プラクティス論文のプラクティスについて

デジタルプラクティスへの投稿を考えていらっしゃる皆様へ「プラクティス論文のプラクティスについて」

このたびはデジタルプラクティスへの投稿に興味を持っていただき大変ありがとうございます。世の中にはまだあまり馴染みのないプラクティス論文のプラクティスについて、著者の皆様に留意していただきたいことを以下に簡単にまとめてみましたので、どうぞ参考になさってください。

プラクティスとは、著者が現場でやってみて初めて分かった経験と、その経験を一般化した社会的に有用な知見を述べることが期待されています。社会的に有用な知見というのは、これから同様の実験や仕事をやろうと思っている技術者にとって有用な知見というだけでなく、広く他分野・他領域の技術者が現場で仕事をする際に有用となるような知見として一般化するという意味です。論文審査基準はこの「社会的有用性」のみです。

デジタルプラクティスはプラクティス(実践)に関する論文誌ですから、論文中にはプラクティスに関する記述が強く要求されます。その代わり、技術的な新規性は従来の学術論文ほど要求されず、新規性が不足していることで不採録とはなりません。しかしプラクティスと言っても実データを扱うだけでは、あるいは実世界で実験しただけではプラクティス論文にはなりません。

プラクティス論文に求められるプラクティスとは例えば次のようなものです:

  • この手法をこんな風に想定外の使い方をしてみたら効果的だった
  • この手法とこの手法をこんな風にうまく組み合わせることができた
  • 現在最も安価で手間が少ないやり方はこれで、こうやって見つけた
  • 学術論文では結果だけが主張されますが、その主張する方法に至る前にこういう試行錯誤があった
  • 上手く行くと思われたこのやり方にはこんな落とし穴があって駄目だった(やってみて初めて分かった)
  • このようなテスト段階を踏まえて最終的な仕組みや方法に落ち着いた
  • 技術的には難しくないが良いデータを取るために現場で一番注意したのはこの点であった
  • 予備実験で出た問題点は何で、それを本実験ではこう解決した
  • 実験室内(テストデータ)では上手く動作してたけど、現場に持ち出したら(実データに当たると)上手く動作しなかった部分はここだった。それをこう解決した

というようなものです(これだけに限りませんが)。

従来の論文では「〜の分析」や「〜の検討」などの章がよく設けられますが、デジタルプラクティスでは極論すると分析法、分析結果、検討結果にはあまり興味はなく、分析作業におけるプラクティスや検討作業におけるプラクティスに興味があります。またタイトルが例えば「〜の方法」や「〜の提案」となっていても、その気持ちは「〜の方法に関するプラクティス」や「〜の提案に関するプラクティス」となっていなければなりません。したがって文中には、明示的に「分析におけるプラクティスには〜などがあった」「そのプラクティスから〜という知見が得られた」などという記述があることが期待されます。