英晴(慶應義塾大学理工学部 教授)
【概要】 3次元ワイヤレスチップ間通信TCIは、特殊なプロセスなしに、複数チップを柔軟に積層することができる。このことからエッジ分野への利用が期待されるが、電源、クロックの供給のため、チップをずらして積層する必要があり、ボンディング領域の制約から電源グリッドの抵抗が大きくなりやすい問題点がある。今まで実装した数種類のチップの実測結果より、TCI実装上の問題と、解決手法について報告する。
【略歴】 1986年慶應義塾大学工学部博士課程修了、工学博士
現在、慶應義塾大学理工学部情報工学科、教授。コンピュータアーキテクチャの研究に従事。